目覚めの産声はこっそりと。
第19話
この世界に転生して5年が経過した。
5年間で知り得たこの世界の情報はこんな感じ。
前世と大体同じで1年は360日。
なんで360日なのか母さんに聞いたら昔話をしてくれた。
はるか昔、魔王と呼ばれる魔物達の王が出現して人類滅亡の危機が訪れた。
このままではこの世界は魔王によって人類は滅びると不憫に思った女神様が異世界より勇者を召喚した。
勇者は魔王軍によって奪われた領土を取り戻すべく仲間と共に魔王軍に立ち向かった。
最初は苦戦していた勇者は困難を乗り越えて徐々に力を付けた。
そして勇者は6人の仲間と共についに魔王を討伐した。
その後勇者が生き残った人類を集めて建国したのが今いる国。
この国の名は「ヒノハバラ」
それを聞いた瞬間思ったよ。
これ召喚した勇者って日本人じゃね?って。
勇者の名前を聞いたら「ヒノ」って呼ばれていたらしい。
召喚された勇者は女神様と共に、光る謎の棒を指の間にさした状態で人々の前に現れたって伝わってるし……
ってことは光る謎の棒はペンライト。
きっとあれだよね。ハバラって部分は……
秋葉原から取ったよね。
きっと聖地に通っている勇者達の1人だよね。
まぁキャンプアニメにハマった時には、グッズを買いに行くのに俺もよくお世話になったけど。
どうしても地方では手に入らなかったからなぁ。
ネットで買うなんて無理だったし。
転売には勝てん……
その建国した勇者がきちんとした暦が無いことを不便に思い、魔王を討伐した日を1月1日の新年と決めた。
そして1ヶ月は30日。1年は12ヶ月360日って決まったみたい。
これまでは1年を通して寒冷だったこの世界に魔王を倒してから変化が訪れた。
勇者が制定した暦で言う3月~4月にかけて徐々に温度が暖かくなった。
8月には住民が体験したことのない暑さを経験した。
そして10月になる頃には暑さも弱まり、12月には以前のような寒さに戻った。
この世界に季節というものが現れた。
勇者はそれを四季と呼んだらしい。
きっとあれだな。
勇者は女神様か創造神様に何かしらで会う機会があったので頼んだんだろうな。
ずっと寒いなんてイヤだろうしなぁ。
って訳で今日は9月1日。
母さんと父さんと出逢った記念すべき日。
つまり俺の誕生日。
「ラグナおめでとうー!」
「今日で5歳だな。おめでとう。」
「「おめでとー!!」」
「父さん、母さん。それに村のみんなありがとう!!」
この国では子供が5歳の誕生日を迎えるまでは祝わないという風習がある。
やっぱり医療が発達してないからね。
ちょっとした病気や事故で5歳を迎える前に亡くなってしまう子供が多い。
俺がこの村に転生した後、何人か子供が産まれたけど数人はすでに亡くなっている。
俺に懐いていた1歳下の女の子は病に打ち勝つことが出来なくて半年ほど前に亡くなった。
あの時は本当にショックだった。
たかが風邪。でも医療が発達していないこの世界では風邪ですら命取り。
こんな辺境の村には薬なんて常備されてない。
医者なんて者は領主の近くにしかいない。
医療魔法ってのもあるらしいけど莫大な費用がかかる。
だから病気になると命がけ。
特に小さな子供にとっては。
5歳というのはある程度言葉を理解して行動出来るようになり、病気に対しても多少打ち勝てることが出来るようになる年齢。
なので5歳まで無事に成長できたお祝いは盛大に行われる。
今いる村では5歳の誕生日を迎える子供は村全体でお祝いをしている。
って言っても所詮は辺境にある開拓村。
裕福ってわけでは無いので同じ月に誕生日を迎える5歳児がいる場合はその月の1日に合同で誕生日を祝う宴が行われる。
今日はそんなお祝いの記念日だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます