Ⅱ
……本当に面倒だな。これからどうなることやら……。
× × ×
しばらく、歩くことにした。
結構、歩いたのにいまだ草原の中にいる。
でも、時刻は午後一時を回っている。まだ日が沈むまで時間がかかるだろう。現実の世界がどうなっているのか気がかりである。
この草原で夜を明かしたら、面倒だな。
少しでも安全圏内に出ればいいのだが……。
ここに来るまで、誰にも会わなかった。合わなかったのが不思議なくらいである。
「ギャァアアア‼」
「なんだ? 今の鳴き声は……」
モンスターの鳴き声が近くで聞こえてきた。鳴き声は、後方から聞こえる。
振り返ると、そこには狼ぐらいの大きさをした四足歩行のモンスターがいた。
牙をむき出しにして、こちらを睨みつけている。
ダークウルフか……。それにしてもまあまあなレベルだな。
「レベルは30。これぐらいは誰でも倒せるな」
敵対する相手に向かって、俺は剣を抜いた。
これでもMOBの上位ランカーである。レベルは86。
一度、腕試しでもしてみるか。ここが本当にMOBの世界ならできるはずだ。
仮想空間に存在する自分の肉体が、この世界でどういう風に動くのか再確認する必要がある。
「ヴォオオン!」
ダークウルフはこちらを見て、雄叫びを上げる。
間違いなくこいつは俺を狙っているようだ。強いものに戦いを挑むのは素晴らしい。
さーて、どうやってどうやって攻撃してくるかな?
ダークウルフは瞬発的な反応力がある。
襲い掛かってきたダークウルフを剣で受け流す。
そして、炎の魔法を剣にのせて、一刀両断する。
「うん。体はどうやら思っていた以上に動けるようだな。仮想空間でありながらでも素晴らしい」
剣の先を腕にチクッと突き刺す。
——いたっ! おいおい、嘘だろ。血が出ているじゃねぇか。
つまりこの世界は現実だ。仮想空間ではない。ゲームでは血は一度も出なかったはずだ。
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