第74話

会議室の部屋から出て少し進むと階段があり2階へ。


「ここは……」


二階に上がると戦場が目の前にあった。


「ここは商業ギルドの事務室だよ。手続きやその他もろもろの手続きはこの部屋で行われてるんだ。」


「凄いですね、これは……」


大量の書類を運ぶ人。


走り回る人。


一心不乱に書類を書いている人。


ひたすら判を押している人。


中にはほとんど休んでいないのか隈が酷い人もチラホラ。


「それじゃあ神殿に行くよ。」


さらに階段を上がり3階へ。


階段を登り切ると少し広間があり両サイドに武装した白い鎧の人達が4人居た。


「例の少年をお連れしました。」


商業ギルドの3階がそのまま神殿になっているとは思わなかった。


「では後は我らが引き継ごう。」


うん?


商業ギルドの人はついて来てくれないのかな?


「ギルド長からは側にいるようにと言伝がありましたので。」


「我らのことが信用出来ないとでも言うのか!」


武装していた1人が怒り始めた。


「いえいえ、そんなことはありませんよ。」


「なら、あとは我らに任せれば良いではないか!」


「此方としてもそう言うわけにはいかないのですよ。ちょっと失礼。」


そう言うと怒っている神官の人に何かを耳打ちしていた。


そういやこの人の名前をまだ聞いてないや。


「仕方ない。2人とも、ついて来い。」


怒っていた神官が引き下がり渋々2人での同行を許可した。


広間の先には重厚な扉があった。


左右1人ずつ扉を引っ張るとゆっくりと扉が開いていく。


扉が開いた先には全身真っ白な服を着ている人と数人だけ色が多少ついている服を着ている人がいた。


「ようこそ我らが神殿へ。」


扉の先に居た人たちが突然両膝を地面につき祈るポーズをしてきた。


「えっと……」


なんだこの状況。



「はぁ……これだから神官は……」


後ろからは一緒に付いてきてくれた人が小さな声で文句を言ってるし。


とうとう何人かの神官はそのまま祈り始めた。


これはヤバいな。


「すみません、みなさん立ち上がって貰えますか?」


みんな一斉に立ち上がってくれた。


俺に向かって祈り始めるとか恐怖でしかない。


「我らとしたことが急に申し訳ありません。まずはご挨拶からですね。商業の女神マリオン様の神殿ナルタ支部、司祭のマホッテトと申します。」


顔はニコニコしているんだけど眼が見開いていて怖いな……


「初めまして。アオバ村のラグナです。」


「本日はようこそいらっしゃいました。お話を聞きたい所ではありますが……まずは祭壇の間へどうぞ。」


そう言うと奥に連れて行かれた。


そして豪華絢爛な扉の前へ。


「こちらの部屋に入りましたら部屋の中心まで進みお祈り下さいませ。」


えっと……


全く話がわからん……


「お祈りしたらどうすればいいのでしょうか?」


「女神様からはラグナ様お一人で祭壇の間に入るようにと厳命されていますので詳しいことまでは……」


ただ祈るだけでいいのかな?


あんまり注目されたく無いんだけど……


仕方ない。行くか。


「それじゃあ行ってきますけど……」


「お気をつけ下さい。」


あっ。また名前を聞き忘れた。 


司祭様が近寄ってきた。


「……もしも女神様からのお言葉などがありましたらどうか私のこともよろしくお願いしますとお伝え下さい。」


そう耳打ちしてきた。


苦笑いしながらも祭壇の間へ。


部屋に入った瞬間に部屋の雰囲気が変わったのがわかる。


この感じは狭間の世界に居るときに似ている気がする。


部屋の中心にいろいろな模様がかかれている場所がある。


「とりあえずここで祈ればいいのか?」


目の前には祭壇と奥には女神様の像なのかな?が置かれている。


目を閉じてとりあえず祈ってみる。


「ようこそいらっしゃいました。」


うん?誰かの声?


恐る恐る目をあけると目の前には見たことも無い女性が居た。


「あなたは……?」


スーツをバシッと決めて眼鏡をかけた青い髪色の謎の綺麗なお姉さんだ。


「初めまして、私の名前はマリオン。海の女神であり商業の女神でもあります。ようこそいらっしゃいました。」


「こちらこそ初めまして。ラグナと言います。」


マリオン様がじーっと眼を見つめてくる。


「な、何か……」


「そう言うことでしたのですね。」


そう言うこと?


「はい、どうりで落ち着いているわけです。」


うん?


「やっと意味がわかりました。」


ん?ってかやっぱり普通に考えていることがダダ漏れ?


「はい。バッチリです。先ほどは容姿を褒めていただきありがとうございます。」


「えっと…まぁ、はい。」


恥ずかしくて顔が暑い。


「それでどうして僕はここに……」


「あなたが提出してくれたレシピが他の世界にある料理と同じだったのでとても気になりまして。」


「やっぱり駄目でしたよね?本当にごめんなさい。」


慌てて頭を下げる。


「何も悪くありませんよ?それにあなたが何故他の世界と同じ料理を考えることが出来たのかわかりましたから。」


「えっと……?」


「あなたの記憶を読ませて頂きました。以前ですが他の世界の新神が悪事を働いたと報告がありましたがその時の被害者があなただったのですね。」


「はい、そうなります。」


「他の神の仕業とはいえ本当に申し訳有りませんでした。」


まさか女神様まで謝罪してくれるなんて。


「頭をあげてください。いろいろありましたが僕は新しい人生でもとても楽しく過ごしているので大丈夫です。」


「そうですか。ではお詫びと言ってはなんですがこれを授けます。」


女神様の指が光り俺の身体が包まれる。


「これはいったい?」


「気持ち程度ですが私からの加護をプレゼントしました。」


「加護ですか!?」


「本当ならばもっと強力な加護をとも考えましたがあなたは既に契約をなさっているようなので軽くにしておきました。」


「それでも本当にありがとうございます。」


マリオン様からも加護が貰えるなんて。


「ちなみに貴方への加護ですが水の中でも呼吸が可能になり水中でも地上と同じ様に自由に動くことが出来ます。」


「えっ!?そこまでして頂いたのにこれで軽くなのですか?」


この加護で本当に軽いだって!?


水中でも普通に活動出来るって凄い。


海に潜れば貝類や海老とかもゆっくり探せるかもしれない。


これは早めに試してみたい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る