勇者に恋をしたモブな子爵令嬢、家を追い出されたので勇者を探し出して添い遂げますわ。~勇者は、長くて白い髪が特徴の美少女ですが。なにか?~
第10話 女性として身につけるものは麗しく。赤の勇者と遭遇でがっかりですわ。
第10話 女性として身につけるものは麗しく。赤の勇者と遭遇でがっかりですわ。
ガラバディゴス伯爵が治める領地サウザリアウスの領内にあるクルエールの街。
太陽が高くあがり日差しが強くなる頃から人の声が飛び交い、賑やかになるのが布団にくるまっている私の耳に入ってくる。
本当にうるさいのよ、静かに寝ていたいのに。
聞こえないようにちょうど良いくるまり方を探している。だが、ベットの脇少し上から斜めに突き刺さる視線と威圧。
いつも、布団はぎ取られて起こされていたけど……まさか!!
「マリベル、起きなっ!!」
「なんでぇぇぇぇっ!」
「へっ? なんでじゃいわよ。早く組合行かないと依頼が無くなる」
「はい? なんで無くなる?」
「奪い合いよっ」
一瞬、アイリスのあの時の笑顔が過ぎる。
私は飛び起き、すぐさま着替える。汚れても良いドレスを着て胸当て付け、篭手とすね当ても。
私の着替えにガン見するナディア。
ナディアの視線を合わせると、慌てふためくナディアに私は笑顔を送る。
「着替え変?」
「いや、令嬢だから着替え出来るのかなぁって」
「大貴族でもないし、子爵の娘だったから結構自分でやってたのよ」
というか、メイドのアンナは私の着替えをやらなかったわ。王族や公爵なら付き添いメイドが複数いるからわかるけど、子爵の家だから違うのかも。しかしナディアの目線はそれでは無いと私の直感が申す。
「それよりも、直視すぎない?」
「えっ、あぁ、だから出来るのかなぁ〜って」
「本当の事を言ったら?」
「何よ。本当の事言っているじゃない?」
「だって、着替えなんてここまでの移動でもしてたし、なんなら寝る時にもパジャマに着替えてたし」
ニタリと口元が緩む私の表情。ナディアは唾を飲む。
「はぁ、マリベルの下着なんでそんなに綺麗なのって?」
「下着?」
「そうよ。普通、洗濯するか沢山の換えを持ってないと」
「ナディアは、持ってるの?」
「一応数枚、さっき洗ってきたばかり。なんでマリベルは沢山持っているのかなって」
《メニュー》の中にある【アイテム】に入っているの。家から出る時に着替えや必要そうな物を全て持ってきたわ。メイドのアンナも荷物用意してくれてたし、それも含めて洗濯する必要が無さそうなほど大量にあるんだけど。
そう、魔法の家庭教師が、魔法で洗濯したり、お風呂の湯を沸かしたり等、生活魔法というものがあると教えてくれた。
結構、細かな調整が必要で、私、魔法を使うのは《メニュー》から【魔法】で選べは簡単に使えるのだけれど、生活魔法は難しいかった。でもある程度はできるのよ。乾かしたりとか。
「洗濯したんでしょ。乾かそうか?」
「乾かす? 出来るの? どうやって?」
明らかに不審がっている表情のナディア。
私の笑顔で、さらに不審がる。
「魔法よ。魔法」
「なっ、燃やされたりしたら――――もう替え無いんだからっ!!」
寝室から部屋を出ると、ナディアが血相を変えて私を追ってきてきたが、既に私の視界には 陽の当たるリビングに五、六枚 もの真っ白な下着がそよ風に煽られているのが入ってくる。
「ナディアの事だからもしかしたら、外に干しているのかと思った」
「わ、わたしだって女なんだから!!」
怒るナディアをよそに私は下着に目掛け【
「何……その魔法?」
「王都から来た魔法の家庭教師から教えてくれて、これは洗濯物など乾燥させる魔法よ」
湿っていた下着が、次第に乾いていくのが手に取るようにわかる。
少し呼吸が乱れる私。
ナディアは、乾いた下着を畳んではバックにしまっている。
「マリベルどうした?」
「わたし、まだそんなに能力高くないから。冒険者新人だし、今の魔法で結構魔力持ってかれちゃって」
「はぁ、うそ……嘘じゃなさそうね」
「心配事は無くなったから早く冒険者組合に行きましょ」
私の言葉にナディアは頷き宿を出て組合に向かう。
その途中でナディアは、「心配事、なんて無いけど」と首を傾げているけど、私がナディアの目を見る。
「宿の人が、部屋を掃除に入るんじゃないの? 入ったら下着が並んで干してたら……」
「あっ……」
ナディアは、目を丸くする。
掃除をする人が男性だったら、あの部屋をみてどう思うか。
ナディアは、結構顔が良いんだから。
◇ ◇ ◇ ◇
クルエールの冒険者組合に入ると、壁に群がる冒険者達。
隙間から見えるのは、壁に貼られた依頼を我先にと奪う光景。
ナディアは、頭を抱えその奪い合いが静まるのを、ただ眺めている。
来る道中ナディアから「手始めに受付に行って」と言われてたので、私はカウンター越しで受付待ちの女性に声をかける。
「あの――――」
「はい、依頼の確認ですか? 冒険者登録証を見せてください」
私は、登録証を出そうと手に取る時、冒険者達の声が一斉に消えると、受付の人含め私以外全員が入口へと視線を向ける。
手を止めてしまった受付の人の目は、私を通り過ぎていたので私はその視線を追うように振り返る。
入り口に立つ真っ赤な髪をした若い男性がズカズカと中に入ってくる。その男の後ろに三人の美女。1人は甲冑を、もう1人は、とんがり帽子のに黒色のローブ、そして高位な司祭の服装した女性の3人が赤髪の男の後を追うよう入ってくる。
目付きが鋭いが顔は整っていて、あのゲームの中では攻略対象の一人だものね。
だけど、私は絶対に〜パスよ!!
