第122話

ヒノ魔法学園に入学してから2ヶ月が経過した。


俺達、特級組はこの2ヶ月ひたすら基礎練習のみを磨いてきた。


時折、他のクラスでは『こんな魔法を教わった!』とか『今日は新しい魔法を発動出来た!』とかわざと俺達に聞こえるように話されることが増えてきた。


特級組の癖に未だに基礎なんかやってるのかよと陰口も増えた。


だが俺達にはどうすることも出来ない。


フィオナ先生がそう指示してるからだ。


ひたすら2ヶ月間、魔力の発動や操作の基礎練習のみ。


授業が終わった後は皆で集まって特級寮の庭に座り込んでひたすら魔力循環法を行っている。


何故皆で庭に集まってやっているのか。


理由は簡単。


外に出掛けると他の組から絡まれることが増えたからだ。


最近は買い物などがあれば各自の担当メイドさん達に頼んでいるくらい。


ある意味引きこもり状態だ。


外へと出歩くと


『特級組のクセに未だに基礎しか教わっていないのかよ。』


とよくバカにされたりする。


『特級組じゃなくて実は落ちこぼれ組なんじゃないのか?』


という罵声を受けたりもする。


でも俺達には反抗することすら許されない。


フィオナ先生には『言いたい奴には言わせておけ。シカトだシカト。』と言われているからだ。


一度だけシャールが我慢出来ずに他のクラスと揉めてしまった。


結果、せっかく治ってきていた前髪+頭頂部をチリチリにされる刑が翌日執行された。


そんな奴らと絡む暇があるならひたすら訓練していろとありがたいお言葉を先生から頂いた。


「ふぅ、とりあえずこんなもんかな。」


今日も皆との自主トレが終了した。


視線を感じるので周りを見渡すとクラスメイト皆から見られていた。


「相変わらず馬鹿げた魔力してるな。もう皆とっくに限界で休んでるぞ。」


なんだ。だから皆見てきてたのか。


「そりゃこちとら5歳から訓練してるからね。そう簡単に追い付かれる訳にはいかないよ。でもウィリアムも最初に比べたらかなり訓練時間伸びたんじゃない?」


「あぁ。それは確かに実感出来るな。僕だけじゃなく皆も魔力量は増えてると思う。まぁ先生から魔法の発動は禁止されてるから具体的にどの程度増えたのかはわからんが。」


俺達は現在、魔法を発動すること自体禁止されている。


許可されているのは魔力の発動と操作だけ。


手に魔力を集めて球にする。


それを反対側にも。


「2ヶ月間ずっと魔力操作とかしてたからこういうのは簡単に出来るようになったんだけどねぇ。」


両手以外にも両足の指先にも魔力を集めて球を作り出す。


そして頭上にも。


「なんや、ラグナ君はもうそこまで出来るんかいな。」


「悔しい。まだそこまで出来ない。」


「……両手がやっと。」


「私もですわ。」


この2ヶ月間。


特級組の皆とずっと一緒に練習しているので皆それぞれ打ち解けて仲良くなっていた。


シャールは相変わらず、僕のことが気に入らないみたいだけど……


でも最初に比べたら話し掛けてくるようにはなってきた。


「それにしてもいつになったら魔法を使わせてくれるんだろう。」


「試しにラグナが使ってみろよ。」


「やだよ、シャール。君みたいにはなりたくないもん。」


「君みたいって言うな!」


「まぁ、シャール君落ち着きなよ。ラグナも煽ったら駄目だよ。」


俺とシャールが言い合いになる前に最近ではテオが止めてくれるようになった。


ちらっと時計を見るとそろそろ夕食の時間だ。


「あと1時間で夕食の時間だ!ご飯の前にシャワー浴びて来なきゃ。セシルちゃん行こう!」


「わかったわ。行きましょう。」


最初はオドオドしていたシーヴァだが今では普通に話せるようになっていた。


しかも意外なことにシーヴァと一番仲がいいのがセシル。


最初は気が強い女の子だなぁって思っていたけど……


どうやらそれは家の教育によるものだったらしい。


なんでも親が軍人らしく厳しい躾だったそうな。


「ウチもさっぱりとしようかな~。」


