第6話
鐘が鳴る。真琴、美術室の時計を見る。時計は4時。雨が降っている。
真琴、美術室を出て、階段を上がる。とぼとぼ歩く。元気がない。
真琴、階段を上がって3階に来る。階段を上がった直後、夢見に出会う。
真琴、恐怖と不安の顔で驚く。夢見、それには気がつかず、喜んで笑顔で
夢見「あ、真琴ちゃん!今日は校門のところで待ってるね!」
真琴「あ、うん(平常な表情に戻って)」
真琴、夢見の顔をじーっと見る。
夢見、疑問に思って
夢見「どうしたの?」
真琴「う、ううん、なんでもないよ(ごまかし笑い)」
夢見「そう?じゃあ行くね」
夢見、走って階段を下りていく。
真琴、安心して息をつく。
真琴「いつもの夢見ちゃんだ」
真琴、下校時、1階の階段を下りた直後。
新城「水野!」
真琴、新城のほうを振り向く。1階の指導室前の女子トイレから新城がやってくる。
真琴、一瞬逃げようとする。
新城、人のよさそうな困った顔で
新城「水野、助けてくれ!本気で困ってんだ。お前にしか頼めないんだよ!」
真琴、驚く。新城、手を合わせて
新城「なあ頼むよ。な!」
真琴、新城と女子トイレへ向かう。
トイレの中で、一ノ瀬がトイレの掃除用具を窓から急いで外へ捨てて、窓を閉める。直後に新城と真琴が入ってくる。
トイレの構造は、奥のほうから和式、洋式、用具入れ。
新城、まだ善人のような顔で
新城「先生にトイレ掃除しろっていわれてさ、でも掃除用具がどこにもないんだよ」
真琴「え?掃除用具ならここに……」
真琴、掃除用具のドアを開けて中を見てみるが、何もない。
新城と一ノ瀬、あくどい顔でニヤニヤしながら後ろから真琴に近づく。
新城「ほらな?でも掃除しないと怒られるんだよ」
一ノ瀬「だからお前にも手伝ってほしいんだよ!」
真琴が振り返ろうとした瞬間、一ノ瀬が真琴を突き飛ばす。
真琴、床に倒れる。
真琴「ああっ!」
新城「お前が掃除用具の代わりになってくれよ」
校門。雨が降っている。空が暗い。
鏡美と夢見が真琴を待っている。2人とも傘をさしている。普通の表情。少しして、夢見、申し訳なさそうに
夢見「ごめん、私やることがあるから先に帰るよ」
鏡美「え?やることって?(不思議に思って)」
夢見、気まずそうに
夢見「え、えっと……」
鏡美「あ、ごめん!いいよ、また明日ね(笑顔で)」
夢見「うん、ごめんね」
夢見、帰路方向に走っていく。鏡美、寂しそうに見送る。
夢見、角を曲がって鏡美から見えなくなったところで、一度後ろを振り返ってから、スカートからスマホを取り出していじり始める。
スマホの画面はファランクスの画面。夢見の困った顔。
夢見「ポイントが足りないよ。早く集めないと……」
トイレの場面に戻る。
真琴「やめて!やめてぇっ!」
和式のトイレで、一ノ瀬が右手で真琴の髪を、左手で真琴の左腕をつかんでねじりあげ、動けなくし、ひざまずかせている。
新城が真琴の手を無理やりつかんで、真琴の手でトイレの汚物をこすってきれいにしている。
トイレはかなり汚れているが、徐々にきれいになっていく。
真琴、嫌がって脱出しようと試みる。一ノ瀬が髪を引っ張り、腕をよりきつく締め上げる。
一ノ瀬「この!」
真琴「うっ!(痛そうに)」
真琴、目をつむって歯を食いしばって耐えている。
新城「くっそー、藤原のヤツ、ムカつくな……タバコ吸ったくらいでトイレ掃除とかよ」
新城、手を止める。排水溝を拡大。
新城「水野、この奥のほう、お前一人で洗えよ」
水野「そ、そんな……」
新城「あたしの手が汚れちまうだろ!ほら早く!」
