草木が芽吹く頃 ※今回は春休みのお話です。

柔らかい日差しのなか、満開を迎えた梅花の香りを纏った暖かな風が吹く。

教室の窓から河川敷を見ると、約1ヶ月前には雪が残っていたとは思えないぐらい、草木が芽吹いて若葉色の絨毯が広がりつつあった。


南の方では桜が開花したり、満開の地域もあると、今朝見ていたニュースで流れて来ていた。

こちらでは桜の開花はもう少しかかる。

蕾は膨らんできたから、あと一週間程だろう。


ぼうっと外を眺めているうちに、各部活の部長による、新入生歓迎会(という名の部活動紹介)をテーマとした部長会議は終わっていた。

今日は活動をしてる部の生徒と会議出席の各部長以外は春休みのため、校舎内は普段より静かだ。

なんなら、鳥の鳴き声が聴こえるくらい。


1週間後には120名程の新入生を迎える入学式がある。

園芸部は入学式に向けては特に忙しくなる。

生徒を出迎える校門の花壇や、玄関までの通路に置く鉢植えに花苗を植え込んで、新入生を祝う準備があるからだ。

そのための花苗や植え込むレイアウトなどは、事前に部活内で話し合ってある。

この時期に植え込める花苗の種類は限定されている上に、代々の先輩方が記録してくれていたレイアウト表もあったため、数日ほどで案はまとまった。


今日の部長会議の後は、事務室の事務員さんと打合がある。

植え込みに使う花苗の手配とレイアウトの確認、植え込みにかかる人員の確認の為だ。

実はこの部活は地域交流も兼ねており、花壇や鉢植えに植え込む作業をする時は地域の人にも手伝ってもらっているのだ。

花苗も地元の花卉農家さんの育てた花苗を植え込む。

そして、花壇と学校が写り込んだ写真は、毎年町の広報の5月号の表紙になる。


花苗が届くまでにしておく作業の確認まで済ませて事務室を出ると、時刻はお昼近くになっていた。


ふと、去年の景色を思い出す。

去年は桜の開花が早く、入学式の時にはちょうど満開を迎えて、1週間後の新入生達が学校に慣れ始めた頃に、新入生歓迎会が午後の時間全て使って行われた。

先輩が花壇の前で園芸部の活動案内をしている時、ちょうど風が強く吹き、花壇の両側にある桜の花びらが舞って桜吹雪を起こした。

咲いているアリッサムやノースポール、ムルチコーレ、キンセンカなどの色とりどりな花壇に降り注ぐ花びら。

桜吹雪にはしゃぐ新入生もいて、私の目にはとても綺麗に映った。


今年はどんな景色になるだろうか。

植えてある花を別に気に止めなくてもいい。

ただ、これからの新しい学校生活で、少しでも背中を押す力になれればと思う。


今日は園芸部の活動はお休みだったので、このまま家に帰ることにする。

真っ直ぐに帰るのもいいけど、暖かいし春めいてきたのでちょっと遠回りをして帰ろうと、花壇を確認しながら帰路についた。


花壇には昨年秋に植えたチューリップの芽が芽吹き、ムスカリも花開く手前の蕾が上がってきていた。

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