第7話 やっと家からでられて冒険者に。募る思い早く届けたいですわ。

 私は今、貴族社会では嗅いだことの無い少し臭さを感じる冒険者組合で、冒険者に登録し終えた。

 15になりやっとスタートラインに立っている。

 これで、アイリスに会いに行ける。

 毎夜、【人物図鑑】でアイリスの姿が見えるが、詳しい情報や操作が出来ない。手は届くのに、ただ眺めるだけなんて切ない。私の心は全てアイリスへの想いで埋まっている。しかしこの目で見たのは12の時、それから3年後の姿はこの【人物図鑑】やあの時ゲームという世界の中でしかない。

 

 私は、ネックレスのような登録の証を眺めている。

 屋敷を出る前、かなり揉め事になったわ。

 父親と兄に姉の3人が同意見だったが、魔障の調査から戻った兄の意見が一変した事に2人は心底驚いていたようだ。

 

「フォクス……マリベルの除名と冒険者になることを認めると?」

「お兄様、何故数日で変わってしまったのですか?」

「済まない……お父様、メリア。だが、この家の為にマリベルは出ていってもらうしかない。俺はそれを賛同する」

「家の為? それならアーモンド家に貰ってもらったほうが、それ以上の家の為は無いのだぞ」

「私も、同感です。ですが、お兄様――――何かあったのですか? 何か隠しているような……」

「マリベルは、マリベルは」

 

 兄の青ざめた表情、視線は私に向けられる。しかし私は無表情のまま兄の視線を受け取る。そっぽをむく兄は、その表情のまま父と姉に訴えかける。

 

「本当に家の為――――なんだ。こいつをマリベルを早く」

「フォクス、何をそんなに恐れてる?」

「お父様、ここはお兄様の意見を尊重しマリベルを除名した方が良いと思います」

「メリアまで……うむ〜」

「お父様、アーモンド家には、国家に反逆するギフトだと伝えれば納得し、マリベルが行くことも無くなるのでは?」

「それなら、嫁ぐ事を許さぬだろうからな。しかし領主様や国王陛下に何て言えば」

 

 頭を悩ませる父と姉。兄はただひたすらうつむいている。

 無心で聞いていたわ。

 本当に自分達の事しか考えてないのですわね。兄の意見に素直に受取って私を送り出してくれればいいものを。

 まぁ、3人から睨まれようと、私には関係ないのですが。

 

「あの〜お父様。以降の考え私が出ていってからでもぉ?」

「ふん、旅の支度金替わりだ」

 

 父親は、重たそうな小袋を睨みながら私にめがけ投げつける。両手で受け取ったが手のひらが痛いけど、ここでも平然としますわ。

 

「今までありがとうございます。では」

「おい、マリベル?」

「なんでしょう? お兄様……」

「おまえ、先の戦い。どこで覚えた?」

「あら、私3年間王都からきた家庭教師から教わりましたわ。それに加えて、私なりのやり方を取り入れてみましたのよ」

「あんな戦い方……」

「お兄様。あまり私の前でベラベラと喋らないでください。お兄様が弱く見えてしまいます」

 

 お兄様、何故呼び止める? 私は早くこの屋敷から出たいのよ。それに何故今それを問うのかしら?

 そこにお父様が、目の色を変え「マリベル! どういう事だ?」と突っかかってくるが、それを無視し部屋を出る。

 中から机を殴るように叩く大きな音。

 それすらも気にもとめず、一直線に外へ向かう。

 途中、メイドのアンナと合流し大きなバッグを運んでもらってるわ。玄関の所でお母様が、たってたので挨拶を。

 

「お母様、今までお世話になりました」

「いいわ。下手な言葉を並べるより、素直になりなさい」

「お母様、ありがとうございます。私はお母様だけが……」

「いいのよ。マリベルの道は険しいどそれで良いと思うわ。それに」

「それに?」

「私も、あの男とその思想が同じ2人に呆れてます。でも、もっと上手く出来たでしょうに?」

「ええ、でもこれがっ……がはっ」

 

 左頬に強烈な痛みが、いや痛みはほんの少しだけ、じんわりと伝わるのは心。

 

「これは私の怒りよ」

 

 涙目のお母様は、初めて。その横にメイドのアンナがハンカチを渡しているわ。

 

「マリベル……私の可愛い子。この先、慎重に上手くやりなさい」

 

 その言葉を告げる母親に寄り添うメイドのアンナ。

 寄り添う? いやあれは抱きついて、アンナ顔が赤い……ってもしかして。

 

「お母様?」

「運命の人を見つけたのなら頑張りなさい。私は、見つけたからここに留まっているの」

「はいっ」

 

 大きなバッグを持ち、私はあの屋敷を後にした。

 まさか、お母様とアンナが……全く知りませんでしたわ。

 追い求めれば、得られる確率が増えるということですね。

 私は、アイリスと――――。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 私は今冒険者組合で登録を終えている。

 登録時に色々チェックや書く所があって困ったな。

 登録証は、片手に収まる程の板に鎖が付いてペンダントになっている。私の登録証の枠には、何も記載されてない。

 

「まぁ、マリベルは何も結果を残してないからな」

「どういうことなのです? ナディア」

「私のように『B+』とコレがランク」

 

 登録した時に受付の人から教えてくれたランク。無印から始まり、F、E、D、C、B、A、Sへランク分けされる。もちろんSが一番高い。ナディアの『+』はランクでも幅広いため活躍によって付与されていると言っていた。

 鼻高々に登録証を見せてくるナディアは、私がこの場所に入った途端、仁王立ちで私の前に立ちはだかったのだ。

 新規登録者をけなし嫌がらせをする冒険者もいるらしく、見た目が若ければ若いほど、さらに男性より女性とその行為が増長するらしい。

 ナディアのような高ランクが付き添いであれば、それも無く私は、問題も起こさないで済んだ。

 

「マリベル、私の兄が会いたいって。だから会ってあげてよ」

「遠慮しますわ。ナディアが付き添ってくれたのは有難いですけど。むさくるし男共とは会いたくないですわ」

「そう言わないで、むさくるしいのは合っているけど。ここの組合長だからさ」

「組合長……ここを管理している方ですか?」

「ええ、そうよ。他の街にある支所と情報つながってもいるし」

 

 情報は武器と言いますわ。私にとって勇者四人の動きはギフト《メニュー》から【人物図鑑】で形跡がわかります。てすが、それはゲームの中での話。実際それが合っているか分かりませんから――――ここは会って情報を仕入れるのが得策ですわね。

 

 

「分かりましたわ。私の質問に答えてくれるかしら?」

「答えると思うわ。兄も沢山聞きたいらしいし」

「十五歳の私が答えられる事など少ないですわ」

 

 奥の部屋へと案内するナディアから何か不穏な空気が伝わるが、私は背中に流れる冷や汗を感じていたが微笑みは絶えさずその部屋へと入る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る