第145話

騎士学園6年生がスモールアースドラゴンを討伐したのはやはり凄かったらしい。


次の5年生の騎士学園代表の生徒の試合みて改めて感じた。


「いくぞ!!」


試合開始直後に速攻をかける騎士見習い達。


スモールアースドラゴンが一歩出遅れた。


「いけぇーー!!」


3人がスモールアースドラゴンの身体へと剣を振り下ろす。


カーン……


闘技場内に広がる甲高い金属音。


「いっつ……」


渾身の力で振り下ろしたと言うのに全く切り裂くことが出来なかった。


更に全力で振り下ろしたのにも関わらず弾かれてしまった為、手首に痛みが走る。


3人とも早々に剣から手を離してしまう事態に。


「グラァァァァァァ!!」


「えっ……?」


3人が声を上げて気が付いたときには既に遅し。


振り抜かれた尻尾は既に眼前へと迫っていた。


バコン、バコン、バコン。


甲高い金属音と共に試合会場からは、選手達の姿が消え去っていた。


『おっと……早々に試合終了だ~!!残念無念、また来年~!!』


次の魔法学園側の5年生代表も酷い戦闘だった。


「ウォーターウォール!!」


ソリダスがウォーターウォールを発動させた時に、スモールアースドラゴンの突撃を防いだのを見ていた5年生の生達は同じ様にウォーターウォールを発動させた。


これでスモールアースドラゴンの突撃は無いだろうと高をくくりウォーターボールの発動準備に入る。


「グルゥゥァァァァ!」


ソリダスに比べて圧倒的に練度が低い詠唱短縮にて発動したウォーターウォールはスモールアースドラゴンの突撃を止めることなど全く出来なかった。


「「そんな!!」」


全速力でウォーターウォールを突っ切り突進してきたスモールアースドラゴンはその勢いのまま3人に突撃。


あっという間の出来事だった。


『残念~!!またまた早々に試合終了だ~!!君達はまだまだ先がある!!来年またチャレンジしておいで~!!』


2連続での瞬殺……


次の番である騎士学園4年生は棄権を申し出た。


『騎士たるもの当たって砕けて見せろよ!!ってのは鬼畜だから仕方ない。来年また待ってるからね!!』


騎士学園4年生が棄権した為、そのまま3年生が出場することに。


「兄貴、良いのか?」


「構わん。3本とも我が家から持ち出した物だ。」


「分かった。借りてくぜ!!皆もいいか?」


「うん!!」


『次の選手はこいつらだ~~!!』


騎士学園3年生代表が試合会場へと突き進む。


『お?おぉ~?おぉぉ?まさか、まさかまさか~!!再びドラゴンキラーとアイスソードの登場だ~!!』


3人はロイから借り受けた剣を片手に突き進む。


『いいねぇ、いいねぇ!!その何としても勝利を掴むために突き進むその姿!!嫌いじゃないよ~!!』


「兄貴達のように俺達も勝利するぞ!!」


「わかった!!」


『いいよ~!!その威勢たまらんのぅ~!!だがこいつを前にして何時まで続くかな?いでよ、我が願いに答えたまえ~!!』


「ギャァァァァオォォォー!!」


『こっちも気合い入ってるぞーー!!それじゃあ~、試合開始~!!』


「いくぞ!!」


兄達の様に長期戦に挑めるほどの体力は持ち合わせていないので、速攻をかける。


「グラァァ!!」


スモールアースドラゴンは開始早々魔法を発動。


大量の石飛礫を飛ばす。


「くそっ!!防御!!」


出鼻を挫かれた3人はすぐに盾を構える。


すかさずスモールアースドラゴンは尻尾を擦り付けて魔法と同時に石飛礫を更に飛ばしてくる。


「いてぇ!!いてぇよぉ……」


「くっ!!怯むな!!いくぞ!!」


痛みに耐えながらも強引に突き進む。


「グルゥゥァァァァァァァァ!」


あと少しと言うところでスモールアースドラゴンが威嚇の為に、これまで聞いたことが無いほどの音量で吠える。


あまりにも至近距離で迫力のある声を聞いてしまい、恐怖に包まれて身体が硬直してしまう。


「う、うわぁぁぁぁ!!」


ザイトは何とか恐怖にうち勝つ事が出来たが、残りの2人はこれまで経験したことの無い恐怖に錯乱状態になってしまう。


「落ち着け!!」


ザイトが2人に叫ぶが、一度恐怖に包まれてしまっては直ぐに立ち直ることは厳しい。


2人はただブンブンと剣をハチャメチャに振るう事しか出来ない。


「来るな、来るなぁぁぁ!!」


アイスソードのおかげが弾かれることはなく、小さな傷を数ヶ所つけることに成功していた。


「い、いける!!僕達で……」


きゃぁぁぁぁーー!!


パクッと噛まれてしまい、身体が消えた。


『ご馳走様でした~!!救護室へとご案内~!!』


「う、いや……いやだぁぁ!!」


もう1人は剣を投げ捨てて場外へと逃げようとするが……


「いぎゃぁぁ!!」


後ろから追いかけられてパックン。


『2人目もご馳走様~!さぁさぁさぁ……ドラゴンとタイマンの時間だよぉぉぉ~!!』


あっという間の出来事に、ザイトはただただ見ていることしか出来なかった。


「グルゥゥ。」


ゆっくりとスモールアースドラゴンはザイトの方へと振り向く。


ザイトの身体からカチャカチャと音が聞こえている。


恐怖によって全身が震えてしまい、鎧が音を立てていた。


「こ、怖くない、怖くない。俺は、俺ならいける!!」 


自分自身を奮い立たせて、ドラゴンキラーをスモールアースドラゴンへと斬りつける。


しかし……


ブンッ。


何かを振り抜く音。


「かはぁっっ。」


口の中の酸素が全て吐き出される。


そして衝撃と痛みが襲ってくる。


そのまま意識がブラックアウトする。


『自分自身を奮い立たせたのに現実は無情だったー!!全員救護室行きのため、残念ながらここで戦闘終了~!!』


ドラゴンやべぇな。


まじでびびった。


あんなのと戦うかもしれないのかよ。


このまま行けばロイ様が優勝かも!?


