自由気ままなお子様ひとり旅。

第193話

ブリットさん達と別れてから数時間。 


ラグナは別に急ぐ旅でも無いので、自由気ままに街道を歩いていた。


「そろそろ野営の準備でもしておくか。」


ちょうど今いる場所は草原に囲まれており見通しが良くなっている。


ちょっと遠くには他にも野営の準備をしている集団がいるのが見えた。


ラグナは土魔法で地面を数cmだけ高くして平らに均すとキャンプスキルの魔道書を呼び出す。


「ねぇ。このくらいのサイズのテントって召喚できるかな?」


ラグナがそう語り掛けると魔道書はくるくるとテント設置場所を周り、ラグナへとピカピカ光りながら返事をしているように見えた。


「出来そうかな?それじゃあ、テント召喚!」


魔道書が一瞬光り輝くと形状が変化していく。


そしてラグナの目の前に現れたのは……


「まさかのワンタッチテントになるとは……まぁ、設営は簡単だから助かるけど……」


魔道書が変化したのはワンタッチテントと呼ばれているキャンプ用品。


傘を開くような構造になっており、簡単にテントが設営出来る様になっている。


「まぁ風が強い訳じゃないから大丈夫かな。」


テントをバサリと開くと簡単に完成した。


一応風で飛ばされないようにペグでテントを固定していく。


「よし。とりあえず寝床は完成だ。」


テントの中は大人3人くらいがゴロンと寝ても平気な位の広さがある。


まだ子供のラグナの身体ならば充分すぎるほど広い。


「次は焚き火……うーん、周りに木の枝とかは無いし、あれでいいか。」


ラグナは収納スキルから備長炭を取り出して無造作に置いていく。


「とりあえずテントの前に椅子を作って……」


土魔法を器用に操り、土の椅子を作り出す。 


そして椅子の前には簡易的なかまどを更に追加。


かまどの火床となる部分に先ほど収納スキルから取り出した備長炭を並べていく。


「後は着火材を召喚してっと。」


備長炭の上に着火材のジェルを掛けていく。


「それじゃあ火をつけるか。」


指先に弱い火の魔法を発動させると着火材のジェルへと近づけて着火させる。


あっという間に火が広がっていく。


そして……


備長炭の表面だけを炙っただけで火は消えてしまった。


「あれ?着火材が足りなかったかな?」


今度は多めにジェルを振りかけてから着火。


しかし今度もまた表面を炙っただけで備長炭には着火することが出来なかった。


「うーん……炭の置き方がいけないのかな。まぁいいや。面倒だからこれでいこう。」


ラグナが指先からガストーチソードを発動させると一気に炭を熱していく。


そして反対側の手からは風魔法を発動させて火と風の力を魔法でごり押しすること数分。見事に備長炭に着火することが出来た。


「後は定期的に放り込んでいけばいいかな?」


前世では親とキャンプに行った時もBBQをした時も備長炭なんて使った事が無かった。


だって、高いし……


テントと椅子と火の準備も無事?に終わり、のんびりと椅子に座りながら時間を潰す。


そして日が落ちてきて暗くなる。


「暗い……ちゃんとした焚き火じゃないからなぁ。仕方ない。LEDランタン!」


LEDランタンを召喚すると周囲が明るくなる。


むしろ明るすぎたので慌てて暗くしていく。


しばらくするとあることが気になって来る。


「小さい虫が多い……こんなんでご飯なんて出したら更に虫が集まりそう……」


悩んでいると頭に声が響く。


『蚊取り線香を召喚しますか?』


「ん?やっぱりこれってどういう事なんだろう。キャンプスキルの魔道書とこの声って関係ないのだろうか……まぁいいや。蚊取り線香召喚。」


すると手の上に昔ながらの蚊取り線香が現れた。


「これは物質か……備長炭とかと同じって事かな。」


とりあえず土魔法でそれっぽい台を作り出すと、テントからは少し離れた場所に設置して火をつける。


「あぁ、懐かしい匂い。でもこっちの世界の虫には効果があるんだろうか?」


そう思いながらしばらく椅子に座っていると、変化に気が付いた。


「あれ?あれだけぶんぶん飛んでいた虫が全くいない……?」


LEDランタンを複数召喚して辺りを照らしてみるが、虫の姿が全く見えなくなっていた。


「蚊取り線香って普通の虫にも効くものだっけ……?」


呆然としているとあることを思い出す。


「こんな時にこそ鑑定の神眼を使えばいいんじゃないか。」


一気に頭に情報が流れてくるのがどうにも慣れなくて全然使って来なかった。


使う機会もあまり無かったので創造神様には申し訳ないけど忘れていた。


「鑑定!」


『蚊取り線香』


『効果 煙が出ている間、半径5メートル以内には一切虫を寄せ付けない。』


「ちょっとこれ効き過ぎじゃない!?」


鑑定結果に驚くラグナだった。

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