ファランクス

ヴァレー

第1話

時間:真昼、晴れ。

場所:ある学校(若狭女子高校の使いまわしでいい)の3階の廊下、3-1の前~音楽室手前あたり。

瑞穂(みずほ)と由香里(ゆかり)がしゃべりながら音楽室方向へ歩いている。

服装は夏のセーラー服。

由香里のほうが瑞穂より少し前を歩いている。


瑞穂「へー、なんていうゲームなの、それ?」

由香里「ファランクスっていってさー」


由香里、振り返ながらしゃべる。


由香里「すっごい面白いんだよー?」


誰もいない。周辺一帯、誰もいない。

しばらくそのまま。


由香里「瑞穂?」


由香里、辺りを見回す。


由香里「瑞穂?どこ行ったの?」


由香里のすぐ後ろにもう一人の由香里がいる(ただし姿は黒で塗りつぶし)。ニヤリと笑って由香里に近づき、手を伸ばし、掴みにかかる。


/////////////

オープニング


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7月、午後4時。天候は晴れ。日が斜め。日光の色は黄色。

若狭女子高等学校(学校名は提示しなくていい)、放課後の帰り際。鐘が鳴る。

3階廊下、3-1教室方向から真琴が音楽室方向へ歩いてくる。

生徒の服装は夏のセーラー服。


真琴、元気のない表情でテスト用紙を見ている。

真琴「(あと半年で大学受験か……)」

テスト用紙、点数が21点、バツが多い。

ホール前廊下の交差点を通りかかったときに、ホール前にいる新城と一ノ瀬。


新城「おい、水野!」

真琴「新城さん?」


真琴、気がついてテスト用紙をかばんに隠す。

新城と一ノ瀬が近づいてくる。あくどい表情。


一ノ瀬「ちょっと付き合えよ」


真琴「今日は早く帰らないと……」

新城「なんだよ、あたしら友達だろ?」


真琴、うつむいていやそうな顔。


新城「テスト返ってきたんだろ?見せろよ」


新城と一ノ瀬、あざけるようにニヤニヤしている。

真琴、怖がってかばんを背に隠す。後ずさる。


真琴「ごめんなさい、今日は……」


真琴、逃げようとする。

新城、真琴の手を引っ張ってホール前に無理やり連れて行く。

真琴、手を引っ張られて痛そうにする。


新城「見せろっていってんだよ」

真琴「い、痛い!」


新城と真琴でかばんを取り合う。


真琴「んんっ!」


新城、一ノ瀬を見て


新城「おい、一ノ瀬!」


一ノ瀬が真琴を腕ごと強く抱きしめて、真琴はかばんを落とす。


真琴「うあっ!」


新城、ニヤリと笑い、真琴のかばんを取り上げて、テスト用紙を取り出す。

真琴、一ノ瀬から脱出しようとするが、できない。

新城、テスト用紙を見ながらあざけるように


新城「水野、お前ほんっっとうにバカだな」


新城、真琴と一ノ瀬にテスト用紙を見せつける。21点の数字がよく見えるように。

一ノ瀬、真琴を見て


一ノ瀬「脳ミソ腐ってんじゃねぇか?」


一ノ瀬、いかにも馬鹿にしたような口調で


一ノ瀬「あーあ、水野真琴は21点かぁ!(わざとらしく大声で)」


真琴、不安そうに


真琴「やめて!大声でいわないで!」


新城、テスト用紙を高く掲げてひらひらさせて


新城「水野真琴のテストの点数は21点でしたーーっと!(わざとらしく大声で)」


真琴、泣き出す。

新城、一ノ瀬、愉快な気分になって嘲り笑う。

鏡美、教室から音楽室の廊下を歩いていて、真琴たちに気づく。不審な表情で近づく。

鏡美、怒って


鏡美「ちょっと!あんたたち何してんのよ!」


一ノ瀬、新城、驚いて鏡美のほうへ振り向く、一ノ瀬は真琴を離す。

真琴、一ノ瀬から少し離れて、少しよろめく。弱弱しく


真琴「鏡美ちゃん……」

新城「こいつ、川崎鏡美か……」

一ノ瀬「川崎って、学年成績でいつもトップ10番以内に入ってるヤツか?」


鏡美、真琴に近づき、二の腕をつかんで心配そうな表情で


鏡美「真琴!……泣いてるの?」

真琴「ううん」


鏡美、真琴の顔をよく覗き込んで


鏡美「泣いてるじゃないの!」


鏡美、新城と一ノ瀬をにらみつけて


鏡美「あんたたち!」


新城、一ノ瀬、気まずい表情。


新城「ちっ(舌打ちする)」

一ノ瀬「新城……」


新城、後ろを向いて撤退する。一ノ瀬、新城を追う。

新城、少し後退してから顔だけ振り向いて、真琴に向かって。


新城「お前みたいなバカが、何でこんな優等生と仲がいいのかわかんねぇな」

一ノ瀬「優等生かよ……ムカつくな」


新城と一ノ瀬、背を向けて階段のほうへ歩いていく。


鏡美、にらんでいる。真琴、不安そうな顔。

鏡美、真琴のほうを向いて心配そうに


鏡美「あの二人にいじめられていたのね?」


真琴、無理して笑顔を作って


真琴「大丈夫だから」

鏡美「大丈夫じゃないでしょ!」


鏡美、スカートのポケットからハンカチを取り出して、真琴の涙を拭いてやる。

鏡美、心配そう。真琴、落ち込んだ表情。


鏡美「あんなのにかまってちゃだめよ」

真琴「無理だよ。逃げられないよ……」


鏡美、真琴を軽く揺さぶって。


鏡美「そんなことないから!がんばって、強くなるのよ!」

真琴「う、うん……」


鏡美、手を離して直る。表情が通常に戻る。


鏡美「……帰ろっか」


真琴、少し元気が戻る。表情が普通に戻る。


真琴「うん」


玄関。下駄箱前の廊下に夢見が立っている。


鏡美「夢見!」


夢見が真琴と鏡美に気づいて振り向き、笑顔になって手を振る。

真琴と鏡美が夢見のところへやってくる。

鏡美と夢見は笑顔、真琴は普通の顔。鏡美と夢見はうれしそうに話す。


鏡美「待たせた?」

夢見「ううん、帰ろ!」

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