第174話
ジェル状の着火材をアースドラゴンの体内に撒いて着火。
体内より焼き尽くすことで討伐することに成功した。
『本当にドラゴンって言うより巨大なワニだよなぁ……サイズが30メートル以上の可笑しいサイズだけど……』
ラグナはひっくり返り倒れたまま息絶えたアースドラゴンの腹下に登ると、突き刺さったままのガントレットを引き抜く。
ガントレットを手に取ると改めて確認する。
『やっぱり家の中に飾ってあった奴だ……』
ラグナが夕日に照らされながらアースドラゴンの腹に登り、ガントレットを確認している姿を兵士達はじっと見ていた。
子供がたった1人でアースドラゴンを討伐。
本来なら助かったと喜ぶべき所だが……
強すぎる力は恐怖を抱くしか無かった。
「ラグナ!良くやってくれた!!」
魔法師や騎士達の不穏な空気を感じ取ったイアンがラグナに声を掛ける。
「怪我は無いかい?」
「大丈夫か?」
それに続きビリー達もラグナの身を案じ声を掛ける。
しかしラグナには声が届いてなかった。
『急いで村に行かなきゃ!!』
魔道具に魔力を流しアースドラゴンから飛び降りるとそのままラグナは街道へと向かうルートへ。
一瞬呆然としてしまった大人達だがすぐに慌てて止めようと叫ぶ。
「「ラグナ!!」」
今から村に急行したとしてもあたりは既に夕方。
日も落ち掛けている。
しかしラグナはそんなの関係ないと更に魔道具に魔力を流す。
そして……
バタン。
そのまま地面へと倒れ込んだ。
「ち、力が入らない……」
魔力を流そうとしても上手く流せない。
それに目が回る。
激しい吐き気も襲ってくる。
身体が思うように動いてくれない。
「な、なんで……こんな時に……魔力切れに……」
そのままラグナは意識を失った。
『ラグナ……力になってあげられ無くてごめんなさい……私ではどうすることも……』
サリオラの悲しむ声が聞こえた気がする。
意識がゆっくりと浮上し目を開ける。
「ここは……どこだ??」
身体をゆっくりと起こす。
見覚えのない室内。
ベットの側には椅子が置いてあり俺の手を掴んだまま寝ている女の子。
目元が赤く腫れ上がっている気がする。
「先生……」
「ん……?」
フィリスの目がパチッと開いた。
「大丈夫か?」
「うん。側にいてくれてありがとう。ここは?」
「ここはナルタの領主の屋敷だ。」
領主の屋敷……
……!?
ラグナは急いでベットから飛び出し外へ向かおうとするが……
フィリスにがっちりと腕を捕まれて止められてしまった。
「フィリス離して!!村が!!急いで村に行かなきゃ行けないんだ!!」
ラグナは腕を解こうと魔力を込めようとする。
「駄目だ!!」
するとフィリスが急に大きな声で叫ぶ。
「何で!?急がないと村が!!村が襲われてるかもしれないんだ!!」
フィリスの顔を見る。
そしてラグナは固まる。
涙を目にいっぱい溜めたフィリスが必死にラグナを引き止めていた。
「何で……」
「もうビリー様達が駆けつけている……」
「でも!!」
軍が村に救援に行っていると言われても……
家族が村には居るんだ。
無言でフィリスの前から立ち去ろうとするが腕を離してくれない。
「……離して。」
フィリスは首を振る。
「頼む……離してくれ……」
「行かない方がいい……」
「村の皆が待ってるから……」
「行くな……」
「皆が待ってる……」
そう言うとフィリスがゆっくりと手を離してくれた。
「どうしても行くのか……」
ラグナはゆっくりと頷く。
「そうか……」
フィリスの目からは涙が溢れ地面へと落ちていた。
「もう内心理解しているんだろう……?それでも行くのか……?」
フィリスのこの状態を見れば嫌でもその意味が分かる。
「うん……村の皆が待ってるから……」
そうラグナがフィリスに言うとポケットから小さい玉を取り出した。
「転移球だ……魔力を流して見ろ。」
言われた通りに魔力を流す。
すると一瞬で風景が変わる。
「ここは……」
目の前に広がるのは破壊尽くされた建物が無惨にも広がっていた。
「ここは、アオバ村とナルタとのちょうど間にあった村だ……」
フィリスにそう言われて改めて見渡す。
「確かに……所々見たことがある気がする……」
「これを見ても本当に……行くのか……?」
「うん……」
フィリスがギュッと抱きしめてきた。
フィリスが転移球をさらに取り出したので抱き合いながら2人で一緒に魔力を流す。
覚悟を決めてゆっくりとラグナは目を開ける。
村を取り囲むように設置されていた防壁は跡形もなく崩れ去っていた。
しかし村の周囲を新たに囲むように深い深いお堀が作られていた。
兵士達が梯子を作っているのが見える。
そしてその先で指揮を取るビリー達の姿も。
ゆっくりとラグナは無惨にも破壊された村へと足を進める。
ビリー達は村に近づいてくる2人の子供に気がつくとその場に止まるように声を掛ける。
「目が覚めたんだね……」
「はい……それで……」
「出来れば子供であるラグナ君にはこの先の惨状を見て欲しくない。」
ビリーはそう伝える。
しかしラグナは首を振る。
「そうか……そこまで覚悟が出来ているなら仕方ない……わかったよ……」
ビリー達の後ろをついて行く。
そして村の入口で立ち止まったのでラグナはあたりを見回す。
「……!?」
目の前に広がる光景はまさに地獄のようだった。
ラグナは全身の力が抜けそのまま地面へと座り込んでしまうのだった…………
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