第102話

『起きて、ラグナ!!』


急に頭の中にサリオラの大声が響き目が覚める。


『な、何?』


目を開くが部屋は真っ暗。


窓から星の光が見える。


『すぐに起きて!襲撃が来るわよ!』


『ん?サリオラ?襲撃?えっ?この屋敷に?』


ベッドから急いで飛び降りる。


そして周囲を観察する。


襲撃の定番と言えば屋根裏からだけど…… 


『違う!そっちじゃない!窓!』


窓?


『もう来る!』


窓に目を向けた時には既に人影が見えていた。


ガシャーン!


盛大に窓が破壊され、全身黒ずくめの人間が部屋に侵入してきていた。


「たまたまか?寝ていると思っていたんだがな。まぁいい。死ね!」


部屋に侵入してきた人間が突然、ナイフを手に迫ってきた。


「くっ!いきなり!」


かろうじて屈んでナイフを避ける。


部屋が暗くてもなんでコイツはこんなに動けるんだ!


「これを避けるか。だがこれならどうだ!」


次々とナイフを繰り出してくるがラグナは狭い室内でもなんとか逃げ続けることが出来た。


『父さん達に比べたら動きが遅い!でも避けるので精一杯だ!』


繰り出されるナイフを避け続け、そばにあった椅子を全力で蹴り飛ばす。


「くっ!子供だからと侮ったか。動きを封じよ。バインド!」


襲撃者が突然魔法の詠唱をするとラグナの足下が一瞬輝き地面から黒い紐が現れた。


「な、なんだこれ!」


足下に突然現れた黒い紐に驚き避けようと飛び上がるものの片足をその紐に拘束されてラグナは転んでしまう。


「いたっ!」


「時間が無いな。では死ね!」


星の灯りしかない暗闇の中、襲撃者はラグナに向かって走り出す。


『ヤバい!殺される!っ!あれなら!』


襲撃者があと数歩でラグナの元へとたどり着くという所で突然目の前が真っ白になる。


そしてすぐに異変はやってきた。


今まで経験したことがない目の痛み。


「ぐあっ!目が!目が焼ける!」


あまりにも明るい光を直視してしまい、目の痛みに転げ回る襲撃者。


「ふぅ、さっそく活躍したな。」


襲撃者がラグナへとたどり着く瞬間にLEDランタンを発動させた。


襲撃者は夜目になれている状態でLEDの激しい明るさを近距離で見てしまったことにより、一時的に視力を失う。


そして、あまりにも明るい光を直視したことによる目の痛みでナイフを手放してしまい地面に転がりこみもがき苦しんでいた。


襲撃者が発動した魔法が無くなっていることに気がついたラグナはランタンを弱にすると全力で蹴りを放つ。


「ぐはっ!!」


既に大人顔負けの力を手にしているラグナの蹴りは襲撃者を蹴り飛ばすのに充分な威力を持っていた。


「ラグナ様!!」


突然部屋の扉が開き誰かが入ってきた。


「セバスさん……」


セバスはガラスが割れた音に気がつくと武器を手に持ちすぐに音がしたと思われる部屋へと向かった。


『今の音は上の部屋。若様の部屋には窓が設置されておりませんし……っ!ラグナ様の部屋か!』


ラグナの部屋で異変に気がついたセバスは階段を駆け上がりラグナの部屋へと急ぎ向かう。


階段を駆け上がり部屋に向かう廊下で声が響いた。


「ぐあっ!目が!目が焼ける!」


『何が起きている!今の声はラグナ様ではない!』


そして部屋の扉を開く直前。


何かが叩きつけられたような激しい音がした。


そしてあわてて扉を開く。


「ラグナ様!!」


セバスが部屋に入ると夜なのに明るく灯された部屋。


そして目の前には地面に倒れている黒ずくめの人間。


「セバスさん……」


少し離れた位置にラグナは立っていた。


「駆けつけるのが遅くなり申し訳ありません。お怪我は?」


「だ、大丈夫です。」


廊下をドダドタと走る複数の音がした後、複数人が部屋に入ってきた。


「ラグナ君大丈夫かい!?」


「大丈夫か!」


部屋に入って来たのはサイさんとリビオさんだった。


「リビオ、そこに転がっているのをすぐに拘束。連れていけ。」


セバスはすぐに気を失っている襲撃者をリビオに拘束させて連れ出す。


「大丈夫かい、ラグナ君。怪我は無いかい?」


「大丈夫です。全部避けたので……」


「本当に怪我は無いのかい?なら良かった。」


サイはラグナの無事に心から安堵する。


「それでなにが「ラグナ君!」」


サイは何があったのかラグナから聞き出そうとした所で、突然さらに部屋に入ってきた人物により声がかき消される。


突然現れた正体はミレーヌだった。


「怪我は無い?大丈夫?」


ミレーヌは部屋に入ると立ち尽くしているラグナを発見。


しゃべり掛けながらラグナを抱きしめていた。


「み、ミレーヌさん。ぼ、僕は大丈夫ですから!」


急に抱きつかれたことに慌てるラグナ。


流石にこの状況はマズい。


サイさんとセバスさんもミレーヌさんの行動に驚き目を見開いている。


『ラグナのエッチ!もう知らない!』


サリオラにも冤罪をかけられた。


「これ、ミレーヌ。淑女がはしたないよ。」


サイはラグナに抱きついたミレーヌに声をかける。


「す、すみませんでした。お兄さま、ラグナ君。」


思わず抱きついてしまったことに気がついたミレーヌは謝罪するとすぐに離れた。


「それでまずはあれは何かな?」


サイはまず部屋を明るくしている謎の光の正体をラグナに聞く。


『ヤバい!解除するの忘れてた。誤魔化せるかな……』


「あれは僕が発動させたライトの魔法です。」


「あれがライトの魔法?」


サイとセバスとミレーヌは頭上に浮かぶ見たことがない形状の光を改めて観察する。


「なんか私が発動した時とは形も明るさも違いますわ。」


「そうですな。ライトの魔法がここまで明るいなどと見たこともありません。」


「そ、そうなんですか?寝る前に読んでいた魔法書に書いてあった魔法を発動したらあんな感じだったんですけど……」


「そんなこともあるのか……まぁいい。それよりも詳しく状況を聞いてもいいかな?」


ラグナはサイとセバス、ミレーヌに状況を説明するのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る