第73話

サイさんとミレーヌさんといろいろ話をしていると馬車が止まった。


「商業ギルドに着いたみたいだね。行こうか。」


馬車を降りると目の前には3階建てくらいの立派な建物がある。


「さぁ入ろうか。」


扉を開き中に入る。


奥の方には受け付け?のようなものがある。


右側は大量の書類と掲示物、それにテーブルと椅子が設置されていて商人らしき人が書類を読んだりしている。


左側は飲み物や軽食を売っているみたいだ。


サイさんに連れられて受け付けの列に並ぶ。


すぐに列は捌かれて受け付けのお姉さんの所へ。


「商業ギルドへようこそ。本日はどの様な御用件でしょうか?」


「昨日申請した特許の契約とこの子の商業ギルドの登録をお願いしたい。」


「特許の契約ですか?」


サイさんは懐からカードを出す。


「失礼しました。こちらへどうぞ。」


お姉さんは目を見開いたあと深呼吸して案内してくれた。


「サイさん、今のは?」


「あぁ、今のは僕達のことを記す身分証みたいなものさ。如何せん受付で名前を言ったら騒ぎになってしまうからね。」


お姉さんに連れられて会議室の用な部屋に案内された。


「しばらくお待ち下さい。すぐに担当の者を手配します。」


「ありがとう。よろしく頼むよ。」


凄いなぁ、サイさんが物凄く頼もしい。


「ん?どうしたんだい?」


「いや、サイさんが物凄く頼もしくてカッコイいなぁって。」


サイさんは笑顔になると頭をポンポンしてきた。


「ここに来るまでに散々情けない姿を見せちゃったからね、自分の仕事の時くらいはカッコ良く見せないと。」


「お兄さまはそんなに情けない姿を見せたのですか?」


情けない姿かなぁ。結構励ましてくれたと思うけど。


「情けない姿はいっぱい見せたさ。」


コンコン。


「失礼します。」


扉が開いて入って来たのはめちゃめちゃダンディーなオジサマ。


「ようこそ、商業ギルドへ。」


「あなたが何故こちらへ?」


サイさんが驚いてる。


「何、君のお父上と話があって私もナルタに来ていたのだよ。」


「そうだったのですか。お久しぶりです。」


「1人前の商人が動揺してどうするんだね。お父上に笑われてしまうぞ?」


「すみません。」


「先ずは挨拶でもしておくか。君は初めましてだね?商業ギルド統括ギルド長のアムルだ。よろしく。」


手を出されたで握手する。


「アオバ村のラグナです。初めまして。」


まさか商業ギルドで一番偉い人と話をするなんて。


「おじさま、お久しぶりです。」


「ミレーヌちゃんも大きくなったね~!」


「はい、まだまだ成長しますわ。」


「うむ、きちんと食べて学んで大きくなるんだよ。」


「それでギルド長であるあなたが何故?」


「なに、特許の申請が昨夜あってな。女神様に献上した所、異例の早さで許可が出たのだよ。」


「えっ?そうなのですか?」


「あぁ、更にな……少年が申請にやってくる。神殿内へと連れてくるようにと神託までセットで。」


神託!?


「えっ、神託ですか!?女神様がラグナ君を呼んでいると?」


どういうことだ?


おもむろにネックレスをさわる。


『サリオラいる?』


うん?返事がない。


「女神様からのご神託など初めてだからな。商業ギルドは大パニックだよ。神官ですら慌てふためくばかり。」


何度呼びかけてもサリオラに繋がらない……


「君は何か身に覚えはあるかい?」


ドキッとはしたもののゆっくりとネックレスから手をはなす。


「い、いや。商業の女神様がマリオン様だったことを知ったのは昨日でして。宿の支配人さんから教えてもらいました。」


「そう言えばそんな報告も来てたね。物凄く人の話をよく聞いて学ぶいい子だと。」


「い、いやそんな事は……」


褒められるとなんかムズムズする。


「まぁ商業の女神様がマリオン様だったことを昨日知ったくらいだから関係ないか。」


良かった。違う女神様の娘となら知り合いだったからね。


コンコン。


再びドアがノックされる。


若い男の人が部屋に入って来るなりチラッと俺を見てきた。


「失礼します。神官共が少年を神殿まで連れてくるようにと向こうで騒いでいますが如何しましょう?」


ギルド長はため息を吐く。


「彼奴らめ。もう嗅ぎつけたか。仕方ない。ラグナ君、神殿に行ってもらえるかね?」


これは面倒な予感しかしないけど拒否は出来そうにないな。


「わかりました。神殿に伺います。」


「それじゃあ契約の手続きはこっちで進めておくよ。さっき話をした通りの契約でいいんだね?」


「はい、全てお任せします。」


「それじゃあ気をつけてね?神官達には特にね。」


神官達?


思っているよりも商業ギルドと神官達はあまり仲が良くないのかな。


「それじゃあラグナ君の案内頼んだよ。」


「わかりました。それじゃあ行きましょうか」


先ほど部屋に入ってきた人に神殿まで案内して貰うことになった。

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