第103話
ラグナは説明を始める上でまず困ったことが一つ。
何故襲撃者に気がついたか。
サリオラが起こしてくれたおかげで気がつく事が出来たのだが、サイさん達には話せない。
たまたま起きていたってのも変だし。
事実に嘘を少し混ぜることにした。
「襲撃のちょっと前まで寝ていたんですけど……信じてもらえないかもしれませんが……女の人の声が頭の中で聞こえたんです。」
「……その声はなんと?」
「……襲撃者が来るから起きてと。」
その言葉に3人は絶句する。
『ラグナ君は女神にいつも見守られているとでも言うのか?』
『これはまた、とんでもないですな。』
『女神様の使徒……』
その後襲撃者が本当に来たので戦ってなんとか倒したことを告げる。
セバスが一つ疑問を思い出す。
「私が駆けつける途中で目が焼けると言う声が聞こえたのですが、あれは?」
目が焼ける?
そう言えば、LEDランタンを目の前で発動したときにそんなこと言ってたっけ。
「襲撃した人が来たときに真っ暗で何も見えなくて慌ててライトの魔法を発動させたんですけど……込める魔力の量を間違えたら物凄く光ったんです。そしたら襲撃した人が目を押さえて倒れ込んだんです。」
「……見せてもらっても?」
「本当に眩しかったので気をつけてくださいね?」
3人とも目を閉じたことを確認すると頭の中で明るくなれと意識する。
「眩しいな、やっぱり。ゆっくり目を開けて下さい。」
3人はゆっくりと目をあけるがあまりの眩しさに直視出来ない。
「これは本当に眩しいな。」
すぐに元の明るさに戻す。
「暗闇の中で目の前にこれを出されたらどうにも出来ませんな。」
「でもライトの魔法ってこんなに明るくなるんですか?」
ギクッ……さすがミレーヌさん……
「魔力を大量に込めることで私達でも出来ないことはないと思いますよ。現に火の魔法であるファイアーボールでも込める魔力によってサイズや威力が多少なりとも上下しますし。」
セバスさんからのナイスアシスト!
なんとかセバスさんからのアシストのおかげでサイさんとミレーヌさんは納得してくれた。
「さて、どうするかな……まさかラグナ君に暗殺者を差し向けられるとは思っても居なかったよ。本当にすまない。」
サイさんが深々と頭を下げる。
「あ、頭を上げて下さい。怪我もなく無事だったので大丈夫ですよ。」
またサリオラには本当に感謝だな。
彼女のおかげでまた命拾い出来た。
とりあえずこの部屋の惨状では寝れないので別の客間に移動することになった。
ラグナは新しく案内された部屋のベッドで横になる。
『サリオラ、起きてる?』
『……なに?』
『また君に助けられたよ。ありがとう。』
『……別に気にしなくていいわよ。それで?ラグナはさっきの女の子みたいな娘がタイプなんでしょ?』
『さっきの娘?あぁ、ミレーヌさんか。そんな目で見るわけ無いじゃないか。まだ子供だよ?』
『私からすれば充分あなたも子供に見えるんだけど。』
『サリオラだって知ってるでしょ。前世の記憶がある俺からしたらそんな目でみれないって。』
『ならいいけど。それよりも身体は子供なんだからもう寝なさい?何かあれば起こしてあげるから。』
『ありがとう。おやすみ。』
ラグナはサリオラと会話を交わした後再び眠りにつく。
一方サイ達はミレーヌを部屋に見送ると話し合いを始めていた。
「まさか我が家に襲撃がくるとは……ラグナ君が無事で良かった。我が家への被害はどうだ?」
「門番1名が死亡、もう1人が意識不明の重体。また庭師が1名行方不明となっております。」
「死人が出たか……庭師は間者の可能性があるな……」
「それよりもラグナ様の情報が一部漏れていたかもしれません……」
「その可能性はあるね。まさかピンポイントでラグナ君が狙われるとまでは考えつかなかったな。それで誰が差し向けたかわかったかい?」
「それはまだ……わかりましたらご連絡致します。若様も一度おやすみになって下さいませ。後のことは私達にお任せを。」
「そうだな……すまないが少しだけ休ませてもらうよ。」
まさかラグナ君を狙う人間がいるなんて。
男爵家には暗殺者など雇う余裕などないだろう。
伯爵家か侯爵家のどちらかか?
いや伯爵家の可能性は低いか。
既に城に幽閉されてると情報がまわってきているし。
一番可能性があるのは侯爵家だな。
立場的にも闇と繋がるきっかけは多数あるだろうし。
「まさか我が家に対してこんな手段を使う人間がいるなんて。気を引き締めなきゃいけないな。」
そして屋敷にある地下室。
手足を縛られ椅子に座らされた男が水をかけられて目を覚ました。
「起きましたかな?」
「くっ……俺は何もしらん。拷問されようが何も知らんぞ!」
男が奥歯で噛む動作をする……
「どうされましたかな?もしやお求めになっていたのはこちらでしょうか?」
セバスが手に持つのは襲撃者の奥歯に仕込まれていた劇薬。
「な、何故それを……」
「蛇の道は蛇というのがピッタリですかね。それでどうしましょうか。素直に吐いてくれると簡単なのですが。」
「……何も知らん。」
「そうですか。では残念ですがこの手で行くしかありませんな。」
セバスは引き出しからあるものを取り出す。
「大丈夫ですよ。拷問なんて野蛮なことは致しませんから。」
セバスは引き出しから取り出した液体を襲撃者に見せる。
「はっ、天下のエチゴヤが毒殺を行っているわけだ。市民に知られたらどうなることやら。」
「はて?これが毒薬などといつ言いましたかな?」
セバスは部下に指示をすると襲撃者の口をひらかせる。
「それではさようなら。もうあなたに会うことはないでしょう。」
そして手に持つ薬を口の中に注ぐ。
口を無理やり開かれた襲撃者はなす統べなく液体を飲み干していく。
そして身体中が痙攣し激しく震え始める。
目からは涙が流れ口からは涎が垂れ流し。
「そろそろですかな?お前の名前は?」
「ナギ。」
「誰に雇われていた?」
「ドゥメルク侯爵家。」
やはり侯爵家が動いていましたか。
セバスは素直になったナギから様々な情報を聞き出して行くのだった。
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