第127話

「冗談でこっちにも出してよって言ったのに。なんでほれなんて軽い感じで出してるの!」


もう一個ライトの魔法か、はいよって感じで返事をしながら魔力を込めたら無詠唱でライトの魔法が発動してしまった……


「ラグナ、しかもお前今多重発動してるんだぞ?」


知ってる。起動した直後から魔力の制御が大変。


話をするのもキツいくらい。


すぐに魔法を止める。


「あぁ、びっくりした。無意識に出来るとは思わなかった。」


本当にびっくりして今になって心臓がドキドキしてる。


出来た嬉しさよりも驚きの方が勝っている。


「何がびっくりしたや。驚いたのはウチらや!何簡単に出来てんねん!しかも多重発動まで!」


「多重発動だって本当にたまたまだよ。しかも発動して初めて気がついた。多重発動は本当にヤバい。魔力制御が全然うまくいかない。気を抜くとすぐに暴発しそうになった。」


「……ラグナ君、無詠唱どうやったの?」


「どうやったって言われても……もう一個って言われたから返事をしながらほいって魔力を流したら出ちゃっただけで……」


自分でも何で出たのかよくわからない。


皆にもう1回やってみてと言われたのでチャレンジしてみたけど普通に暴発した。


その後もチャレンジするけど暴発の連続。


「何でさっきは出来たんだ……」


「本当にたまたま出来たんかいな。」


何でさっきは出たのに今度はうまく行かないんだ。


「……私がライトの魔法を出すからもう1度チャレンジしてみて。」


「ベティー、魔力は大丈夫なの?」


こくりと頷く。


「……ライト」


ベティーがライトの魔法を発動させた。


俺はそれを見ながら魔力を流してもう一個隣にと意識する。


するとすぐに変化が現れた。


ベティーが発動したライトの隣に俺が発動させたライトが現れた。


「出来た……」


ベティーはすぐに魔法を止める。


「やっぱり無詠唱はイメージが大事なのかも。」


「ですわね。その可能性が大きい気がします。」


「明日、先生に聞いてみましょ。」


今日は解散となり皆それぞれの部屋に散っていく。


俺はどうしようかな。


まだまだ魔力に余裕があるし……


椅子に座ったまま悩んでいると、ミーシャさんがいつの間にか隣に来ており紅茶を入れてくれた。


どうぞと言われたのでカップを手に取り香りを楽しむ。


「物凄くいい香り。新しいのが手に入ったの?」


「新しく入荷した新作らしいです。どうでしょうか?」


一口飲む。


「これ美味しい。苦味が少し控えめですっきりして飲みやすいよ。ありがとう。あっ、そうだ。ミーシャさん、牛乳ってあったっけ?」


「牛乳ですか?冷やした状態のものならありますけど……」


この茶葉なら合いそうだ。


「牛乳を人肌くらいに温めてもらえますか?」


ミーシャさんにお願いして牛乳を温めてもらう。


「お待たせしました。」


「そうしたら何時もよりちょっと濃いめで紅茶を入れてもらえます?」


何時もより濃いめで紅茶を入れてもらう。


カップの半分より上くらいで止めて砂糖を溶かした後に人肌くらいの温度の牛乳を注ぐ。


いい香りが広がっていく。


一口飲む。


『懐かしいなぁ。甘くて飲みやすいミルクティーだ。キャンプでいつかやろうと思って作り方勉強しておいて良かった。これならロイヤルミルクティーも作れそう。』


視線を感じたので振り向くとミーシャさんがじっと俺を見つめていた。


「ミーシャさんも飲んでみます?」


ついつい今口をつけたばかりのカップを手渡してしまった。


でもミーシャさんは気にすること無くそのまま口をつけてミルクティーを一口飲んだ。


あっ……間接……


意識してしまったので急激に顔が赤面する。


ミーシャさんはごくごくと紅茶を飲み干した。


「ラグナ様、これは……」


ヤバい気がつかれたかな。


怒られる前に謝ろう。


「ミーシャさん、ごめん!つい僕が口をつけたカップを渡しちゃって!」


「い、いえ……それは私も気がつかなく……」


あれ?ミーシャさん、気がついてなかったの?


「わ、私は気にしてませんので大丈夫です。」


ほのかにミーシャも顔が赤くなってる気がする。


「そ、それよりも……この様な紅茶の楽しみ方があるなんて私は知りませんでした。」


えっ……?


ミルクティーって無いの!?


「そ、そうなんですか?」


「メイドギルドでは教わりませんでしたし、長年メイドとして働いて来ましたがこの様な楽しみ方は初めてです。」


まさかミルクティーも広まってないのか!?


「そ、そうだったんですか。楽しんで貰えたようで何よりです。」


「こちらはラグナ様が考案なされたのですか?レシピ登録などされているのでしょうか?」


考案というか前世の世界であったと言うか……


それにレシピ?


「い、いや。まだ登録はしてませんよ。」


ミーシャさんがずぃっと顔を近寄せてくる。


「でしたらこちらは登録した方がよろしいと思います。これは絶対に流行ります。」


すっと顔が離れていく。


「そうかな……でも僕は1年生だから学園を出れないよ?」


「私にお任せ下さい。」


笑顔に迫力があるな。


「ならミーシャさんに任せます。」


そう言うとテキパキと後片付けをして失礼しますと立ち去って行った。


また1人ポツンとしてしまったので部屋に戻り夕食の時間まで魔力循環法の鍛練を行った。


夕食の時間にはミーシャさんは寮に戻っていた。


そして寝る前の時間にミーシャさんが部屋に入ってきた。


「ラグナ様、明日は半日授業ですが午後に予定などはありますでしょうか?」


「いや、特に予定は無いけど……」


「では明日の昼食後に王都の商業ギルドへと向かいませんか?特例として外出許可の申請が通りましたので。」


特例?


「あの、特例とは?」


「コレットさんに相談した所、学園長まで話を通して頂きまして。ラグナ様の場合は特例として認められました。神殿からもラグナ様が外出許可を求めた場合は許可をして欲しいと通達が来ていたようです。」


明日は午前中授業を受けた後午後から商業ギルドへと行くことが決まった。


ちょっと話したいこともあるしマリオン様と会えるといいんだけど。

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