第177話
「奇跡だ……」
「これは、また……」
「あの時の光……」
フィリス、ビリー、マルクの3人は目の前で起きた奇跡にただただ感動していた。
ラグナが目を閉じて魔力を高めると以前と同様に髪の毛の色が金と銀の2色に変化。
うっすらと青く輝く魔力?が傷つき重症を負っている中年男性へと流れ込んでいくのが見えた。
そして深い傷口がふさがり出血が止まる。
真っ青になっていた顔色はほのかに赤みを帯びていく。
しかし無くなった腕は元に戻らなかった。
俺はゆっくりと目を開けるとハルヒィさんを見つめた。
弱々しかった呼吸は力強さを取り戻していた。
『腕は治らなかったけど……呼吸が安定して良かった……』
後ろを振り返ると思わず思考が停止しそうになる。
何故か3人共俺に向かって祈りを捧げていたから……
「あの……」
流石にこれは……
「出来ればそれを止めてくれると……」
3人に拝むのを止めてもらう。
「あぁ、すまない。だが……」
「感じたことの無い神聖な気配をラグナ君から感じたんだよ。そうしたら自然と身体が動いてしまったんだ。」
フィリスも目を背けながら頷いていた。
そう言えばと思い、前髪を手で掴んで確認する。
しかしいつも通りの色だった。
「ねぇ、フィリス。今回は髪の毛の色が変わったりしていた?」
「変わっていたぞ。以前の時と同様に金と銀の2色の髪色に青い魔力を纏っていたな。」
「そっか。まぁいいや。それよりもハルヒィさんが無事で良かった……村の子供達はどうしてます?」
俺がそう言うとビリーさんが苦笑いする。
「私からみたらラグナ君も子供なはずなんだけどね。話をしているとうちの子供らと同じ歳とはとても思えないよ。子供達なら別室で聞き取りと名前を確認しているよ。」
子供達の中に妹のメイガがいるといいんだけど……
「それにしてもまさか穴掘りハルヒィがこの村に居たとはな。」
マルクさんの突然の呟きに思わず吹き出しそうになる。
穴掘りハルヒィって……(笑)
「マルクは知ってるのかい?」
「あぁ。一部の悪徳貴族共がコイツの特殊なスキルに目を付けてな。隷属の魔道具で言いなりにしようとしたらしい。鉱山の開発だけでなく、秘密裏に地下通路を作る際も便利だからな。まぁ悪巧みをした奴らはコイツにまんまとハメられて違法に作られた地下牢付近で溺死って訳だ。まぁ書類上は事故死って事にしてあるけどな。貴族が一般市民を隷属しようとしてたなんて事実が広まったら暴動が起きかねん。」
あれ?
ハルヒィさんは誰にもバレてないって言ってたけどバレてるじゃん。
「マルクさんはどうしてその事件の事を?」
「通路を自由に作れるユニークスキルを持つ人間が居ると軍の内部で噂が広まっていてな。穴掘りハルヒィって奴がいると。ちょうど我が家の屋敷を建て替えを検討していた時期で、もしも自由に地下に通路や部屋を作れるなら指名依頼を頼もうとしていたんだ。そのためにどんな人物なのか、信頼できるかを調査させている時に無実の罪でコイツが捕まったのを知ったんだ。後はさっき言ったとおりだな。」
事件の前から目を付けられていたのか。
ハルヒィさんの事は救護所の職員に任せて子供達の所へ向かう。
そこはある意味地獄絵図だった……
子供の扱いに慣れていない独身の軍人達。
不安から一気に解消された安堵と知らない強面の人達に囲まれた恐怖から泣き叫ぶ子供達。
強面の顔でベロベロバァなんて、もはや恐怖でしか無い。
俺達が近付いてきた事に気がついた子供達が一気に号泣しながら走ってくる。
「ラグナ兄ちゃん~!!」
何人もの子供達に囲まれる。
泣きながら抱きついてくるのは構わない。
だけどちゃっかり抱きついてくるお前とお前!
俺より年上だろうが!!
え~じゃない!!
そしてただ1人。
フィリスの方に向かった子供が。
「フィリスねえちゃー!!」
フィリスの方に向かった子がいると思ったら……
まさかの妹のメイガだった。
「無事で良かった。怪我は無いか?」
「うん!痛いはハルヒィおじちゃだけ!」
「なら良かった。」
そう言うとフィリスはギューッとメイガを抱きしめていた。
その光景を見ていた村の子供達(男の子)は俺の側を急に離れるとフィリスの方へと向かって行く。
村の女の子達は今がチャンスと更に俺にくっ付いてくる。
こらっ!
何が責任取って下さいだ。
どこでそんな言葉を覚えたんだ。
でもしばらくは子供らの好きにさせていた。
カラ元気って事はわかっていたから。
改めて1人ずつギュッと抱きしめていくと目をウルウルさせていた。
「ラグナにいちゃ……怖かったぁぁぁ。」
メイガが号泣したのをきっかけにみんながつられて泣く。
そして落ち着くのを待ってから話を聞くことにした。
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