Episode5.少女の願いは竜との旅路の先に
少女と竜は食い扶持を稼ぎ中
「いやぁ、街を素通りして森に入らなくてよかったよ。余分に
そう言って、ティシェから袋を受け取った旅人は、ほくほく顔でそれを下ろした自身の荷へと詰め込んだ。
かんっ、と荷に括りつけられた
「旅にこいつは助けられるからな。と、これは代金な」
ちゃりんと音を立て、ティシェの手に硬貨を落とした。
ティシェは落とされた硬貨を数え、確かに受け取った、と一言こぼし、それを財布に入れていく。
「あの森は深いからな。夜は見通しも悪くなる。役に立てたのなら、私も嬉しいよ」
「君は森を抜けて来たところ?」
「そんなところだ。食料も心許なかったし、ここで路銀稼ぎも兼ねてる」
だいぶ肥えてきた財布を見、そろそろ引き上げてもいいかもしれないなと思う。
「なるほど。確かにここは稼ぐにはいいのかも」
旅人が周囲を見渡す。円形に石畳が敷かれた広場。
その端に場所を借り、ティシェは布を広げて灯種を並べていた。
そしてまた、行商人らしき者達もティシェと同じく広げた布に品々を並べている。
広場の中央部には噴水があり、街で暮らす人々の憩いの場になっているらしいここは、ちらほらと街人の姿が見受けられる。
談笑して盛り上がっている人々。笑い声を響かせながら駆けて行く子供達。
離れた所では、グローシャが子供達に囲まれ、灯の珠を出しては喜ばせている。大人達にもそれが珍しいようで、目を丸くしている様が遠目にも見えた。
そんな中、広場までやってきた街人が、並べられた品々を目移りさせながら練り歩き、気に入った品物があれば代金を支払う。ちょっとした市場にもなっていた。
その買い物をする人々の中には、先程ティシェから灯種を買った彼のように旅人の姿もある。
森の手前に位置したこの街は、森へこれから足を踏み入れる者や森を抜けてきた者がよく立ち寄るらしい。
準備や補充地点として繁盛しているようだ。
だから、稼ぐにはいいのだ。ティシェの並べる灯種だって、程よく売れて、しばらくの食い扶持になった。
「さて、オレはそろそろお暇するな」
荷を背負った旅人が、近くで待たしていた
「あ、少し待って欲しい」
「ん、なんだ?」
足を止め、顔だけで振り向いた旅人が首を傾げる。
「訊きたいことがあるんだ」
ティシェの乏しい表情下に真摯な色が滲み、旅人は身体ごと振り返った。
きちんと聞く姿勢を見せてくれた彼に感謝をしつつ、ティシェはゆっくりと口を開く。
「――星願の竜、の噂を耳にしたことはあるだろうか?」
―――――
全五話構成です。
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