第43話

目の前に落ちているのは溶断された剣先。


「まさか切れるとは思って無かったんだが……炎だけのように見えてその炎は硬いのか?」


「わかんない。剣みたいな炎を想像しながら出してみたんだけど。名付けてガストーチソードってとこかな?」 


グイドはその場で少し考え込む。


「その炎って形とか大きさも変えられるのか?」 


「ちょっとやってみるよ。」 


小さい炎になれと念じながらスキルを発動してみる。


ボゥ  


キャンプの時に使用するくらいの小さい炎が剣の柄から出てくるシュールな感じになった。


「大きさも自分の意志次第なのか。魔力はどうだ?」


「魔力はまだまだ大丈夫だと思う。形も変えられるかやってみる。」


うーん‥…形……剣の形……鎌みたいに出来るかな?


「その形は鎌なのか?さっきよりもなんか不安定に感じるな。」


「うん、僕もそう思うよ。炎が弱々しいし魔力消費が多いや。」


他の形……レイピアならいけるかな?


細く長く硬くをイメージ。


剣の柄より力強い轟音が鳴り響きレイピアのような細長い炎が現れた。


「今までで一番の轟音だな。威力はどうなんだ?」


ラグナは溶断された剣先に炎のレイピアを突き刺した。


ジューッと言う音と共にそのまま貫通していった。


「なんの手応えもなく貫通しちゃったね。」


グイドは更に考え込むと決意した顔になる。


「ラグナ、俺の魔法剣と打ち合ってみよう。」


父さんの魔法剣と打ち合う?


大丈夫だろうか。


物凄く不安でしかないけど。


「わかった。やってみる。」


ラグナは訓練の時に使用していた剣をイメージしながら炎を出した。


「はぁぁぁぁ!」


グイドも剣に魔力を込めて火を纏わせる。


「それじゃあ行くぞ!」


グイドはラグナの炎の剣に自らの魔法剣を振りかざす。


カーン。


金属同士が打ち合う音が鳴り響いた。


お互いに驚く。


グイドは魔法剣が止められたらことに。


ラグナは炎なのに金属のような音がしたことに。


「まさか魔法剣で切れないとは……」


「父さん、その前に炎なのに金属音がしたことにびっくりだよ。」


「確かに。打ち合った感触は金属同士の手応えだったな。ラグナはどうだ?」


「こっちは手に痺れでもくるかと思ったけど硬いものに当たったって感触だけで痺れたりとかは無かったよ。」


「うーん‥…まぁいいのか?とりあえず魔法剣の練習じゃなくてこのスキルを磨いた方が良いような気がしてきた。」


確かに魔法剣を2年教わってやってきたけど。


出来るようになった事と言えば、やっと火を剣に纏わすことくらい。


正直あと1年でものに出来るかと言えば正直不安でしかない。


よし、決めた。


「魔法剣の練習も続けるけど、このスキルを鍛えていこうと思う。」


「魔法剣も続けるのか?」


「うん。せっかく2年も続けたんだもん。どうせならものにしたい。」


やっと発動出来るところまでは出来るようになった。


「まぁ確かにそうだな。発動するとこまでは来たんだ。使えるようになるまであと少しだろう。」


「でも父さん。ひとつ問題があるよ。」


「ん?なんかあるか?」


「魔法剣用の剣とスキル用の剣の2本準備しなきゃいけないかも。」


「あぁそうか。剣の柄から炎が出るんだもんな。普通の剣だとスキルを発動させたら溶けるか。」


「たぶん……」


俺の体格だと剣だけでも持って長時間移動は正直きつい。


さらに柄だけとは言え剣と剣の柄の両方を持つのは厳しい。


うーん‥…


「魔法剣ってナイフとかでも発動出来る?」


父さんが考え込む。


「やったことは無いが‥…やろうと思えば出来るかもしれん。」


そう言うと父さんは魔物解体用のナイフを手に持った。


そして魔力を込める。


「……出来たな。考えたことも無かった。魔法剣と言えば剣ってイメージしかなかったからな。」


ナイフと剣の柄なら両方持って移動も出来るな。


「ラグナもナイフで発動させてみるか?」


「やってみるけど……壊したらごめんね?」


「解体用のナイフならそこまで高価じゃないからな。予備もあるしかまわねぇよ。」


父さんからナイフを受け取る。


「はぁぁぁ。」


いつもは剣で魔法剣を発動させるけどナイフだと剣よりも簡単かもしれない。


「意外にもすんなりと発動出来てるな。ラグナの体格には剣だと大きかったってことか?」


発動したままナイフを振ってみる。


ボン!


ナイフに纏わせた魔力が暴発してしまった。


「イタタタ。纏わせるまでは上手くいったんだけど。」


「ナイフを振る瞬間に意識が振るって方に向きすぎたな。魔力を纏わせる集中が切れて暴発したな。」


やっぱりそう簡単には発動出来ないか。


「とりあえずはあまり意識しないでも魔力を剣に纏わせられるように練習だな。」


「わかったよ。でもナイフはどうしよう。これって解体用ナイフだし。」


「ナイフかぁ。解体用ナイフなら予備もあるから当分はそのナイフで練習してていいぞ。」


ナイフかぁ。サバイバルナイフが出ればいいのに。


ラグナは少し力を込めてサバイバルナイフが召喚出来るか試してみよう。  


突然奇妙な動きをし始めたラグナをグイドは溜め息を吐きながら止めた。


「今度は何をやらかそうとしたんだ?」


ラグナの頭をとんとんと叩きながら動きを止めた。


「僕に丁度いいサイズのナイフでも召喚できないかなぁってやってみただけだよ。」


「そう簡単にポンポンとスキルが増えてたまるかよ。」


結局その後もサバイバルナイフは頑張ったけど召喚することは出来なかった。

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