睡眠

 睡眠に入るその瞬間というものの記憶を持っていると、自信を持って言える人は少ないと思う。


 小学校に入るか入らないかぐらいの年齢のとき、2回ほど、睡眠に入るその瞬間を体験した。いや、正確には、起きたときまでその記憶が残っていたのが2回だったと言うべきなのだろう。


 うとうとしているとき、手足の感覚がぼんやりしてきたり、雑音のようなものを聴いた記憶のある人は多いだろう。そこからさらに時間が経つと、右手の手首をだれかに握られたような感覚がある。ちょっと引っ張られて、本当に右手が浮いたような感覚になる。同時に浮いていない右手の感覚もあるので、ちょっとした幽体離脱のようになる。


 それから耳元で声が聞こえる。不正確でもここにそれらしい言葉を書ければいいのだが、こればっかりは本当に文字に書き起こせない。

 赤ん坊の喃語のような、猫の鳴き声のような声で、なんと言っているのかはさっぱりわからない声だった。


 流石にその先まではぼんやりしてしまって、記憶がない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る