勇者に恋をしたモブな子爵令嬢、家を追い出されたので勇者を探し出して添い遂げますわ。~勇者は、長くて白い髪が特徴の美少女ですが。なにか?~
第27話 交差する想いは同じ、心からの言葉で結ばれる指と溶け込む温もり。
第27話 交差する想いは同じ、心からの言葉で結ばれる指と溶け込む温もり。
魔将シワンマガイの強力な威力で振り回す大剣を、大盾で防ぎその隙に他の者が魔将シワンマガイに攻撃を繰り出す。
しかし、魔将シワンマガイの向上した防御力や素早さで防がれ躱される。
「強い」
「だけど、攻撃はわかる」
「勝てるっ。これは勝てるぞっ!」
「でも、油断は禁物です」
「白いの!!」
勇者4人が横並びで言い合うと、魔将シワンマガイが、大きな口を開け出す。
「「「「させるか(ないわ)」」」」
大きな口へと勇者4人が襲いかかり、魔将シワンマガイが口を閉じ大剣を振るい出す。
勇者4人まともにあっても居ないのに連携できるのは、すこし嫉妬をしてしまうわ。もちろんアイリスと連携できるのがうらやましいだけよ。
かなり遠いため近づくのが遅くなってしまったが、まだ勇者4人とその仲間は健在。
と思っていた最中、魔将シワンマガイが大きく飛び上がると、大剣を空高く振り上げ大きく振り下ろしながら着地する。
大地は割れ、噴き上げる岩に土塊が、勇者4人とその仲間へ降ってくると同時に魔将シワンマガイは大剣で地面をえぐり、砂塵をまき散らす。
一部目に入り視界を妨げられた者、岩や土塊で痛手を喰らう者が現れ、動きが乱れ出す。
そこに魔将シワンマガイの大剣が大きく振り下ろされ何度も地面が割れ抉られ、地面の破片が彼らに襲いかかる。
勇者パーティーそれぞれ、土塊や石を防ぐ。赤の勇者グレンのパーティーはエンレイが大盾で身を潜め、アイリスもパーティーの魔法使いと神官の魔法で防いでいる。他の二組のパーティーも襲いかかる土塊を難なく防ぐ。
魔将シワンマガイの顔の中心が赤く燃えるように紅潮し雄叫びを上げだす。
ウギャォオオォッオオォォォオォッ!!
その雄叫びに驚く勇者4人とその仲間。
「シワンマガイは雄叫びあげると、強烈な攻撃をしかけるわ」
「マリベル。なぜっ」
「動き出したわ。走るよナディア」
「えっ。あっ!!」
間に合って。私は心の中で願う。
魔将シワンマガイは両腕を大きく左右に広げ、大剣を横に掲げだす。
あれ、あの動きって大剣を横に払い交差して、そのまま重なった大剣を上へと振り上げるという良くわからない動きだった記憶が……。
ブッオォォオォォォオッォォォ!!
防御に徹する勇者4人と仲間に魔将シワンマガイの大剣が前方へと薙ぎ払われ……。
もしかして、あの動きっ。地面を抉るって事だった?
あと少し、息を乱しながらも大きく腕をふり足を前へと駆ける私。ナディアも着いてくる。
しかし、魔将シワンマガイの大剣の刀身が、地面を削り中に埋もれる。
グッヌゥッボォッオォォオォォォッ
魔将シワンマガイの雄叫びに大剣を持ち上げる。勇者4人と仲間のいる地面が盛り上がる。
足下が揺れ慌てる勇者4人と仲間が叫びだし動きが乱れる。
あのまま、地面を持ち上げ上空に彼らを舞い上げる。そして、落ちてくる勇者達にシワンマガイの斬撃が入るわ。
身動きできない空中で縦横無尽の攻撃になすすべ無く傷つけられる。アイリスだけは、アイリスだけでも……。
浮き上がる地面が脆くも崩れ、砕かれた土や石が、かれら4つの勇者とその仲間、計16名に襲いかかる。身動きできない空中で身を屈める彼らをほくそ笑んで眺めている魔将シワンマガイが大剣を大きく振る上げる。
「シールドだっ」
「防御しろっ」
勇者達の声が飛び交う中、魔法を使える者は即座に、防御系の魔法を放つ。
それしかできない彼らに、魔将シワンマガイの大剣が振り下ろされる。
「アイリスっ!!」
私の叫ぶ声に体に力を込め飛び、精一杯手を伸ばしアイリスの腕を掴む。
掴んだ腕を引き、アイリスを抱きかかえる。
――――やっと、やっと……。
目を丸くするアイリス。
大剣の刃が、彼らを襲っている。
私は、アイリスを抱えた途端、直ぐに着地し、その場から離れる。
悪いけど、彼らには……。
鼻をすするアイリスの表情は、真っ赤に。涙で潤った瞳からこぼれる雫。その表情は悲しみを感じない。
「本当に、本当にマ、マリベルっ……なの?」
「ええ、アイリス」
その返答に、アイリスは私に抱きつく。
私の耳元で泣いているアイリス。
苦しい程の圧迫だか、苦しい感情より嬉しいと、申し訳ない気持ちだった。
「長い間、マリベルに会いたかった。会いたくて会いたくてっ」
「私も」
私の返答で、耳元にあった顔を引くアイリスは、目を潤わせたままムッとした表情で私の目を見つめる。
抱きかかえていたアイリスは、自ら降りて地に足をつける。
「突然、居なくなって……私のきもち考えてくれてたの?」
「考えてい……」
「いないわ。私のこと全くわかってない」
「ええ、わからないわ!!」
「!!」
私の言葉に驚くアイリスの両頬に私は手を添える。
「全く知らないわ。アイリスの瞳の色。それにアイリスの肌。そして――――」
近い顔が更に近く、私はアイリスの唇を奪う。
「……」
「……」
「……」
「――――唇のやわらかさ。伝わる鼓動。今知ったわ」
「私もマリベルの事、勝手に知っていたつもりだったの。私もマリベルの本当の気持ち今知ったわ」
体を寄せ合い抱く私とアイリス。
しかし、そんな幸せな時が続かない。
アイリスの声だけが、幸せの空間に漂う風として耳に入って来てほしいと願うが、この場ではそうは行かなかった。
他の勇者3人とその仲間が、ボロボロになりながらも魔将シワンマガイの大剣を防ぎつつ応戦をしている声と、大剣を振り回しているシワンマガイの叫び声が邪魔をする。
「アイリス。まずはアイツを倒してから」
「ええ。マリベルとの心安らぐ時を邪魔されたくないわ」
顔を合わせ共に頷く私とアイリス。
そこに、頬を赤らめ微笑むナディアが駆け寄ってくると、アイリスの仲間である剣士カイン・アルフォーリスも顔を真っ赤に、ナディアに顔を合わせないような仕草をしながら近寄ってくる。
「ナディア。うれしそうね」
「マリベルも」
頷く私に、ナディアも笑顔で答える。
「みんな、魔将シワンマガイにトドメを刺すわ」
「そのわけのわからない者のたすけ……いいえ、魔将シワンマガイを倒しましょう」
アイリスの言葉に剣士カインとあと2人が頷く。
同時に、アイリスと私は魔将シワンマガイにむけ視線をうごかす。
隣に居るアイリスと固くつないだ手の平が密接、そしてお互いの指をいれ密着する。
この戦いの決意の熱量がお互いの指を通し、心に脳裏に伝わっていた。
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