第2話

帰り道。4:30ごろでまだ十分明るい。空がやや晴れてきている。

南川沿いの道。真琴、鏡美、夢見の3人が下校中。

鏡美が真ん中、真琴と夢見はそれぞれ右端、左端で並列して歩いている。


夢見「テストの点数悪かったなぁ(やれやれ、という表情)」

鏡美「それじゃ、復習しておかないとね(微笑して)」

夢見「えー、勉強やだー(嫌そうに)」

鏡美「もう!(しょうがないなー、という表情)」

夢見「私は鏡美ちゃんみたいに頭よくないし、勉強しても無駄だよー(開き直った表情で)」

鏡美「がんばれば成績上がるよ(やれやれといった表情で)」


真琴が元気がない。それに夢見が気づいて心配そうに


夢見「真琴ちゃん、どうしたの?何かあったの?」

真琴「え?(はっとして)ううん、なんでもないよ(微笑して)」


鏡美、気まずそうな表情。心配そうな顔。


夢見「そう?ならいいけど……元気出してね?(心配そうに)」

真琴「うん、ありがとう(うれしい)」


夢見、真琴、笑顔になる。

少し間をおいて、夢見、元気そうに二人に向かって話す。鏡美も楽しそう。


夢見「ねえねえあのね、ファランクスっていうゲーム、知ってる?」

鏡美「ファランス……ファランクス?」

夢見「うん!パソコンで遊べるオンラインゲームだよ。スマホでもできるよ!」

鏡美「へぇ……おもしろいの?」

夢見「おもしろいよー?そうだ、鏡美ちゃんと真琴ちゃんもいっしょにゲームやろ?」

鏡美「そういうのあんまり興味ないんだけどなぁ……なんで?」

夢見「えへへ……(ちょっと気まずそうに)友達を誘うとポイントがもらえるんだぁ」

鏡美「なぁんだ、そういうことか……(やれやれな表情)」

夢見「だめ?」

鏡美「うーん……それどんなゲームなの?」


夢見、スマートフォンをスカートのポケットから取り出し、楽しそうに笑顔で鏡美と真琴に見せる。


夢見「これ!」


画面いっぱい、スマートフォンの画面。

若狭女子高校の校舎の概観が映し出される。

スマホ画面のまま。


夢見「これがゲーム画面だよ」

鏡美「これ、私たちの高校じゃない?」

夢見「そう!現実と同じ世界が舞台なんだよ」


真琴、鏡美、夢見のスマホを見ながら驚く。


真琴、鏡美「へー!」


再びスマホの全画面になる。ヘルプ画面が開いて動画の説明になる。

概念説明図になる。ファランクスの世界では、グループ単位で世界に入り、それぞれのグループは別のグループとは接点がない状態の図が示される。


夢見「ファランクスにはね、グループっていう単位で入れるんだよ。たとえば私と真琴ちゃんと鏡美ちゃんで入ると、こんな感じで……」


ヘルプの画面、グループに真琴、鏡美、夢見がいる。そして別のグループが2つある。


夢見「私たち3人がファランクスの世界に入ると、ファランクスの学校の中には私たち3人だけとしか会わないから安全なんだよ」

鏡美「ふーん。でも3人だけで何するの?ゲーム?」

夢見「ゲームで遊ぶこともできるよ。でもね……」


ヘルプの図にコミュニティの概念が加わる。それぞれのグループをコミュニティでつなぐ線が入る。


夢見「コミュニティっていうのがあってね、その中ではほかのグループの人たちとお話したりできるんだよ。ほかの人たちと友達になったりして……うーん、部活みたいなものかなぁ?たとえばねぇ……」


スマホの画面、愛犬コミュニティの画面に切り替わり、犬の写真が出る。


夢見「これ、愛犬コミュニティっていうんだよ。犬が好きな人たちが集まって、写真とか投稿してるんだよ」


鏡美、真琴、目を輝かせて。


鏡美、真琴「かわいい!」


夢見「ね、いいでしょ?やろっ!(満面の笑顔で)」


鏡美と真琴。


鏡美「うん!(笑顔で)」

真琴「いいよ(笑顔で)」

夢見「ありがと!(笑顔で)あ、それとね……」

鏡美、真琴「?」

夢見「このゲームにのめりこみすぎるとね、ゲームの世界に入れるっていう噂があるんだよ?」

真琴「えー?(苦笑い)」

鏡美「そんなわけないでしょ……(あきれて)」


夢見、ゲームの画面を見ながら


夢見「ゲームの世界に入れたらいいのになぁ……勉強しなくていいし、テストもないし……みんな仲良しで、いじめとか絶対に起こらないんだよ?」


真琴、はっとしたように夢見のほうを見る。

真琴、夢見のスマホを覗き見る。気になる様子で。スマホが拡大。


本郷駅を降りた直後の場所。5時半ごろ。まだ明るい。夕焼けがとても明るい。空がオレンジ。

鏡美だけは地下道から帰るので、そこで別れる。鏡美と真琴・夢見は少し距離がある状態。

夢見、鏡美に向かって、少し大きな声でいう。


夢見「帰ったらログインしてね!ばいばーい!」


鏡美、夢見、真琴、手を振って別れる。


本郷駅からまっすぐ南へ100mくらいのところ、道路と田んぼがあるところ。

二人併進して、夢見はやや道路の真ん中側を歩いている。

夢見と真琴がしゃべりながら歩いている。


夢見「真琴ちゃんに合いそうなコミュニティは……なんだろ?」

真琴「どんなコミュニティがあるの?」


真琴、夢見のほうを振り向いて突然心配な表情に変わる。

夢見、その場にうずくまっている。両手で互いのもう片方の二の腕をつかんで、苦しそうにしている。息切れしている。


真琴「夢見ちゃん!」


真琴、夢見に駆け寄り、周囲を確認して抱きかかえる。

夢見をお姫様だっこで移動させ、道端の草むらへ運び、寝かせる。

真琴にとっては重いので、真琴もかなりしんどそうに運ぶ。


夢見「はあ、はあ……ごめんね」


真琴、右手を夢見のおでこに、左手を自分のおでこに当て、熱を比べる。熱はない。


夢見「ありがと。大丈夫だよ、ちょっと疲れただけ(それほど苦しそうではない)」

真琴「ほんとに?」


夢見、上体をゆっくり起こす。


夢見「もう平気だよ(笑顔で)」

真琴「よかった」

夢見「ごめんね、重かったでしょ?」

真琴「平気だよ。それより……夢見ちゃんのその病気って、いつか治るんだよね?」


夢見、顔をそらせて気まずそうな表情。真琴を正面から見ずに


夢見「う、うん……治る……よ」


真琴、心配そうに夢見を見ている。

夢見、あわてて


夢見「ほ、ほんとだって!時間かかるけど、必ず治るって!お医者さんもそういってたし!」

真琴「そうだよね。絶対、治るよね(笑顔)」

夢見「うん!(笑顔)」


夢見、立ち上がって、二人で歩き出す。

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