「私も。今日は新しいシャンプーを買いましたの。」


「あっ。もしかしてエチゴヤの新作?」


女性陣はワイワイ騒ぎながら部屋へと戻っていく。


「僕達も戻ってシャワーだね。」


男性陣も各自の部屋に戻りシャワーを浴びる。


そして次の日。


今日も先生の前で基礎練習。


全員が安定して両手に魔力の球を発生させたまま30分維持する。


「おーし、止めにしていいぞ~。皆安定して維持できるようになったな。」


なんだか何時もと違うな。


「まずはこの2ヶ月、基礎練習のみを叩き込んできたがよく我慢したな。よくやった。」


先生に褒められるとは。


「各自、入学直後の鑑定結果は憶えているか?」


シーヴァが鑑定魔法を使えるので先生はクラスメイトを片っ端から鑑定させていた。



入学初期鑑定結果


ラグナ


LV不明 ※※※※の加護 マリオンの加護 以下不明


シャール


LV5 初級風魔法


ウィリアム


LV6 初級光魔法


テオ


LV7 協力魔法 初級土魔法


ミレーヌ


LV9 審問鑑定魔法 初級闇魔法


ルー


LV7 協力魔法 初級土魔法


セシル


LV7 初級風魔法

 

ベティー・シュタール


LV7 初級闇魔法 初級召喚魔法


クララ・ルーカン


LV7 初級土魔法


シーヴァ


LV5 鑑定魔眼 初級光魔法



「とりあえずシーヴァ、自分を鑑定して見ろ。」


「わ、私からですか?」


「なんだ?久々過ぎて魔眼の使い方なんて忘れたか?」


「い、いえ。大丈夫だと思います。」


そういうとシーヴァは魔眼を発動して自分の手を見つめる。


すると何かに驚いたのか目を見開いていた。


「先生、これは……」


「正直に見えたことを教えてあげな。」


「わかりました……シーヴァ LV11 鑑定魔眼 初級光魔法 魔力操作 魔力効率アップ 以上です。」


「よし、きた!よく頑張ったなシーヴァ!どうだ?久々に魔眼を使った感想は。」


「自分でも驚くほど疲れてません。たぶんこの調子なら全員を鑑定出来ると思います。」


その言葉にクラスメイト全員が驚く。


入学時は頑張っても鑑定は2人で限界だった。


それがたった2ヶ月。


2ヶ月基礎訓練を毎日続けただけでこの変化。


『まじかよ。毎日基礎訓練続けただけでこんなにも変わるのか?』


「それじゃあシーヴァ、全員鑑定出来そうなら頼むわ。」


「わかりました。やってみます。」


それからシーヴァは次々とクラスメイトを鑑定していく。


入学2ヶ月後の鑑定結果は以下の通り。



ラグナ


LV不明 ※※※※の加護 マリオンの加護 以下不明


シャール


LV11 初級風魔法 魔力操作 魔力効率アップ


ウィリアム


LV13 初級光魔法 魔力操作 魔力効率アップ


テオ


LV12 協力魔法 初級土魔法 魔力操作 魔力効率アップ


ミレーヌ


LV14 審問鑑定魔法 初級闇魔法 魔力操作 魔力効率アップ


ルー


LV12 協力魔法 初級土魔法 魔力操作 魔力効率アップ


セシル


LV11 初級風魔法 魔力操作 魔力効率アップ

 

ベティー・シュタール


LV12 初級闇魔法 初級召喚魔法 魔力操作 魔力効率アップ


クララ・ルーカン


LV12 初級土魔法 魔力操作 魔力効率アップ


シーヴァ


LV11 鑑定魔眼 初級光魔法 魔力操作 魔力効率アップ


「よし、よし。ラグナ以外は魔力操作と魔力効率アップを覚えたな。本当によく我慢したな。」


フィオナ先生が笑顔で皆を褒めている。


「僕だけがわからねぇ……」


相変わらず俺だけは鑑定結果が不明のままだった。


まぁ確かにスパイス召喚やらなんやらが表示される訳にはいかないから仕方ないんだけどね……


それにきっと表示されないようにしてくれたのは創造神様だと思うけど……

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