第6話 スキルを覚えよう!
「…………」
『どう? 把握できた?』
「う、う、うん……」
[空間倉庫]は誰にでも扱える神ギフト魔法。
【インスタント】は手に触れたものをインスタントにできる魔法?
お湯に浸けて三分で元に戻るって……本当にただのインスタントラーメンかよ!?
それを他の食べ物でもできるってこと?
は、はぁーーー?
いや、でもインスタントなら[空間倉庫]の大きさ関係なく無限にストックできるって結構なアドバンテージになるんじゃないか?
年齢の割に標準より小さいらしい俺の[空間倉庫]にそのアドバンテージは、でかい。
「あ、あの! ロビン!」
『ん? どうしたの?』
「【インスタント】のしょーさいがわかったんだ。あのね——」
もしかしたら群れのみんなの役にも立てるかもしれない。
ロビンに[空間倉庫]無限に使い放題、と説明すると、少し呆れた顔をされる。
なんで!?
『まずは魔力の使い方を覚えるのが先です。[空間倉庫]だって、魔力の使い方をきちんと覚えれば多少大きくなるだろうし、他の魔法も覚えられるようになるわ。それに魔力暴走は危険だからね』
「お、おふぅ」
『[鑑定]した限り、その【インスタント】も魔法スキルの一種のようだもの。まずは基礎からよ。危ないからね』
「う、うん。わかったよ」
そうだよな。
俺、常識さえあやふやだったんだもんな。
しっかり基礎から学んで、チセを守ってやらないと。
そんで強くなって親父をぶっ殺す。
これ以上、後妻が増えないように。
『魔力は
「え、そ、そんな」
『気にしなくていいのよ、人間だって死ねば肉になって私たち魔獣の餌となる。生きてても食い殺すけど』
「そ、そっかぁ……?」
弱肉強食だなぁ。
『それに、長寿である魔獣と違って人間はあまりにも短命。五十年程度で死んでしまう者ばかり。命は大切にするのよ、イスト』
「う、うん」
『では本格的に魔力の使い方を教えるわ。まずは取り出し方。手を開いて手のひらを上に向けて。体の中にある魔力を、手のひらの上に丸く絞り出すのよ』
「う、うん、やってみる」
魔法といえばイメージ。
手のひらの上に、魔力を絞り出す……。
丸く、丸く。
雫が手のひらの上に、のぼるような。
「っ」
『上手よ。目を開いてみてみなさい。それが魔力』
「わ、わあ」
目を開くと、目の前に小指の第一関節くらいの小さな小さな真っ白な光の球体が浮かんでいた。
これが、これが……魔力!
おおおお〜! 俺にも魔力が使えた!
『それに自分の得意な属性を付与して、魔法の方向性を決めてあげるのよ。身体強化が一番簡単だし、生きていく上で必要になるからまずそれを覚えましょう』
「はい!」
身体強化の魔法は、この小さな魔力の塊——白は[無属性]となる——を、自分の体内に流し込み、筋力や運動神経、反射速度などを向上させる。
少量の魔力でそれなりに強くなれるから、森で生きる生き物はほぼすべてが身体強化持ちだという。
『特にこの森の三大主、ロックストーンドラゴンはこの身体強化の魔法で巨体を維持している。私たちが群れで立ち向かっても敵わないほどの強度を誇るから、奴の住処には決して近づいてはダメよ。今度場所を教えるわ』
「は、はい。……ロックストーンドラゴン……ドラゴン……」
『そう、魔獣とは違う。あれは幻想獣種というの。生まれながらの最強種。人間だって戦っても勝てないわ。関わらないのが一番』
「は、はい」
俺としてはちょっと戦ってドラゴンスレイヤーになってみたいぜ、とか、夢見てたけど……話を聞く限り魔獣どころではない存在。
世界の種のピラミッドがあるのなら、その上の存在らしい。
一番上が神だとするのなら、その次が幻想獣種。
なにそれ絶対勝てないやつじゃん……。
早々に諦めて俺は俺のやるべきこと……チセを守り、いつかあのクズ野郎をぶち殺すことだけ考えよう。
そのためにも身体強化の魔法をものにするぜ!
『まずは足から』
「はい!」
習得スキルに[身体強化]LV 1が追加した!
***
『本日はオレが担当する』
「! よろしくお願いします!」
翌日、ロビンではなく俺の前に見事なおすわりを披露していたのは群れの長、エルド。
最年長で、固有魔法を持つオスのミホシウルフだ。
俺の二倍ぐらい余裕である。でかい。
『森で生き延びるにはまず人間には近づかないこと。そして毒を嗅ぎ分けられるようになること。最後は水だ!』
「は、はい!」
今日はサバイバル知識っぽい。
その1、人間に近づかないこと。わかる。
その2、毒を嗅ぎ分けられるようになること。俺には多分無理です!
その3、水の確保。わかる。
『というわけでお前には一番難しい毒の嗅ぎ分け方を教える』
「嘘、やるんですか!?」
『鼻を研ぎ澄ませばスキルとして習得できるはずだ。ついて来い』
結構な無茶振りだったがマジでその日の夕方身体スキルに[嗅覚]LV 1が追加された。
ミラクル。
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