第75話
「喜んで頂いたようで何よりです。それでは本題に入りましょうか。」
本題……
「まぁそう身構えなくても良いですよ。時間がある時でいいので出来ればこの世界でも再現できそうな料理があればその都度レシピを登録して頂きたいのです。」
「レシピですか?」
「はい。貴方もこの世界で暮らしているので実感しているとは思いますが。この世界の料理は基本的に焼くか煮るのみ。食生活が全くと言っていいほど発展していないのですよ。」
「でも昨夜泊まった宿の料理は美味しかったですよ?」
「それはそうでしょう。あの商店は唯一初代勇者と繋がりのあった一族が経営しているお店。勇者が伝えたレシピを再現しようと長い年月をかけて代々研鑽しているのですから。」
確かに代々研究してるって説明はあったな。
「そうして金貨を湯水のように使い出来たのがあの料理。しかし問題もあります。」
「問題ですか?」
何かあったかな?
「大問題です。それは料理の値段が高すぎるのです。調味料にコストがかかりすぎているのですよ。」
それは確かに。
味噌も醤油もとんでもない値段だったな。
「でも調味料に関しては僕だって知識はありませんよ?」
「そこは仕方ないと思っています。本当ならば貴方のスキルで作られたスパイスを流してもらいたい所ですが……死なれるのは困りますしね。」
やっぱり売ったりするのは危険か。
「だから無理にとは言いません。思い浮かんだ時でいいのでよろしくお願いします。」
「わかりました。それぐらいでいいのであれば喜んでお手伝い致します。」
「後はそうですね……ちょっとお待ち下さいな。」
そう言うとマリオン様は何かの呪文?を唱え始めた。
そして一瞬目の前が眩しく発光する。
ゆっくりと眼をあけると本当にびっくりするくらい近い位置にサリオラが居た。
「「えっ!?」」
「「なんで!?」」
なんで目の前にサリオラが?
少しでも前に顔を移動するとキスできてしまいそうなほど近いので慌てて少し後ろに下がった。
「久しぶりね。」
サリオラは後ろにいるマリオン様の声にビクッとなり慌てて振り向く。
「マリオン様、お久しぶりにございます。」
片膝をつきサリオラはマリオン様に挨拶していた。
「急に呼んでごめんなさいね。ちょっと私がラグナ君を借りてたの。急にラグナ君との繋がりを失ってびっくりしたでしょ?」
「いや、それはその……」
「ちらっと貴女を覗いたら急にラグナ君との繋がりが消えて慌てて地上を狭間の世界から魔法を使って探していたから可哀想になっちゃってね。」
「それは……」
サリオラが普通に照れているのか顔が真っ赤になってるな。
こういう反応も見ていて可愛いな。
「良かったわね。ラグナ君は照れている貴女も可愛いですって!!」
サリオラは耳まで真っ赤になって固まっている。
「ほら、ラグナ君も男の子なんだから手ぐらい繋いであげなさいよ。」
なんで急に手を繋ぐことに?
でも女神様には逆らえないし……仕方ない。手を繋ぐか。
顔を見ると流石に恥ずかしいので見ないようにしながらサリオラの隣に並びゆっくりと手を伸ばし手を繋ぐ。
手を繋いだ瞬間……
身体中に電気が流れたような痺れが全身を巡った。
「あらあら。本当に相性がいいのね。」
なんか身体中がポカポカしてる。
「貴方が今感じているそれは彼女の力があなたに流れ込んでるからよ。」
「この暖かいのがサリオラの……」
「それじゃあ試しに私とも触れてみます?」
物凄くドキッとはしたもののサリオラが手をギュッと握ってきた。
「これ以上は怒られちゃうから止めておくわ。」
ポカポカしてきたのが、だんだんと身体が暑くなってきた。
「ちゃんと制御しないとラグナ君が苦しんでるわよ?」
サリオラがハッとして力を制御する。
「ごめんなさい。」
サリオラがシュンとしてるのが可愛く見える。
「大丈夫だよ。」
「2人とも本当に仲良しさんなのね。」
マリオン様がニヤニヤしながらからかってくる。
「まぁいいわ。それよりもどうやらあっちで騒ぎになっているみたい。」
「あっちで騒ぎとは……?」
「祭壇の間が開かないことに気がついた神官が騒いでいるみたいね。」
それはマズいな……
「うーん、そうねぇ。どうしましょうか。」
「出来れば目立ちたくないのですが……」
このまま戻るのは怖すぎる。
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