魔族領で俺ツエー!~元最弱職テイマーの俺、異世界に召喚されて最強のスキル手に入れたので楽々スローライフを送ります!~
あずま悠紀
第1話
『魔王様、こちらの資料が今回の件に関する資料となります』
部下の報告を聞いて魔王と呼ばれた男は目を丸くし、そして大声で笑った。
魔王とは魔界に住む悪魔族の支配者にして、最強の存在である魔人族の王のことである。つまりこの世界では最強の生物を指す言葉であり、それが目の前にいる少女だというのだ。しかも、見た目が12~13歳くらいの少女が!
(冗談だろう?)と思ったけれど、魔王の側近らしき者が魔王と呼んだのだから間違いなく本物なのであろう。
僕は思わず自分の耳を疑ったが魔王は本気らしく、僕に対してこう言って来た。
『さて人間どもよ。貴様に選択肢を与えようではないか。今すぐこの場から出て行き私の配下になれ!』
そう言われた瞬間、「なんだこいつふざけているのか?」と思い僕は声を張り上げた。「お断りだっ!!!!!!!」っとね?そしたら周りの人たちがざわつき始めて――。
『きゅ~?』「キュキューンッ♪」「ガウゥーッ」って感じになって――まぁ色々と大変だったというわけだ。ちなみに、あの子猫や犬みたいな鳴き声は僕の連れていたペットの声だよ。もちろん幻獣たちも含めてだけどね? そんなこんながありながらもなんとか落ち着いたあとで改めて魔王と話し合ったら案外話が合うもので――結局その日はこの村の宿屋を借りて一泊することに。それから数日経ったある日のこと、再びあの魔王を名乗る娘が現れたんだよね? 魔王曰く、この村の村長に会いに来たということなので一応会わせてみると、魔王は僕にこう告げて来たという訳なのだ。
「おい、貴様。少し私に協力せぬか?」とね?正直意味がわからなかったから詳しく聞くと、なんと彼女は人間領を支配するための計画があると言うのだ。そしてそれを成功させるために協力しろと魔王は言っているのである。
(いやまぁ確かに僕は魔王軍から逃げ出した身だけどさぁ~?)
それにしても、なんとも無茶苦茶なお願いをしてくるものだと思うのだ。だが魔王はどうしても必要な存在であり――結局彼女の言う通り協力することとなったのであった。
魔王と出会って以来、彼女とはよく話をしているうちにだんだんと惹かれていってしまったのもまた事実である。
最初は見た目だけに惹かれていた部分もあるけれど次第にその内面を知っていく度にどんどん好きになっていく自分がいたのだ。今では心から彼女に尽くしたいと思っているほどまで惚れてしまっているのだと実感してしまうくらいには魔王のことが大好きになっていたのだった。
だから僕はこの村に暮らすことにしたんだよ。彼女と共に過ごすために! それから数ヶ月後のことだろうか? ある日の夕食の時に僕は魔王にある提案をしたのだ。それは魔王との子供を産んでほしいと頼むというものだったのだ。
魔王はとても驚いた表情をしていたけど、すぐに了承してくれて本当に嬉しい気持ちになることができた。それからは二人で愛を深めていったんだけどさぁ――その結果ついに妊娠してしまったんだ。それも男の子を出産したって言うんだから驚きだよねぇ~!? はたしてその子の名前は一体何になるのかはまだわからないのだけれどもね。だってこれからも僕達は幸せな日々を過ごしていくと思うから!
(そうだろ?魔王様)
\
【名前】相馬悠斗
年齢:15
種族:人間(異世界人)
性別:男
職業:勇者
レベル:99/99999
ランク:SSS- 【装備】
聖剣「デュランダル」+2:斬れ味増加+40000
勇者の鎧:防御力+52000:状態異常無効化
:全属性ダメージ50%減少
神刀「童子切安綱」:斬れ味増加+10万:火水風耐性:自動回復機能付き:攻撃力+10000
「聖盾イージス」:衝撃耐性+95000:物理攻撃反射可能:精神攻撃遮断:HP10%以上減少時に自動修復:自動帰還
勇者シリーズ 魔王シリーズ(セット):
「漆黒のローブ」:闇耐性:即死回避 +3万
「魔導王の靴」
魔力消費量低下 +6500 【スキル】
《オリジナルスキル》
天眼LVMAX :全てを見通すことが出来る
未来予知★ 超高速演算★:一瞬先の未来が見える
:戦闘時において、相手の動きが全て予測できる
:発動後1分につき、自身の行動速度が最大5%ずつ遅くなる
:一日12回まで使用可能
《エクストラ固有スキル》 鑑定☆:対象の詳細情報を見る事が可能
解析★ :対象の全ての詳細情報が閲覧可能
強奪 :相手が隠し持つあらゆるものを自分のものとする
隠蔽改竄 :自分に関する情報を隠すことができる
《通常スキル》 剣士の心得Lv8 :剣術系武器使用時の能力向上 戦士の心得 LV8 →NEW 槍使いの心得LV8 棒使いの心得
斧使いの心得 短刀使いの心得 鞭使いの心得 拳士の心得 格闘術マスターLV14 :各武術系統の身体強化及び、新技を身に着ける事が出来る 二刀流 Lv15 投擲 Lv20 弓道 Lv22 →Locked On 銃射撃 LV21 →LOCKED ON 暗器術Lv18 忍足 Lv13→LV13 暗殺者の手練 Lv7 →Llocked on 隠密Lv17 潜伏Master 罠作成Master 忍び歩き Lv23 解体Lv24 鍛冶Lv28 錬金Lv27細工師Lv19
裁縫Master 造形魔法:土
氷 光&闇 毒 麻痺 召喚魔法 創造:金属 鉱石 木材加工 ガラス 陶器制作 料理Master New 農業Master 畜産業MasterNew 大工仕事 鍛治 彫刻 装飾 建築学Master 建築マイスターMasterNew 錬金術師MasterNew 薬生成師 調剤師の極み New《限定ユニークスkillsスキル一覧表》New 【称号】
『勇者』
『異界の来訪者』『武を極めしモノ』『魔王を討ち取る者』『限界突破せしもの』『同族殺し』New
『不屈の挑戦者』
『強き意志を持つヒト』
『魔族を救いしもの』
『龍を滅するもの』
『ドラゴンライダー』
『精霊を救済せしもの』New
『魔素浄化作用適用済』New
『竜を屠りしもの』
『龍を殺しし者(進化形態移行中)』New
『魔王に祝福されしもの』New
『魔王の僕(下僕?)』New *
「ふぅーっ、終わったよ」
そう言って魔王は僕の頭を優しく撫でてくれた。そしてそのまま抱きしめてくれるものだから僕は嬉しくなってしまい、その体を離したくなくなってしまい――
結局その日の夜も魔王は僕の部屋に泊まり、一晩一緒に過ごすことになった。
(まぁ別に魔王と一緒なら構わないけどね?)
(しかしまさかこんなに可愛い子供が出来るとはなぁ)
(あぁこの子は絶対に幸せにしてやるからな?)
(よしよし!いい子だぞ~?)
(えへへ、お母さんだいすきぃ♪)
(なぁ魔王よ、もし良かったらさ?この子を養子として育ててもいいかな?)
僕の言葉を聞いた魔王は、とても優しい表情をしながら答えてくれて、そして僕は改めて魔王が大好きだと思った。
それから僕は魔王が用意してくれた部屋で過ごしつつ毎日を過ごしているのだけど――
「おとうさんおかえりなさい」
「ああただいま。良い子にしていたかい?」
「うん!」
この子と魔王はとても仲が良く、いつもこの子の面倒を見ながら過ごしていて微笑ましい。だからなのか、僕は思わず二人をぎゅっと強く抱き寄せてしまうのだ。すると魔王は少し頬が赤く染まってしまうのだけど、それでも嫌がるような態度は取らないでくれるから凄い助かる。この子の前ではなるべくカッコつけた姿を見せてあげたいと思うんだよねぇ?だって将来魔王が僕の元から離れていくとしたならばきっと寂しい思いもするだろうからさ。だからこそ僕は今のうちに魔王との思い出を増やしたいのだ。そう思うのであった。
それから僕はしばらく魔王と共に過ごさせてもらい、その間には色々なことを経験したのであった。
魔王は相変わらずこの世界を支配するための計画を実行してくれて、僕はその手伝いをするという日々。だけど最近になってから僕はその計画をさらに先へ進めるために、あることを考え始めようとしていたのであった。その計画は、人間と魔族の共存共栄を目指して新たな国家を作ることだ。これは魔王に提案をしてみて了承してもらえるか不安に思っていたのだが、案外あっさり了承してくれて安心した。しかも計画に協力してくれるらしいのだ。本当に魔王はどこまでも優しい娘だと思う。そんな彼女に僕が出来ることはなんだろうと常に考え続けているけど、まだ答えは見つからないんだよね。いつか見つかるといいんだけど。
それと魔王は僕のために何かプレゼントしたいらしく、よく服やアクセサリーを買って来てくれるのだけどこれがまた本当にありがたく、魔王には感謝してもしきれないのだ。でもたまにしか会えないのだからもっと一緒に過ごしたいと思うのだけど――こればかりは魔王の都合もあるから仕方がないと理解している。それに魔王も「貴様の邪魔はしたない」と言ってくれていたのだし。
それにしても――魔王の作ったご飯って美味いなぁってつくづく思っているのだった。魔王の作ってくれた食事を食べながら僕は「やっぱり魔王の作るものは格別だねぇ」と言いながら食べ続けると、魔王の顔は次第に赤くなっていき俯いてしまうのである。この魔王の反応を見る限りどう考えてもこの娘のことが大好きになっている自分がいた。魔王と一緒にいるとドキドキしたりワクワクしたりするけど、それ以上に落ち着くという気持ちの方が大きい気がするのだ。
ちなみにだが、魔王の年齢は見た目的には15歳くらいなのだけど実際は何年生きているのかすらわからない。魔王自身にもあまり自覚はないようだが――彼女は恐らくだが幻獣と同じくらいの存在なのではないだろうかと考えている。つまり、見た目通りの年齢ではなく、何百、何千、何万、何十万年以上も生きてきているという可能性は高いと思うのだ。
(そもそもあの魔王の強さを考えればあり得ない話じゃないと思うんだけどさ)
とにかく今は魔王の側にいることが何よりも大事なことだと思っていて――それが何を意味するのかまではわからないのだけどもさ?それでもこうして彼女と仲良くなれたのは幸せな事だと心の底から思えたんだよね。だからもう暫くの間は彼女に尽くしたいと思っているわけで――そのためには彼女を守る力が必要不可欠だということも重々承知しているつもりなんだよね。
(でも正直言うとさ、僕は自分の力の限界が見え始めているんだよね)
それはレベル99の勇者の証とも言える「ステータス」画面を確認した時のことである――
【名前】
相馬悠斗 【種族】
人族 【性別】
男 【年齢】
15才 【体力】
9900/9999+【魔力】
10/9999+ 【攻撃力】
7700+ 【防御力】
6300+ 【敏捷性】
5980+ 【耐性】
火耐性 水耐性 風耐性 土耐性 光耐性 闇耐性 毒耐性 麻痺耐性 刺突耐性+ 打撃耐性 【知 力】
8000+ 【幸 運】
6000+
◆獲得経験値UP◆超成長EX:経験値×1000倍獲得量上昇(超加速:約3600秒)◆スキル効果増加(極大)◆自動回復(超加速)NEW ◆全能力超強化(超加速)NEW(こ、この超絶な強さは何なんだ!?)
僕は自分の目がおかしくなったのではないかと疑い、何度も確認をしたのだったが、残念なことに変化は一切なかったのである。
そして自分の持っているスキルのことも全て見てみることにする。するとそこには見たこともないようなスキルが存在していたので驚愕したのである。そして自分のステータスを見つめ直していたその時であった。突然視界に半透明の板のような物が出現したのだ。そこに書かれているのは以下の通り――
『職業固有スキル一覧』New! ●勇者の心得 勇者シリーズの装備をしている時に発動可能
『限界突破』★MAX!限界を超えて力を強化できる!
『超高速思考』★MAX!脳内での処理速度を通常の2~30倍にまで高める事が出来る。
『並列意思』☆1
→2に上昇:意識を5つに分けることが可能
『明鏡止水』★8 →11へアップ!自身の動きの全ての挙動速度が常時「1.5倍増」する
『限界突破』『並列意思』『限界突破』『神速』『超光速』『未来予知』『予測眼』『瞬閃』『一刀両断』→《限定ユニークスkillsスキル》New!
→Locked On:一度きりの技としてしか使うことが出来ない。
『剣豪術マスターLV8』New! 剣術系統の武器を使用する時の攻撃に斬撃系を追加出来る!(LVに応じて追加攻撃可能)
『格闘術MasterLV12』New! 格闘技系統の身体強化及び新技を身に着けることが出来る 二刀流 Lv13 投擲 Lv20 弓道 Lv22 銃射撃 Lv17 暗器術Lv18 忍足Lv10 New『暗殺者の手練』New! 気配を消すことに長けている。隠密が上位互換となり、姿だけではなく匂いや音までも完璧に消せれるようになる。(任意でONOFFが可能)
『錬金術師MASTER』New! 錬金術師の究極技能が使用できる。ただしMP消費量が凄まじい。(通常ではありえない量の魔力を必要とする。MPが足りない場合はHPを消費する)錬成可能な物は金属、鉱物、木材など多岐に渡るが作成するには材料が必要となる。
鍛冶職人 大工仕事 装飾 鍛治 彫刻 建築学 薬生成 調剤師New! 薬草から各種薬品、ポーション、傷の治療が出来る塗り薬などの精製が可能となる。ただし精製するためには特殊な設備が必要となってくる 薬剤師 薬剤師の技能は「回復魔法付与薬の作成」、「治癒薬の加工」、ポーションや解熱、鎮静、栄養補助のための「補助アイテムの製作」となる。
『召喚魔法Master』New! 召喚魔法を習得し使用可能となる。習得している魔物であれば無条件に契約することが可能。契約することで従えることが出来る。契約方法は「召喚」と念じればいいだけの簡単な作業です。ただし「死期」を迎えると強制的に元の世界に強制送還されてしまいます。また、契約者以外に使役させることは出来ません。(ただし、契約した個体は主と認めた相手の元に現れてくれるようになります)
そして最後の方に記載されている「このスキルはロック中となっており使用できませン」と言う表示がされている謎のスキル――
このスキルだけはいくら見ようとしてもその詳細を知ることができなかった。ただ分かるのはこれだけであり、どんなものなのかは実際に使ってみればわかることだと思う。ただ気になるのはこの「勇者の素質」と表示されている項目が「勇者の加護」から変更している点である。これは何か意味があるのかは定かではないけど、ただなんとなくだが、この称号の本当の意味を知ったときに僕はどうすればいいのだろうかと不安になっているのである。まぁ今すぐに答えが出そうにはないのだけどね。
(それよりも魔王だなぁ、彼女の力になりたいんだから少しでも強くならないと。そのためにはもっと努力してレベルを上げまくらないと。それには魔王にも協力してもらうしかないだろうけどさ?とにかく頑張ろうっと!うん、よし!!とりあえず今は魔王に貰ったご飯を食べてゆっくりして寝るとしようっと!今日も疲れたもんねぇ)
そんなことを考えながら僕は魔王の作ってくれた美味しいご飯を食べ続けるのであった。
(ああ幸せだよねぇ。こんな生活が出来るなんて夢みたいな話だよねぇ?でもさ、もし魔王を救えればさ、一緒に暮らせると思うんだよね?そうなればきっと毎日笑顔で暮らすことが出来ると思うんだよねぇ。だからこそ今はやるべきことを全力でやるんだ。絶対に後悔はしない。魔王を救うためなら僕はなんだってするつもりだし。それこそ死ぬ覚悟だってある。それだけ大切な存在だから。だから魔王のために頑張り続けるよ)
僕は魔王が用意してくれたベッドに入りつつ眠りにつくのであった。
(う~ん。朝になったかぁ、なんか不思議な感じがするよね。僕は昨日まで魔王と共に過ごしていて――でも、今は違う女の子と一緒にいるわけだし。あ、そうだ!確かこの世界の人間たちはみんなレベルがあるはずなんだっけ?だからレベルを上げて強くなるんだ。そしてもっと魔王を助ける力を身に付ける。その方法を考えないといけないんだけど――やっぱり僕には戦闘に関する経験が全然ないからなぁ。どうしたらいいのかなぁ?)
