第221話

『まぁやるだけやるしか無いんだけどねぇ。とりあえず……ラグナ君はこれからどうするだい~?』


ヒノハバラという国を捨てて、シーカリオンへとやってきた。 


これから。


これからか……


その前にラグナは成すべき事を2点思い出す。


「とりあえず、すぐにでもやることが2点だけあります。」


『ほほぅ。それはなんだい~?』


「1つ目はヨハム公爵の城から手に入れた机を商業ギルドに渡すこと。本当ならばここにくる前に渡せれば良かったのですが、誰に渡せばいいのか判らなかったので後で教えていただきたいです。2つ目がこのシーカリオンにあるマリオン商業学園に通う幼なじみに、村が壊滅した事と彼女の両親の遺品を渡したいです。」


『ヨハム公爵の城から手に入れた机??ど~ゆ~こと??』


ラグナは賢者リオにヨハネスでの自分の行いを説明した。


『くっくっくっ……あ~っはっはぁぁ!!最高ー!!最高だよラグナ君!!盗られた物を取り返しただけで満足しないとはいい心構えだよ!しかも値段的には宝石に比べるとそこまで高価では無く、でも盗まれたら確実に困るそのチョイス!!机は日野っちと同じ収納スキルの中かな??』


リオは既にラグナが収納スキルを保有していることを知っているようだった。


「収納スキルを持っていることに気がついていたのですか……はい、スキルの中に仕舞ってあります。誰に渡せばいいでしょうか?」


『ん~。後でうちの商業ギルドのギルド長に連絡しとくから、そいつに渡せばいいよー。あいつなら私の事も知ってるしね。ついでにマリオン商業学園の見学手続きもしてあげる!』


本当に賢者リオに出会えて良かった。


「ありがとうございます。やっと彼女に教えることが出来ます。」


『まぁ~それくらいはいいよ~。それで?それが終わったらどーすんの?』


賢者リオからの問い。


お前はこれからどうするのかと。


村を出てから、ずっと周りの状況に流されていた。


どうすればいいのか訳も分からずに。


貴族になったり。


使徒になったり。


そして異端者になったりと……


「……これからこの国で何をしたいのか、正直な所わかりません。今まで僕は状況に流されてばかりでしたから。でもそうですね……何かって言われたら、もっと強くなりたいです。」


『もっと強く~?既に同世代の中ではぶっちぎりの力を持ってると思うよ~?』


「じゃあ今の僕が初代勇者達が戦った魔王と対峙した時にどの程度通用しますか?」 


賢者リオにこの質問をすると、あ~とかう~といううめき声の後にピコンと効果音が鳴った。


『私の計算が正しければもって5分ってとこかなぁ。』


「えっ……5分……?」


『うん。頑張って5分だろうね~。もしかしたら魔王が広域殲滅魔法を開始早々にぶっ放したら一瞬かもね。』


アースドラゴンを倒したことによって少し浮かれていたのかもしれない。


アースドラゴンを倒せたのだからと……


『ちなみに頑張って5分ってのはこの前の魔族襲撃事件の時にパワーアップした時の状態って事。今のままだと本当に一瞬だよぉ~。』


「そこまでですか……。」


ちなみにと教えてくれたこと。


数値化で表すと、


ラグナの力が1としたら勇者ヒノは80 魔王は100


それくらい力の差が離れているとのことだった。


『君も一応加護は付いているみたいだけど、あの時はそんなもんじゃないよ~。女神様達も本当に出来るギリギリまで力を注いでくれていたからね。』


全盛期の勇者ヒノの力であれば、冗談抜きでアースドラゴンくらいならば素手で一発殴れば倒せるくらいの力の持ち主だとか。


『ちなみに、今の私は生きていくのでギリギリだから戦う力はほとんど無いんだよねぇ。改めて思うよ。今回は本当に駄目かもしれないね~。』


話を聞けば聞くほど無理なんじゃないかと思ってくる。


「初代勇者ヒノはどうやってそこまでの強さを……」


最初はただこの世界に召喚された存在だったはず。


それがどうやってそこまでの強くなれたのか。


加護の強さだけじゃない気がする。


『そんなの簡単だよ~。魔王にこのままでは勝てないって悟った日野っちは、収納スキルを駆使してダンジョンに籠もってたからね。』


きっとあるとは思っていたけど……


どうやらこの世界にもダンジョンと呼ばれる場所が存在しているようだった。

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