第128話

翌日の授業が始まった。


「今日は午前中だが、昨日と同じ様にまた無詠唱の練習をやるぞ。」


「先生、その前に話があるんよ。」


「ん?どうした?」


「昨日も授業が終わった後、寮の中で休憩しながら言葉を話す話さないでなんでこんなにも発動が難しいのか話し合ってたんよ。」


「ほぉ、いい心掛けじゃないか。」


「そんでな、魔法のイメージが大事なんじゃないかって話しになってラグナ君にライトの魔法を出しっぱなしにしてずっと皆で観察しててな。」


「まぁ無詠唱は確かにイメージが大事ではあるな。間違ってはいないぞ。」


「そん時にな皆で観察するにはライトの魔法一個だと見にくいから冗談でもう一個だしてってラグナ君に言うたんよ。そしたらな、ほいって軽い感じで魔法をもう一個『無詠唱で多重発動』しよったんよ。」


ルーが昨日のことを先生にチクっていた。


ジトーっとした目で見てくる先生。


「いや、本当にたまたま出来ちゃったんですよ……」


「私だって師匠から教わった時はもう少し時間が掛かったのにお前って奴は……さらに多重発動か。私の指導必要か?」


「必要ですよ!無詠唱だってまだまだ確実に発動するわけじゃないですし、多重発動なんてあんなキツいのを維持しろなんて無理ですよ!」


「当たり前だろ。その歳で多重発動なんてやったやつ初めて見たわ!」


こんな感じで今日も無詠唱の訓練が始まった。


そして午前授業が終わった後、昼食を食べて午後からは久々に学園の外へ。


皆から午後の訓練を誘われたけど、ちょっと用事があると断りを入れた。


そして今ミーシャさんと共に学園の出入り口へ。


「なんか4ヶ月ぶりに外に出れると思うと少しワクワクします。」


「私とははぐれないようにして下さいね。」


守衛の人に許可証を見せると久々の学園の外へと出ることが出来た。


「ラグナ君!」


学園を出てすぐに声を掛けられたのでそっちを見ると懐かしい2人が学園の前にいた。


「あっ!お久しぶりです。どうしたんですか?学園の前で。」


学園の前にいたのは王都まで一緒に護衛で来てくれた神殿騎士の2人。


「かの方よりラグナ君を迎えに行くようにと昨夜指示があって今日学園から出てくる君を迎えに待っていたんだ。」


かの方?


マリオン様かな。


「ラグナ様、この方々は?」


あっ、そうか。ミーシャさんは知らないのか。


「このお二方は、僕が王都に行くときに護衛をして下さった神殿騎士の方々です。」


この2人の名前って……聞いた記憶ないや。


「初めまして。ヒノ魔法学園でラグナ様専属メイドをしておりますミーシャです。」


ミーシャさんがぺこりと頭を下げると2人とも顔を真っ赤にして見とれていた。


そうだよね。


その気持ちわかるよ。


顔を真っ赤にしたままの2人に案内され馬車へと乗り込む。


そして商業ギルドの裏手に馬車が止まると裏口から商業ギルドにある個室まで案内される。


しばらく座っていると扉がノックされて現れたのは商業ギルド統括ギルド長のアムルさんとブリットさん。それに見たことがない女性が1人だった。


「久し振りだな。少し背が伸びたんじゃないか?」


「アムルさん、お久しぶりです。もっと大きくなるといいんですけどね。それで今日は皆さんどうしたんですか?」


「今日ラグナ君が神殿に来ると言われてね。たまたま王都に居たから会いに来たって訳さ。ミレーヌちゃんは元気かい?」


ブリットさんは相変わらず娘のミレーヌさんが大好きなんだね。


「ミレーヌさんは元気ですよ。皆をまとめるクラスの中心的存在になっていますよ!」


「それはよかった!屋敷にはミレーヌちゃんもサイも居なくてね……流石の私も寂しい気持ちになるわけさ……」


ん?


サイさんもいない?


「サイさんはどうしたんですか?」


「サイは今ナルタ支店でいろいろと引き継ぎをしてるんだ。アオバ村とのやり取りもうちの従業員と入れ替わったりもしないといけないからね。それが全て済んだらサイには王都で私の仕事を手伝ってもらうことになるんだ。」


つまりはサイさんはブリットさんの跡取りとして認められたんだ。


もううちの村には来ないんだと思うと少し寂しい気持ちもあるけど。


まぁ村に居るときはサイさんとの関わりなんて全く無かったんだけどね……


「次は私の番でよろしいでしょうか?使徒様、お初にお目にかかります。商業ギルド神殿ヒノハバラ国統括をしております司教のタチアナです。本日出会うことが出来てとても光栄に思います。」


司教ってことはマホッテト司祭よりも上の方か。


「タチアナさん、初めまして。よろしくお願いします。僕にその様な言葉遣いは必要ないですよ。それに使徒様ってのもちょっと気が引けるといいますか……」


普通にそれは出来ませんとタチアナさんに言われてしまった。


「そういや学園の1年生は学園内から出れないはずなのによく出てこれたな。」


「ちょっと商業ギルドに用事が出来たというか何というか……」


「うちにか?どうした?」


うーん皆がいる前だけど偉い人達だけだからいいのかな。


「新しいレシピを思いついたので登録にと。」


ちょっとざわざわする皆。


「そうしたら私達は一度退出した方がいいね。」


ブリットさん達が退出しようとするけど引き止める。


「本当に簡単なものですし、これで登録されるのかと疑問がありまして……こちらにいる学園での僕専属メイドのミーシャさんには登録を勧められてはいるのですが……アムルさん、紅茶の茶葉と牛乳ってすぐに手に入りますか?」


「紅茶の茶葉と牛乳ならギルド併設の食堂にあると思うぞ?いるか?」


「出来れば用意して欲しいです。ミーシャさん作って貰えますか?」


アムルさんに紅茶の茶葉と牛乳を用意してもらった後はミーシャさんにミルクティーを作ってもらう。


「これがミルクティーです。皆さんどうぞ。」


普段飲んでいる紅茶とは違う色、香りに驚きながらも恐る恐る口をつけていく。


「うまいな。」


「ミルクと紅茶がこんなにも合うなんて。」


「これは甘くて飲みやすい。」


手応えは良さげ。


「どうでしょう?」


「登録は出来るだろうが……商売としてはどうだろう……」


ブリットさんの言う通り。


紅茶って家でも飲むからな。


「うちでレシピ登録とメイドギルドに話を持って行こう。もしかしたらメイドギルドがレシピを欲しがるかもしれん。レシピについてはとりあえず非公表にしておく。」


アムルさんの言う通りに登録することになった。


書類を書いた後はタチアナさんに連れられて神殿へと向かうことに。

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