そこでふと僕の頭にあることが過った。
それは「スキル」というものの存在だった。確かに僕の持つユニーク系の「限界突破」「超高速思考」「超成長EX」を使えばかなり強力な力が使えるとは思うけど、どうにもまだ扱いきれていないという実感は否めないのだ。つまり――スキルに慣れるための訓練をしなければいけないのではないかと思っているのだ。
(スキルの訓練は必要かもしれない。とにかくもっと強くなれるはずだ。だけどその為には僕自身が強くなければならない)
結局、スキルだけでは限界があったのである。しかし今の自分には魔王の力になることさえ出来ない。それが歯痒くて仕方がなかった。そして僕は一つの結論を出したのである。この城から抜け出し外に出れば新たな出会いもあるかもしれないと!僕は早速部屋を出ることにしたのであった。
そして廊下に出たのだが魔王の姿を見つけることが出来ず、僕は困ってしまった。なぜなら彼女は自分の領域である「玉座の間」にいることが多かったからであり、そこ以外で彼女を見かけたことは一度もなかったからである。しかもこの城には現在、魔族以外の種族はいない。よって必然的に僕と魔王が会う機会も少なくなるわけなのだ。
(まずいな。まさか会えないとか思ってもいなかったから完全に忘れていたんだけどさ。どうすればいいだろうか。このままここに居ても何も進まない気がするんだけど)
それからも必死になって探し回ったのであるがやはり彼女を発見することは出来なかった。そもそも彼女に出会うための方法をまるで知らないということも大きいのである。なので諦めるわけにもいかないわけで。
(もうこうなったら思い切って彼女を探してみるしか手がない!よし!いくぞ!!)
こうして僕は彼女を探す旅が始まったのであった。それはそれは長い時間が掛かったが、ようやく彼女が居ると思われる場所を見つけたのである。それは「玉座の間」の奥に存在していた隠し通路から繋がっている「謁見の間」の先にあったのだ。そこにたどり着いた時はすでに夜になっており――僕は彼女を見つけられたことに安堵し、少し休むことにする。すると奥のほうから何やら声らしきものが聞こえてきたのだ。『魔王様』
『おお。お前か』
『例のものが完成しました』
『そうか、やっと完成したか。それでいつまでかかるのだ?』
『一週間もあれば十分かと』
『分かった。ならばその日に実行しよう』
『了解しました。では、その時が来た場合はよろしくお願いします』
『うむ』
そして二人の話しは終わったらしく――魔王の足音がこちらに近づいて来たのであった。僕は隠れようと思い身を屈めていたが無駄に終わることになる。なぜなら彼女は僕がどこにいようとお構いなしに現れたのだ。そして当然のように話しかけて来た。
『そこにいたか勇者よ』
『ど、どうかしたの?』
『いや特に理由はないが』
『そ、そうですか』
『勇者よ。頼み事があるのだが、いいだろうか』
『もちろん!むしろ何でも言ってください!!』
『実は――』
僕は彼女に頼まれて宝物庫を案内することになった。その宝物庫はかなりの広さがあって、そこには様々なアイテムが置かれてあった。ちなみに宝物庫の中には危険な物もあったらしいのだけども、魔王が一緒だとそういったものが出て来ることはなかったようだ。なんでもそういう仕組みになっているみたいだけど、それでも普通は警戒するものじゃないのだろうかと思ったりする。とはいえ僕からすれば助かることばかりだったので気にすることはなかったんだけどね。
(あれ?でも待てよ。ということはあの「神剣」も封印されていたっていうのかい?じゃあさっき僕に使わせてくれた剣は何だったというのか。いやそもそもこの世界はどうして魔王が治めていたりするのか、謎だらけじゃないか)
『この宝の中で使えそうな物はいくつか選んでおいて欲しい』
『わかりました!』
僕は言われるがままに適当に武器を選んで行ったのである。そして魔王はその間どこかに行ってしまったので暇になってしまったのであった。まぁその間に色々と武器を試してみたりしてスキルを使用できるかどうかを確認しておいたのでよかったといえば良かったんだけど。
そしてしばらく経って、魔王は戻って来ると僕が選んだ武器を手に取り鑑定をしているような素振りを見せていた。そして満足したように一つ息を吐く。「これで良いか?」
「うん。ありがたく頂戴するよ!」
僕は魔王から貰った剣を受け取ると鞘から引き抜いて眺めてみたのである。刀身は綺麗な銀製となっていて、柄には美しい細工が施されている。そして鍔には何かの結晶のような宝石が埋め込められていて、見るからに強い印象を受ける一品だと言えた。僕はこの剣を手に入れたことにより一気に気分が上昇したのである。
「大切に使うよ」
「喜んでくれたのなら何よりだ」
僕はそんな魔王を見て、この子の為に強くなりたい。もっと頼ってもらえるくらいになりたいと思った。そしてそのためにも魔王が持っているであろうスキルを知りたいと心の底から願ったのであった。
(僕が彼女の力になりたいと思っても、まだまだ実力が伴っていないのが悔しいなぁ)
そして魔王は僕を連れてこの城を散策し始めたのであった。それはそれは広大な面積があり、色々な部屋が存在する。ただどれも薄暗く不気味な感じの部屋ばかりであり、何か不吉なことが起きるんじゃないかと不安になってしまう。
(この城にこんな所があるなんて全然知らなかった。本当に魔王ってこの城で何をしているんだろう?それにさ、さっきの話を聞く限りじゃ魔王って何かをやっているんだよね。まぁそれが何かはまだ教えてくれなさそうな雰囲気はあるけど)
そんなこんなで魔王と一緒に城内を歩き回り、そして最後に辿り着いた場所は地下に存在する巨大な洞窟の前であった。そこは入り口が厳重な鍵によって閉ざされていて入ることが出来ないようになっているのだ。ただ気になったのはこの中に「転移の間」と呼ばれる空間が存在していることである。その扉は何故か光っており、誰かの存在を僕たちに示してくれているように見えた。
『ここに入るぞ、付いてこい』
『うん、分かった』
僕は魔王と共にその転移の間の中に入ってみると、そこには魔王と同じくらいの少女の姿があったのである。僕はその少女に見覚えがあり驚いてしまった。何故ならその容姿はとても美しくて可愛らしかったからだ。
「え?もしかして君は――リスタリスちゃんなのかい!?」
「はい!私です!!ご主人様ぁぁ!!」
(ん?今なんて言った?あ、えっと、とりあえず確認しないとね)
「えっと、君の名前は?」
「えっと私はですね――」
僕は彼女からの自己紹介を聞いた瞬間、「やっぱり」と思った。なぜならその名前は僕の記憶にある女の子の名前と完全に一致していたからである。しかし、どう考えてもその少女の姿は12歳くらいにしか見えず、見た目がまったく違うのだから同一人物だと思えないのである。
(うぅ、なんだろうこれ。頭が混乱して訳が分からない)
僕の頭の整理が出来ていないまま、なぜか話がどんどん進んでいった。まず最初に驚いたのが魔王の正体が目の前にいる美少女だという点である。そして次に驚くのはその外見と中身の年齢が全く違うということ。さらに言えば彼女は僕の知っている少女ではないということだった。僕の知っている「白雪 鈴花」は12歳で止まっていたはずなのに、この「アリア スター」は16歳だったのだ。しかも僕よりも1つ上の17歳であったのだから衝撃が走るというものだよ。
(あああ!でもやっぱり可愛いなぁ。もうちょっと近づきたいけど――どうしたら仲良くなれるかが問題だよねぇ)
そこで僕は一つの方法を思いつく。
『魔王、あの子に名前を教えてほしいな。そしてこの世界に存在している人間の事について聞き出してくれないかな?』
『ん、わかった』僕は彼女に聞こえない声で魔王と話をすることにしたのである。魔王は僕から頼まれた通りにリスタという女性に話しかけるのだけど、僕は内心ヒヤヒヤしてしまう。なぜなら相手は自分の正体を知らないとはいえ魔王なのだから下手なことは言えないだろうと心配になっていたのである。だがそんな僕の予想は大きく外れてしまった。というのも――。
「貴女の名前は?」
「私の名前はアリア スターと申します。貴方はどなたでしょうか」
「私の名前は、リ、アリアと申します。魔王様と、一緒にいます。よ、よろしく、お願いします」
『えぇぇ!魔王、喋れるの?』
『そう。練習、した』
どうやら魔王が考えた計画らしい。その証拠にさっきまでぎこちなく言葉を発していたのに急に普通に話せるようになったのだ。どうやら僕との約束を守ってくれて、自分の事を魔王と名乗ることはしなかった。僕としてはその点に関しては凄く助かったんだけど、それでも違和感が半端なくて変な気持ちになるのである。
「はい!魔王様の事はお慕いしております」
「わ、わたしも」
「ありがとうございます。お二人の仲が良ろしいようでとても羨ましい限りです」
「「(コク)」」
それから魔王とアリアと名乗った少女の二人はお互いのことについて語り合っていた。なんでも二人とも「勇者」を探し求めており、その過程で偶然にも出会い意気投合したというのだ。魔王の方は自分と同じく勇者として召喚された人間を探して、この世界を探そうとしていたところであった。ただ僕から言わせれば「勇者を探す理由」というのが何を意味しているのか理解できなかったので不思議に思っていたのである。
『どうして勇者を探していたの?』
『勇者の、装備を。集めてる』
『え?勇者が持って来た装備を欲しがってるってことかい?』
『そう。この前、来た、勇者の、剣。手に入れた。それで、今度は。勇者が持って来た。防具とか、欲しい』
僕は魔王の話を聞き、なるほどと納得したのである。勇者がこの世界に残した装備品というのは魔王にとっては非常に価値の高い代物だと言えるらしい。それはなぜかといえば、勇者の持つスキルの中には特殊な効果を持ったものが多く存在するためで、それを身に着けることによってその能力を使うことができるのだというのだ。そして魔王はそれを全て手に入れるために「魔王討伐」を繰り返して来ていたみたいである。
ただここで問題が浮上してくるのは勇者の能力を受け継ぐために必要な能力がスキルであるというところであった。魔王の場合はそれが剣だったので剣を集めることによって勇者から剣技などを継承することができるらしい。そして今回手に入れられた剣もスキルの効果がついていたみたいで――それを試す為にもここにやって来たというのもあるそうだ。
「魔王さま、その剣を見せていただけませんか?」
「あ、うん。いいよ」
魔王は僕に剣を渡すのだけど、リスタさんが鑑定すると「剣技 剣舞の型」のスキルが発動していることに驚きの表情を見せたのである。この能力は「相手の動きを見切り回避や反撃を可能にする剣術系統の技能であるスキル」で、魔王が持つには相応しくない性能を持っていたのである。そのため、僕は少し疑問を抱いた。だって魔王がこのスキルを所持していることがそもそもおかしいからだ。そしてそのことを尋ねてみると魔王がこんな風に説明をしてくれたのであった。
(あれ?魔王が持っていた「魔道士の指輪」って、確か魔力を高める効果があるっていうアイテムだったっけ?じゃあそっちのスキルを覚えて使うことが出来るんじゃないか?あれれ?)
僕は頭を抱えて悩む羽目になってしまった。なぜなら僕の持っているアイテムが意味をなさないからで。魔王から「魔法剣の心得」という武器を扱うときに使える技能を習得させてもらったのだが、魔王にはそれが通用しないようで。そのことから考えるとやはり僕とはステータスが違うんだろうと思ったり。ただ、それだとこの先、魔王の力になれないという事に繋がりかねなかったのである。
そこで僕から提案したことがある。魔王は僕の頼みなら大抵の事は聞いてくれると言ってくれたので思い切って頼んでみたのだ。その内容とは――魔王と模擬戦をして欲しいというものだった。そして魔王からすれば「願ってもないこと」だったらしく、二つ返事で了承してくれたのである。そんなわけで魔王は早速「闘神の間」と呼ばれる空間に移動していき――そこで僕も戦闘に参加する事になったのだ。
僕達は互いに距離を取ると僕は魔王から貰った聖剣を構えることにした。
(んー、やっぱり僕が貰った剣の方が強いんだよなぁ。この感じは「英雄王」と「魔王」くらいの違いが感じられるもん)
僕は魔王の力を侮っているつもりはないが、正直この世界ではそこまで差がないんじゃないかと思っている部分があった。なぜならこの世界は「レベルが強さの基準」になっているため、「ステータス」の上がり方で強さが決まるからである。しかし、実際は違うのではないかと感じていたりするんだよね?それは魔王の持つ特別な力の影響だと考えていたりする。その理由と言うのも――彼女の持っている特殊能力にあるんじゃないかと思ってるんだよね。ただこれについて話すためには彼女の持つ「ユニークジョブ」のことを先に知る必要があるんだけどね。ただそんなことを考えながら戦うような余裕はなかったんだよね。というのも目の前に居座る美少女の存在が恐るべきもので、そんな事をしている暇がなかったのだ。
「始め」の合図とともに僕は魔王と向き合うことになった。僕は先手必勝とばかりに間合いに入ってくるのだけど、その一撃を受け止めることすらできないままに吹き飛ばされてしまった。しかもそれだけに留まらずに地面に激突してしまい全身が軋む痛みに襲われたのである。しかし、魔王の攻撃は終わらず、まるで踊っているかのように軽やかな動きで僕の体を打ち据え続けた。その結果、「防御障壁」によってダメージこそ抑えられたものの何度も意識が飛びかけるほどのダメージを受けたのであった。
(やっぱり強いなぁ。僕よりも明らかに上の領域に達している。ただ、僕に攻撃を当てられたことがそんなに嬉しいのかな?さっきからずっとニコニコして楽しそうにしているし。ん?でもちょっと違うな。なんか、僕のこと見てない気がする。一体どこを見てるんだろうか?うーん、まぁ今はそんなことはどうでもいいかな。とりあえず魔王と互角以上の戦いができるようにしないと!)
こうして魔王との戦いが始まったのである。
それから数時間後、戦いはようやく決着を迎えようとしていた。魔王が繰り出してくる「瞬撃」「剛衝」といった攻撃をなんとか受けきると魔王の顔に焦りが見え始めたのが分かった。そして「魔王の鎧装」という防御力の高いスキルを使って僕の攻撃を受け流そうとすると僕は魔王に「竜気弾」という衝撃波を放って牽制してから「雷光」で魔王にダメージを与えると、そのまま連続で攻撃を加え続けていったのである。
「はぁ、はぁ、はぁ――」
(これで決める)
僕は息を整えるためにいったん間合いを空けてから次の技の準備に入った。「絶斬」を使う為には剣に魔力を集めなければならないのだが――その時に異変が起きたのである。
(ん?なんだろうこれ?身体中に違和感がある)
なんと急に体が重くなって動かなくなったことに困惑してしまった。そんな僕に対して魔王の方は何故か僕に攻撃を仕掛けずに立ち止まってしまったままで。その姿は何かを恐れているようで震えていたのであった。
(どうして急に動きを止めたんだろうか?このまま一気に攻めるチャンスなのに。もしかすると魔王も「絶界」を発動できるのかな?)
そう思った瞬間に僕の予想は当たっていたことが判明した。何故なら突然僕の足が止まり動けなくなってしまい、それと同時に「重力圧殺」による圧力がのしかかって来たことで地面へと押し潰されてしまったのである。それから何とか抜け出そうとするも魔王との力の差は大きく、身動き一つすら取れない状態であったのだ。
そんな状態の中でも魔王の姿を確認することが出来たのだけど、彼女はなぜか怯えていて――その目には涙が溜まっていたのである。その顔を見た僕は思わず声をかけたのだ。すると魔王の口が僅かに動くと同時に「やめて、来ないで!」という言葉が発せられたのである。どうやら彼女にとって僕の存在は天敵そのもののように思えたらしく、それがどういう理由でそうなったのかまでは分からないけれど僕には魔王を傷つけることなんてできはしないということを彼女に伝えたかったのである。そしてその意思が伝わったのか魔王の動きに変化が表れ――次第に僕への圧殺が解除されていった。
(ふぅ。一時はどうなるかと思ったけど良かったよ。魔王にもちゃんと話せる相手だって分かってもらえて。それにしてもこの子も僕と同じで魔王と勇者の能力を同時に覚えてるみたいなんだよな。でもどうしてここまで怖がってたんだろう?さっきから様子も変だし?)
