第135話
嘔吐した先生を救護班の人に預けて俺達は寮に戻った。
先生がリバースしたモノを若干被弾してしまったので軽くシャワーを浴びて着替えてから皆の元へ。
「なんとか全員残れたね。」
まぁ俺達と銀組でだいぶ差が出てたけどね。
「改めて、私たちの担任がフィオナ先生で良かったと思いましたわ。」
「せやねぇ。正直フィオナ先生じゃなかったら今回のテストで何人かは入れ替えがあったやろな。」
「……銀組の担任だったら無理だった。」
「「確かに。」」
フィオナ先生の逆鱗に触れた銀組の担任は髪の毛を焼き畑されてしまった。
まぁ普段からバカにしたり見下したりウザい絡みをしていたから自業自得だと思う。
「それにしてもフィオナ先生があんなにも二日酔いになるまでお酒飲んでどうしたんだろ?」
確かにあそこまで二日酔いになる姿は見たことがない。
「昨日の授業中にお客さんが来たからって自習になったけどそれに関係してるのかな?」
「わからん。ただ普通では無かったな。」
考えてもわからない。
「休憩中失礼します。本日の夕食は学園長がこの寮にて皆様と共に食事をとると連絡が入りました。」
「また学園長か。」
「じゃあ学園長の隣はラグナで決定だな。」
「なんでだよ!シャールでもいいじゃないか。」
「やだよ。怖いし。前回もラグナだったんだからいいじゃないか。」
皆もうんうんと頷くんじゃない。
仕方なく前回と同じ様な席順で座ることになった。
そして18時のチャイムがなる前に学園長が特級組の寮にやってきた。
「みんな揃ってるな。まぁ座ってくれ。」
みんなが座ったのを確認すると学園長がミーシャさんに合図した。
「半年間、他のクラスからの嫌がらせに耐え続けて良くやったな!よく全員残ってくれた。これは俺からのプレゼントだ。」
学園長が手を叩くと巨大な獣の丸焼きが運ばれてきた。
「あっ!ワイルドボアだ!」
久々に見たなぁ。
ワイルドボアの丸焼きだ!
「ラグナが言った通り、コイツはワイルドボアと呼ばれている魔物だ。エチゴヤ商会に頼んでとある村から氷魔法で凍らせて持ってきてもらった。」
「デカいな。」
「こんなんが走ってくるんやろ。ヤバすぎやん。」
「恐いねぇ。」
「……コクコク。」
「怖いもなんもラグナはすでにこいつの討伐経験あるぞ。」
うそっ?って驚いた顔をして皆が見てくる。
「去年の話だけど、父さんに初めて狩りに連れて行って貰ったんだ。もちろん普段は魔物が居ない森にね。でもそのあといろいろあってワイルドボアに襲われたんだ。2頭いたウチの1頭は父さんの方に。もう1頭は僕の方に走って来たんだよ。その時は本当に死ぬかと思ったし。上手い具合に剣が頭に刺さってくれて倒せたんだ。」
ラグナの話を聞いてクラスメイトは血の気が下がる思いをする。
「もしも私がコイツと出会っていたら死んでるな。こんなデカいのが走ってくるんだぞ。」
「セシルでも怖いと思うんだね。私なんてきっとすぐに食べられちゃうよ。」
「たまたまで討伐出来ちゃうんだもんなぁ、ラグナ君は。」
「そう言えばワイルドボアを貰えるのは僕達だけなんですか?」
学園長が笑いながら首を振る。
「流石にそこまでのえこひいきは出来ないぞ。3日後には2年生の試験、6日後には3年生の試験と各学年日にちをズラして試験をするんだが、入れ替えが無かった特級組は試験当日、入れ替えがあった特級組は3日間の休日の最終日の夕食にワイルドボアが提供されるようにしているぞ。」
ってことは6体ものワイルドボアが次々と運ばれてくるのか。
「学園長、ワイルドボアをとある村から仕入れているとのことですが……魔の森の近くに村が作られたと父より聞いたことがあります。もしや、これはそこで狩られた魔物でしょうか?」
うん?
