第85話

今回はマリオン様からの神託なども無かったので、すんなりと商業ギルドからエチゴヤ商店へと戻ってくることが出来た。


ギルド長は偶々ナルタ支店に用事がありこっちに来ていたらしい。


そう言えば商業ギルドのナルタ支店のギルド長って見たこと無いな……


ちなみにサイさんとアムルさんとマホッテト司祭の話し合いの結果、商業ギルドの馬車に乗り王都へと向かうことに決まっていた。


途中から難しい話ばかりだったのでぼーっと過ごしていたら、マホッテト司祭から神殿で保管されているマリオン様に関係した書物が有るというので借りて読んでいた。


どうやらマリオン様は特許を違反する者に対してだいぶ過激な天罰を与えたりしていたらしい。


特許があることを知らないまま使用している者に対しては神託にて商業ギルドを動かし警告。


特許があることを知りながらも使用料を払わなかった者に対しては商業ギルドに神託をして使用料分の財産を没収。


特許を持つ者を脅して契約した時は店などの資産に突然落雷が落ちてその店のみ爆発。


あまりにもひどい場合は本人に対して……など。


まぁ天罰一覧表みたいな感じでまとめられていた本だった。


エチゴヤ商店に戻ってからサイさんに教えて貰ったことが1つ。


明日からの護衛はエチゴヤ商店から1人と神殿から神殿騎士が3人。商業ギルドから4人派遣されるとのこと。


馬車に乗るのは俺とサイさんとギルド長の3人だけ。


エチゴヤ商店に用意して貰った部屋で一泊していよいよ王都へと出発。


「おはようございます。今日から数日間よろしくお願いします。」


ギルド長に挨拶する。


「おはよう。それにこっちこそよろしくな、使徒様。」


ギルド長からの弄りに目がピクピクしてしまった。


「ギルド長、全員揃いました。積み荷の方も確認済みです!」


どうやら護衛を方々も含めて集合したみたいだ。


馬車は全部で2台。


1台は俺達が乗る馬車。


もう1台は旅に必要な積み荷などを積んでいるらしい。


「とりあえず王都まで1週間の道のりだ。今回は初めて王都に行く子供も居る。無理をせず安全に向かうぞ!それじゃあ出発だ。」


ギルド長からの号令で王都への長い道のりがスタートした。


ナルタから王都まで馬車で1週間もかかるのか。


流石辺境伯の領地だよ。


初日は街道沿いで夜営することに。


流石にこのままずっと大人しくしているのも暇なので護衛の人達に教わりながら夜営の準備のお手伝いをする。


俺は石でかまどを作り、その後薪を集める。


そして魔法で火を着けて着火。


「まじか!その歳で無詠唱で火を起こせるのか、凄いじゃないか。」


護衛の人達に褒められた。


「この位の火だったら無詠唱でも簡単じゃないですか?」


そう話をしたら護衛の人達に驚いた顔をされた。


「無詠唱で火起こしなんて早くても十代後半だからな?人によっては無詠唱で魔法を発動することすら出来ないまま終わる人間だっているくらいだ。」


えっ……?


そうだったとは知らなかった。


「流石だな。魔法学園に入学試験を受けに行くだけの実力は有るわけだ。」


アムルさんとサイさんも馬車から降りて身体をほぐしていた。


「それだけじゃないですよ、彼は。本人はマグレと言っていましたが9歳でワイルドボアを討伐した位なんですから。」


おぉ、と護衛の人達に驚かれる。


「俺達でも数人掛かりで向かわなきゃ危ないのに、よく倒せたな!」


そう聞くと改めて父さん達の凄さを実感できる。


「そりゃこいつはあの『アオバ村』出身だぞ?」


「あぁ、あの村の出身だからですか。納得出来ました。」


ん?


「うちの村ってただの辺境の村ですよ?」


皆が笑い出す。


「いやいや、普通の辺境の村が魔の森に隣接したまま無事に生活出来ている時点で異常だからな?」


そんな目で見られていた事なんて知らなかった。


「確かに。普通の村なら魔物が攻めてきた時点で終わりだよ。」


「まぁ確かに私も初めてアオバ村に行った時は驚きましたよ。」


「サイさんが驚くような所なんてあります?」


「そりゃあるよ。村を初めて見たときの驚きは今でも忘れられないよ。普通の村は村をぐるっと囲む立派な外壁なんて無いからね?精々有ったとしても木で出来た柵くらいだから。」


確かあの外壁って辺境伯が魔法使いに作らせたんじゃなかったっけ?


「確かに外壁はありますけど、あれは辺境伯様が魔法使いに作らせたって聞きましたよ?」


「確かにそうだったなぁ。商業ギルドにも出資してくれって要請が来たくらいだ。安定して魔の森の素材を卸せる様になるからってな。突っぱねるわけにはいかないからいくらかは出資したよ。」


「うちからも出資しましたね。」


商業ギルドとエチゴヤ商会の資金もあったから出来たのか。


「だからサイ殿はアオバ村から安定して素材を仕入れることが出来るし、うちにも恩恵がある。まぁその辺境伯も今では隣の領地の伯爵だけどな。」


本当に領地替えが行われたんだ。


「うちも借金が返済されたので助かりましたよ。」


「あぁ、あれは傑作だったな。辺境伯が領地替えになる前にこっそりと財産を隠そうとしていた動きを察知してエチゴヤ商会が借金の全回収に動いた。隠してあった金以外にも美術品や調度品も片っ端から査定して適正価格で回収していったもんな。領主達が発狂したように叫びまくってたから大騒ぎだったよ。」 


それはちょっと見たかったな。


特にあの息子には好き放題やられたしね。

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