疑問を抱いたもののすぐに考えるのを止めた。それから改めて彼女に話しかけてみると意外とすんなりと話してくれたので助かる気持ちになったのである。魔王の話によると、魔王の持っている特殊な能力は「勇者の力を継承していく」というものだそうだが、その代償なのかわからないけど魔王の「魂」は徐々に「闇」に染まりつつあるというのだ。
(魔王の力の継承とやらはどうやらそのせいで起きているのかもしれないね。つまり、今魔王の持っているスキルの効果が「勇者の持つスキル」だけに限定されてしまっているってことだよね?それで本来の「魔族の力を継承したスキル」が使用不能になってるという訳か。うんうん、これは確かに魔王の力が弱くなっていく理由が分かる気がするなぁ。魔王にとって「勇者の加護」がどんなものだったかは僕には想像できないからよくわからなかったけど。ただそれでもこれだけはハッキリと言えたのだ。今のこの魔王になら勝てるということがね。
そう考えた瞬間に「絶刃 無限連牙突」を魔王にぶつけると見事に決まった。魔王が身につけていた防具を破壊してダメージを与えた上で更に追い打ちで「雷閃 千手乱舞」で斬り刻んでいった。それにより魔王は瀕死の状態になり、僕がトドメをさすべく魔王の懐に入り込むと聖剣デュランダルで突きを放とうとしたのだ。だが、ここで想定外の出来事が発生した。それは魔王が自分の胸に手を当てると何事もなかったかのように復活したからである。それだけではなく僕の動きがピタリと止まったことにより逆に反撃を食らうことになってしまい、僕は魔王に抱き着かれるような形で拘束されてしまったのであった。
「ん?あれ?ここはどこ?」
目が覚めるとそこには見たこともないような景色が広がっていた。僕は一体どこに居るんだろうとキョロキョロと見渡しているとそこに一人の女の子が現れた。
(うん?誰この娘?)
見た目は幼く身長も130センチ程度しかない小柄な体型でとても可愛い女の子でした。髪の色がピンク色なんだけど染めてるようではなく地毛のようであり、そんな彼女がこちらを興味津々といった表情で見ている。しかし、この子が本当に誰か全く思い出せなかった。
そして僕が困っていると彼女の方が声を掛けてきた。
「あなたは私達の希望の種となってくれる方ですよ。これからよろしくお願いしますね」と嬉しそうに言ってきた。だけど彼女の言葉の意味が理解できなかったので詳しく聞いてみると。なんでも僕は人間族で、その種族にはまだ勇者が居ないらしい。
そして僕が勇者になれる可能性が一番高いので期待していると言われたのである。僕はそれを聞くと同時にこの世界の人間が僕に求めている役割が気になってしまった。
というのも、僕は自分の持つ「聖者の素質」という能力について知っていたからである。
そもそもこのスキルというのは「神の加護」がもたらす特殊能力であるのだが、この世界での「加護」とは「職業」として得られるものではなく「称号」のようなものであったのだ。
だから僕の「称号」に表示された「魔王殺し」という称号はおそらく神から与えられた「加護」だと思われる。
ちなみに称号の詳細を確認した結果、魔王を殺したことによって得られたものだということは分かったが、「魔王の素質」とかいう称号も得ることができていたようだ。
それから「英雄王」は神から「勇者の称号を得た時に役に立つから取っておけ」と言われていたので、恐らくはこの2つの内のどちらかが「魔王」だったんだと思うんだよね。
そんなことを考えながらステータス画面を確認するとやはり「勇者の加護」が変化していた。
「勇者の加護」⇒「魔王の器」:自分が魔王と認めた者に対する全ステータス上昇(+100)/状態異常無効/不老化 という効果になっていたのである。正直に言うと僕としては凄い有難いものだと思う。というのもこれさえあれば大抵の事は解決してしまうからだ。なぜなら、例えばレベルが上がった時にHPやMPが増えたりするわけだけど、「勇者の器」があるだけで勝手に増えるから必要ないかと思ってたけど、レベルが50くらいまで上がってくるとそれがないと戦い辛いと感じ始めていたのも事実なのだ。ただそれでも他の人達から見ればかなりチートな感じになっているはずだから僕がこの先苦労するようなことは多分無いんじゃないかと思っている。
(でもやっぱり「魔王殺し」かぁ。これはもう絶対あの娘のことを言ってるに違いないよね?というかそれ以外考えられない気がするなぁ)
そんな事を考えていると魔王を名乗る幼女が姿を現したのであった。
(ん?なんか見られている気がするなぁ。でもそんなはずはないよね。まさか、あんなに強い魔王がこんな幼い姿をしてるなんてことは無いだろうし。うん!そうに決まってる!さっきの戦いで疲れて幻覚が見えてるんだきっと)
そう思った瞬間に目の前にいたはずの魔王は消えて代わりに一人の少女が立っていた。その少女の容姿はまるで物語に出てくる天使みたいに綺麗で可愛くて――つい見惚れてしまったのである。
「やっと起きたわね」とその女の子は少し呆れた顔をしながらも優しく微笑みかけてくれた。
「はっ!ごめんなさい!あまりにも君の姿が美しくて」
僕は無意識に口走っていたようで自分でも何を言っているのか分からなかった。すると魔王は僕の手を掴んで引っ張ると、いきなりキスをした。
「え!?ちょっと君――」と僕は焦り始めたのだが、彼女は気にすることなくそのまま舌を入れてきて、僕は混乱しつつもされるがままの状態になってしまう。
(やばいやばいやばーい!!魔王とファーストキッスしちゃったよ。それもベロチューなんて初めてでどうすればいいのか分からない。っていうかこれってどういう状況なんだ?もしかすると魔王は僕のことを好きだと勘違いしているんじゃないだろうか?そんなこと言われたら困るんだけど)
僕がそんな心配をしていたところ、ようやく解放された。すると魔王が耳元でそっと囁いて来る。
「貴方の気持ちはよく分かりました。なのでこれからはずっと一緒です。愛しています」と告げられたので僕は動揺しながらなんとか冷静さを取り戻そうと必死になる。
「き、君は誰だい?」と質問をする。そうすると魔王は「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」と言いながらも笑顔で答えてくれる。どうやら彼女は自分が「魔王であることは認めてくれた」ようで。
「まずは私のことから説明させていただきますね。私はあなたの妻であり魔王の後継者でもありそして勇者でもあるのです。名前はルシフェルといいまして宜しくお願い致しますね。それと今後はあなたのことを呼び捨てにしても良いですか?あと、出来ればタメ口を使って欲しいな。ダメかな?」と尋ねてくる。僕は断る理由も無いのである意味願ったり叶ったりであったのでそれを承諾した。そうするとルシフェルは僕に対して抱き着きつつ頬ずりしてくる。
「ありがとう。あなたはやっぱり素敵な人ですね。ところで名前を教えてくれませんか?私は既に知っているけど」と言ってきた。そこで僕は名乗ってなかったことに気付いてしまった。そうすると僕は「佐藤拓海」と名乗ることにした。そうすることで何かが分かる気がしたのだ。すると、ルシフェルは満足げな顔で「その名前を頂くわ」と一言だけ言い残すと僕に抱き着いた状態でどこかへ行ってしまったのである。
そして残された僕は一人で考える。今のは何だったんだろうか?という疑問である。もしかして、あれが俗に言う夢落ち?ってことはないよね?それにしてもさっきの出来事はとても現実とは思えない出来事で――まあ魔王とのキスの感触だけは鮮明に残っているのだけれどね。それから魔王はどうなったんだろう?と考えてみるが思い当たることが何もなかったので放置することにした。
ただ、なんとなく嫌な予感はしていたけど。
「勇者殿。魔王を倒してくだされ。お願いじゃ」
この世界に勇者は僕以外にはいないらしく、しかも魔王を倒す力を持っているのが僕だけだということでこうして国王からの依頼でこの国の救世主になることを求められていた。だが僕としてはこの国に思い入れがないので、そんな依頼を受けたくはなかった。だけど報酬が良すぎたことと僕自身強くなりたいという欲求もあったため引き受けることした。ただ魔王討伐が終わらないと国に戻ってきてもいいということにはなっているが、僕はこの国が好きな訳ではないので帰るつもりはない。
それから魔王を倒せるだけの力を僕は持っていないが「聖者の加護」、「勇者の加護」を両方とも所有しているのでなんとかなるだろうと考えていたので気負うことはなかった。ただ、それでも魔王を殺せるかどうかは微妙なところだったので準備に念入りに取り組むことにする。その結果、聖刀「童子切安綱」「大鬼丸」の修復を完了した。どちらも神刀であるため僕に加護を与えてくれる。そのおかげで僕の全ステータスが大幅に強化されるのである。そしてこの世界ではスキルの効果によって身体能力が上がると体力を消費するというデメリットがあるのだ。つまりその分の余力がなくなるということである。だがこの2本のおかげでそういったことも解消できるのである。それから武器はそれだけではない。神弓「天羽々矢」というアイテムも持っているので遠距離の攻撃も可能となる。後は「魔剣バルバトス」を召喚しておくことにした。ちなみにこれはルシフェルの力の一部だ。彼女の力で僕も扱えるようにしている。ちなみにこの2つ以外にも色々なアイテムを所持しており、それを使うのは戦いの直前だ。そして僕はこの世界を旅することになる。
◆獲得経験値UP◆超成長EX:経験×21000倍(加速:最大約7600秒)
:HP回復量:10倍
「さすが勇者様でございます。これほどまでに魔王を打ち破る力を持つお方は他には居られないことでしょう」と宰相であるガルバンさんが興奮した様子で話しかけてきた。僕はこの国で最強である聖剣の所有者ということもあって王城の敷地内にある屋敷に住んでいる。だからこうして度々様子を見に来てくれるのだ。彼は僕の教育係でもあったので、こうして親身になってくれている。そのこともあり、僕も彼のことは信用している。ちなみに僕は見た目が子供にしか見えないのだが年齢は19歳で本来なら成人扱いを受けるはずなのだが。どうやら「神の加護」のせいで年齢が固定されてしまったらしいのである。だからなのかは知らないが、僕は外見的には幼く見えるが中身は完全に大人なのだ。でも何故か子供のような言動が染みついてしまっているのだが、どうしてそうなっているのかについては謎に包まれている。もしかすると「勇者の称号」と関係があるかもしれないが、現状確認することはできていない。でもそんな事もあって周りからは可愛がられまくっており、特に女性からはかなりモテた。中には結婚を申し込んでくる者もいたほどだ。だけどそんなことは全て断ったのである。その理由は単純で好きじゃないからに他ならない。僕にだって恋愛に対する憧れくらいはある。だけどこんな姿になってしまっていてもやはり僕は男だ。可愛いと言われても嬉しくはないのである。
そして今日は久しぶりに魔王と会った。魔王の容姿については「魔王の器」で見ることができたのであるが、正直に言ってとても驚いたのである。魔王はルシフェルと名乗ってくれたのだが、僕が知る限りルシフェルというのは神話に登場する堕天使の名であり、魔王の名前としては全く関係がなかったのである。
僕はそのことに驚いて思わず聞いてしまったのだが、「魔王は私が魔王の器になったときに一緒にこの名を得たのよ」と言っていた。どうやら「魔王の器」が魔王の名前や記憶などを引き継ぐものみたいだった。だからこそ僕は彼女に違和感を覚えることが無かったわけだ。でもそうなると彼女は自分の本当の名前を思い出せないということになるわけだが――
「魔王よ。僕のこと本当に好きでいるのかい?」
「ええ、もちろんです。私とあなたの間には何も隠し事はしたくないの」と彼女が言う。
僕は少し心配になってしまった。彼女は魔王である前に一人の少女でもあるので、何か事情があって言えないことがあるんじゃないかと。でもそんな風に考えてる時点でもう僕は彼女を愛していることを認めているみたいである。でも彼女を救うまではそういうのは封印すると決めたのに。僕は自分が思ってる以上に魔王に惹かれていたようである。
僕は彼女と二人っきりになりたいと願い「誰にも言わずに僕の部屋に来ることが出来るか?」と尋ねたら「ええ、もちろん」と即答された。それから彼女は僕と一緒に部屋へ来たのである。僕は彼女にキスをしようと試みるが、彼女は僕の頭を掴んで強引にキスをして来るのである。そうすると僕は段々と意識が薄れていき――気が付いた時には裸になっていて、目の前には美しい女性が立っていたのだ。そこでようやく理解する。魔王が僕を押し倒したということを。そして、そのまま僕たちは一夜を過ごすのであった。
僕は「聖者の指輪」の能力の一つである転移機能を使ってある場所へ向かっていた。その目的は「魔の森」と呼ばれている危険地帯に存在するダンジョンを潰すことにあった。そこでなら僕の力を高めてくれる魔物が出現するのだとか。そのためには僕の力を最大限に高めておく必要があるとの判断で訪れたのである。魔王はそんな僕に同行して来てくれた。どうも魔王は僕のことを気にしてくれてるらしくて、心配性なんだとか。まあそれはそれで嬉しいんだがね。だって僕のためにそこまで心配してくれるんだから。そんな魔王のためにも早く強くなって守れるようになりたいと思うのである。
(それにしてもなんで魔王と出会って間もないのにここまで親密になれるんだろうか?もしかするとこれもまた運命ってやつなのかな?)と考えつつも僕は魔王のことが大好きなので全然問題はないんだけどね。そして、しばらく進んでいくとダンジョンを発見した。その周辺には冒険者が滞在してるようで僕たちを警戒しているのがよく分かる。
なので僕は早速魔王が僕たちの周りに防御結界を展開してくれたので僕は安心した。ただこの辺りの階層の敵ならば問題ないはずだと思いながらも僕は全力で戦う覚悟を決めて挑むことにする。そうすると案の定というかなんというか魔王が倒してくれたのだ。どうもこの世界の人間は強さのランクみたいなものが存在しており、一番下からG級、F、E、D、C、B、A、S、SS級となっているらしく、さらにそこから細かく分けられると、下位から上位まで存在していてその階級の中での強さがかなりあるとのことだ。
例えばだが、僕のステータスがこうである。
佐藤拓海:人族(勇者の器)Lv.520
攻撃力:9500
魔力:5000
素早さ:9000
知 力:7000
防御力:8000
精神力:6000
魅力 :4000 G級の上がH級となっており、その中でも強い者から順にS、AAA、S、AA、AAA、AAA+という順番になるらしい。ちなみに魔王はレベル400程度なのにこの世界で最強クラスに位置しているらしく、僕より圧倒的に強いのである。ただそれでもこの世界でも最高峰に位置するらしい。ちなみに僕は魔王よりも圧倒的にステータスが高いため、普通に魔王と戦っていても勝てる可能性があるそうだ。ただしそれは勇者が装備を整えていればという条件があるのだが、僕は最初からそれを揃えているためほぼ無敵状態だと言えるだろうと思っている。そしてその事実を知って魔王は凄く嬉しそうに微笑んでくれていて、僕も幸せな気分になった。ただそんな時に限って厄介なことが起きる。突然この周辺に強力なモンスターが襲ってきたのである。
「あれは――オーガですね。でも何故急に出てきたのでしょうか?ここは「聖者の指輪」で探知した範囲外のはずなのに」
僕は疑問を抱いたがすぐに解決した。魔王が答えを言ったからだ。
「おそらくですが勇者がこの付近にやってきたので、それに気づいたのでしょう」と魔王が答える。僕は「聖者の指輪」で探知していたけど何もなかったのにと困惑したのだが。とりあえず現れた敵を排除するしかないと思った僕は刀を抜いて応戦しようとする。だがそこに割り込んできた影がいた。そう、それは僕たちが探していた魔人である。その魔人は勇者がここにいることを既に知っていたらしく、しかも僕のことを見て驚愕したような顔をしているのだ。まるで「なぜこいつがこの世界にいるのか分からない」という顔だったのだ。しかしそれも当然だろう。何せこの魔人が知っている歴史では勇者はすでに死んでることになっているのだ。そしてこの世界の歴史においても僕のことなんて記録に残っているわけがない。それどころか魔人にすら伝わっていないだろう。だからこそ僕の存在そのものが異常であるということなのだ。
「どうしてあなたがいるの!?勇者は既に死んだはずじゃ!」と叫ぶ魔人。
それに対して僕が口を開いた。
「悪いが君たちの思い通りにはならないんだよ。僕はまだ生きているのだからね」
僕は余裕のある表情を浮かべて相手を睨みつけた。すると向こうは僕に対して「お前は何者でどこから来た?」と問いかけてきたので「僕が誰か知りたいのならまずは自分から自己紹介をするべきじゃないのかい?」と僕は質問に返答せずに問い返すことにした。すると「それも一理ありますね。確かにあなたの仰るとおりです。私はかつて勇者と戦ったこともある最強の魔人の一人で、名をガルヴァンと言います。一応言っておきますが魔王は私の仲間の一人ですよ」と言ったのだ。僕はその名前を聞いた途端、心臓が跳ね上がった。なぜならその魔王というのはルシフェルのことであり、目の前の相手はルシフェルのことを知っていたからだ。だからこそ、魔王はルシフェルの事を魔王と呼び捨てにしているんだろう。そうでなければそんな風に呼ぶはずがないのだから。そう思った僕はこの場で戦闘になることを避けるために相手の言葉を受け入れるふりをしてその場から離れるのだった。
それから少しの間だけ魔王と別れて、僕は魔王に頼んでいたものを急いで作ってもらうために魔王城に訪れていた。そして、なんとか時間ギリギリに受け取ることに成功したのである。魔王は僕のお願いを聞くととても喜んで協力してくれていた。僕は彼女のことを信頼している。だから彼女には魔王と二人っきりの空間を作って欲しいとお願いしたのである。そうすることで彼女は何かを隠しているんじゃないかという僕の疑念も晴れるはずなわけだ。
そして、僕は一人になると「転移の門」で先ほど出会った魔人たちと会話をした場所に飛ぶとそこで待っていたのは――あの時に僕の前に現れたもう一人の「魔王の器」であるルシフと名乗る女の子だった。そして僕を見た瞬間「あなたは一体どうやって私と同じようにこの場所へ来たんですか?私の知る限りこの世界に同じ時代に二人の魔王は存在してはいけないはずです」と尋ねて来た。
僕も彼女が「ルシフェルの本当の名前と姿」を知っていると知って驚いていたのだ。だが彼女は僕の名前については知らなかったようで「まさか本当にあなたが存在するとは思っていなかったんですよ。勇者が死ぬ間際になってあなたの存在は明らかになったと聞いたので」と呟いていたが。
それから彼女は色々と事情を話してくれて、僕の予想どおりのことが分かり、僕は心の底から安心してしまった。つまり僕は彼女を救うことが出来るということが確定して、しかもこれからは一緒にいられると分かったからである。だからこそ魔王と二人で話をしてもらった。その間に僕はこの世界についてのことや、「聖剣の祠」と呼ばれるダンジョンの最下層で僕を待ち構えているという「勇者」のこと、さらには「勇者」が持っているという「神の力」についても話を聞いていく。
彼女は「やはり勇者はこの世界の異変に関わっていたわけですか。それであなたに何をするつもりなのかもなんとなく分かってしまいましたよ。それであなたはどうするの?勇者に会って戦うの?」と尋ねられたので僕は首を横に振った。どうやら僕が今ここで彼女と会うのは想定外のことだったみたいで驚いた表情を見せていたが。それから彼女からこの世界の事についていろいろと話を聞いた後、僕は転移して魔王城に戻る。するとそこで待っていてくれたのは魔王だけで、なぜか魔王の瞳には涙の跡があったのだけど、その涙の意味を知りたくても僕が聞こうとすると、その前に魔王の方から理由を教えてくれたのであった。
→Relaxation
Time(15分):回復魔法を使用する。対象者を心地よい眠気で包み込み深い眠りへと誘ってくれる。対象は1名のみ使用可能。
→Ecosystems
Resting:休息を取る。一定時間内に限り全ステータスを1.5倍に引き上げる 僕と魔王は再びダンジョン攻略を行うべく準備をするために街に戻ってきていた。魔王曰く「勇者がこの街にいる可能性は高いと思います」と言っていたので僕は魔王の言うことに従って情報収集を行ったのである。そうすればどうもこの街では「勇者の目撃情報が多発しており、さらにこの付近では勇者のものと思われる死体が発見されているらしいのです」という情報を耳にすることが出来た。僕はそれがルシフェルである可能性が高いと思いつつもそのことは口に出さないようにした。なぜならその情報が正しいのであれば僕にとっての希望の光である勇者は確実に死んでいるはずだからである。僕はそれを確認してしまうのが怖かったのである。
そして、魔王と僕はその足でダンジョンへと向かったのであるが。案の定と言うべきかダンジョンは崩壊していた。だが、僕はこの辺りの階層のモンスターなら大丈夫だと魔王に伝えたのである。そうすると彼女は僕に魔王を守るように指示すると魔王自身は僕の援護に回るために、他の敵を倒しに向かったのである。その行動はとても勇ましいもので、その凛々しい横顔を見て惚れ直した僕だった。そうこうしながらも僕は「スキル『無慈悲』を取得しました」とか「魔王が経験値を得ます」といった声を聞きながらも戦い続ける。だがどうも敵の数が多い上にレベルも高いため倒すのには時間がかかりそうなので一旦離脱して別の場所からまた来ることにする。その際には、あらかじめ僕の方で用意した転移アイテムを使って移動したのであった。
僕はそのようにして何度も繰り返しながら、ようやく全ての敵を倒して次の階に進む階段を発見すると、僕はそこで休むことに決める。というのも僕はこの世界に来たばかりだし、その上体力的にも精神的にも限界に近づきつつあると感じていたので少し休もうと思ったのだ。魔王は僕のことをずっと見守っていてくれるらしく、そんな魔王に僕は嬉しさを感じつつ、この世界で初めての休憩を体験したのであった。
(それにしてもこの「魔王の器」はいったいどれだけ強いんだろう?)と考えつつも僕たちは再びダンジョンを攻略し始める。それから数時間後に、僕たちの前に一人の少女が現れたのである。僕はその少女の顔を見て「あっ!」と思った。その相手は僕が最初に魔王と出会った日に倒した相手であるリリアだったからだ。ただし魔王はその人物を見るなり顔を歪めていて、どうやら知り合いであるということに気付いた。そしてそんな僕のことを彼女はじっと見つめると「あれれ~?もしかして私と同じ世界からきた人間?」と聞いてくる。僕はその質問に対して素直に「そうだ」と答えてみた。すると「そっかぁ。それじゃあ私の敵なんだね」と悲しそうな目をしながら答えてきたのだ。僕はどうしてこの子が同じ世界で、そして魔王の味方をしているのか気になったが、それよりも先にやるべきことがあった。それは「君を殺すつもりは無い」ということを伝えることだ。しかしそんな僕の言葉を聞いた瞬間「やっぱりそうなんだ」というと寂しそうにして僕に斬りかかってくる。僕はすぐに刀を抜いて対応するとそのまま打ち合いに発展していくが、僕と彼女の間には大きな実力差があり。徐々に押されていく僕。
そして最終的には僕だけが吹き飛ばされてしまい、僕は地面に倒れたのである。そしてすぐに立ち上がろうとしたが体が動かなかった。
僕は何が起きたのかと理解出来なかった。するとそこに僕とリリアが戦っている間にこっそり近づいてきて、リリアの不意を突いて僕のことを助けてくれていた魔王が姿を現すと僕に向かって話しかけてきた。
「ごめんなさい。私のせいであなたがこんな目に」と言って謝ってくる。
僕はそれに対して「どうして君が責任を感じるの?別に魔王は何も悪い事をしていないじゃないか!」と言った。
すると魔王は申し訳なさそうにしているので僕が魔王のことを責めていないと伝える。すると魔王は「それなら良かった」と言いつつも僕に抱きついてきたので僕は慌ててしまうが。僕はとりあえず魔王が落ち着くまで抱きしめ続けた。すると彼女は泣き出し始めたのである。僕は彼女が泣いている姿を見て困惑してしまったが。とにかく落ち着かせる必要があると判断して、彼女を優しく抱擁すると背中をさすってあげることにした。すると魔王は落ち着いたようであり、ゆっくりと立ち上がると僕に向かって微笑みかけてから「あなたのおかげで目が覚めたわ」と言った。そしてそれから少ししてから僕たちは二人で協力して先ほどの場所に戻ると、彼女は僕に礼を言いながらお返しとばかりに僕の頭を撫でてきて、僕は魔王の優しい手つきが気持ち良くて幸せな気分に浸る。
そうしているとリリアの方はこちらの様子をうかがいながら何かを考えていたようだが。彼女は僕たちに襲いかかってこなかったので魔王も警戒する必要が無いと判断する。そして、その後ろ姿を見ながら「あの子ってあなたの恋人なの?」と魔王に尋ねられると、僕は「恋人じゃないよ」と否定して「僕にとって彼女は妹みたいな存在かな。大切な家族だよ」と答えた。
僕の言葉を聞いて魔王は何故か納得してくれた様子だったが。それ以上何も尋ねてこなかったので助かった。だけども、魔王に僕のことを「妹みたい」と言われたので僕と魔王の関係がますます不思議なものに感じてしまうのだった。
それからしばらく経ってから僕たちはついにこのダンジョンの最上階へと到達したのである。そこで待ち受けていたのはかつて戦った勇者の仲間である「魔導王ガルヴァン」だった。魔王はすぐに戦うことを止めた方が良いと忠告してきたが、勇者を倒すためにはこのくらいの障害を乗り越える必要があると伝え、どうにかして勇者の居場所を聞くことに成功したのである。そして僕はその情報を信じることにした。なぜなら魔王は勇者の居場所を知っているような口ぶりだったからである。だから僕は「あなたが知っている勇者の居所はどこですか?僕はそこへ向かうつもりです」と魔王に伝えたところ彼女は「この先には罠しか無いはずです。おそらくその先には勇者が待っているはずです」と答えてくれた。
僕はそれを聞くと迷わず「魔王様は僕の後ろで隠れていてください」と魔王にお願いをしたところ彼女は僕の後ろに回って身を隠した。そうしているうちに僕に仕掛けられた攻撃魔法のトラップが次々と発動したが、僕の身体が傷つくことは無かった。その理由は魔王が「自動防御」というパッシブスキルを僕に掛けてくれたからである。このスキルがあれば僕への攻撃は全て魔王によって無効化される。そして魔王に守られている僕の姿を見た勇者は「まさか本当に生きていたとは驚きだ」と言って僕の前に現れたのである。
→Relaxation
Time(15分):回復魔法を使用する。対象者の疲れを取り除く。対象者1名のみ使用可能。
そして僕は目の前にいる勇者に視線を向けるとそこには見慣れない服装をした勇者がいたのである。そして彼は僕と会話を始めるのだが。その内容を聞いて僕は驚いた。何故なら彼が言うには、どうやら僕たちは別の世界から転生してきた存在らしいのである。つまり彼らはこの世界の住人ではなく、別の世界からやってきた者たちらしいのである。
そこで僕は彼の言葉の意味を理解したが。その事に関しては触れないようにすることにした。なぜなら僕は自分のことを普通の日本人だと彼に嘘をつくことで話を誤魔化したのである。だがそんな僕の態度に疑問を持った勇者が「お前はこの世界の住民か?」と問いかけてきたので僕は「いや違う」とだけ答えることにした。すると今度は彼の方が僕がこの世界にきた事情を説明してくる。
それによると彼は元の世界にいたときに仲間と一緒に魔王と戦おうとしていたが。その時魔王側に勇者の力を封じ込める能力を持っていた人物がいたことで戦いは魔王軍の勝利に終わったと言うのである。だが勇者は仲間の仇をうつためにその能力を使える人物を捜していたが見つからなかったらしい。そのことから勇者の恨みの矛先は魔王に向かったわけである。勇者曰く「僕が元の世界で暮らしていた世界は僕たち勇者に全てを預けていたのに魔王が出現したことによって全てが壊れた。だからこそ今こそ僕はこの世界を魔王の手から救い出してやる。僕と一緒についてこい。魔王は倒すべき敵なのだ」と勇者が言ってきたが。僕はその言葉には興味がなかった。なぜなら僕はもうこの世界の人間になってしまったからである。しかも魔王に忠誠を誓うことにしたのだ。そのため僕の主は魔王以外いないと思っているのだ。
そんな僕の心の内を読んだのか、あるいは僕の目をじっと見つめて話をしていたことが原因なのか分からないけども、突然彼は剣を引き抜くと、僕の方に斬りかかってきた。その動きはとても速いものであり、僕では避けることは不可能であっただろうし、そもそも魔王ですらも避けきれないほどの腕前の持ち主である。
そんな彼を見て僕は刀を構えると、迫り来る攻撃を弾き返すべく刀を構え直すと――そこでようやく自分が危機的状況に陥っていることに気付いた。そうしていると、僕は咄嵯に身を屈めてからその場から離れようとしたのだが。次の瞬間、勇者が持っていたはずの刀が自分の右腕を切り裂く光景を目撃してしまった。さらに「スキル『絶対切断』を取得しました」という声が聞こえると、僕は痛みに耐えかねてその場に崩れ落ちそうになったが。そんな僕を支えてくれた魔王が僕のことを守るように盾になる形で抱き寄せてくれていた。
僕は彼女に「逃げてください」と声をかけたのだが。魔王は僕を庇うことを絶対に止めようとはしなかった。するとそんな僕たちの様子を見ていたのか、先ほどの戦闘中は黙りを決め込んでいた魔王の仲間たちも僕のことを助けようとして近づいてきていたのである。そして、そんな彼らに向かって「貴女たちがここにいると足手まといなので離れていてもらえませんでしょうか?」と魔王は言う。すると、魔王のそんな言葉を挑発行為と思ったのか魔王の仲間たちも臨戦態勢に入っていたのである。
そしてそんな魔王の仲間に対して、僕は魔王のことを守れないかもしれないと思い。魔王のことを思いっきり突き飛ばしてから距離を取ったのであった。すると魔王は一瞬悲しそうな表情を見せたがすぐに覚悟を決めたらしく「私が時間を稼ぎます」と言って、一人で魔王の部下たちに攻撃を仕掛け始めた。その結果魔王の部下たちも、最初は戸惑っていたが、最終的には魔王の動きに対処し始める。
一方、僕は何も出来ず、地面に倒れこんだままで何も出来ない状態が続いていたが。しかし僕はここで初めて自分に備わっていた特殊能力について理解することが出来た。それが「ステータス鑑定」というものである。
僕はこの力を使えば相手の名前とレベルがわかるということに気づくと。僕はまず最初に自分から一番近い場所にいる相手の名前を調べることにして「名前を教えてほしいんだけどいいかな?そして出来れば君のレベルも知りたいんだけど」と尋ねると相手は戸惑いつつも「私はリリアといいます。レベルは現在102です」と答えたのである。僕はリリアという名前に聞き覚えがあった。それは僕がリリアと出会った時に遭遇した時にリリアの年齢を聞いたら13歳だったのだ。それで、僕はもしかすると彼女が魔王の側近であり「影武者」の役割を担っているのではないだろうかと考えたのだ。そして僕は魔王が言っていた「魔王は複数の能力を持っている」という言葉を思い浮かべたことで彼女の「種族が不明」という事実も関係してくるのではないかと考える。そこで僕は改めて魔王のことが知りたくなって彼女の名前を聞こうとしたところで。僕は慌ててその場から離れたのである。するとその直後に魔王と戦おうとした相手の一人が吹き飛ばされていく姿が見えた。
そう、その吹き飛ばされていった相手が勇者本人だったのである。そこで僕は彼女が僕を助けるためにわざと敵の攻撃を受けてまで僕を守ってくれたのだと思い。急いで魔王の安否を確認しようとするが、そこに勇者の仲間の女性たちが襲いかかってきて、僕の行動を邪魔した。
そこでようやく僕は彼女たちの本気度を感じ取る。その証拠に一人は僕の顔目掛けて拳を振り下ろし、もうひとりは剣を突き立ててきたのである。僕はそれを間一髪で避けることに成功した。だが僕もいつまでも受け身のままではなく、彼女たちの攻撃を避けつつ反撃を行うと二人は僕の反撃を受けて倒れたのである。
