第134話

「お前ら、魔法使えるのか~!」


「暴発させるなよ~!」


「落ちこぼれ組、楽しませろよ~!」


「平民がーー!!」


めっちゃバカにされてるな。


しかも最後のあれはナルタのバカ息子だろ!


俺達は番号表示通りに並んでいく。


・1  特級組 ミレーヌ

 

・2  特級組 ラグナ


・3  特級組 ウィリアム


・4  特級組 ベティ


・5  特級組 クララ


・6  特級組 シャール


・7  特級組 テオ


・8  特級組 ルー


・9  特級組 セシル


・10 特級組 シーヴァ


『1年生最後の試験行くよ~。それじゃあカウントスタート!』


他のクラスからのヤジが未だにひっきりなしに飛んでくる。


コレットさんが注意してるみたいだけど全くの効果無し。


そしてカウントが動きだす。


『5 4 3 2 1 スタート!』


目の前に多数の的が表示される。


「「「ファイアーボール!」」」


詠唱短縮で発射された火の球10個は的に直撃する。


シーンとなる試験会場。


「「「ファイアーボール」」」


次々と詠唱短縮により魔法は発動し発射されていく。


そしてあっという間に撃破数は20を超えた。


先ほどまでのトップは銀組の18ポイント。


それが2分ほどで記録が塗り替えられる。


『20ポイント達成、レベル1クリアだよ!続いてレベル2スタート!』


また謎の声が喋り出すと的が上下左右に一定速度で動き始めた。


皆が詠唱短縮で発射するがなかなか当たらない。


するとラグナが無詠唱でファイアーボールを連発する。


ドン、ドン、ドン


他のメンバーも次々と無詠唱に切り替えていく。


そしてまずラグナが30ポイント達成する。


『30ポイント達成、レベル2クリアだよ!続いてレベル3スタート!』


30ポイントからはランダムで多数の的が動き始める。


次々とファイアーボールを連発。


徐々に的に当たり始める。


『残り30秒~』


その頃には全員がレベル3まで進んでいた。


だが流石に魔力切れが近いのか、ラグナ以外は無詠唱から詠唱短縮に切り替えていた。


『5、4、3、2、1 終了ーー!!』


流石に疲れたのか全員がその場に座り込む。


『試験の結果、ランキングはこうなったよ!』


1  特級組  ラグナ    45ポイント


2  特級組  ミレーヌ   38ポイント

 

3  特級組  ウィリアム  37ポイント


3  特級組  セシル    37ポイント


5  特級組  テオ     35ポイント


5  特級組  ルー     35ポイント


5  特級組  ベティ    35ポイント


8  特級組  クララ    33ポイント


8  特級組  シャール   33ポイント


8  特級組  シーヴァ   33ポイント


11  銀組  オムロ    18ポイント


12  銀組  …………


………  ……




学園長やフィオナ以外の教員や生徒達はこんな結果になるなんて誰も想像してなかった。


誰もが目の前の現実を受け入れる事が出来なかった。


1年生の生徒が詠唱短縮を使うことすら前例が無い。


無詠唱まで生徒全員が使えるようになるなんて聞いたことがない。


「ふ、不正だ!」


「何かスコアを弄ったはずだ!」


「違反な魔道具を持ってるはずだ!」


「探せーー!!」


教員や生徒達がこの結果に不正だと騒ぎ始める。


流石のラグナもムッとしており眉にシワがよる。


「こんな結果認められるか!」


銀組の担任が人一倍騒いでいる。


二日酔いでダウンしているフィオナの近くで。


「不正だ!探せ!」


「……うるさい。」


「探すんだ、何か持ってるはずだ!」


騒ぐ銀組の担任の後ろで二日酔いによりダウンしていたはずのフィオナ先生がのっそりと立ち上がった。


「「あっ……」」


俺達は直ぐ危険を察知して離れる。


「何か持ってるな!?こいつら逃げようとしてるぞ!」


またも騒ぐ銀組の担任……


そして……


「捕まえろ!つかま、えっ?ムゴッ!!」


ふらふらと立ち上がったフィオナ先生は騒ぐ教員の肩を掴むと自分の方向に振り向かせる。


そして口元を抑えるようにアイアンクローで鷲掴みにすると、そのまま持ち上げる。


「おぃ、何回私にうるさいと言わせれば気が済むんだ?なぁ、お前私を舐めてるのか?」


騒いでいたはずの生徒や教員が再び静まり返る。


そして口元を押さえるように持ち上げられた銀組の担任は、バタバタと手足を暴れさせてもがいている。


「黙れと言ってるだろうが……」


アイアンクローしてない方の左手に炎を纏わせると、銀組の担任の残りわずかな頭頂部へとゆっくり移動させる。


「フゴォー!フゴォー!!」


炎が視界から消えて頭頂部が徐々に熱せられていくのがわかるのか激しく何かを叫ぼうとしている。


そしてチリチリと言う音が聞こえてきた。


「フゴォ!フゴォー!!」


バタバタと激しく抵抗する。


「死ねや髪の毛!焼き畑だ!!」


一気に炎を頭頂部へとぶつけて髪の毛だけを丁寧に焼き尽くす。


そして……


「ふん!!」


そのまま訓練所の方へと投げ捨てる。


ゴロゴロと激しく転がったおかげで炎は鎮火。


フィオナ先生はまた椅子に座ると気怠そうにぐだーっとなっていた。


直ぐに救護班が駆けつけると銀組の担任が運ばれていく。


はぁぁぁっと深いため息を吐きながら学園長が壇上にあがる。


「1年生の生徒諸君、お疲れ様。先ほど何人かが不正だなんだと騒いでいたな。すぐに特級組の生徒達を調べたが何も持ってはいなかった。意味はわかるな?あれが実力なのだ。不正だなんだと騒ぐ時間があれば自らを鍛えよ!これでいいと慢心するな!絶対に特級組になるんだと食らいつけ!君たちはまだ若い!厳しい訓練は、将来絶対に報われる!特級組の生徒達は、君達が学園の内外でバカにして見下していた時も全て訓練していた!学園が終わった後も自主的に集まり寝る前まで訓練してきたんだ。遊びにも行かず、ダラダラもせずにだぞ。それを学年トップである特級組が行って来たのだ。君達にそこまでして強くなる覚悟はあるのか!!」


まさか学年トップの組がそこまでしているとは思ってもいなかった生徒達は動揺する。


自分たちは休みの日に何をしていたのか思い出す。


「おまえ達が半年後に見違えるように成長してくれることを俺は祈っている。それではこれにて試験を終了する!解散!」


すかさずコレットさんが壇上にあがり引っ越しをする生徒達への説明が始まった。


俺達は疲れた身体にムチをいれてフィオナ先生の元へと向かう。


「先生、ありがとうございました。俺達全員このクラスに生き残ることが出来ました。」


「……あぁ、おめでとー。良くやったな。」


フィオナ先生の顔色は真っ青だ。


「これからもご指導よろしくお願いします。」


先生はふらふらっと立ち上がるとラグナの肩を叩く。


そして………


「オロオロ!!」


ラグナの肩を支えに激しく嘔吐した。

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