第3話

午後7時、真琴の家。真っ暗。

外は真っ暗。真琴の自室。真琴の自室は2階。

真琴の机にはパソコンのほか、学校で使うノートや教科書が開いたままにしてある。

真琴の机のパソコンはついていて、ファランクスのログイン画面になっている。

真琴、夢見に電話をかけて、夢見が電話に出たところ。


真琴「あ、夢見ちゃん?今ね、ファランクスの最初の画面なんだけど」

夢見「来てくれたんだね?ありがとう!」

真琴「鏡美ちゃんも来てるの?」

夢見「まだだよ。とりあえず、そのままゲームをスタートして」

真琴「うん」


パソコンの画面になる。

実名(姓名それぞれ)と学校名あるいは勤務先を入れる欄がある。「名前と学校名または勤務先を入れてね」と書いてある。


真琴「これ、本名をそのまま入れればいいの?」

夢見「うん」


「水野」「真琴」「若狭女子高校」と入力し、「次へ」をクリック。

真琴のデフォルメキャラクター(アバター)が生成される。名前はそのままで「真琴」

アバターが右に表示されていて、左には「能力値を入れてください」と書いてある。

能力値には「知力」「身体能力」「魅力」の3項目がある。各項目の満点は10点で、使えるポイントが15点と書いてある。


真琴「能力値ってなに?」

夢見「自分のキャラクターの能力だよ。頭のよさとか魅力とか、決められるんだよ。それぞれ10点満点で、最初は15点分を振り分けられるんだよ」

真琴「うーん……どうしたらいいの?」

夢見「適当に入れてもかまわないよ。全部5点でいいんじゃない?」


能力値に全部5と入力する。


真琴「私、こんなに頭よくないよ。運動もできないし、魅力も……」

夢見「ゲームの中では何でもできるんだよ。そんなに深く考えることじゃないって!」

真琴「そうなんだ」


「次へ」をクリックすると、通行証を選ぶ画面になる。


真琴「通行証?」

夢見「よくわからないけど、ファランクスで遊ぶには通行証っていうのが必要なんだって。好きなの選んで」

真琴「どれでもいいの?」

夢見「見た目が違うだけで、効果は同じだよ」

真琴「そっか、じゃあ……」


花の髪飾りを選ぶ。一度アップして表示され、「これでいいですか?」と表示される。「OK」をクリックすると、アバターに通行証が髪飾りの形で追加される。

画面が若狭女子高校の玄関になる。

画面右側に、上から今日の日付とログイン者名、現在位置、移動先の選択肢が表示されている。

今日の日付は7月3日で、ログイン者名は「水野 真琴」「河南 夢見」と書いてある欄があり、それぞれに「ログイン中」と表示されている。またログイン名の横に「詳細」の欄が用意されている。

現在位置は「玄関」、移動先には、「↓外へ出る」「←美術室前」「→階段を上がる」。ゲームの中の天候は晴れ。


夢見「それで最初の設定は終わりだよ」

真琴「これ、いま学校にいるの?私たちの学校の玄関?」

夢見「そうだよ。ゲームを始めたらいつも学校の玄関から始まるよ」

真琴「ふーん、今から何したらいいのかな?」

夢見「何してもいいんだけど……そのへん適当に歩いてみたら?」

真琴「うん、わかった」

夢見「それじゃ切るね。それと、右上の私の名前の詳細ボタンをクリックすると、私がどこにいるかわかるからね」

真琴「ありがとう。じゃあひとまず切るね」


真琴、電話を切る。パソコン画面が終わり、真琴が電話を切る場面を表示。

再びパソコンの画面を表示。


真琴「えっと……詳細ってこれかな?」


カーソルを夢見の名前の「詳細」へ持っていき、クリックすると、夢見の状態が画面に追加画面の形で表示される。

夢見の欄には、「名前 河南夢見」「学校 若狭女子高校」「ログイン状況 ログイン中」「現在位置 体育館」「所属コミュニティ」と表示されている。


真琴「所属コミュニティ?」


所属コミュニティのところをクリックすると、夢見の所属しているコミュニティが表示される。それらは順番に

「オンラインゲーム全般」「ソーシャルゲーム愛好会」「愛犬コミュニティ」「アニメ・漫画大好き」「パソコンゲーム」

最後に「次のページへ」


パソコン画面を抜けて真琴の顔を表示。


真琴「夢見ちゃん、いろんなコミュニティに入ってるんだ……あっ!(驚いて)」


再びパソコン画面に。「次のページへ」をクリックした直後の画面で、コミュニティ欄に以下のように表示されている。

「現代アニメを語ろう」「家庭用ゲーム」「かわいい猫の画像を集めよう!」「血液の病気のコミュニティ」

マウスカーソルが血液の病気のコミュニティのところに止まっている。

真琴の顔。真琴、不安な表情。手を口に当てて


真琴「なんで……血液の病気?これって、まさか……」


パソコン画面、血液の病気のコミュニティのところをマウスカーソルがうろうろしている。

真琴の右手を表示。クリックしようかどうか迷っている。

しばらくして真琴の顔を表示。


真琴「ううん、大丈夫だよ!夢見ちゃんのお医者さんだって、必ず治るっていってたんだし!(強がって)」


パソコン画面、夢見の詳細欄を消し、移動先を選ぶ画面に。移動先は「↓外へ出る」「←美術室前」「→階段を上がる」がある。

少し迷って、移動先の「→階段を上がる」を選択。

画面がフェードして静止画が入れ替わる。アドベンチャーゲームのような仕様になっている。

画面がパソコン教室の前になる。移動先は「↓階段を下りる」「←パソコン教室」「↑図書室前」

真琴の顔を表示。


真琴「ほんとに学校そのままなんだ(驚いて)。パソコン教室には何があるんだろ?」


パソコン画面を表示。移動先で「パソコン教室」を選択。

画面がパソコン教室に。ここには「ゲームコミュニティ」がある。画面左に「ゲームコミュニティ」と書いてあり、その下にコミュニティの概要と、投稿されたトピックが更新の新しい順に並んでいる。