そして僕はそのまま二人を相手に立ち向かっていくと。次第に二人の力が弱まっていく。それを感じた僕は二人が意識を失ってしまう前に彼女達に「大丈夫ですか?起き上がれますか?」と聞くと、彼女たちは僕に礼を言うと立ち上がった。そしてそれからしばらく経って彼女たちが落ち着いた後に僕は彼女たちに質問をしてみたところ、どうやら僕たちは勇者の本当の目的を聞きだす為に魔王城に潜入を試みていたところ、勇者に見つかったらしい。そしてその際に僕の実力を知ったことで「一緒に旅に同行しろ」と言ってくるが。僕としては勇者の言いなりになるつもりはないと答えて断ったのだ。そして勇者たちはしばらく考えた結果。「ならば勝負しろ!」と言ってきた。そしてそれに僕は仕方なく同意することになったのだが。そこで勇者たちが提案してきた内容は「3対1のバトルマッチ」であった。つまり1人が僕と戦い残りの二人で連携して襲ってこようという算段らしい。僕はそんな提案をあっさり受け入れることにすると。早速三人のうちのひとりと向かい合うことになった。そして「俺の名前はガイルという。レベルが105でジョブが魔導剣士だ」と名乗る。それに対して僕は自分の名を告げた後、彼のステータスを確認する。すると「魔王討伐の旅に出たとき」からほとんど変わっていない状態だった。つまり僕の見間違いではなく彼が勇者であると確認が取れたのである。そんな彼は魔王と戦う為だけにここまで来たらしく、僕との戦いが終わると「これから俺はお前の手助けをしよう」といってきた。その言葉を聞いた僕は思わず驚いてしまい、一体どういうことだと問いかける。すると「俺にはお前がこの世界の人間じゃないということくらいお見通しだよ。だってそうだろう。お前は異世界からの転移者なんだよな?そしてお前が持っているスキル『魔王軍配下への勧誘』を使って俺のことを説得しにきたわけだ」と言うのである。僕はそれを聞くと素直に認めるしかなかった。すると、彼は「だが残念なことに魔王は既にお前のことを信用しているようだ。つまりお前のやっている事は単なる無駄足でしかない。そんな無駄足をさせる訳にはいかないんだ」と言って、戦闘が始まったのである。
そして、そこからの戦いは非常に苛烈を極めることになった。何故なら勇者の持つ聖剣がとても強力であり、魔王が扱う闇の魔力よりも強い力で僕に迫ってきたからだ。しかも彼の持つ魔導剣士としての能力は非常に高いらしく、僕の使う刀の能力を見事に封じてきてもいたのである。
だから僕は全力で戦わざるを得なかった。そして、ついに勇者から攻撃を受けて致命傷を受けてしまう。だがそこで僕のスキル『不死化』が発動すると同時に僕は「死ねない身体」を手に入れていた。それによって僕は死の淵から復活を果たし、再び勇者に戦いを挑むことになる。そうこうして勇者との死闘を延々と繰り広げていたら。僕はいつの間にか勇者から「仲間になって欲しい」と言われてしまった。
そんな僕はどうすれば良いのかと悩んだが、勇者の申し出を受け入れることにした。理由としては勇者の言葉を聞いていて魔王のことを「姉さん」と呼んでいたのを聞いてしまって、そのことについて尋ねてみると「お前の姉さんでもある」と言うのだ。その話の流れで魔王から聞いた勇者が勇者であると言うことを魔王に伝えた。その結果、勇者が僕のことを気に入ってくれていると言うこともあって魔王城の中に案内してくれると言うので、ありがたく同行させてもらえることに。そして僕は勇者と一緒に玉座の間へと向かった。そしてその道中では色々な話をしたが。まず驚いたのは、魔王には妹が居たことである。そしてその魔王の妹こそこの国の女王であることも判明した。その女王様と勇者との関係もかなり親密なものになっていて「この世界を救ったら結婚することになっている」と言っていたのである。僕はそんな話を耳にしながら玉座の部屋にたどり着いた。そこには魔王とリリア、それと勇者によく似た女性が立っていたのである。僕は咄嵯に身構えたがそんな僕を安心させるかのように魔王は自分の家族を紹介してくれる。
そしてそんな自己紹介が終わった後に僕はどうして自分が勇者と出会ったのかを簡単に説明する。その結果、勇者は魔王とリリアと別れることを選んだ。しかし魔王はそれに反対していて、「私も一緒に行きます」と言って、無理やり付いてきそうな感じであった。だけど勇者はそれを断ってしまい、僕たちと共に行くことを決意する。そんなやり取りが終わって僕は改めてリリアに声を掛けることにした。「あの、少しいいかな?」と。リリアはすぐに返事をしてくれて「なんでしょうか?」と言い返してくれた。そんなリリアに僕が伝えたかったことは、彼女の気持ちは嬉しいのだが、僕も彼女と離れるのは辛いものがあるという本音を伝え、そしてそんなリリアは涙を流しながら僕のことを抱きしめてくれていた。
そんなことがあった後、僕たちは改めて旅立つことになり、魔王城を出ようとしたところで魔王が僕に「魔王軍は任せてください」と言うので。僕もそれに応えようとして「じゃあ頼むよ。リリア、ガイル、レイス」と魔王たちに言うと。それぞれ「おまかせください」や「分かった」などと言って、それぞれの役目を全うすべく行動を始める。ちなみに僕の方にもリリアの友達である女戦士のサーシャが「私たちも手伝うわ」と協力を名乗り出る。そんなこともあり、改めて僕はリリアと旅を続けることを決意してから旅を再開したのであった。
(あれ?これってもしかして魔王が言っていた「私の代わりはいくらでも作れる」ってこういう意味だったのか?)僕は心の中でそんなことを考えていたが、それを表に出すこと無く先へと進んで行ったのであった。それからしばらくして僕は勇者のことを勇者としか呼んでいなかったことに気づき。そこで勇者の名前も知らなかったことに気づいたのである。
なので、僕は名前を聞いた上で「勇者、そろそろ名前を聞かせてくれないかな?」と聞いてみた。それに対して彼女は快く応じてくれたので僕は「僕の名前は天木真司といいます。よろしくお願いします。そして僕のことは呼び捨てにして構わないですので、どうか僕もあなたのことを「勇者様」とは呼ばずにあなたと同じように「真司」と呼んで貰えないですか?それに僕の敬語口調もおかしいですので、出来ればやめてほしいんですけど。ダメですかね?勇者様」と言う。そうしたら勇者様も僕の言葉を承諾してくれたので。それからしばらくはお互いの呼び方が「真」と「勇者」に変わったのである。
そんなこんなで勇者との合流を果たした僕であったが、それからすぐに魔王軍との戦争が始まることとなった。その理由としては魔王が魔族の長として他の魔物達に対して威圧的な態度を取ってしまい。魔族たちの怒りを買ってしまう結果となってしまい、それが原因で魔王軍の大侵攻が始まったのだ。そう魔王の「種族が不明」なことから推測するに、魔王は魔王でありながら実は複数の能力を持っており。それが一つだけではないのではないだろうか。そしてその正体が分からないからなのか、魔王は他のどの種族でもない何かという結論に至っているみたいで、だからこそ魔王と呼ばれているんだろうと思っている。まぁ憶測でしか無いんだけどね。
ただこの予想に関しては当たらずとも遠からずと言ったところかもしれないので。この可能性は高いと思うんだよなー。ただ、あくまでもこれは僕の想像の範囲内でしかないからこれ以上考え込むと変な妄想になってしまいそうだし。とりあえずはこの話は一旦忘れておくことにする。そしてそれから僕は勇者と共闘することになり、彼女と共に魔王軍に対抗したのだった。その結果、魔王の居る玉座の間に到達することができたのだが。僕たちが辿り着いた時には既に遅かったのである。そう魔王は既に魔族によって殺されていた。そしてそこに居たのは魔人族の王様らしき人物だった。
そうこの魔王軍を率いていた張本人こそが本物の魔王だったということが発覚したのである。しかもこの人物が勇者の妹で僕の実姉だと判明し。僕はショックを受けながらも、勇者や魔王の仲間と協力して魔人の王を追い詰めることに成功する。すると突然に「我が弟よ。お前にチャンスをやろう。今すぐ立ち去るのならばお前の命だけは助けてやらんでもないぞ?」と言ってくるが、僕はそんな言葉を無視して戦いを挑んだ。すると魔人は「仕方ない。ならばお前も我が力の贄となるがよい!」と言って魔弾を放つ。だが僕はそんな攻撃は効かず。逆に魔人に対して「喰らえ!魔刀!」と言って反撃する。そしてそんな戦いが続くこと数分が経つ頃には決着は付いていた。
「さすが我が弟の力は強い。流石は勇者の血を受け継いでいるだけのことはある。だがまだ終わりでは無いぞ!」
すると次の瞬間、突如地面が大きく揺れ始める。それはまるで大地震のような大きな地震が起きたかの如く激しくなっていく。だが僕と勇者はそんな状況下においても落ち着いて対処し続けていた。そう、なぜなら僕は「状態異常無効化」と言う効果を持っているからだ。それに加えて勇者は僕のことを信頼しているらしく。僕を頼るようにと言ってくれたので。僕はそれに従うことにした。そんなことがあり、僕と勇者はその状況を乗り切り、無事に勝利を収めたのである。
そんな出来事もありつつ、ついに僕はリリアに「魔王を倒したいから協力してくれないかい?」と言うが、それでもリリアは渋っている様子を見せていたので、そこで僕は彼女に魔王を倒して平和を取り戻して欲しいと言うことと魔王城にいる魔王のことが好きな人と会って話を聞きたいという僕の気持ちを話したら納得してくれたので。魔王の居る場所に行くことになったのである。
そんな訳で僕と勇者は魔王の元までやって来たが。そこで僕たちを迎えたものは悲惨な光景であり。それは「魔人が魔物たちを惨殺していた」と言うものだったのである。そう、僕はそこでリリアと魔王との会話を思い出すことになる。
「私達はお互いに血を分け合って生まれてきたのですよ。つまり私達の体は一緒なのです」
(そういうことだったのか。だから魔王と魔王の妹が双子なのに瓜二つだと言うことも納得がいく)
僕はそう思って魔王に声を掛けると彼女は僕に「勇者と貴方のお姉様はもうここにはいない」と言うので僕は慌てて彼女を止める。そんな彼女は魔王の力を受け継いだ「リリス=アゼシア=アルデバラン」という女性であったのだ。しかし魔王であるはずのリリアの姿が無いことでリリアの行方を知るためにも魔王には死んでもらうことにしたのである。そこで僕は「リリアはどこにいった?」と言うと魔王リリアが言うにはすでに死んでいると言うのだ。しかもリリアは僕に手紙を残して消えていると言うのである。僕はその手紙を読み進めるとそこにはこう書かれていたのだ。
"姉さん、いえ魔王陛下にもしものことがあった時は私達がこの国を守り抜くつもりでしたけど。まさかこんなにも早く姉さんに危機が訪れるなんて思っていなかったんですよ。だけど、ここで魔王である私が居なくなった場合、残された国民は混乱することになると思います。そして私はこの国の王族でもあるので。やはり民のことを想えばこの場を離れるべきではないのです。だから姉さんはどうか気にせず先に進んで欲しいんです" と、そのように書かれた文章を読んで僕は胸を痛めたが今はそんな気持ちになっている時じゃないと思って気持ちを切り換えることにした。だけどリリアのことを探さないわけにはいかないのも事実であるので、リリアを探す旅を続けることを決意すると。リリスは僕と同行したいと申し出てきたのである。
僕は彼女のことを疑うことなく一緒に連れて行くことを決めてからリリアを探す旅を再開するのであった。
リリアが魔王に殺されたという事実を突きつけられた後、魔王を倒すことを決めた僕はリリアを必死に探し出す。だけどそんな僕にリリアは見向きもしてくれず、リリアと行動を共にしてリリアと共に魔王城に向かった僕はそこで魔族の王と戦うが、僕はリリアの仇を取るべく、怒りに身を任せながら戦うも負けてしまい気を失う。その後僕はリリアに抱き抱えられて意識を取り戻した。どうやら僕はそのまま寝込んでいたようでリリアが看病をしていてくれていたことに感謝をした。リリアは「私よりも自分の体の心配をしてください」と言ってきたが、そんな彼女を僕は強く抱きしめていたのである。そうして僕たちは二人で魔族の王との戦いに備えていたが。魔族はそんな僕たちの隙を見て僕を殺そうとしてきたので。僕は魔人を一瞬で倒すことが出来たが、そんな僕を狙って再び襲ってきたのである。そしてそれを察知することが出来なかった僕とリリアは魔人に殺されてしまった。しかしその寸前でリリアが命をかけて僕の事を守ってくれたのだ。なので僕たちは一度死ぬことになったが、リリスのおかげで復活することに成功する。
(リリスが僕たちのために魔族の王に一矢報いてくれようとしているが、それを無駄にするわけには行かないよな)僕はそんな思いを抱きながらも魔王に挑みかかるが、魔王は僕の攻撃を物ともせずに受け止めたのであった。そして「その程度で私に傷をつけることなど不可能」と言い放つので。僕は更に追い討ちをかけるように連続で攻撃を仕掛けるが、魔王の圧倒的な強さの前では全くもって歯が立たず僕は呆気なく敗北してしまうのだった。それから僕は魔人の王の圧倒的な力の前に倒れて意識を失ってしまう。だがそこで僕は謎の声を聞いて目を覚ます。その相手はかつて勇者と共に戦っていた賢者と名乗る男だったのだった。彼は「君の力を目覚めさせてあげるから少しばかり時間をくれないかな?」と聞いてくるので、僕としてはリリアのことの方が大事だったのである。そして僕はそんな賢者に対して、リリアを救えるのなら時間くらい構わないと答えると。「じゃあ僕と一緒に行こうか」と提案されるので僕はそれに素直に応じる。すると僕は光に包まれていき。
《エクストラ固有スキル『勇者覚醒』が発動されました。『真司』の職業に聖騎士が追加され、『真司』『勇者』『魔剣士』の称号を持つことができようになりました。さらに『勇者覚醒』『真勇者』『英雄覚醒』『超魔戦士』の能力を得ることが出来ました》 僕はその言葉を最後に聞くと同時に僕はその力に驚きを隠せないでいた。なぜなら「魔人の力を受け継ぎし者」「聖勇者の力を継ぐ者」「魔を滅する者」という称号を手に入れたのと。それに加えて勇者としての能力まで手に入るとは思ってはいなかったからである。僕はそんな風に戸惑っていると、いつの間にか目の前にはリリスが立っていることに気がつき、僕が彼女に大丈夫か?と尋ねると彼女は涙を浮かべて「良かった。また生きて会えたんだ」と嬉しそうな表情をしていたので。僕は彼女のことを優しく抱きしめる。
そう、そんな僕らを見ていた魔人は「何だ貴様らは!?何故ここにいる!」と叫ぶが。そんなことよりも僕の力が強くなりすぎていて制御が上手く出来なくて困った状態に陥ってしまったので、この場で魔王と魔族を一気に倒してしまいたいと本気で思うと僕の中の何かが強く反応し始め、その力は魔人に向けて解放されることになる。
すると次の瞬間、僕と魔人は互角に近い状態になっていた。そしてそんな僕に対して魔王が魔弾を放つと僕に直撃するが僕は平然と立っていたのである。その光景を見た魔王は驚愕しているようだったが。そこで僕は魔王が本調子では無いのだと理解する。なので僕は魔王が全開の状態になる前に魔人の王を倒してしまおうと思い魔人の元へ走ると、そこで僕はある事に気がつく。そう、魔王と魔人が同時に僕の元に攻撃してきたのである。しかも僕にダメージを与える為に二人が放った一撃は同じタイミングで僕に当たると、僕はそれを受け流した。そう、僕は魔王と魔人がお互いに手を組み。僕を殺すために攻撃したことを理解したのである。
(これは一体どういうことだ?)僕は二人の攻撃がお互いの攻撃を打ち消し合うような形になったことに疑問を抱いていた。しかもお互いに全力ではないとは言え、かなりの威力を誇っていた。それこそ二人とも魔王や勇者並の強さを有していると言っても過言ではないだろうが。
(だが、それでも今の僕は負けるつもりはない)
僕はそう思って剣を構え直すと魔王と魔人との激しい戦闘を繰り広げることになる。だがやはりというか、魔王が優勢で押してくるのである。
(くそ、さすがは魔王と言ったところだが。僕はここで倒れる訳には行かないんだ!)僕はそう思いながら必死に抵抗していた。そう、ここで倒れた場合、魔王が本格的に活動し始めるので、そうすれば人類は魔王によって滅びの未来を辿ることになるのは目に見えていた。だからこそここで魔王を絶対に倒さなければならないと思ったのだが、魔王は想像以上の強さを持っている上に魔力量も多く。その実力は僕よりも遥かに上であり、僕は劣勢に立たされてしまう。そしてそんな魔王を相手に苦戦しながら戦っていると魔人が僕に向かって拳を振るってくる。
「そんな程度が効くわけないだろ!」
僕はそう叫びながら魔人の一撃を片手で掴んで握り潰すように腕を掴むと、僕はそこから魔王の方を見ると魔王の体は既にボロボロになっている状態だった。僕は魔王の体を斬り刻むことで止めを差して完全に殺そうとしたが。そこに先ほどまで押されていたはずの魔王が立ち上がってくる。
(こいつは化け物なのか?)
