第141話

いよいよ今日は交流戦。


「頑張れよ~!」


「応援してるからね!」


「怪我には気をつけて。」


クラスの皆に見送られて魔法学園の出場選手待機部屋へ。


出場選手以外は闘技場の観客席に座るらしい。


事前に待機部屋に入室する前に、ウィリアムかセシルを先頭に入室するように頼んだ。


「普通にラグナが先頭で良くないか?」


「だって考えてみてよ。俺って平民の子供だよ?特級組って基本的に貴族の子供達が多いじゃん……先輩達と揉めるのも嫌だし、2人のどっちかに頼みたいんだよ。」


俺だとケチ付けられそうだし。


「それならウィリアムがいいわね。うちは家系的に騎士学園側ですもの。私だと何か言われるかも知れないわ。」


そう言えばお兄さん2人が騎士学園に所属してるって言われていたっけ。


「ぐっ……仕方ないか。ラグナ、貸し一つだからな。」


「大人しく借りておくよ。よろしくね。」


この様な話し合いを事前にしていた。


コンコン。


ウィリアムが入室前に部屋をノックする。


「どうぞ。」


「失礼します。1年生代表3人到着しました。」


入室後に揃って頭を下げる。


「代表戦を戦う仲間として歓迎します。私は6年生代表戦リーダーのエマ。よろしくね。」


「「「よろしくお願いします。」」」


6年生の先輩って初めてみたな。


するとエマ先輩の横にいた男性が話し掛けてきた。


「俺は6年生のソリダスだ。一つ聞きたい。1年生の入れ替え試験のハイスコアを更新したのはどいつだ?」


セシルとウィリアムが俺を見る。


「僕です。」


「お前か~。本当にすげぇな。お前に更新されるまで俺が1年生のハイスコア持ちだったんだけどな。俺が29でずっとトップだったのにお前は1年生で45だろ?そこまでぶっちぎられると悔しい思いよりも清々しい。代表戦は仲間としてよろしく頼む。」


ソリダスさんが手を伸ばしてきたので握手する。


「よろしくお願いします。」


ラグナのスコアを聞いて先輩方がザワザワし始めた。


「45って私より上なんだけど……」


「俺もだ。まじかよ、1年生に負けてるのか……」


何人かの先輩方が負けたと騒いでいる。


何か面倒なことになりそうで怖いな……


「負けてる奴は仕方ねぇだろ。魔法学園は実力勝負なんだ。1年坊主に可愛がりなんてした奴がいたら、俺が直々にそいつを可愛がってやるからな。わかったか?」


「「はいっ!!」」


さっきまでの嫌な視線が消えた。


ソリダス先輩ってちょっと怖いけど見た目によらず面倒見がいいのかも。 


突然、ガチャリと扉が開いた。


「お~いたいた。お前ら大丈夫か?」


「先輩達がやさしいので緊張がほぐれました。」


「そうか、なら良かった。手加減などするなよ。徹底的にヤれ。無様な結果なんて見せつけたらわかってるな?」


「大丈夫です。先生の期待に応えられるように全力を尽くします。」


期待してると言うと颯爽と立ち去って行った。


「今のが爆炎魔法の使い手パスカリーノ隊長……かっけぇ。」


「綺麗な人ね。」 


「でも喧嘩っ早いって聞いたぞ?どっかのクラスの担任にブチ切れて髪の毛燃やしたとか。」


「なんか聞いたことあるな。髪の毛が生えてこないからずっと帽子を被ってるとか……」


「学校ではどんな先生なんだ?」


先輩達の視線が一斉に俺達に向けられる。


「……訓練は厳しいですが、とても生徒思いで優しい先生です。」


「そう言えば授業終わりにお前等の寮の前を通ると全員が庭に座って何かやってたな。あれはなんだ?」


他人に聞かれたら教えてやれって以前言われたし……


大丈夫だよね。


「あれは全員で魔力循環法を行っていました。」


「えっ?魔力循環法ってあのひたすら魔力をぐるぐるするやつ?」


「はい。魔力を増やすには空になるまで使い切るのが1番だと聞いていたので……」


「魔力を空とかまじかよ……」


「あれ、気持ち悪いんだよな……」


「ま、毎日魔力を空にしてたのか?」


ん?


何か変かな?


セシルとウィリアムも首を傾げる。


「今もほぼ毎日空にしてますよ?ねぇ、2人とも。」


「あぁ。」


「そうね。」


……


シーンと静まり返る。


「まじかよ……あれを毎日とかヤバいだろ……」


「最初はキツいかもしれませんが……徐々に慣れていきます。」


「私達は学園入学時から始めましたけど、彼は5歳から行っていますよ?」


ギョッとした目で皆見てくる。


「やべぇな……そりゃ俺の記録も抜かれる訳だ……」


「そ、そうね……私達でもそんな無茶はして来なかったわ……」


まるで化け物を見るかのような視線を感じるんだが……


コンコン


「これより開会式を行うので集合をお願いします。」


6年生の先輩方を先頭に並んで行く。


俺達は1年生なので1番最後だ。


わぁぁぁーー!!