何故かといえば、赤髪の男は、まるでここにいる冒険者達を見下すような、あの目付きに不愉快な笑みにイラッとするわ。
私は赤髪の男の素性を知っているが、1度もお互い顔を合わせた事は無い。
赤髪の男は、私の顔に視線を一瞬だけ移し通り過ぎる。
「おい、この俺にふさわしい依頼あるか?」
「えっ、あっ、はいっ。赤の勇者グレン様っ!!」
「ふん、この勇者グレンに見合ったヤツをなっ。そこの陳腐な女に早く雑草抜きの依頼を渡してやれ」
はぁ? 雑草抜きだってぇ!? まぁ、新人ですからやってやりますけどぉっ! 俺様的勇者がぁっ、何事も全て自分が上ってヤツが気に食わないのよっねっ。
心の中で怒鳴り散らす私を抑えつつ、私もカウンターの受付の人の目を合わせ告げる。
「私に、この赤でやっと目立つ事が出来た男よりも、色鮮やかな花が咲いた花壇のある雑草抜きをお願いできないかしらぁっ」
口元がヒクヒクとし、カウンターに握る拳を振るえさせる赤の勇者グレンが、私に睨みつけてくる。
「はぁ、陳腐女ぁぁっ!! この勇者グレンが赤だけだとぉっ」
「あらっ、赤の勇者さまぁ〜だかなんだか言われてるし。赤しか取り柄がないのでは?」
「おいっ、受付のっ」
「はいっ!!」
「見つかったのか? オレが受ける依頼だっ!!」
「えっ、あっ、はい」
「そこの陳腐な女のはっ?」
「えぇ、マリベル様は『無印』なので……」
「あぁぁぁっ! 無印だぁっ。新人かぁっ」
「新人ですがぁ、何か?」
受付の人はアタフタしているけど、私を睨む赤の勇者グレンの目を逸らさず睨み返してやる。
赤の勇者グレンは、舌打ちをし私を見下す。
「オレは今なっ『B』なんだよっ。つまり先輩だっ」
「『B』なのですか。私はてっきりその顔立ちからして『C』いや『D』かと思いました」
「顔立ちだっ?」
「ええ、男としての魅力が――――ですわ」
私の言葉に歯を食いしばる赤の勇者グレンが、カウンターを叩き建物内に響く大きな音を立てる。
受付の人含め冒険者全員が驚き、再び視線が私のいる所へ向けられる。
「この陳腐な女。受ける依頼に同行させてやる」
「勇者グレンさまっ、それはっ」
「ふん、オレは勇者なのだ。ド新人のゲストを護る事は出来る」
何この、俺様スゲェをアピールしてくる方法。
どこかの兄に若干似ているのよね。
まぁ、いいわ。上位ランク同行で稼がせて貰うわ。
早く、ランク上げてアイリスの元に行くのだから……これはある意味ラッキーになりそう。
壁に貼られた依頼を見ていたナディアが、戻ってくるや赤の勇者グレンと一緒にいる3人の美女の1人に声をかけている。
「シエンお姉さん!!」
「あら、ナディア。どうしてここに?」
「今現在問題の渦中にいる女性――――マリベルとパーティー組んでいるの」
「なら、いまグレンさまが、あの子を依頼に付き添わせると言ってたの。またナディアと一緒になんて何年ぶりかしら」
まるで聖母のような美しさと優しそうな笑みをするシエン。
目を丸くするナディアの視線を受け私は、ため息を吐く。
勇者グレンは、ナディアの姉に向かってさわやかに微笑みながら。
「良かったなっシエン!!」
「ええ、ありがとうございます。グレンさま」
この勇者グレンのパーティーの関係性はっどうなってるの?
シエンに向けられたグレンの笑顔の時、他の2人の美女の表情が、強ばるのを目にする私。
グレンの好感度が高いのはシエンって事――――のようね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます