第5話 常識を学ぼう!
それから俺の生活は一変した。
ロビンとその夫、群れの長エルドにより、俺とチセは群れの一員として認められて、この世界の常識——とはいえ魔物の常識だが——やスキルについて教わることになった。
『スキルは言うなれば“技術”のことよ。あなたが私たちの言葉を理解できるのは、あなたの体に習慣や理解として習得されたから。主に肉体を用いたものをスキルと呼ぶ、と思えばいいわ。逆に精神や魂が関わるものは魔法と括られるわ。スキルと魔法を混合したものを“魔法スキル”とも呼ぶけれど、その辺りの括りは割と曖昧ね』
「なるほど……」
『他にも長年の鍛錬で得たり、神様が与えてくれた“固有スキル”または“固有魔法”を持つ者が時折現れるりうちの旦那さんとかね』
「ふむふむ」
ちなみに長のエルドには【氷結大魔法】という固有魔法がある。
エルドの【氷結大魔法】は長年の修練の賜物。
多くの修羅場を仲間を守るために戦い続けた、その集大成。
めちゃくちゃカッコいいぜ!
それにしても魔法かぁ!
異世界っぽくなってきたな!
『ちなみに私には【鑑定】の固有魔法があるの』
「え!」
『あなたのスキルも見てあげたんだけど……なにかしらね、これ。どうやら神様からのギフトスキルらしいんだけれど……【インスタント】とあるわ。どういう能力なのか、全然検討もつかないけれど』
「い、インスタント!?」
……六年ぶりに聞いたし、なんなら今の今までその存在も忘れていた。
イ、インスタント?
インスタントのスキル?
は? どういうこと?
『まあ、使い方がわからないものは後回しでいいでしょう』
「え! い、いいの?」
『それよりもまず、覚えなければならないことがたくさんあるみたいなんだもの』
「うっ」
ぐうの音も出ない正論。
六年間命令以外にまともな会話をしているのは、亡くなっている後妻のみなさんぐらいなもの。
それだってあのクズ野郎の目の届かない留守中とかで、だ。
『まず、便利だから先にこれ——[空間倉庫]を覚えるといいわ』
「空間倉庫」
空間倉庫。
この世界で知恵と理性を持つ魔獣を含めた、ほぼすべての種族が最初から神に与えられるというギフト魔法。
黒い箱のような空間を作り出し、そこに入れたものは空間の持ち主にしか出し入れできない。
主にお金を入れたりするもののようで、空間の持ち主が死ぬと空間に入っていたものは、持ち主の周りに落ちて散らばる。
生き物を入れることはできないし、空間より大きな物を入れることもできないが、中に入れた食べ物などは腐ることなくいつでも同じ鮮度で取り出すことが可能。
なんという便利な!
こんな便利なものを今まで知らなかったのか!
『[空間倉庫]は体が大きくなると一緒に成長していくわ。その過程でギチギチに物を詰め込んでおくと、より大きくなるの。魔法使いに特化すると[空間倉庫オプション]などの魔法も習得できて、より広く大きく使えたりするわ。イストの空間はとても小さいから、ポテツの実をたくさん入れてギチギチにしておきましょうね」
「ち、小さいの?」
『人間の子どもの標準はわからないけど、[空間倉庫]を今日初めて知ったのなら魔法発動そのものが今日初めてのでしょう? きっとそれが原因ね』
「ううう」
なんてもったいない。
今から成長させて、標準に戻るかなぁ?
『中に入れたものは[空間倉庫内一覧]を表示せよ、と唱えることで見ることができるわ。唱えてごらんなさい』
「く、空間倉庫一覧を表示せよ。わっ」
言われた通りに唱えると、目の前にモニターのようなものが現れる。
わ、わあ、ま、魔法だあ。
空間倉庫も魔法だけど〜。
「す、すごい」
『では次。ステータス確認、と唱えてごらんなさい』
「! ス、ステータス確認!」
これが!
異世界転生の醍醐味の一つ!
ステータス!
「わ、わあ!」
名前:イスト
体力:10
魔力:10
スタミナ:10
攻撃力(総合):5
防御力(総合):10
素早さ:3
叡智:8
器用:9
幸運:2
…………よ、弱ぇぇぇぇぇぇぇ…………。
なにこれ、幸運2は酷すぎないか?
自分が幸運だと感じたのは綺麗な後妻女性に優しくしてもらって今まで生き延びてきたことと、こうしてロビンたちに拾われたことくらいだからそんなに不幸だと思ってないんだけど……ステータスに現れてる俺の運のなさ。
そ、そんなに?
それほどまでに?
『自分の現状を把握するのは必要なことよ。下の方も見て。スキルを確認しなさい』
「あ、う、うん」
そうか、スキル!
例の【インスタント】以外にもなにかあるだろうか?
っていうか【インスタント】って一体なんだ?
詳しくわかるかな?
スキル一覧を開いてみると——。
言語スキル
[イルミニヌェール・カノン共通言語]
[魔獣語]
身体スキル
[飢餓耐性]LV 3
[毒耐性]LV 4
[睡眠耐性]LV 1
[物理耐性]LV 3
魔法スキル
[空間倉庫]
神ギフトスキル
【インスタント】
手で触れたものをインスタントにできる。
インスタントにしたものはお湯で三分つけ置きすると元に戻る。
インスタントにしたものは[空間倉庫]の容量を無視して無限にストックできる。
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