目玉
生首が捨てられている場所がある、と聞いて見に行ってみたら、ただマネキンが捨てられているだけだった、というような経験はあるだろうか。僕はある。
けれど、今回はその話ではない。今回の話に出てくるのは「目玉」だ。
小学校低学年の頃、ある場所に目玉がたくさん捨てられているという噂が流れた。ある場所というのは、住宅街から少し離れた場所にある、森林公園のような場所だ。
近隣住民にとっては憩いの場として人気の場所であり、緑地の中の川はそれなりに綺麗だったが、獣道の先にポツリとあるような水場の中には、溜まった水が淀んでいるような場所もあった。それはそれで、多様な環境の確保のために意図的に確保されているのだろうと思う。
そんな水場の一つに、目玉が浮かんでいた。
一つや二つではない。二十前後の黒目の目玉が浮かんでいた。
近くの木には看板がくくりつけられ、注意書きが書かれていた。「オオヤンマです / 触らないでください」だったか「クロヤンマ / 危険」だったか、そんなことが書いてあったと思う。とにかく、トンボの卵なんだと思った記憶がある。
不気味とはあまり感じていなかった。そういうものだとすっかり納得して、たまに様子を見ていた。変化があったのは、最初に目玉を見つけてから二ヶ月ほど経ったある日のことだった。
その日、目玉は三つほどを残してほとんど無くなってしまっていた。代わりに、セミの亡骸が大量に転がっていた。本当は目玉はセミの卵だったのか、それとも卵の中身とセミが天敵関係や寄生/共生の関係にあったのか、あるいはセミを集めていた近所の子供が目玉を見つけて、コレクションの中身をすっかり入れ替えることに決めたのか。全ては推測の域を出ないことだった。
いずれにしても、それは落ち葉の季節のことで、セミの亡骸が転がるには、少し季節外れだった。
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