第194話
まさかの蚊取り線香のチート性能に驚きつつもラグナは夕食の準備に取りかかる。
「食事を大量に用意してくれたブリットさん達には申し訳無いけど……」
ラグナは収納スキルから調味料や料理道具やお皿を取り出す。
取り出した料理道具の一つである鉄串を手に持つと収納スキルから肉を取り出す。
鉄串で肉を突き刺すと上からアウトドアスパイスを軽く振りかけて土魔法で作ったコンロの上にセットする。
肉を定期的にクルクル回して火を通していく。
時折聞こえるジュージューとした音。
肉の油が炭の上に落ちて香ばしい匂いが広がる。
そして取り出すのは神器であるウォータージャグ。
コップを取り出すとコックを捻り水を出す。
そしてまずは一杯。
「冷たっ!!」
ウォータージャグの水はキンキンに冷えていた。
「なんでかめっちゃ冷えてるし……ただの水なのにめっちゃ美味いな。」
さすが神器。
ただの水がここまで美味しいとは。
水を飲みながらぼーっと肉を焼いていく。
「そろそろかな。今からスープを作るのもあれだし、スープはエチゴヤの宿で用意してもらった物でも飲もうかな。後はパンを取り出してっと。」
焼いた肉をナイフでそぎ落としてお皿に載せる。
余った肉は即収納スキルで保管。
「それじゃあ、いただきます。」
まずは肉を一口。
「本当に相変わらず美味い。アウトドアスパイスがあるだけで本当に食が豊かになるよな。」
本当にこのスパイスが召喚出来るようになって良かった。
もしこれが無かったと思うとぞっとする。
肉をパンに挟んで食べていく。
そしてスープを一口。
「やっぱりエチゴヤの料理はうまい。出汁が効いてる。」
のんびりと食べ進めて食事は終了した。
「さて、これからどうしよう。流石に魔物は出て来ないと思うけど……」
果たしてこのまま寝ても大丈夫なのだろうか……
魔物だけでなく、普通に獣が居るだろうし。
このままテントで寝て大丈夫なのかという不安がある。
だからと言って今から木がある所まで移動してハンモックを設置するっていうのも、日が落ちているので厳しい。
もちろんカモフラージュローブではハンモックは隠せてもテントは無理だ。
「確か前世だと熊避け、獣避けに狼の尿をまくってやつが売ってた気がするんだけど……」
『フェンリルの尿を召喚しますか?』
「フェ、フェンリルの尿!?いや、名前は凄いけど……」
流石に召喚するのにも勇気がいる。
どんな形で召喚出来るのか……
指先から着火材みたいに出るんだったら嫌だぞ……
それに狼のおしっこはなかなかに破壊力抜群の臭いだったし。
それがフェンリル……
ちょっと待てよ……
フェンリルって魔物だよな……?
ゲームでしか聞いたこと無いぞ?
この世界にもフェンリルなんて存在がいるのか?
まぁ今考えたってどうにもならないか。
「どうせこのままだと安眠出来ないんだ……覚悟を決めよう。やるしか無いんだ……」
ラグナは覚悟を決めると魔力を高めていく。
「フェンリルの尿召喚!!」
さぁ来い!!
こっちは覚悟出来たぞ!!
ラグナの目の前には何かの容器の様なシルエットが浮かんできた。
容器には紐が付いておりラグナはその紐を手で掴む。
そしてゆっくりと形がはっきりとしてくる。
「良かった……賭けには勝った……」
容器には紐が付いておりぶら下げられるような形状になっていた。
更に容器の上部には複数の穴。
中には液体が入っている。
「思っていたよりも、匂いはしないのか……?」
ゆっくりと慎重に鼻を近づけていく。
少し鼻をクンクンしてみるが狼の尿を嗅いだ時の様な破壊力は無い。
「匂いはほとんどしないけど、こんなん効くのか?」
ここまで匂いがしないと使う身としては助かるが、効果を疑ってしまう。
「これも鑑定してみればいいのか。『鑑定!!』」
『フェンリルの尿』
『効果 神獣フェンリルの尿を容器にセットした物。設置場所から半径10メートル以内にはフェンリルの尿に含まれた強力な魔力によってある程度の強さの魔物や獣は警戒し近寄らない。効果は設置後12時間。なおスタンピード発生時は効果が無い。』
「神獣って……それにまたチート性能なスキルが出ちゃったな……でも完璧って訳じゃないから気をつけないと。」
フェンリルという生物は魔物ではなく神獣らしい。
ところで神獣ってなんだろ……?
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