第42話

「はぁぁぁぁ!」


「もっと剣に魔力を細く薄く纏わせるんだ!」


「もっと細く薄く、ぐぅぃ。」


剣の周りを大きく松明のように纏っていた火の魔力が徐々に細く薄くなってきた。


「で、出来た。」


「あっ、馬鹿!気を抜くな!」


ドン!


「いってぇぇ。。」


剣に纏っていた火の魔力が気を抜いてしまったので暴発。


その爆発の威力でラグナは剣を手放して数メートル吹き飛んでいた。


「いきなり気を抜くからだ。今のは魔力の暴発だな。」


「いててて。出来たと思ったら気を抜いちゃったよ。」


父さんが吹き飛んだ俺を起こして身体を確認している。


「多少のすり傷はあるようだけど、大丈夫か?」


「この位大丈夫だよ。練習をやり始めたばっかりの頃の暴発に比べたらね……」


本当にこの程度の暴発ならまだ全然耐えられる。


魔法剣の練習を始めたのが7歳の頃。


最初は剣に魔力を纏わせると言う感覚がわからなかった。


如何せん父さんの助言が酷かった。


「ラグナいいか?剣に魔力をグググっとこめてそれをぶわっとしないでそーっとするとこうやって魔法剣が発動する。」


そう言いながら目の前で父さんが魔法剣を発動させた。


「はい?今のが説明?」


「簡単だろ?まずは剣に魔力をグググっとだな。」


魔力をグググって何だよ!


昔から若干脳筋だとは思ってたけどさ!


「もっとだ!もっとグググっと!」


幸いスキルをひたすら練習していたので魔力を感じることは出来る。


ラグナは眼を閉じる。


「剣に魔力を。集中、集中。魔力を身体から手に。手から剣に。」


手に魔力を纏わせる所まではうまくいく。


この魔力を剣に。


思ったよりも抵抗が凄いな。


剣が魔力を通すことを嫌がってるように感じる。


「ラ、ラグナ。ゆっくりだ。ゆっくりでいい。力を抜くんだ。眼はあけるなよ!いいか!ゆっくり力を抜くんだぞ!」


急にどうしたんだろう。


あと少しで剣に魔力が通りそうなんだけど。


「ゆっくり力を抜くってどうして?」


「あっ!」


ドカーーン!!


いきなり凄まじい爆風と共に吹き飛んだ。


「いってぇ。ラグナの魔力の多さを舐めてたわ。」


とっさにラグナの剣を叩いてそのままラグナを抱えて爆風から飛んで離れようとしたが間に合わなくゴロゴロと激しく転がっていった。


「大丈夫か?」


ラグナを確認すると目を回してぐったりとしていた。


あの時の痛みに比べたら全然だけど……


「全く。急に気を抜くからこうなるんだよ。」


「ごめんなさい。でもやっと形になってきたのが嬉しくて。」


「まぁ気持ちはわかるけどさぁ。俺も初めて出来たときは嬉しくて気を抜いて暴発させたしな。」


「父さんもやらかしたんだ。」


「あぁ。その後親父にボッコボコにされたけどな。庭にでっかい穴を作ったから。」


「父さんは練習を始めてどれくらいで使えるようになったの?」


父さんの顔がちょっと言いにくそうな表情になった。


「半年だ。」


「えっ?半年?」


「まぁ一応は天才って言われてたからな。」


恥ずかしそうに頬をかく父さん。


「半年かぁ。僕なんてここまで来るのに2年だもんなぁ。」


「まぁ正直な所、ラグナは覚えられないんじゃないかと思ってた。ここまで出来てることの方が驚きだわ。」


正直に言うと血が繋がってないから魔法剣は厳しいと思ってた。


「まぁ僕自身も驚いてるよ。僕は父さんの国の人の血でも流れてるのかな?」


「正直な所本当にわからん。前にもラグナに話をしたように気がついたら家の前にラグナが居たからな。」


「そうだよねぇ。髪の色も全然違うし。もしかしたら育てられた両親の環境によって魔法の適性がかわるのかな?」


「わからん。確か他国の人間にうちの魔法剣が使えるようになるか実験したことはあったけど全て失敗だったはずだ。だからラグナが使えるようになってること自体が驚きなんだよ。」


身体についた泥を落として暴発した際に落とした剣を取りに行く。


するとそこには刀身が吹き飛んで壊れてしまった剣が落ちていた。


「こりゃもうこの剣もダメだな。また新しい剣を手に入れなきゃいけないな。」


また壊しちゃったのか。


「ごめんなさい。また壊しちゃって。」


「気にするな。逆に剣が折れてるってことはきちんと魔力を纏わすことが出来てるってことだからな。」


壊れた剣を手に取るラグナ。


「剣に火を纏わすんじゃなくて火が剣の形になればいいのに。」


「そんなん魔力が大きくないと使えないだろ。普通ならすぐに魔力切れだぞ。」


「だよねぇ。魔力なら多いから出ればいいのになぁ。」


剣からガストーチみたいな勢いのある炎が吹き出したらかっこいのに。


『ガストーチスキルを使用しますか?』


「えっ‥…?」


「うん?どうしたラグナ。」


「久々に聞こえちゃった、声が。」


その言葉にギョッとするグイド。


そしてため息を吐く。


「もう驚くのはやめよう。それで声はなんて?」


「ガストーチスキルって言われたけど。」


「ガストーチ?なんだそれ。初めて聞いたぞ。」


「わかんない。剣を握りながら炎が出ればいいのにって思ったら聞こえたから。」


ここ数年は無かったのに。


本当に突然だな。


グイドは周囲に人が居ないか確認後戻ってきた。


「人は近くに居ない、どうする?」


「使ってみるよ。」


ラグナは折れた剣を手に取り構えた。


「ガストーチスキル!」


ボゥっと剣の柄の先より轟音をたてながら炎が吹き出した。


「火じゃなくて炎だな。でも炎で切れるのか?」


確かにそうだ。


魔法剣は剣に火を纏わせて威力をあげてる。


でもこれは炎だけ。


「ちょっとやってみるよ。」


倒れずに枯れて朽ちた木があったのでその木に向かって剣を振り抜いた。


ジューっと音を立ててそのまま振り抜くことが出来た。


そしてドーンと言う音とともに木が倒れた。 


「切れちゃったね……」


「あぁ。切れちゃったな。」


切断面を見てみる。


丸焦げになっているものの綺麗にスッパリと切れていた。


グイドは折れた剣先を木に突き刺した。


「ラグナ、これはどうだ?」


ラグナは改めてスキルを使用して折れた剣先に向けて振り抜いた。


スパン。


その光景に驚き固まる2人。


目の前には綺麗に切り落とされた剣先が落ちていた。

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