第142話
『まずは君に決めた~』
突然空中に現れた光の球が前方から転がってくる。
『まるでポ○モ○じゃねーか!!なんでそのネタを知ってるんだよ!』
声に出して叫びたい気持ちをぐっと我慢する。
転がってきた光の球が激しく発光すると光が徐々に形を作っていく。
「わぉーーーん!!」
光が消えるとそこにはワイルドウルフが存在していた。
『それじゃあいっくよ~!戦闘スタート!!』
「散開!!」
騎士学園の3人はワイルドウルフを取り囲むように広がる。
「2人とも、油断するなよ!」
「「わかってる!」」
ロイ様ーー!!
頑張ってーー!!
相変わらずの大声援。
よく見るとうちの制服以外の制服を着ている生徒達が2種類。
「ねぇウィリアム、うちの制服以外の生徒は他校ってのは分かるんだけど……どっちかの制服は騎士学園ってのはわかるんだけど、もう一つは何?」
「あれか?あれはヒノ貴族学園だな。貴族の跡取りが多く在籍してる学園だ。」
「へぇ、そんな学園があることなんて知らなかったよ。」
3人はあっという間に、ワイルドウルフとの距離を縮める。
カン!
ワイルドウルフの後ろに回り込んだ騎士が、盾にむかって剣の腹を叩きつけて音を出す。
驚いたワイルドウルフが後ろを振り向いた瞬間、ロイと呼ばれている男性の身体が光る。
先程とは比べ物になら無い速度で踏み込むと剣を振り抜く。
スパッと綺麗に首が切断された。
きゃぁぁぁーー!!
ロイ様ーー!!
かっこいーーー!!
切り裂いた剣を見ると血液などは一切ついていなかった。
「瞬間的に身体強化の魔法使ってるんだね。」
「それ以外にも剣が魔道具になっていて魔力を流すと切れ味がよくなるのよ、あれ。」
「へぇ、そんな魔道具もあるんだ。そう言えば今度、魔道具屋さんに行こうと思ってたけど忘れてた。今度行かないと。」
「魔道具屋か、面白そうだな。行くときは教えてくれ。僕も行く。」
「私も行ってみたいわね。」
『試合終了~!!あっという間だったね!タイムは4分15秒!!5分切りとはやるじゃないか!お疲れ様~。そして次の子ども達よ!カモ~ン!!』
「あれ?3連戦じゃないの?」
てっきり3連戦だと思ってたけど。
「試験の年によって違うんだよ。去年は比較的簡単な魔物ばかりだったので、3連戦だったけどな。今年はあれだろ?ドラゴンがいるじゃないか……はぁ、戦いたくねぇなぁ……」
確か4年生の先輩だったかな?が疑問に答えてくれた。
毎年、戦う魔物は完全ランダムらしい。
しかもドラゴンが出て来たことなど聞いたことが無いと言っていた。
『おぉ~、来たな。新たなる挑戦者よ。それじゃあ準備はいいかな?君に決めた!!』
またさっきと同じ様にボール状の光が転がってくると発光して魔物の形へと変化していく。
「わぉーーーん!!」
あれ、絶対に初代勇者がネタとして仲間に吹き込んでるよな。
『レディー、ゴー!!』
「ファイアーウォール!!」
おっ、エマ先輩が詠唱短縮でファイアーウォールを発動させた。
現れた炎の壁はワイルドウルフをある一方向以外には逃げられないように発動されていた。
唯一の逃げ道の先にはソリダス先輩ともう1人の先輩が待ちかまえていた。
「アースボール!!」
「ウィンドボール!!」
土の塊と渦を巻く風のボールが現れると目標であるワイルドウルフへと一直線に発射。
しかしワイルドウルフは正面から飛んできた魔法をジャンプして避ける。
「流石に動きが早いな!」
「土よ、敵を打つ飛礫となれ!アースショット!」
ソリダス先輩がすぐに魔法を詠唱すると細かい石の飛礫がワイルドウルフへと飛んでいく。
「キャン!」
流石にファイアーウォールに囲まれている状態では石の飛礫を避けきることが出来なく、ジャンプして空中にいる状態で足にヒット。