観客席に座る生徒達はザワザワとしていた。


残りはあと1チーム。


前代未聞の1年生が3戦目まで残るという快挙。


その頃貴賓室では……


「ご子息、ご息女をお連れしました!」


「久し振りだね、2人とも。」


「父上、お久しぶりです。」


「お、お久しぶりですわ?」


ヒノ魔法学園1年生特級組の双子が父親であるビリー・アブリックに呼び出されていた。


「まさか2人が代表戦落ちをするなんて思ってもいなかったが……あの3人を見ると仕方ないとも思ってしまうよ。」


「「申し訳ありません。」」


「ならば何故呼んだのかは理解してるよね?」


「えっと……」


2人はラグナの事を父が探りに来ているのは感づいていた。


しかし、ラグナの事は大事な仲間。


いくら父親とはいえ仲間のことを売るつもりは無かった。


「3人のうち2人の身元はすぐにわかったんだよ。1人はそこにいる、筋肉バカの娘のセシル。もう1人はウィリアム・ヴォーダン。ヴォーダン侯爵家のご子息だ。問題なのはもう1人。彼についてはあまり情報が無いんだよ。」


「ふん。頭でっかちが偉そうに。だが私にも教えてもらいたいな。彼について。」


現職の軍務大臣と戦略魔法大臣に迫られる双子。


「彼については僕達もあまり知っている情報が無いんです。辺境の村出身ってことと、入学前からエチゴヤのご息女のミレーヌさんと知り合いだったみたいだとしか……」


2人はエチゴヤの名前を聞くとため息を吐く。


「エチゴヤの関係者の可能性か……深入りは出来ないね。」


「あの商会には、先日の軍事行動で借りを借りたばかりだ。無碍には出来ん。」


エチゴヤの関係者の可能性と言うだけで現役の大臣2人が引き下がる。


「彼は1年生の中でどの程度なんだい?」


「実力に関して言えばぶっちぎりで学年トップです。」


「頭の方は?」


「わが国の歴史などについては少々苦手みたいです。まぁ、これは辺境に住んでいたので仕方がないかと。しかし計算などはとても早くて正確です。」


「せやなぁ、ミレーヌちゃんも何回か計算問題で負けとるからなぁ。」


「ねぇさん、言葉!」


「あっ。失礼しました。」


「……はぁ。やはり治らないんだな……その言葉使いは。しかし言い方は悪いがあの子は平民だろ?エチゴヤのご息女ならまだしも何故彼はその知識を持ってるんだ?」


2人は首を振る。


「僕達にもそれはわかりません。学園ではお互いの家を探るのは基本的にタブーとされていますから。だから詳しく聞いたことはありません。」 


「そうか、そう言えばそうだったね。学園は今改革をしている最中だったか。ならば仕方ない。もしも今後彼のことについて何かわかったら、手紙を寄越してくれるかな?」


やはり父上はラグナに興味を持ったのか……


「わかりました。何か判りましたらすぐにお手紙にてお知らせいたします。」


「ルーよ。彼は君の目からみてどうかな?」


「ラグナ君ですか?とても優しくて礼儀正しい少年ですよ。それにあの見た目ですから。本人は気が付いてませんが数名の女性達は狙ってますね。」


「では私が言わなくてもわかるね?」


ルーは父上の言葉にドキッとする。


「まさか、まさかですか?」


「あぁ。身元が判明して問題無ければ、君の候補にする可能性がある。何せ爆炎魔法使いだ。手放したくは無いね。」


テオも父上の言葉に驚く。


『まさかラグナ君が姉さんの候補に入るなんて……父上はかなり本気だな?』


「えっと……それは……あぁもう、言葉使い戻させてな。正直に言うわ。うちかてラグナ君はいい男だと思うんよ。でも敵が多すぎるねん。うちの婿候補に選びました~なんて言うてごらん?うち、まじで学園に居られなくなるよ?しかも今日のこの活躍。どんだけ更に増えるか……」


ルーは深い深いため息を吐く。


「……そんなに多いのか?」


「まずエチゴヤのミレーヌさんは確定や。エチゴヤの代表にも気安く話掛けられていたし。それに最近噂になっているのがうちの担任の先生や。あの人には逆らえん。怖いもん。」


「担任?担任とはフィオナ・パスカリーノの事だよな?だがしかしそれは無いだろう。失礼だが彼女と彼では年の差が……」


「噂や言うたでしょ?2人で歩いているのを見たと言っていた生徒達が何人かいたんや。でも今日爆炎魔法を使ったやろ?もしかしたら爆炎魔法を教えるために、2人になっていただけかもしれん。この件に関しては、うちは怖くて聞けへんからね?」


「……まぁ候補になる可能性があると言うところだけ頭に入れておいてくれ。2人ともご苦労だった。下がってよい。これからも勉学に励むのだよ。」


「「わかりました。失礼します。」」


2人は観覧席へと戻る。


「父上が来てるのは知っとったけど……まさかなぁ……」


「流石の僕もまさか候補にするなんて言うとは思って無かったよ。」


「とりあえずこの事は内緒な。まだうちは死にとうないからね。」


『いよいよ最後、最後だよ~!!』


席に戻るといよいよ最後の試合。


ラグナ達が出て来るところであった。

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