一章ノ弐ノ上 不思議な体験

20XX年-4月26日-16時18分-愛媛県-松山市-道後公園

放課後


 本庄狛は、友人の一条爽真と河野氏の居城であった湯築城ゆずきじょう跡にある道後公園に来ていた。


「やっぱり何回来てもこの公園はいいね。」


「そうか?俺にはわからんけど、狛は城好きだもんな。」


「そうだよ。城はロマンが詰まってるからね。まるでタイムスリップしたみたいに、過去に近づけるんだからさ。爽真君は城になんか興味ないのになんでついてきたの?」


「暇だったからに決まってるだろ?今日は部活がオフなんだよ。」


「休みの日くらい、家でゆっくりしたらいいのに。」


「休みの日だからこそ友達と遊ぶんだろ。」


「ほう。まぁいいや。喉乾いたしなにか飲まない?」


「お、いいな!スタバでも奢ってやるよ。」


「じゃあ抹茶で。」


「俺はバニラにしようかな。よし、行こう!」


 2人はスタバで飲み物を頼み、たわいもない話をして解散した。


 その帰りに、狛は不思議な声を聞く。


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19時23分


 本庄狛が一条爽真と別れて帰路について暫くすると、狛は自分の心に違和感を感じる。まるで別の人格が存在するかのように声が響く。

 自分の心に響く自分の声。しかしそれは、完全に狛の意識の外から発せられている。


 不思議に思った狛は足を止め、目を閉じ、響く声に耳を澄ます。


「……は…国の…に、名…た……の窮…を助…たまへ。」


「き…は戦…の世に、名…たる将の…地を…けたま…。」


「きみ…戦国の世に、名だ…る将の窮地を助…たまへ。」


 同じ言葉が3回繰り返され、静かに消えていった。


 ところどころ聞き取りにくい箇所があったが、おそらくこんな内容だろう。


 あなたは戦国の世で、名だたる将の窮地を助けなさい。


"どういうこと…?"


 考える狛が前を見ると、大きな木箱が置いてある。


"こんなのあったっけ…。"


 恐る恐る木箱を開けると、中には服の様な物が入っていた。着物に似たそれは、丁寧に作られた藍色の陣羽織であった。

 その下にも何か入っていた。ずっしり重いそれは脇差の様な小刀だった。


"ほんもの?"


 狛はなぜこのようなものが落ちているのかわからなかったが、誰かが落としたのだろうと思い、後日警察に届けることにした。


 大きな木箱を持って帰り、食事と風呂を済ませた狛には何をする気力もなく眠りについた。

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