足を負傷してしまい、着地に失敗する。
「今だ!アースボール!」
「ウィンドボール!」
倒れ込んだワイルドウルフへと次々と魔法を撃ち込んでいく。
『試合終了~!タイムは5分32秒~。まぁまぁ早いね!お疲れ様。次の方どうぞ~。』
……
「……あの魔道具といい試験の時の魔道具といい、絶対に意思があるよね?」
「そんな気はするが……如何せん初代勇者様が関わって作られたのだ。僕達が理解できる訳ないだろう。」
考えるのを放棄したな。
それからも順調に討伐戦は進んでいく。
『11分52秒~。もうちょっと頑張ろうね!目指せ10分切りだよ!それじゃあ第1目標討伐最後のメンバーカモ~ン!!』
いよいよ俺達の順番になった。
「作戦はどうする?」
「それなら僕にいい考えがある。ちょっと耳を貸して。」
俺が考えていた作戦を伝えるとセシルはすぐにわかったと言ってくれたが、ウィリアムだけは渋々頷いてくれた。
『作戦会議は終わったかな?それじゃあ行くよ~!いでよ、ワイルドウルフ!!』
今までと同じ様に前方から光の球が転がってくる。
そして発光するとワイルドウルフの形へと変化していった。
『3、2、1、ゴー!!』
「「アースウォール!!」」
試合開始と同時にセシルがワイルドウルフをアースウォールで四方を囲む。
それと同時にラグナもアースウォールを発動させるが発動させた場所はラグナとウィリアムがいる足下だった。
アースウォールで周囲を囲まれたワイルドウルフはすぐに助走をつけて土壁を飛び越えようとすぐさま行動に移していた。
そして助走をつけて空中へとジャンプ。
壁を飛び越えた後は自分をこんな目に合わせた人物に対して攻撃しようとジャンプ中に周囲を伺う。
そしてジャンプしている自分と、何故か同じ高さにいる2人の子どもと目が合う。
「残念でしたー。」
アースウォールを飛び越えた先には、土で作られた高台の上に2人の子どもが立っていた。
そして飛び越えてくるのを待ちかまえていた。
降り注がれる大量のファイアーボール。
ワイルドウルフは空中では身動きが取れず、大量のファイアーボールが直撃。
地面へと叩きつけられる。
さらに追い打ちにと高台からワイルドウルフがたたき落とされたアースウォールの中へと、ファイアーボールが連続して叩き込まれる。
『試合終了~!!すっご~い!タイムは3分23秒~!!ぶっちぎりのトップタイムだよ!!』
すげ~!!
良くやった!!
ラグナ達の実力を知っていた1年生の生徒達はトップタイムを叩き出したラグナ達に対して歓声をあげる。
噂でしか知らなかった他の学年の生徒達や騎士学園の生徒達は信じられない光景に呆然とする。
まじかよ……
6年生が1年生に負けるとかありえねぇ……
騎士学園の最上級生であるロイも驚いていた。
「我が家の面汚しがいつの間にかあそこまでの実力を手に入れただと……?」
「あ、兄貴……」
セシルの兄であるロイとザイトは、幼少の頃より女であるセシルが剣を取ることが気に入らなかった。
辞めるように言っても剣の訓練を続けるセシルに対して様々な嫌がらせを行ってきた。
そんなセシルが騎士学園への入学を諦めて魔法学園に入学すると決まった時は大いに喜んだ。
「不味いな……今日は父上が見に来られている……このままでは……」
「どうしますか!?流石にセシルに負けたとあっては僕達の立場が……」
「黙れ!お前に言われなくてもわかってる!」
『それじゃあ第2試合いっくよ~。次の生徒達出ておいで~』
「ザイト。セシルの仲間の身元を探っておけ、何としてもだ!」
「わ、わかりました。すぐに調べます。」
ザイトは仲間と共に観覧場所を抜け出すと情報を探りにいくのであった。
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