凄まじい歓声の中、一列になって俺達は歩いて進む。


隣の出入り口からも学生達が整列して現れた。


きゃぁぁぁーー!!


ロイ様ーー!!


女性達の歓声が凄いな。


先頭にいる銀髪の男子生徒が手を振っていた。


きゃぁぁぁーー!!


「す、凄い人気だな……」


「ラグナ……あのキャーキャー言われてるのが私の兄のロイよ……」


「まじかよ!確かに銀髪で似てるとは思ったけど……」


あのモテ男はセシルのお兄さんか。


イケメンめ……


うちの学園長ともう1人の筋肉ムキムキのおじさんが壇上にあがる。


「これよりヒノ騎士学園と。」


「ヒノ魔法学園の交流戦を始める!」


わぁぁぁーー!!


「今日は忙しい中、この国の重鎮の方々が見学に来られている。選手諸君は日頃の成果を大いに発表し、わが国の未来が明るいことを証明して頂きたい!」


わぁぁぁーー!!


「それでは今回の討伐目標はこれだ!」


2人の学園長が手に持っていたボタンを押すとルーレットが空中へと表示された。


『今日の第1目標はなんだろな~!簡単かな~。地獄かな~。それじゃあ君に決めた!』


入れ替え試験の時に聞いた声と同じ声がしゃべり始めた。


そしてルーレットが止まった。


『最初のターゲットはゴブリン3頭の討伐だよ~。それじゃお次は、ポチッと。』


再びルーレットが回り始める。


『第2回戦は君だぁぁ。』


『オーク1頭の討伐に決定~!』


『それじゃあ最後はこれだぁぁ~。』


ルーレットが激しく発光する。


『おぉ~、これはレアな予感。何が出るかな~』


ルーレットがピカピカと発光し止まる。


『これは大当たり~。激ムズだよ~。クリア出来るかなぁ?最後のターゲットはスモールアースドラゴンに決定~!頑張ってね~!!』


最後のターゲットの名前が発表されると先ほどまでの騒ぎが嘘のように静まる。


先輩達も動揺していた。


「まじかよ……ドラゴンとか俺達が倒せる相手じゃねぇだろ……」


スモールアースドラゴン?


小さい地竜ってことかな……


「ねぇ、スモールアースドラゴンって2人は知ってる?」


セシルとウィリアムは知らないと首を振るがドラゴンと言う名前に完全に萎縮してしまっていた。


騎士学園の生徒をちらっと見るがやはりうちと同じ様に動揺しているみたい。


騎士学園の学園長がゴホンと咳払いをする。


「流石に学生の身でドラゴンは厳しかろう……そうは思わんか?」


「あぁ。あれじゃあ正規の軍人でも厳しいだろう。ルーレットをやり直すか。」


2人は再びルーレットをやり直すと宣言してボタンを押す。


『再抽選~。仕方ないなぁ。今回だけだよ~。じゃあいっくよ~、第1目標はこれだぁぁ~。』


ルーレットが止まる。


『第1目標はワイルドウルフの討伐に決定~!』


『続いてルーレットスタート!!第2目標はなんだろな~。ポチッと。』


ルーレットがポチッとの声で停止する。


『第2目標はドリルホーンだよ!!飛んでくるドリルに刺さらないといいね!』


ドリルが飛んでくるって怖いだろ!!


本当にこのふざけた声の魔道具はなんなんだ。


『それじゃあ最後のルーレットスタート~。』


ルーレットが再び発光する。


『これはまたまた大当たりの予感だよ~!!』


ルーレットが光って絵柄が見えなくなった。


『パンパカパーン、学生諸君!おめでとー!!最後の対戦相手はこれに決定~!』


ドン!っと言う音と共に魔物が表示された。


『スモールアースドラゴンに決定~!もう君達は逃げれない運命なのさ!大丈夫、本物よりかは体力少なめにしておいてあげるから!』


ザワザワと選手だけでなく観客席も騒ぎ始める。


『あっ!!ちなみにもう一回再抽選のボタンなんて押したらもうこの魔道具動かなくなるからね~。バイバーイ』


なんだろう…… 


この魔道具のシリーズって意志があるんじゃなかろうか……


学園長同士が話し合いを始めた。


「仕方ない……このまま交流戦を行う!最後のドラゴンは非常に厳しい戦いとなるだろうが、全力を尽くして欲しい!」


第1目標 ワイルドウルフ


第2目標 ドリルホーン


第3目標 スモールアースドラゴン


「まずは前回優勝校である騎士学園側から戦闘を開始する!」


1番手は騎士学園6年生


2番手は魔法学園6年生


上級生から試合がスタートするらしい。


1年生の俺達は1番最後。


なんで上級生からなのか質問したら答えは簡単だった。


通常は6年生同士がトップタイムなので最後の模擬試合までに少しでも疲れがとれるようにとの配慮らしい。


俺達も試合が見える位置へと移動する。


「それではこれより交流戦を始める。試合開始!」


騎士学園と魔法学園の交流戦が今始まった。

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