勇者に恋をしたモブな子爵令嬢、家を追い出されたので勇者を探し出して添い遂げますわ。~勇者は、長くて白い髪が特徴の美少女ですが。なにか?~
第36話 ある程度強くなると回復手段は殆ど魔法頼りになってしまいますが、アホですか?現実を理解した方が宜しいですわ
第36話 ある程度強くなると回復手段は殆ど魔法頼りになってしまいますが、アホですか?現実を理解した方が宜しいですわ
絶体絶命の危機の青の勇者ソラ達。回復役の治癒術士マリンは喋れるも魔法が使えず、ましてや魔法使いのアズリは麻痺で身動きできない。
なぜ、でしょうか?道具を使えば宜しいのではないでしょうか?私は疑問に思っているのですが、回復する道具をもってきてないのか? 戦いになるのだからそれは無いでしょうけど、もしやその選択肢がないのか?わかりませんわ。回復する手段をまさか魔法一択にしているわけではありませんよね?
「マリベル。見ていられない」
「そうね。見ていたら状況悪くなりますわ」
私とナディアは、青の勇者ソラとへと視線をむけながらじっくりと迫るフロストフィアスウルフへ駆ける。
「ファイアァァボォォーール」
フロストフィアスウルフが火球に気づくと避けるように後へと飛び移る。
さぁ、お遊びお時間ですわよ。狼さん……お遊びですから飽きるまで何発も放ってあげますわ。
幾つか辺り毛が燃えるも地面で擦らして消している。
「マリベルは、彼らを」
「えっ。あぁーー。――――はい」
回復できない彼らを助けてあげなくてはいけないのですね。こんな格好付け男を称える女を助けるとは……まぁいいですわ。仕方ないです。もし何かあったら貴族から反感を買ってアイリスの場所を知ることができませんわ。ここは貸しを作るって事で。
「おい、平民の冒険者。なにする?」
青の勇者ソラが私を止めようと手を伸ばすが、届くわけもなく膝を着いて動けない治癒術士マリンを見下げる。目を見開き恐怖する顔。
なにやら怯えていますわ。まぁ、あの時の睨みがいまは逆の立場ですわ。それを思い出したのか顔が引きつっていますけど。
治癒術士マリンの顔の前に手をひろげる。
「わ、わたし。殺されるようなこと……しま……した?」
「ふん。うるさいですわよ」
私の手から発せられる光に目を閉じるマリン。青の勇者ソラと騎士ラピスの激怒が飛ぶ。
「正体をあらわしたか。平民の冒険者――――いや殺人鬼」
「マリン、マリンに何をした?」
「ずいぶんと酷いことを考えるのですね。少しは人と言うものを信頼したらどうです?」
「なにを!?殺人鬼に信頼をおけるかぁっ」
「そうですか……」
広げた手を倒れている魔法使いアズリへと向け光を放つ。
「き、貴様っ。アズリにぃ」
「――――治っている」
「麻痺が消えた。どうなって?」
「なに?」
私は剣に手を掛け青の勇者ソラと騎士ラピスの間を通り抜ける。
「ふぅ。治癒したのですわ。あなた達は後見人としてただそこで見ていなさい」
彼らは黙ったまま立ち尽くす。私は、気にすることなくそのまま剣をぬきフロストフィアスウルフへ突撃。
横に薙ぎ払い、剣を大きく振り回す。その軌道が幾つもフロストフィアスウルフの脚や身体を通る。そしてナディアの斬撃も。
「明らかに、フロストフィアスウルフはおかしいですわ」
「おかしいって?」
「先ほどの【凍てつく咆哮】は単なる能力向上の魔法をかき消すだけのはずが、冷気ダメージと異常付加されているわ」
「つまり?」
「さっきの攻撃に注意ってことですわ」
「あ、あぁ」
冷気ダメージと併せて状態異常を起こすのは【凍える波動】のはずが合わさっていたわ。わたしのギフトにある【魔物図鑑】と若干の食い違いがあるってことかしら?もしこの先同じ魔物でも違う能力を扱うのも出で来るかもしれませんわ――――。
今まで真っ白かった毛並みは赤く染まり強いては一部焼け焦げてふらつくフロストフィアスウルフ。
グゥルルルルルゥゥゥゥーーーー!!
グッルルルルルゥゥゥゥーーーー!!
グゥルルルルルゥゥゥゥーーーー!!
喉を鳴らすフロストフィアスウルフは、後ろに大きく飛び移ろうとするも「それをさせるわけにはいかない」とナディアは叫びながらフロストフィアスウルフへ襲いかかる。袈裟斬りが入る。噴き出す血が地面と毛を染め上げる。
そして、さらに身体を左右へ揺るがすフロストフィアスウルフは、振るえる脚で倒れることに耐えているようだ。
あそこで身構えずに攻め込み一撃を入れることが【凍てつく咆哮】を食い止める手段ですわ。ナディアは知っていたのでしょうか?もし知らなかったらかなりの戦闘狂でありますわね。
「さぁ、マリベル。たたみかける」
「ええ、蹂躙の時間ですわっ」
動いてなかった分暴れさせていただきますわ。高ランク依頼のランク上昇、アイリスへの足がかり。
私の視線がフロストフィアスウルフの眼を直視。少し後退するフロストフィアスウルフは、意味不明な怯えをみせる。
震える脚で身体を支えつつ私たちの猛撃を反撃しようとするが、鈍い攻撃になっていたフロストフィアスウルフの攻撃は当たらない。
何もできず身体至る所から血を流し、ついに赤い眼が白くそのまま横転。
「やったか!?」
青の勇者ソラの一言に私は、ハッとする。その言葉は敵との戦いで言ってはいけないと女神さまが言っていましたわ。
「ナディア。離れて」
「なんだ。コイツ」
白くなった目がジワジワと黒く染まり、やがて黒いオーラをまといだしたフロストフィアスウルフ。
「青の勇者ソラ。魔障よ」
「魔障だと」
「トドメを――――早く!!」
声を荒げる私の言葉に青の勇者ソラが、駆けつけフロストフィアスウルフの頭に剣を突き察す。
「まさか、魔障が発生するとは」
青の勇者ソラは、空に向け大きく手をかざし何やら呟き終えるとその手をフロストフィアスウルフに向け振り下ろす。
大きな震動音の発生する方へと視線を向けると、巨大で青白い水晶のような氷の塊が落下し地鳴りと共にフロストフィアスウルフの身体は押しつぶされる。氷の塊が徐々に黒い魔障を吸い取っているような光景に見とれつつ、吸い終わったのか砕け散り消え去った。
青の勇者ソラと仲間から歓喜の声。ナディアのガッツポーズ。
トドメを刺した青の勇者ソラは、格好付けながら剣を鞘にしまい踊りのような仕草で振り返ると、まっすぐな視線で私を見る。というか睨んでいる。
「なによ」
「俺は青の勇者ソラ。平民の冒険者であるお前を仲間にする」
「はい?」
青の勇者ソラの言葉に私はもちろん、ナディアとソラの仲間である女3人も唖然としていた。
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