そう、明らかに致命傷を受けているはずの状態のはずなのに立ち上がったのである。そんな魔王に驚く僕に対して魔王は笑みを見せてきた。
(まずいな。この場を切り抜ける方法が無いぞ)
僕はそう思っていた矢先、突然僕の周りに結界が出現したことで僕はその効果により動きが封じられてしまった。そんな僕のことを見てニヤリと笑う魔王は続けて「私の可愛い子供たちが邪魔をしないようにお前たちの相手をしてくれるだろうよ」と言うのだ。しかし僕がその言葉の意味が解らないでいると突如僕の背後に魔人たちが現れて僕を攻撃してきた。そして僕はそのまま魔人にやられてしまうが、何とか意識を保って立ちあがるが。そこには魔王の姿はもうなかったのだ。そして僕が必死に探している間に、魔王城には魔人が増え続け、とうとう城の周りを囲まれてしまっていたのである。僕はこの絶望的な状況に心の中で嘆いていた。そう、いくら強い僕であってもこの数を一度に相手にすることは不可能だったからである。そして僕自身もその力の代償で動くことも出来ないのである。だからといってここで諦めれば全てが終わりを告げる。だからと言ってどうすることも出来なかった。
それから数時間後に魔人が現れた。それは魔王城の中から次々と出てきて、僕を殺そうとする。しかもその数は100万はくだらなかったのだ。そんな中でも僕を守ろうとするリリスと仲間達が懸命になって戦ってくれているので。僕も一緒に戦いたいと思っているが。そんな気持ちとは裏腹に僕は未だに立つことが出来ないでいた。僕はどうにかならないのかと頭を抱え続けているとリリスの声が聞こえてきた。どうやら魔人を倒したリリス達はこちらに来ているようだが。そんな時に僕の目の前にはあの賢者が現れる。
(確か賢者と名乗っていた男だ)
「君の力を開放するために僕はここにきた。だけど僕の予想より君は強くなっている。そこで君には試練を乗り越えてもらいたいと考えているが構わないかい?」と質問してくるので。僕の答えは決まっているので迷わず「わかったよ。だけど今の状態で勝てるとは思えないけど。それでも良いなら相手になるよ」と伝えると賢者は「なら早速だけど、これから君を強制的に『真の勇戦士化』させるね。だけど安心して欲しい。君を死なせるような真似はしないと約束しようじゃないか」と言ってきたので。僕の意識が次第に遠のいていくのだった。
僕は自分の身に何が起きているのかわからずにいたが。とりあえず現状で確認できたことを纏めてみると。僕の体に『魔戦士化』と『真魔戦士化』の効果が付与されたようで、それと同時に僕の体が更に強化されたみたいである。ただ、それ以上に『真勇者』の力が加わったことにより。僕のレベルの上限を解除されることになったらしいので、これならばどんな敵であろうとも簡単に倒すことが可能になると。何故かそんな確信があるのだった。そして賢者から貰ったアイテムの力を鑑定してみたが、その内容には驚きを隠せない状態に陥る。
魔導士の杖:MP+50000(固定)
魔力上昇値∞
(こんなチートみたいなものを手に入れられるとか、普通じゃありえないだろ!)僕は心の中で叫びながらもこの世界には僕以外には勇者は存在しないのだと知ったのであった。だが、そこでふと思うことがあった。そういえばこの賢者の本名を聞いていなかったなぁーって。そしてそれを本人に直接聞こうとした途端に僕の意識が戻ってしまう。
そして気がつくと見覚えのある部屋で目が覚めたので、僕が目を覚ましたのがわかると。
「お帰りなさい、真司くん」
彼女は笑顔で迎えてくれたので、僕は思わず彼女を抱きしめる。そして彼女が僕を強く抱きしめ返してくれたところで彼女の顔を見つめると。彼女も見つめ返してくる。その彼女の綺麗な瞳に吸い込まれそうになるので、そこで僕は彼女と唇を重ねたのだった。暫くの間キスを交わしていると僕はリリスとの愛を再確認することができたので。そろそろ皆の元へと戻ることにしたのである。
僕は彼女のことを優しく抱きしめながら「ちょっと用事があってさ?少しだけ離れていてごめんね」と伝えて離れようとするが。彼女は首を左右に振って「今はこうして二人でくっついていた方が幸せだよ!」と言ってくれるので僕は彼女のことを抱く力が強くなる。すると彼女は僕の頬に手を添えたので僕は自然と彼女のことを抱きしめるのを止めてしまうと、その行為に対しての返答をする。そう、僕のことを見つてくる彼女に優しく微笑みかけると。「僕はこれから魔王の元へと向かうことにする。もしかするとまた会えなくなるかも知れない。それでも、もしも会えたその時はさ。僕は君に全てを話したいと思っている。そして僕は魔王を救う。だから待っていてほしい」と告げてから、そっと口づけを交わすのであった。
僕はリリスとの別れを終え。魔王を救うための準備を始めるためにまずは魔人の王を倒しに行くことにした。だが魔王のいる場所はここから遠い場所にあるらしく、僕は移動用の転移陣に乗って移動することを選んだのだが。その場所というのが、魔王城に程近い位置にある山奥に存在する村であることが判明したのである。僕が魔族の住む領域に足を踏み入れたのは初めてなので。最初は不安でいっぱいだったが。
魔人の王を倒す為に、僕は魔人王の城を目指す。僕が向かうべき場所には、先ほど僕が倒した魔王の娘と、その配下の魔王がいると聞いている。その情報を信じた上で考えると魔人王の城に向かったとしても僕では太刀打ちできない可能性があるだろうと思い。僕は一度別の場所に向かい魔人の王を探し出して倒すことに決めると、魔人の王が潜んでいるという町に向かうと、そこは小さな町であまり大きな町に感じられない。
だが情報収集の為だと判断してこの町では宿屋を探す事にしたのだけれど、そこで意外な人物が僕の前に姿を見せたのである。
それは魔王の娘であるリリスにそっくりの顔をした女性が酒場に入って来たところだと言うことである。僕はこの女性はまさかと思い。魔王である少女の事を尋ねる事にしたのである。すると彼女は魔王であると答えてくれて驚いた表情をしていたのだ。だが魔王だと名乗られても、僕は別に恐れることはなかったのである。なぜならこの女性の正体は既に知っていたからだからである。僕はリリスのことを思いだし、どうしても会いたくなって魔王の少女に提案する。魔王城を案内してほしいと言ったのである。
そうすれば少しでもリリスに会う時間が作れると考えたからであるが。しかし魔王の少女は断ることなく快く引き受けてくれたのだ! それからは魔王城を目指して僕と魔王が歩いていたのだが。その道中に色々な魔物に襲われていたのは言うまでもないが。僕は魔王を守る形で戦いを繰り広げていたら。いつの間にか魔人の領域と呼ばれる森の奥深くにまで入り込んでしまったようである。僕はその状況を利用して先ほどまで襲ってきていた連中を殲滅することにすると。僕は魔王と一緒にこの辺りで野宿をすることにしたのだった。
ただ魔王が一緒だったので安全を考慮して結界を張ることで周りからは見えないようにすると同時に、魔王を眠らせて結界の中へ引き込むと僕も眠るのである。そして翌朝を迎えるが。まだ夜中だったが、誰かに呼ばれている気がしたので起きると。そこには魔王がいたのである。
僕が魔王の存在に気付いた時に魔王の方も気付いたのか「やっと起きてきましたわね。ずっと待ち続けていたんですよ?」と言ってきてくれたので、僕はその気持ちに対して申し訳ない気持ちになっていたのだ。だって本当は僕とリリスのために色々と動いてくれていたからだ。それこそ危険な旅をして魔人を束ねている存在に接触しているほどである。だからこそ僕は彼女に向かって「今までよく頑張ったね」と言う。
僕の一言を聞いた彼女は嬉しそうにして「私は貴方のことが好きになってしまいましたので、一緒にいたいんです」と言われて僕は「うん。一緒にいよう」と言うと彼女は涙を流していたので「どうしたんだい?」と僕は質問をしたところで。彼女は「嬉しいだけです。ですからもっと甘えても良いですか?」と言われてしまった。僕は勿論良いよと告げると彼女は笑顔を見せてくれる。僕はそれがとても可愛かったので、つい我慢できずに再び口付けを交わしてしまった。その瞬間から、僕の意識は徐々に変化していき、目の前にいる女の子に対する愛情が強くなっていったのだ。まるでリリスを見ているかのような気分になりつつも彼女の体に触れていくと彼女は可愛い声を漏らしてくれて、それに気を良くしてしまった僕はそのまま彼女の衣服を剥ぎ取り、お互いに裸になると性行為を始めてしまう。その行為はお互いを求めあうように激しいものであり、僕は彼女のことが好きになっていった。そして彼女が気絶するまで求め続けた後で、そのまま抱きかかえると再び僕は眠りにつく。それからは僕は目覚めると、今度は彼女が起きており、僕は恥ずかしくて顔を見れなかったが。それでも僕の為に何かしらの行動を起こしていたような気配を感じていたのであった。
その後、彼女は僕と話をする時間を作ってくれることになったみたいであり、僕たちは二人っきりで過ごす時間を作り上げてくれたので、僕は彼女に感謝の言葉を伝えようとした際に。何故か目の前にいた魔王である少女は消えてしまい。そこに現れた人物は魔王ではなかったが。僕の前に現れたのは紛れもなくリリスだったのである。そこで僕は完全に意識を取り戻すことになる。
どうしてこのような事態になったかを考えてみたら理由はすぐに判明できたので。僕は目の前のリリスと話をすることに決めてから、彼女に「久しぶりですね?」と言ってみると。リリスは涙目になりながら「もう!私と会うつもりがないと思っていたけど!心配していたんだよ?」と言ってきたが。僕が魔王から聞いた話の内容を伝える前に。彼女は僕の胸に飛び込んできたので僕は優しく抱きしめる。そして僕はリリスを抱きしめているうちに「愛してるよ」という言葉を無意識に呟いていたのである。すると彼女は僕を抱き締めながら泣き始めてしまった。
暫くの間、リリスは僕を抱きしめながら泣いていたが、ようやく落ち着いてくれたようなので、僕は彼女に説明を始めると。
「真司くんから全て聞きました」
「なら話が早いね。君はこの世界に呼ばれた勇戦士だ。でも僕と違う世界から来た君を勇者としてこの世界に呼んだ魔王が僕に君を託した理由がわかったのさ。魔王はこの世界の現状を君に託したかったんじゃないかと思う。この世界を救ってくれって願いがあったから、僕は君を救うと約束をした。ただ君もわかっていると思うが、僕は君の知っている真司ではなく。勇者としての資質がある者だよ?それでもいいのかい?」
「それでもいいのです。私は貴方がいいので!」
「ありがとう」
「真司くん、いえ、貴方の本当のお名前はなんなのですか?それと、私が元の世界に帰れる手段があるかも知れません」
「僕の名は剣聖、そして異世界から来ました。この世界での呼び名は魔王です。僕の本当の名前については教えられないけれど、魔王とリリスが会えていない間の話を聞いてくれないかな?それで僕がどういう人間だったのかわかる筈だから。それに魔王はきっと君が元の世界に戻りたいと思えば戻してくれると信じてる。そしてこの世界には魔王がいるので僕は帰ることができないのでこの世界に骨を埋めるしかないと考えているんだ」
「そうなんですね。では私は元の世界でもこちら側でもない世界、つまりこの異世界に来たのも何かの縁だと思いますので、ここで生きていきます。貴方が魔王様であるのならば私は貴方の物になっても問題ありませんよね?それなら魔王様が好きなようにしてくださいね。私の身体が壊れてしまうほどに激しく抱いても構いませんからね!」
「君が望むのであればそうするかもしれないけれど、今はそういうことはやめてほしい」
僕は彼女に優しくキスをした。すると彼女もそれを受け入れて舌を入れてこようとするが。僕の方はキスに飽きてきたというのもあるのと。リリスの身体が欲しいからキスを止めて彼女に抱き着く。
僕はリリスに自分の正体を告げることにしたのだ。僕はこの姿の時の事を魔人と呼ぼうと思っていて魔人の王を倒した後に、僕は魔王の力を手に入れようと決めたのだ。魔族の王を倒すことによって僕は魔人の王となることができるらしいので僕はこの力を魔王であるリリスを守る為に利用しようと思うと伝える。
僕の言葉を聞いた魔王である少女は驚きの表情を見せたが、すぐに笑顔で「これからは一緒にいる事が増えますね」と伝えてくれたので僕が彼女の手を握ってあげると。彼女の頬が赤くなっていた。そして僕はそんな彼女の唇を奪うと魔王は僕の背中に腕を回してくれたのだ。
それから僕は魔族が支配する領地に入り込み。魔人の王が住む城に足を踏み入れた。そして城の中には魔人の姿が多く見受けられたが。僕はそれを気にせず城の中に入り込んだのだ。そして城の一番高い塔の上にて、僕たちの戦いが始まる。僕が手に入れた「神眼の加護(鑑定)」の力で、目の前にいる魔王である少女の正体を知ることができたのだ。
その魔王の名は、「魔王の娘:リリス」で種族は「魔姫種魔」と呼ばれる存在である。その魔人族は魔人である僕とリリスの血肉を取り込んだ事により進化した存在だというのだ。魔人は血の盟約を交わした相手とは魂レベルで繋がっており、それは魔人の王が死ぬまで解かれる事はないのだという。
だが、この「魔人の娘」リリスは、魔人の子を産んだが。産んだ時にその子は亡くなってしまい。それからというもの、リリスの心には大きな穴が開いてしまっていたようだ。しかしある日を境に、その大きな心の穴が塞がったのである。
それが僕の存在であったのだ。僕とリリスは恋人となり、リリスは僕の子を妊娠した。だがその出産はリリスの命を奪ってしまう形になってしまったのだ。しかし僕はリリスとの約束を守りリリスの子の面倒を見るつもりだった。しかし僕が目を覚ました時にはリリスは何処にもいなかったのだ。
それから数年の間は僕一人だけが生きていたのだが、ある時に魔人から僕に対して魔人になれと言う勧誘が来て僕は魔人となった。その時からリリスの居場所がわからなくなってしまっていたのだ。そして今に至るわけなのだが。
僕がリリスのことを思いだすと同時に、魔王である少女もリリスのことを考えていたのだろうか、魔王は突然泣き出してしまったのである。僕は慌ててリリスの事を思い出すと同時に僕は目の前の少女を抱きしめると、彼女から思いもよらない言葉を告げられた。
それは僕に対してリリスに似せて姿を変えろと言うものだ。確かに僕はリリスの顔によく似ている。それどころか全く一緒の顔をしている。しかもリリスの年齢と見た目がそっくりで、更に僕と同じぐらいの身長と体型だった。僕はそれを受け入れると魔王は僕の体に手をかざして変化させた。
その結果は僕は一瞬で20代後半の男性に変化することに成功すると、魔王が僕の顔を見て満足そうに微笑んで「ありがとうございます。それでは、私達と一緒に旅に出てくれますか?」と言ってくれた。
僕はそれを受けると、僕はリリスを探す旅に出る事にした。魔王の話ではリリスはどうやら僕のことを魔王に託していたらしく。僕の子を出産してしまっているから、早く助け出してあげないといけないと考えていたのである。ただリリスは僕の力を吸収しているため。かなり危険な状態であることも伝えられていたのだ。
だからリリスを助け出すためにも、魔王である彼女の力がどうしても必要だと考えた僕は彼女と共に行動することを選んで。リリスのいるところまで連れていって貰うことにしたのである。
「まず、リリスのいた場所に案内して欲しい。そのあと、僕がどう動くべきか考えるよ」
「わかりました。では私の体に乗り込んできてください。そうした方が色々と都合が良いでしょうから」
「ああ」
