第12話

文化祭でボクは、クッションの水着姿を描いた9連作の絵を展示した。その横に、香絵ちゃんは、ボクのことを描いた1枚の油彩の絵を展示した。

なんだか、ボクと香絵ちゃんの絵を、全体的に眺めて見ると、クッションのえっちな姿を何体も想像しながら、部屋で、まくらをギュッと抱きしめてチュッチュッして、バタバタしているボクへと、つながっているようにも見える。

「香絵ちゃんの描く絵、やっぱりすごいね~!ボクの好きな子のことを想ってる気持ち、めっちゃ伝わってくるね~!」

って言ってしまった。クッションのことを想ってる時の気持ちなのに。

でも、こうやって、ボクの絵と、香絵ちゃんの絵とを、並べて見てみると、香絵ちゃん、ボクの絵を描きながら、ボクの気持ち、わかっていたのかなあ~って思ってしまった。

「まあ、あやめちゃんの描く絵があって、その横に、わたしの絵もあるから、より一層、わたしの絵も、輝きを増して、絵に対する、いろんな想いも伝わってきてるのかもね~!」って言ってくれた。

「なんか、ひとつながりの連作みたいよね!わたしとあやめちゃんの絵は!」


その文化祭当日、美術部の展示教室で、香絵ちゃんといっしょにイスに座って、見に来てくれる人を待ちながら応対をしていた。そしたら、サッカー部の直くんが、ドアを開けて1人で入ってきた!

直くん、いつも優しくてカッコ良いから、きゃあああって思わず声に出してしまった。

直くんは同じクラスで、毎日、いつも、何かしら話しかけてきてくれている。まわりの子にも、何かとボクの存在をアピールしてくれている。だから直くんのこと、いつもめっちゃ好きなのだ。

直くんは、ボクの描いた1連の絵のところに行って、9作を順番に眺めてくれていた。それから、ボクの座ってるところに来て、

「可愛くて迫力あって、やっぱり良い絵だね~!才能あるねっ!」

って言ってくれた。

ボクは「ありがとうっ!」って言いながら、舞い上がって、立ち上がって、飛び跳ねてしまった。横で、そんなボクを香絵ちゃんは笑って見てた。

「はいっ!これあげるっ!」って言って、直くんはボクにペンダントのようなアクセサリーをプレゼントしてくれたっ!「AYAME」って名前の描かれたペンダントだった。

アイスクリームを食べる時に使うスプーンに、立体的に名前を描いて作られた、めっちゃ可愛いアクセサリーだ。文字も可愛い字体で、可愛いピンクで描かれてある。

それから、「じゃあね~バイバイ~!」って言って、直くんはパタパタと教室を出て行った。

もう、めっちゃ嬉しくて、名前の描かれたペンダントをじっと眺めながら飛び跳ねてた。

他のクラスで、こういうアクセサリーを作るお店をやってて、そこに行って、わざわざボクの名前で作って、持ってきてくれたみたいだ!

「良かったね!直くん可愛いね!いつもはカッコ良いのに。赤くなってたよっ!」って、香絵ちゃんも言ってくれた。


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