勇者に恋をしたモブな子爵令嬢、家を追い出されたので勇者を探し出して添い遂げますわ。~勇者は、長くて白い髪が特徴の美少女ですが。なにか?~
第35話 後見人と言ったの憶えていませんか?何故勇者(男)だからですか?助けて貰う気はありませんが?
第35話 後見人と言ったの憶えていませんか?何故勇者(男)だからですか?助けて貰う気はありませんが?
前足の鋭い爪を弾き返すナディアの剣戟。
激しくぶつかり合う様は、飛び散る火の粉と響く衝撃音がこだまする。
ナディアの剣がフロストフィアスウルフの毛を切り裂くも、その白いけが血で滲む事は未だにない。
それにしても、まさかナディアから『マリベル。私が行く。援護おねがい』ってどんだけ戦闘狂なのかしら?
いや、いいえわかっているわ。そのフロストフィアスウルフぐらい対等に渡り合えないと、あの剣士カインと並べないって思っているのでしょう。愛するが故なのは、こちらもですわっ。
「ファイア、ボール!!」
時折あそこで固まっている青の勇者ソラ一行に何度も視線を向け迫ろうとしているフロストフィアスウルフの行動を阻止、当てるわけでもなく地面を焦がしているだけですけど。
「おまえ、なぜ当たらないっ。できないなら、そんな下手な魔法使うな」
「そうよ。へなちょこっ」
青の勇者ソラの怒鳴り声が飛んでくると、魔法使いのアズリも自慢げな顔をして見下してくる。騎士ラピスと治癒術士マリンも頷いているわ。
でも、あなた達何もしていませんわ。それなのになぜ?
「でしたら、参加してくださいませ。魔法が放てずに立っているだけですか?武器が振るえず立っているだけですか?」
「なにっ!?」
「にゃにおーっ」
あら、あの魔法使いのアズリは可愛らしい返答するのですね。できたらアイリスにして貰いたかったですけど。
ただの遠吠えで、状態異常の恐慌状態になるなんて……。
それもこれも、この勇者がふがいないせい。いやあの剣士カインのせいですわ。あぁむしゃくしゃしてきました。
「ナディア。私もはい――――」
「俺たちも行くぞ」
「「「はいっ」」」
剣を抜きフロストフィアスウルフに突き付けるのは青の勇者ソラは、騎士ラピスと共に駆ける。
フロストフィアスウルフに向き合う瞬間、防御魔法が2人いや4人に掛かる。そして幾つもの大きな氷柱の先がフロストフィアスウルフへ降り注がれる。見事な連携をみせる戦いの場から引いてきたナディアの嫌悪な顔。
「急に割って入ってきやがったあの青髪男」
「でも、良い戦いをしていると思うわ」
「マリベルが言うから――――そうなのか?」
頷く私。良い戦いをしているのは本当ですけど、彼らでは決定的な決め手がないのよ。もし彼らがフロストフィアスウルフの弱点を突くような策があれば良いけど。
「それにしても、結構耐えている」
「フロストフィアスウルフの攻撃も躱しているし。なんたって攻撃を加えられているから凄いですわ。さすが青の勇者様です」
『ふん、当たり前だっ。俺は勇者だ』
『『『キャーーーァッ』』』
あら、こういう言葉は地獄耳なのかしら?
フロストフィアスウルフとの攻防の中で何故格好付けられるのでしょう?それに、彼女らは喜んでいるのはもはや病気と言うより呪いの類いでしょうか?呆れて頭が痛くなりそうですわ。ナディアは全く気にしてないようで、いつでも攻撃態勢ですの。
青の勇者ソラ達とフロストフィアスウルフの臨戦が激しくなる。
「アズリ、マリン。もっとだ」
「これ以上掛けても無駄です」
「ヤツに剣の刃が入らない。皮膚が硬いのか毛が邪魔しているのか!?」
「私が、狼を引き連れるから。ソラはあれを」
「わかった。ラピス、耐えてくれ」
剣を地面に突き刺し、魔法を使うような構えをとる青の勇者ソラ。私とナディアはその行動を見守る。
ソラは天に向け大きく広げた手を高らかに上げ、「マイティパワーブーストォォッ」と大声を上げ、仲間達がひかりに包まれる。
「だいぶ、魔力を持ってい勝てたが。狼野郎、これでいくぞっ」
髪を掻き分けた手で剣を抜き取り、切っ先をフロストフィアスウルフに向け高らかに宣言する。
フロストフィアスウルフの鼻の付け根にしわが集まり鋭い牙がむき出しになる。
「全能力向上の魔法。勇者がもつ魔法の1つだわ」
「でも、もうすでにあの魔法使いや治癒術士によって掛かっていたんじゃ」
「あれは、それを踏まえてさらに能力を爆上げするヤツよ」
「それなら」
「青の勇者ソラとその仲間はかなりのレベル――――腕前って事だわ」
青の勇者ソラ達の攻撃がフロストフィアスウルフを圧倒する。フロストフィアスウルフが全く攻撃の手を出さず防御に徹している。攻撃の手を休むことなくたたきつける青の勇者ソラたち。
『マイティパワーブースト』使えるレベルって事?たしか女神さまはそんなに使ってなかったですわ。結構後半の時だけしか――――魔将シワンマガイの戦いもそうでしたが、少し違っているのでしょうか?それよりも、弱点を突くことができていませんわ。ゴリ押しでいけると思ったのなら青の勇者ソラ。それを使ったのは愚策では?
グゥルルルルルゥゥゥゥーーーー!!
グッルルルルルゥゥゥゥーーーー!!
グゥルルルルルゥゥゥゥーーーー!!
喉を鳴らすフロストフィアスウルフは、後ろに大きく飛び移り威嚇し始める。
「不味いわ」
「なんで?」
「あいつ、フロストフィアスウルフが……」
私の叫びと共にフロストフィアスウルフが大きく口を開くと身体全体から発せられる冷気と咆哮がほとばしり、辺りを震撼させていく。
その振動に耳を塞ぐ者、耐える者、膝を着く者がでる。
「大丈夫か。みんな?」
「私は大丈夫だ。マリンとアズリが」
「アズリ。マリン動けるか?」
「私は、手や足が痛い」
歯を食いしばっているアズリだが、何も返答をしない。
「アズリ――――麻痺状態か……。マリン直せるか?」
首を横に振るマリンは顔を下げ「この手じゃ」と見せてきた手は淡白色に腫れている。
グッウゥオォォォォオオォォォン!!
遠吠えが再び辺りを震え指す。その泣き声に青の勇者ソラと騎士ラピスが構え苦い顔をする。
「ソラ。気づいたか?」
「何がだ?」
「掛けて貰った能力向上の魔法全てが消えた」
「なにっ――――まじか」
喉を鳴らすフロストフィアスウルフの口角が上がり、ゆっくりと一歩前へ前へと青の勇者ソラ達に迫る。
すこしづつ後退する青の勇者ソラと騎士ラピス。動けないマリンとアズリの元に近づいていた。
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