第178話

「村にね。いきなり魔物がいっぱい来たの。」


「しかも魔の森じゃない方向から!」


「ラグナ君のお父さんがバッサバッサと魔物を斬り伏せてかっこよかった!」


「ラグナの母ちゃんが魔物を殴ってたのを俺は見たぞ!!」


「僕も見た!!どかーんって凄い音をしながら魔物が飛んでったの!!」


「ハルヒィのおじさんはラグナの両親が戦ってる間に村の回りをグルッと穴を掘ってた!!」


「村の大人達も武器を持って戦ってた!!」


「僕達子供は広場に集まってたんだけど……」


「急にドシン、ドシンって地面が揺れたの。」


「そのあとおっきい声が聞こえて煩いって耳を押さえちゃった。」


「そしたらね。石がいっぱい飛んできて、お家がいっぱい壊れたの。」


「僕達の方にもおっきい石がいっぱい飛んできたけど、ラグナ君のお母さんが殴って壊してくれた。」


「そのあとにね。腕が無くなったハルヒィおじちゃんが村の人に支えられて広場に来たの。」


「血がいっぱい出てて怖かった。」


「僕の父さんがみんなにハルヒィおじちゃんと一緒に行きなさいって言ったんだ。」


「どこに行くのかと思ったら、広場の地面に急に階段が出来たの。」


「洞窟探検みたいだった!」


「私が最後に階段を降りた後に後ろを振り向くと、階段が無くなってたの。」


「でも通路にはちゃんと照明が付いてて暗くなかったの!」


「ハルヒィおじちゃんに連れられて通路を進むと広い部屋が4つあったよ!」


「部屋には食べ物が置いてあったの!!あとお水がちょろちょろと湧いてくる場所があった!!」


「今まで食べたことが無いほど美味しい干し肉があったの!」


「キッチンもあったよ!!」


「キッチンの上の天井には穴が開いてて、火を起こすと煙が穴に吸い込まれたわ。まぁ穴を覗いても外は見えなかったけど。ハルヒィさんにはここだけなら火を起こしても平気って言われたの。それに薪に火が着いたら黒い石みたいに堅い奴を入れろって言われた。あんな堅い石みたいなのに火が着いたからびっくりしたわ。」


「外が見れないから何日いたのかわかんないけど……あの場所で3回目に寝る時にはハルヒィさんの意識が無くなった。」


「でもハルヒィおじちゃんが言ってたの。きっとラグナ兄ちゃんが助けに来てくれるからいい子にしてろって。もしもおじちゃんが起きなくても頑張って生きるんだぞって。」


「あとは外の音が聞こえやすいって部屋があってそこは天井が高くなってたの。」


「もしも人の声がいっぱい聞こえたら皆で大きな声で叫ぶんだぞって言われた!」


「そしたら外でいっぱい声がしたから、叫んだりしてたら天井が無くなってラグナ兄ちゃんが見えたの!!」


「だからラグナ兄ちゃんありがとう!!」


全部で子供達は18人。


一番年下は2歳の我が妹。一番年上は13歳のサリナさん。


料理などの家事や小さい子供達の面倒はサリナさんが見ていたらしい。


もちろんハルヒィさんの手当ても。


さっきの子供達の証言は全て書き留められていた。


それを改めて覗き込む。


魔の森から魔物が来ることを前提に村が作られてたからな。


街道側から攻められると唯一の逃げ道は魔の森って事になっちゃうし。


焚き火にいれた黒い石みたいな奴は俺が召喚した備長炭かな。


干し肉はきっとアウトドアスパイスで味付けされた奴だろう。


後気になることと言えば……


母さんが魔物を殴っていた……


殴っていたって改めて思うけど変だよな。


魔物を殴ったら吹き飛ぶとか意味がわからない。


じゃあアースドラゴンにめり込んでいたガントレットはやっぱり母さんが殴りかかったから?


なら母さん達はどこへ……


やっぱりハルヒィさんが目覚めてからかな。


…………


ゆさゆさ。


ラグナ…………


ゆさゆさ。


ラグナ、起きて…………


ゆさゆさ。


ぐふっ!!


腹に痛みと衝撃を感じて、びっくりして目をあけると目の前には馬乗りになったフィリスがいた。


「ハルヒィ殿の意識が戻ったぞ。行かないのか?」


「ハルヒィさんが!?行く!!」


ほとんど一睡もしないまま動き続けたので、いつの間にか寝ちゃってたらしい。


俺は急いでハルヒィさんがいる救護所へと向かうのだった。

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