一章ノ弐ノ中 夢か幻か

朝、目が覚めると土のせいか、古びた木のせいか、古民家独特の匂いが立ち込めていた。


 起き上がり周囲を見渡すと、6畳ほどの小さな空間がそこにあった。

 クワや鎌、藁草履、作りたてのカゴに傘、そして槍のような棒が辺りには散らかり、壁からは板の隙間から光が差し込んでいる。


「ここは…どこ?僕はなんでこんな所に?」


「おかしいなぁ。僕はちゃんと家に帰って寝たはずだけど。」


 狛は部屋着ではなく制服姿だった。そして、すぐ側には木箱も置いてある。


"あ、でもここに木箱があるや。間違えてどこかに迷い込んだのかな?"


「中身はどうなんだろ。」


 帰りに見つけて持って帰った木箱かと思い中を開けて確認すると、やはりその木箱は拾ったものだった。


「やっぱ僕が拾った木箱だ。」


 念の為、中に入ってあった小刀を持っておくことにした。


 狛は、小刀を手に立ち上がり、部屋の中を見渡す。


 "心当たりのないものばっかりだ。ほんとにここはどこなんだろう。"


「外、でてもいいよね。」


 扉のようなものに近づき、恐る恐る手を触れて開けてみる。


 前方に広がったのは、段々に連なった田んぼと当たり一面の緑であった。


「すごいなぁ。こんな景色、初めてみたよ。」

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