なんかうちの村と似てるな。
「えっ?あれって本当に存在する村なの?」
「……父様は、見栄でそう言ってるだけだろうって懐疑的だった。」
「うちの父も笑っていたな。そんな危険な場所で生活なんて出来るわけが無いと。」
「お前ら、何を言ってるんだ?実際にその村出身の子供が同じクラスに居るというのに。」
またまた一斉に俺の方に顔を向ける。
ってミレーヌさんは知ってるでしょうが!
「ってことはやっぱりこれはうちの村で狩られた魔物ってことですよね。そういえばここ数年、秋ぐらいになると父さん達が忙しそうにしてたのは学園から注文されてたからなのか。」
2年か3年くらい前かな?
秋になるとワイルドボアを連続で仕留めては運んでくるようになってたのは学園からの発注だったのか。
「あぁ。俺が学園長になってから始めたことだからな。せっかく特級組になっても褒美が無いのは可哀想だろう?」
まぁ無いよりかはあった方が嬉しいけど。
「それよりも飯だ。温かいうちに食べよう!」
食事と共にワイルドボアのお肉が切られて運ばれてくる。
久々にワイルドボアの肉にかぶりつく。
パリパリに焼き目が付いておりかぶりついた瞬間パリッとした食感と共に肉汁がジュワーっと口の中に広がる。
「おいしーー!!」
俺が美味しいって言う前にシーヴァが一番手で叫んでいた。
「これは、肉汁が凄いな。」
「美味しい、美味しいね!」
次々とお肉のおかわりが進んでいく。
「もうお腹いっぱい……」
流石に食べ過ぎた。
他の仲間もお腹が苦しいのかひぃひぃと息をしている。
珍しくミレーヌさんまで苦しそうだ。
「まだ……まだ食べるんだ……こんな機会無いかもしれない……」
シーヴァだけは未だに食いついている。
まだワイルドボアの半分以上のお肉が残っている。
「これから数日はいろいろな調理をしていくので無理に食べなくても大丈夫ですよ。」
シーヴァ専属のメイドさんの一言により食事が終了した。
「何度食ってもワイルドボアは美味いな。」
学園長も満足したのかお腹をたたいている。
「それにしてもまさか1年生で無詠唱を覚えるなんてな。前代未聞だぞ。正直な所、今回のこのスコアなら3年生の中間試験でも余裕で特級組に入れるな。ラグナに至っては4年生でも通じるな。後は狙いさえ上手くなればもっとスコアが上がるだろう。」
確かに動く的になってからはなかなか当たらなかった。
数打ちゃ当たるって感じだったからな。
「的が動くだけで全然当たらないもんね。」
「……当たらなくて焦った。」
「上級生はあれを的確に当てるのか。」
「いや?上級生達は範囲魔法で一網打尽にしているな。その分魔力切れになるのも早いが。」
そっか。
いちいち狙わなくてもいいのか。
「まだまだ覚えることはいっぱいだね。」
「だな。」
「そう言えば学園長、一つ質問があります。」
「おぅ。なんだ?」
「フィオナ先生が二日酔いになるまで前日にお酒を飲んだことなんて今まで無かったんですけど……何か知ってますか?」
あーっと言いながら学園長が頭をかく。
「あれはなぁ……なんて言ったらいいか……」
うーんと唸っている。
「まぁ今はそっとしておいてやってくれ。詳しいことは言えないが、昔馴染みが亡くなったとだけ教えておく。詳しくはあいつが話したくなったら本人から聞いてやってくれ。」
そうだったのか……
それは辛いよな。
「それよりもおまえ達にはもう一つの褒美をやろう。これから3日間の休日のうち1日だけ学園の外に出れる外出許可証だ。」
懐から外出許可証と書かれたカードを取り出すと俺達に配られた。
「もちろん問題を起こした場合は普段より厳しいペナルティーがあるけどな。問題を起こすなよ?」
「「はい!!」」
「ならばよろしい。それじゃあ俺は戻る。改めてよくやってくれた。」
そう言うと学園長は寮から立ち去っていった。
「どうしようか?皆で出掛ける?」
「確かにその方がいいかもな。個人で動くよりはリスクが少ないだろう。」
「賛成ーー!!」
その後、話し合いを行い2日目の休日に出掛けることが決まった。
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