青春の放課後
柚月ゆう
放課後の音~秋の音色~
開け放たれた窓から、秋の夕暮れをまとった風が入り込みカーテンを揺らす。
雑踏が去った校内は静かだが、部活に勤しむ音が聴こえる。
もうまもなく、街の防災無線から夕暮れを告げるメロディーが流れ出すだろう。
ドヴォルザーク作曲、交響曲第9番「新世界より」第2楽章「ラルゴ」。
優しく伸びやかな曲調でありながら切なく郷愁を感じる、ノスタルジックな曲。
日本では「家路」で有名だ。
流れ始めたメロディーに合わせて奏でるはヴァイオリン。
無感情な防災無線から流れるメロディーに、優しく切ない音色が重なる。
一分程の短いメロディーだが、窓から漏れ聴こえる音に足を止め、聴き入る人が何人か。
また、何人かが曲が終わるとちらりと窓を見上げ、それぞれが歩き出す。
次は何を奏でようか。
目の前に広がる楽譜をぱらりとめくる。
数ページめくったところで、課題曲のページが開いた。
そろそろ課題曲の練習に戻ろうとしたところで、携帯が鳴った。
流れるのはエルガー作曲、作品12番「愛の挨拶」。
1日の始まりを告げる、優しく温かい、柔らかなメロディー。
エルガーが愛する奥さんとの婚約記念に贈ったとされる、慈愛に満ちた曲。
一番好きな曲だ。
電話の相手は、同じ部活の子だった。
合奏練習が始まるから音楽室に戻ってくるようにとのこと。
一度ヴァイオリンをケースに仕舞うと、使っていた教室の戸締まりをして出た。
合奏練習が終われば帰る時間だ。
帰りにコンビニに寄ってお菓子でも買って帰ろうかな。
そんなことを思いながら、音楽室へ向かって行った。
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