新城、真琴の手を、便器の排水溝でない下の表面に向かって踏みつけ、そのまま無理やり排水溝へ滑らせる。
真琴「いた……痛い!」
一ノ瀬、右手で真琴の頭を押す。真琴、嫌がる。
真琴、おずおずと排水溝へ手を伸ばし、排水溝を手で洗う。
真琴、目をそらすが、一ノ瀬が髪をつかんで無理やり直視させる。
一ノ瀬「それにしてもくっせーなぁ!水野、お前よくこんなことやれるよな。ははっ」
真琴「うっ……ううっ」
真琴、顔が涙でぐしゃぐしゃになっている。
新城「おいおい、せっかくきれいな顔が涙でぐしゃぐしゃじゃねーか。だったら、きれいにしないとな」
一ノ瀬、真琴を洋式便器のほうへ連れて行き、真琴の髪をつかんだまま便器の水溜りに真琴の顔を突っ込ませる。
真琴「うぶっ!」
真琴、抵抗して出ようとするが、新城も一緒に押さえつけて出られないようにする。
しばらくそのままして、顔を上げさせる。真琴、ぐったりして床にひざまづいている。髪が濡れている。
真琴「げほっ!げほっ!」
新城「これできれいになったな」
新城と一ノ瀬、トイレを出る。
真琴、その場に座り込んで、うつむいてうつろな目で呆然としている。表情がなく、しばらくピクリとも動かない。
校門、4時半ごろ。
鏡美が校門の校舎側手前で真琴を待っている。ほかには誰もいない。雨が降っていて空が暗く、鏡美と真琴は傘をさしている。
真琴が深刻な表情で、歩いてやってくる。うつむいて落ち込んだ表情。髪が濡れている。
鏡美、真琴に気づく。鏡美、真琴に駆け寄る。鏡美、心配そうに
鏡美「遅いから心配したよ?夢見は用事があるから先に帰るって……」
真琴、一瞬鏡美の顔を見るが、不安な表情になってうつむく。
鏡美、真琴の髪が濡れていることと、真琴の表情が暗いことに気づく。
鏡美、不審な表情になる。心配そうに、真剣な表情で
鏡美「どうしたの?何かあったの?」
真琴「何も……ないよ(無理に我慢して)」
鏡美、はっと気づいて
鏡美「またあの2人にいじめられていたのね!?」
真琴、耐えるような表情で、何も答えない。
鏡美「あいつら……!あんなのに付き合っちゃだめよ!」
真琴、弱弱しく
真琴「無理だよ……ずっとこのままだよ。もう私……死んでしまいたい」
鏡美、傘を落とし、真琴の両肩に自分の両腕を乗せて、強い調子で
鏡美「そんなこといっちゃだめ!気をしっかり持って!強くなるのよ!」
真琴、体を硬直させて、耐えて涙を出す。こらえながら鏡美の両腕を優しくつかむ。真琴の傘が落ちる。
真琴「私の気持ちは、鏡美ちゃんにはわからないもの……」
真琴、非常に激しい調子で
真琴「変われない人だっているんだよ!」
鏡美、戸惑う、悪いことをした、という表情で困惑する。真琴から手を離す。
真琴、我慢できなくなり、取り乱して激しく泣き出す。
鏡美「あ、あの……」
真琴、泣きながら走っていく。
鏡美「待って、真琴!」
真琴の自室、夜7時。真っ暗。雨は止んでいる。
真琴、帰った直後で、ドアを開けて部屋に入る。うつむいて暗い表情。
ベッドの前で膝をつき、荷物を投げ出し、ベッドに顔をうずめて静かに泣き出す。
真琴「鏡美ちゃんが一番私のこと心配してくれてたのに……」
真琴「鏡美ちゃんに嫌われて、もう友達でいられなくなったらどうしよう」
真琴、目をつむって
真琴「どうしてこんなことになったんだろ……もう私、消えてしまいたい」
真琴「鏡美ちゃん、ごめんなさい……ごめんなさい……」
真琴、そのまま眠ってしまう。
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