僕は魔王の指示に従い。僕は彼女と密着すると。そのままの状態で僕はリリスのいた場所へと向かうことになる。その間も魔王は移動している際に色々な情報を話してくれたのだ。それによるとこの世界では「勇者と魔人」と呼ばれている者が存在していて。この両者の間にしか子は生せないとされているようであった。それを知った時は非常に驚いたが、それよりもリリスのことが気になり。どうにかして助け出せないのかをずっと考えていたのである。
ただ僕の考えている事は魔王にも伝わっており。既に魔王が対策を考えてくれていたようなのであった。それを聞くと僕は安堵の気持ちになる。
「大丈夫ですよ。もうすでに貴方と私が一緒にいることは向こうの世界に知られているので。おそらく、向こう側も貴方の捜索隊を結成していると思われますので、そこで私はリリスちゃんを奪還しに行きます。それまでは貴方はこの世界に残っていてほしいです。私が貴方の代わりとして貴方の子供を作ってあげるので安心してくださいね?」
「わかった。僕が君の側に居ればそれでいいということなんだな」
「ええ、私は貴方の側に常に居ると誓っているんですからね」
「そうだよな。なら僕の方でも少しばかり準備をしておきたいんだけど」
「なら私の方で必要な物を準備しますのでそれを持っていってくれませんか?一応念のために貴方の装備を用意していますのでそちらの方を使って頂けると嬉しいですね」
そう言われてから数分後、僕の手に握られていたのは剣と盾である剣と。僕の着ていた衣服一式と靴が用意されていた。そしてそれらの武器には見覚えがあるものだったので驚いてしまったが。とりあえず魔王にお礼を言う。ただその際に僕の事を剣聖と呼んでくれたのだ。その響きはとても心地よいものであった。なので僕は「僕は剣聖だ。よろしく頼む」というと彼女は嬉しそうな顔を浮かべて、「はい。よろしくお願いします。私の事を愛して下さいね」と言われたのである。
そして僕と魔王の二人でリリスの元に向かうのだった。
僕が魔王と出会ってから一ヶ月が経ち。ようやく魔王と再会することができた。魔王は僕の前に現れると笑顔で「迎えに来てあげたわよ」と言われ。その後からリリスの事が話された。どうやら僕に子供を預けたことで魔王の身体には影響が出てきており。このままだと死んでしまうのだという。それでリリスに子供を託している以上は自分が死ぬわけにはいかないと考え。僕と二人きりになれる方法を模索した結果。僕の力を取り込むことにしたらしい。
それ故に魔王の僕に対する執着が強すぎることに僕は違和感を覚えたが。僕がそれを指摘すると。「当たり前じゃないですか。貴方がいない間に私一人でこの世界を救うつもりで頑張ってみましたが、やっぱり貴方じゃなくちゃ無理だってわかったんですよ」と言ってくれたのだ。だからこそ僕を元の姿に戻すことに協力する代わりに。僕の子を身籠らせてやるという約束をすることが出来た。そうしなければ魔王は僕の力を吸い取ってしまい。僕の方は元の世界に戻されてしまう恐れがあったのだ。それを考えるとやはり元の姿に戻してくれるように魔王に頼まなければいけなかったのだ。そして僕はその提案を受けることにしたのである。
それから僕は魔王と一緒に暮らすことになり。リリスの事も気に掛けながらも魔王の相手をする毎日を送ることになったのだ。そんなある日の朝。魔王が「私はしばらく出かけてくるけど、留守番はしっかりしておくのよ。それとリリスさんのことだけど、まだ生きてはいるから心配しないでくださいね」とだけ言ってから、何処かに転移した。それを聞いた時は驚いたが。僕はリリスのことよりも魔王の方が気になったのだ。魔王は僕が魔人と化していることで僕の魔力をある程度吸収しているが。それはあくまで一時的に過ぎないため僕の力は魔王と釣り合っていない状態になっていたのだ。
そしてリリスに関しては僕の子を産んだせいで衰弱が激しく、今のままではいつ死んでしまってもおかしくない状態だったのである。それに、僕からすればリリスの無事が確認できればそれでよかったのだし、これ以上、リリスの事を心配しすぎて魔王との関係が悪くなることを恐れて。僕はその話を一旦頭の中で保留にして魔王のことを待ち続けたのである。
それから三時間くらいが経過しても魔王は戻ってこなかったため。僕は不安を感じ始めていたのだ。まさか魔王に何かが起こったのではないかと考えてしまったが、魔王の強さは僕が知っているのとは比べ物にならなかったのだ。それでも僕は魔王を探しに出かける決意を固めるのに、そこまで時間が掛からずに行動することが出来ていた。そしてそれからさらに数時間経過しても帰って来なかったので、仕方なく僕はリリスに会いに行くことにしたのであった。
「やっと来たのですね」
魔王が不機嫌な顔をこちらに向けてきたのだが。どうも僕の様子がいつもと違って見えたのか、魔王は疑問符のような表情を見せる。そして「どうかしましたか?」と言ってきたのだ。しかし、僕はその質問には答えず魔王の手を取ると強引に引っ張っていく。すると魔王は「何をそんなに慌てているのよ。落ち着いてくださいよ」と言ってくるが僕はそれに対しては何も答えることはなかった。それどころか、僕の頭の中は、リリスのことが気になって仕方がなかったのだ。
「あの、ちょっと、痛いっす!手を離してくださいよ!」
そう言いながらも、僕の手から逃れようと魔王は抵抗していたのだが、それも空しく、僕の力の前には無力であったのだ。僕は魔王を引きずる形で移動する。そしてたどり着いた場所は魔王城の中にあるリリスの部屋であり。そこにはベッドの上に横たわるリリスがいたのだ。その姿を見て僕がどれだけ絶望感を感じていただろうか、しかし僕は必死に自分の感情を押し殺して冷静さを保とうとしたのである。するとリリスの口から声が聞こえてきたのである。
「うっ、誰、貴方は?」
リリスの瞳が僕のことを捉えたが。僕は彼女の問いに何も答えることはせず。ただリリスの体を見つめ続ける。彼女の肌は血の気が引いていて。とても冷たくなっていた。呼吸もかなり弱くなっている。
「リリス。お前はどうして僕の事を助けに行かなかったんだ?僕は、こんな体になってしまったけど。僕はこうして生き返っているのに、リリス。君はまだ生きているんだよ。なのに、どうして君は僕を置いていったんだ?」
「そ、れは、貴方に迷惑をかけたくないって思って」
僕の言葉を聞いて。リリスが息絶え途絶えの状態で言葉を発してきた。彼女の目は既に光を失っていて死が近い事は目に見えていた。だが、ここで死んだら全てが終わりになってしまうような恐怖が襲いかかってくる。だから僕は何とかして彼女を救いたいと思っていたのだ。そのためには彼女の力が必要不可欠だと、僕は彼女に話しかけていく。しかし、その言葉はリリスの耳には届かなかったようだ。そこで僕は意を決して魔王から貰った薬を飲み込んだ。それは僕の体を無理やり進化させるものであり、体への負荷が大きいため、僕は体に強い激痛を感じたのであった。
ただ、その甲斐もあって僕の体は急激に成長し始め。それと同時にリリスが僕の方に顔を向けた。
「ど、どういうことなの?」
突然の出来事にリリスはかなり戸惑っているようだったが。すぐに彼女は自分の置かれている状況を理解できたようであった。彼女は目の前で急成長を遂げた男に対して。警戒の色を示し始める。
「あんたが私を助けたいと思っているなら私に協力しなさいよ」リリスは自分の身体が動かせるようになってすぐ。魔王の方を見て言う。「そうね。その前に、私に協力して欲しいのなら、貴方の子供を作る必要がありますよ」魔王はそう言うと。僕の方を見た。僕はそれを受けると「分かった。僕の子供を産んでくれ。そして、この世界を救ってくれないか」と言う。
「わかったわ」リリスはその話に乗っかるように話を進めていくと、僕の方を見る。そして、「私は、貴方の子を妊娠するためにここに来たの。だから私の協力が欲しいという貴方の気持ちに私は従います。ですから協力してください」と頭を下げて僕にお願いをした。僕としても彼女には協力したい気持ちがあったが。問題はどうやって魔王と子供を作ればいいかということだ。そこでリリスから意外な一言が出たのである。
「私のお腹の中に入って」
リリスがおへその下に手を当てながら僕に言ってきた。「えっと、意味が分からないんだけど」と僕は思わず口に出してしまっていたが、リリスが続けて話す。「私の身体の中には特別な器官があって、そこに子供を宿すことが出来るようになっているの」それを聞いた時。僕の心臓の鼓動が速くなっていくのを感じることが出来たのである。
僕が元の世界に戻った後。僕は一人で魔王のことを探すことにしたのである。
まず最初に僕のやることと言えばこの剣を鑑定することだ。そしてその結果は以下の通りだった――
名前 神魔滅刀(剣)+200%強化ボーナス付与。魔石解放効果あり。装備者の成長促進化、成長速度増加化、スキル【魔素変換機能】獲得可能。魔力量上昇効果大。装備者は成長するにつれて、身体能力の上昇と経験値取得が可能になる。また装備者がこの武器を所持して敵を殺すことで、倒した魔物が所持している力を吸収することができるようになり、さらに強力な武器に変化する。装備者の魔力を吸収した時にのみ、武器の性能が強化される これを見て僕は思ったのだ。僕はこれを使えということなのか? それに魔素というのは一体何なんだ?と。とりあえず詳しい情報を確認することにする。僕は詳細と書かれたところをタップするのだが、それを行うと。画面上に情報が書き込まれていくのだった。どうやら僕の思考はシステムには筒抜けのようで、説明はしてくれるらしい。僕は魔石がなんのことかわからないので調べてみることにした。するとこの世界に生きる生物は例外なく持っているものであると書かれていたのだ。この世界では人間だけが持っていないだけで、それ以外の種族はこの世界の生命体である以上は皆この世界に存在する魔力の元となっている魔石を持って生まれて来るのだという。そしてこの世界にある全ての物体は全て魔石から力を得ているので。この世界で生きていれば、魔石を体内に保有できるとのことだ。そしてそれが蓄積されるとレベルがあがり強くなるらしいのだ。
その話を聞いたとき、僕は魔王の言った「魔人族もかつては普通の人間の国にいた」と言っていたのを思い出すのと同時に魔王は魔人である僕に自分から近づくためにわざと嘘をついていたのかもしれないと思うようになっていたのである。それならば魔王は僕の子供が欲しかったはずだと。
それを踏まえて考えると魔王が僕の元にやってきた理由は魔人と交われば自分も魔人としてレベルアップ出来るのではないかという思惑があったのではないかと考え始めていた。しかしそんな事を考えている間にも僕は自分の中に魔人の魔力が存在することに気づき始めていたのだ。これは僕とリリスの二人が融合したことによってリリスの力も同時に僕に流れ込んできているためではないかと。それ故に魔王は僕とリリスを戦わせようとしたのではないかと考えていたのである。
それを知った時、僕は自分が魔人と融合していることを自覚し始めていたのだ。そして、それを知ってからは。魔石のことも気になりだし。僕はその事を調べてみると。やはりリリスの中に存在する魔石が僕の体内に取り込まれているのを感じ取っていた。だからこそリリスが自分の体から生み出した武器である魔装に魔石を封じ込め。その力でリリスが僕の体内にある魔石を回収していたことがわかったのである。そのことからも魔王は僕とリリスに子供を作らせて。その子にその力を引き継ぐのが目的だったのだろうと理解したのであった。
(なるほどね、魔王の目的は最初からそういうことだったわけか)
そう考えていく内に僕はあることに気づく。それは僕の体が急激に変化を始めたのを感じたからである。最初は何かに押さえつけられているような感じだったのだが。次第に自分の体の中が熱を帯びてきて何かが生まれそうな気がして僕は怖くなってきた。
僕は急いで外に出るとステータスを確認していったのだが、どうやら僕のステータスが変化してしまったらしくどうなっているのか確認していく必要があったのだ。そしてその結果が以下のものだったのだ。
***名無しさんの現在のステータスを表示します。
Lv 1/100 生命 980000 精神 0 魔力 5500 能力 物理攻撃力 65000 魔法攻撃 77000 体力 65100 速度 57300 防御 45800 運 12 状態 正常 スキル 【吸収】【超回復】
称号 魔王の後継者 魔王の後継者だって!?それってまさか僕が魔王になるって事なの?でも魔王になれるのは一人しかいないんだよね? もしかしたら魔王は二人いるってことなのかな。
僕は魔王の後継者になったことで魔王の持っていたスキルを手に入れることが出来るみたいだけど、どういう風に手に入れたらいいんだろ?やっぱり普通に強くなっていけば勝手に習得されるって訳じゃないって事だね。ただ、僕は今のこの状態で魔王を倒すことは出来そうにないんだ。だから僕にもっと強くなれるだけの力を手に入れないと! そうすれば魔王と対等に渡り合えるだけの強さを得る事が出来るはず!そのための方法は多分あの方法しかないと僕は考えていたのである。
僕はそれからというもの毎日リリスの身体の中に入り込むことを繰り返していたのである。
そうすることによって、僕は彼女の中で成長していくことになるのだが。僕は彼女の中にある「特殊な器官」に触れる事でその中に入り込むことができたのだ。そして僕はリリスの胎内にたどり着くことが出来た。そこでリリスに話しかけてみることにしたのであった――「君の名前を教えてくれないか?」すると「リリス」と答えてきた。「どうして君は僕の体を受け入れたんだ?」と聞くと。彼女は僕の事が好きだと口にしてきたのである。それを聞いて僕はリリスを愛おしくなり、リリスの身体の中から飛び出し抱きしめたくなる衝動に襲われたが。なんとか我慢をして彼女にお願いすることにしたのであった。
リリスに頼んで僕はリリスの中に入った。すると僕の体に違和感が生じたのである。まるでリリスに僕の体を乗っ取られたような錯覚に陥ってしまったのだ。その事に戸惑いを覚えたが僕は自分の体を動かせないことに気づいたのである。
すると「あなた、私が動かしてあげましょうか?」と言う言葉が聞こえてきたのであった。リリスの言葉を聞いた時。僕はすぐに理解できた。彼女は僕を操り人形のようにしてこの身体を支配しようとしているのだと。そして僕の体は勝手に動き始めた。僕はそれに驚き。すぐにやめさせようと思うのだが声を出すことが出来なかった。
そうやって僕は彼女の意識が宿っている魔石へと近づいていくと、僕はそれを握り締めてしまう。
「痛いです!」と言う言葉がリリスの口から出てくると、彼女は慌てて自分の身体から飛び出すと僕の身体から離れていくのが分かった。どうやら自分の意思とは無関係に動かされていることがとても苦痛で。そして、それは魔王にも影響するのだろう。そう思いながらも僕はリリスの体内で成長をしていくことにしたのであった。
「ねえ貴方。私達もうこんなこと辞めませんか?」
魔王は僕の顔を見ながら言うと。その顔は悲しげなもので溢れかえっていて、見ている僕も辛い気持ちにさせられてしまっていたのだ。そんな顔で見つめられれば、こちらとしても申し訳なさを感じてしまうわけで。だから、リリスが「嫌なら出ていってくれても構わないわよ」と言うのを聞き、僕はリリスの体内から出て行こうとしたのだ。だがその時、僕は気づいたのである。魔王は自分の魔素の力を僕に与えてくれるために自分の命を分け与えてくれたのだと、そのおかげで僕はリリスの中に入ることが出来るようになっていたのである。
魔王は僕との行為によって魔素を大量に失い、そして魔素がなければ僕はリリスの身体から出ることはできないので、仕方なく僕はリリスの身体の中に入っていったのである。