コミュニティの概要の欄には、「管理人 芽衣」「メンバー数 4人」「公開レベル 全国に公開」

説明欄には「ゲームが好きな人が集まるコミュニティです!若狭女子高校のパソコン教室で活動してます!他校の方大歓迎!!」と書いてある。


真琴「これがコミュニティ?」


画面がアップで概要→説明欄と移動。

以下、チャットの文章は声ではなく文章として表示。


チャット:芽衣「こんばんは、真琴さん」


真琴の顔を表示。


真琴「わ、人いるんだ(驚く)。え、えっと……」


真琴、キーボードを打つ。そんなに早くない。

パソコン画面。最大3行表示できるチャット。


チャット:真琴「こんばんは。えっと……芽衣さん」

チャット・芽衣「若狭女子の子だよね?ここはゲームのコミュニティだよ。4人しかいないけどね」

チャット:真琴「いまほかにも誰かいるんですか?」

チャット:芽衣「4人ともいるよ」


翔一、優奈、大樹の3人はほぼ同時に文章が出る。


チャット:翔一「こんばんわー」

チャット:優奈「ゆうなだよー」

チャット:大樹「よろしく」


チャット:真琴「水野真琴です。よろしくお願いします」

チャット:芽衣「いまファランクスのゲームやってるんだけどさ、見てみる?」


パソコン画面にゲームの画面が中央あたりに表示される。

ボンバーキングのようなゲーム。ただし登場キャラクターがかわいい動物。

舞台が南極で、主人公がペンギン。十字キーで動き回り、ボタンで氷を投げつけて敵を倒して先へ進む。投げている間は硬直していて動けない。

敵はアザラシ、ペンギン、白熊、シャチ、クジラ、アホウドリなど。

真琴の顔。


真琴「あ、このゲーム……やったことある」


パソコン画面。しばらくゲームが進んで、敵にやられてしまう。


チャット:翔一「あー、ちくしょー、またやられた」

チャット:優奈「ぜんぜんだめじゃん」

チャット:芽衣「誰もクリアできないねぇ……」


真琴の顔。キーボードを打つ。

パソコン画面。


チャット:真琴「あの、私はできないんですか?ゲーム」

チャット:芽衣「ええっ?できるけど、難しいよこれ?」

チャット:真琴「やったことあるんです、このゲーム」

チャット:翔一「マジで?」

チャット:大樹「おお!」

チャット:芽衣「それは期待できるかも……ちょっと待って」


画面に「ゲーム開始」のボタンが追加される。


チャット:芽衣「これでやってみて!」


真琴の顔。キーボードを打つ。

パソコン画面。ゲームをクリアする。「GAME CLEAR」の表示が出る。

以下の文章はほぼ同時に出る。


チャット:大樹「おおー!」

チャット:翔一「マジか!?」

チャット:優奈「やるじゃん!」


少し遅れて。


チャット:芽衣「すごーい!ありがと!みんなクリアできなくて困ってたんだよ!」

チャット:真琴「たまたまですよ。やったことあったから」

チャット:芽衣「それでもすごいよー!」


真琴、照れてる。


チャット:優奈「ねえ真琴さん、ここのコミュニティに入ってよ!正式に!」

チャット:大樹「そうですよ。これからも手伝ってください!」


真琴、ちょっと戸惑う表情。

突然パソコンから効果音。パソコン画面。右上に「川崎鏡美さんがログインしました」と出る。真琴、少し驚くが、そのままキーボードを打つ。

パソコン画面。


チャット:真琴「ちょっと考えさせてください。ファランクスも今日始めたところなんです」

チャット:芽衣「そっかー、いいよ。でもまた来てね!絶対だよ!」

チャット:真琴「はい、それでは失礼します」


パソコン画面、パソコン教室から移動しようとすると。


チャット:翔一「天才の真琴さん、待ってますよ!」


真琴、表情が驚きと喜びになる。

パソコン画面。パソコン教室から出て、ログアウトのボタンを押す。

ログアウトのボタンを押すと、「ログアウトしています」という表示がしばらく表示され、突然画面が真っ暗になる。

パソコン画面に「ねえ、こっちの世界に住みたい?」と出る。

真琴、疑問に思う表情。

パソコン画面に「こっちにはあなたをいじめる人はいないよ」と出る。

真琴、驚いて不審に思う表情。

真琴の視点で、画面がゆがみ、周囲全体がゆがんで見える。

真琴、驚いて恐怖する。うつむいて、両手でおでこを押さえる。しばらくして手をどけて顔を上げる。周囲をきょろきょろ見ながら


真琴「なに、今の!?」


真琴、目をぱちぱちさせて、落ち着いて


真琴「……疲れてるのかな」


真琴、ベッドの中。眠れずにいる。考えている。

「天才の真琴さん、待ってますよ!」という文字が、真琴の頭の中で繰り返される。

「また来てね!絶対だよ!」の文字が真琴の頭の中で繰り返される。

真琴、寝返りを打って、ぼーっと考えている。

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