魔王の魔素の力を得た僕は、さらに強くなったのは間違いないと思う。
なぜなら僕の体内に魔素が取り込まれ。そのおかげなのかわからないが。身体能力が上がっていることに気づけることが出来たのである。
僕はこの世界で魔王と初めて出会った場所に向かうとそこで一対一の模擬戦をしたいという申し出を魔王にしてみたのだ。
僕の提案を受けた魔王はとても喜んでくれていた。それを見て、僕の方まで嬉しくなってきてしまっていたのが不思議である。
僕はそれから魔王と共に、訓練をするための場所に案内された。
そこはこの城の敷地内にある巨大な闘技場で僕と魔王はその場所で模擬戦をすることにしていたのだ。そして今、目の前にいる少女を見て。本当に12歳だったのかと思わずにいられないくらいだと思った。それほどにこの少女が纏う魔力の質が今まで見たこともない程凄まじいものだったからだ。僕はその圧倒的な力を前に自分がどこまで戦えるのかとワクワクしながら剣を構えるのだった。
まず僕は魔王に向かってスキルを使うことにする。
魔王のステータスは大体分かってはいたが、改めて自分の目でも確認しておく必要はあると考えたのだ。
名前 なし 種族 魔族 性別 女 レベル 1000000 年齢 12歳以下筋力 99999(カンスト値)+10000 敏捷 85801(カンスト値)+52000 体力 98833(カンスト値)+10500 速度 66762
(カンスト値)+53000 防御力 89823(カンスト値)+64000 魔攻力 76843(カンスト値)+15000 +1000 知力 49832(カンスト値)
耐久力 39822(カンスト値)+86000 運 5 状態 正常 称号 世界最強種(人)
職業 勇者 HP 1万9500 MP 999億9998 攻撃力 10500 魔力 15300 技能 剣術3、格闘術4、棒術4、盾術4、投擲、隠密、危機察知 言語理解、無限収納、鑑定、偽装、アイテムボックス、気配感知 威圧 、恐怖 加護 神の祝福 魔眼 能力吸収 魔石 特殊固有能力 物理無効、物理反射、魔力操作 固有技能 全耐性、状態異常無効化 称号には色々とツッコミどころがあるが気にしないでおこう。それにしても魔王のレベルが999だというのが驚きである。しかもスキルが全部レベルマックスだし。ステータスの数値も他の追随を許さないものになってる。だけど魔王が僕の持っている称号やスキルを持っていなかったのが意外だったかな。魔王のステータスを見た時に称号に魔王って文字がなかったからおかしいとは思っていたんだよね。まあ魔王は神から魔王の力を貰ってはいなかったということなんだと思うけど。
でも僕が持っていたはずの称号が魔王にはなかったのが気になるところではあった。だけど僕のスキルを魔王も持っていないということを考えると。恐らくだけど魔王が持っていたと思われるスキルの力は。その殆どが神様に回収されているのかもしれない。だから魔王のステータスは、その全てがカンストしているってことになるのだろうか。
ただ気になるのは。僕が魔王と出会ってから獲得したはずの称号やスキルを持っているという点だ。僕が初めてこの世界にきた時。僕はステータスを確認することも出来なかったし、称号やスキルを獲得できていたのかなんて知る由もなかったのだからね。それが何故、魔王だけが持つことが出来たのか、その理由は分からなかった。
そして、僕のステータスが変化していることについては説明のしようがないんだよなぁ。
だって僕だって自分の身体が変化してて驚いたんだもん。それなのに他人に変化があって驚かない方が無理があるよね?ただ僕の場合。スキルは変わっていないことから考えると。称号の方は変化していて。そして僕の身体も変化することがあるのだろうと思うしかないのだ。それに僕は僕の体が変化したことを知っているからね。もしかしたらリリスだって同じように変わってしまう可能性だってあるって事なのかもしれないよね。
だけど、今は目の前の敵に集中をしないとだよね。
魔王は僕の方を見ると「ではいきますね?」と言ってきたので。僕は魔王の動きに警戒をしつつも攻撃に移ったのである。僕は【肉体強化】と【速度上昇】と【限界突破】の三つの効果を同時に使うと。僕は魔王に斬りかかる。すると魔王に攻撃が当たる直前。魔王の拳に弾かれてしまう。どうやら【自動防御】の技能を身に着けているようで。僕の攻撃は完全に見切られてしまっているようだった。だが僕の狙いはそれではない。
僕は魔王の背後に回るとそこから一気に勝負を仕掛けようとしたのだが、魔王の蹴りが僕に向かって飛んできて、僕は慌ててその場を離れた。
それから僕と魔王の戦いが続くと、魔王のスピードと攻撃力がとんでもないものになっていることが分かったのである。僕の身体は確かに強靭になってきているのだが。まだ魔王の攻撃に耐えるだけの力はないのだと僕は悟ってしまった。そのため魔王と僕の間に大きな差がありすぎることを思い知らされることになったのだ。それを考えると僕が強くなるためには、やはり魔王との戦いで得る経験値が必要だということになるだろう。僕はそれを踏まえて。このまま戦っても勝てるわけがないので、僕は魔王と距離を離したのだ。
そして、僕はそこで一旦休憩をとることにしたのである。
僕の考えとしては魔王に隙を作ってその隙に攻撃を当てていきたいと考えていた。僕の攻撃を防いでくるのが分かっていたので。魔王が対応しきれなくなるほどの攻撃を叩き込むことによってダメージを与えられると考えたのだ。
僕はそれから自分の身体能力を上げるために魔王と似たような方法で自分を強化していくと、魔王よりも速く動けるようになっていき、それと同時に魔王を追い詰めることが出来てきた。だがそれでも魔王が纏っている結界のような膜を突破することができないのが悩みだった。そしてそんな状況で魔王と会話をしていたのだが、僕はふと違和感を感じたのである。その違和感が何であるかは分からないのだが。何かがおかしいと思ったのである。そこで魔王は僕に「そろそろ私の本気を見てもらおうかしらね」と言ったのだ。そしてその瞬間に魔王の雰囲気が変わり。魔王から発せられるプレッシャーのようなものが僕に向かって襲いかかってくる。
僕は咄嵯に後ろに下がろうとしたのだが間に合わず。僕の体に直撃するのを感じてしまった。その一撃を受けた僕は意識を失いかけるが、何とかして意識を保とうと踏ん張ったのである。そんな僕をみて「へぇーよく意識を保ったわね」と、少し感心した様子を見せたのだ。そして魔王は更に攻撃を仕掛けてくる。その攻撃を僕は避けることに集中した。魔王が本気で殴れば間違いなく死んでいたからだ。僕は避けながらどうやってこの場を抜け出すかを考えていた。その途中、魔王は動きを止めると僕に言ったのである。
それは、「降参してくれませんか?」というものだ。僕は「何のことでしょうか?」と聞き返したのである。僕はまだ戦いを終わらせるつもりなど一切ないからである。それに僕自身まだ魔王の力を完全には使いこなせていないという気持ちがあった。
魔王は僕の言葉を聞いてから、自分の魔眼を使って確認をすると言う。その確認というのは僕の魔眼の能力を使ったもので、その能力で僕のステータスを見るのだという。そう言われてから、僕は自分が魔王に対して嘘をつけるのかという疑問を持った。僕はその事を魔王に伝えると魔王が答える。
それは魔王の持つ固有技能の一つに相手の言葉を聞くだけで真偽を見抜くことができるというものがあり、それで確かめられるのだと言っていた。それを知った上で僕も魔眼を使うことにして魔王に向かって【偽装】のスキルを使うことにしたのだ。その結果。僕はその事実を知ることができたのだが。魔王は僕に負けを認めるように言ってきた。その事について、どうしてこんなにも簡単に負けを認めてくれるのか聞いたところ。魔王は自分のステータスを見せてから僕に理由を話した。
魔王のレベルやステータスは全てカンストしていて、もうこれ以上上がることはないため勝ち目がないということを説明してくれたのである。魔王のレベルの上限は999らしいんだけど。その上限に達したとしてもステータスの数値だけはカンストしたままなんだそうだ。つまり魔王はもう強さで敵う相手がこの世界にはいなくなったということなのだろうと思ったんだ。それに魔王の言う通りなら僕のステータス数値を見たので。僕のスキルや称号が魔王に全て渡っているはずだから魔王の強さの殆どが消え去っていたということになる。それに加えて魔王は僕の称号が勇者であることに驚いているようだった。魔王は勇者が嫌いなので僕を殺そうとしていたが、勇者の称号が魔王の称号を消してしまったことで、僕は殺されなくて済むことになったのだ。だからといって魔王が勇者を恨むのをやめたというわけではないのだけど。
魔王の話を聞き終わったあと。魔王が僕に向かって話しかけてきたのである。
僕に質問があるような感じだった。
その内容とは神についてのことである。
どうやら神様から話を聞かされていて。魔王も神様から色々なことを聞いたようだ。僕はその神様からの伝言を伝えると魔王は驚いた表情をした。そしてその後。僕に謝罪とこれから協力してほしいと言われたことを伝えたのであった。なんでも神様の頼みは「世界征服を止めてくれないか」というものだった。僕はそれについては特に気にしていないことを魔王に伝えたのである。そして僕の目的はあくまでも魔王を倒すことだと。僕ははっきりと言っておくことにした。そして魔王は、自分の目的はこの世界の支配だと僕に伝えてくる。
それを魔王の口から聞いたとき。僕は魔王の言っていることは嘘じゃないと感じた。それに僕の目的についても魔王は知っていたようで。僕の考えていることが筒抜けになってしまっているみたいで。僕が考えていることを先回りされてしまうことがあったのだ。そのため僕の考えが間違っていなければ、魔王の目的を達成するには僕の協力が必要不可欠ということになるだろうと思うのだった。ただ問題なのは魔王を殺せるかどうかはわからないけど。僕自身が殺される可能性があるということだ。そのため僕は魔王に僕の実力不足をどうにかする方法を教えてほしいということを伝える。だが魔王はその方法を教える前に。
「勇者殿に頼んでおきたいことがあるのでよろしいですか?」と言われてしまい。その頼み事とは僕のステータスを見せて欲しいとのことだ。僕はステータス画面を見せるくらいならと思いステータスを表示したのである。
するとそこには【魔王の友達】【魔王の親友】【魔人王の恋人】【魔獣の天敵】【神の祝福】という文字が浮かび上がっていたのである。そしてその下には『称号詳細』の文字があることに気づいた僕は、早速そこを選択してみると。称号の効果について知ることができた。ただその効果を全て見たわけじゃないのでよく分かっていないのだが、一つだけ分かることがある。僕の身体に備わっているスキルの中には僕の種族が変化したりするようなものもあるかもしれないのだけれど。それら全てを見ても僕の身体が変化してしまうような変化はなかった。
称号が魔王と同じ状態異常を持っていると分かった時。もしかしたら僕が持っている称号もそうなのではないか?と思うようになり、試しに使ってみるとやはり予想通りだった。そして僕のレベルが上がっていることから、【成長速度超絶加速】という能力が使えるようになっていたのだ。
【魔王の友達】:魔族を仲間に出来る。但し魔王に許可されていない者は仲間にできない これは、魔王がこの世界を侵略しに来たときに、魔族の人たちを味方に引き入れておけば魔王に対抗することが出来ると思ったから取得した。ちなみに称号は魔王の許可さえあれば誰でも獲得できるみたいなのだ。それから魔王の頼み事ってのは、その事に関係するようで。魔王はこの世界の住人の寿命を伸ばすために色々と頑張っていたのだ。
魔王がこの世界に訪れたのは魔王としての力を振るうことを制限されているためで。それ故、この世界で生活するためには人間に危害を加えるわけにいかないため。この世界の生き物の寿命を伸ばすことで魔王の力を抑える必要があるのだという。そして魔王が力を取り戻すには僕との決着をつけないといけないとのことだった。そして魔王の話では。僕を殺すのが最善手だと思っているようで、その為に魔王が鍛えている弟子が何人か存在しているらしいのだ。
その人達も全員僕と戦うつもりでいるみたいで、僕との戦いが終われば後は自由にしてもいいと言われているので、その時は僕のお願いを聞くとも約束してくれていた。
そして僕が考えていた計画についても聞いてくると、僕の考えはこうだ。僕自身はこの世界で生きると決めているのだけど、もしも僕が死ぬのだとしたら。それが原因でこの世界に悪影響を及ぼすことになるだろうと。そこで僕の代わりに戦ってくれる人が欲しいと思っていること。それに僕が死んだ後にこの世界に何かが起きた時に対応してくれる者がいれば良いと思っていたのだ。そしてその役を任せようと考えている人物がいたのである。
その人物は僕の親友であり、この世界で初めて出来た友人なのだ。名前はタクト=ユウキといい、この世界で最も強い存在で魔王の右腕でもある人物である。
彼は僕を慕っていてくれたため、僕がいなくなった後も僕が望んでいることを実現するために協力してくれてくれると約束してくれた存在だった。
だから彼に後を引き継いでもらおうと思ったのである。
僕はその事を魔王に伝えると、彼女は納得した様子で、「なるほど。分かりました。確かに貴殿の考えならその者に後を託しても良さそうですね」と言ってくれ、魔王もその提案に賛成してくれたのである。
僕はそれから魔王の配下になったわけだし。一応は魔獣たちを統率していた立場の者だったので魔獣の長であるグリズリーを僕の側近として連れていくことに決めた。そしてその日の夜は一緒に過ごすことになり、次の日の朝。僕と魔王は別れを告げたのであった。◆ side 魔王(私もあの勇者には助けられたからね)
(魔王さん、これからも僕の友達をよろしくお願いします。僕の代わりなんて務まらないでしょうけど、僕も見守っていきますので。もし、魔王が困っているときは手助けをさせてもらいますので何かあった時は呼んでくださいね。まぁ魔王を本当に倒そうとする人はいないと思うのだけど、万が一の場合は魔王が助けを求めてくれた方が嬉しいので、そのときは全力で駆け付けようと思いますから遠慮なく言ってください。あ、あと、これって僕からの最後のプレゼントなんですが受け取ってください)
勇者はそう言うと私の手に指輪を渡すとその場から離れていってしまったのだった。私は勇者がいなくなってからも暫くその場に立ち尽くしたままだったのだけど、その行動の意味を考えていると次第に笑いがこみ上げてきた。その行為に私がどんな気持ちを抱いていたか分からない勇者ではない。きっと分かっていながらの行動だったに違いないと。
でもそれが勇者らしくもあったので嬉しかった。だからこそ私と勇者の関係は対等でいたかったので。
私は勇者のその行動をありがたく思いながらも受け入れることにする。だってそうすれば勇者はずっと私に付き合っていくしかないと思わせる事が出来るのだから。
だから勇者は絶対にこの関係を終わりにしたくても終わることはできないはずで、それに勇者の好意を利用して勇者が私に気を許す瞬間を狙って攻めることはできる。それは、その指輪には呪いがかけられているため。
それはその者の魔力を吸収し。
そしてそれを身に着けた者へ流し込むというもの。
ただ流石に魔王である私に対して効果があるほどのものじゃなくて、魔王より弱い魔獣くらいしか操れないだろう。だがその魔道具を使えば勇者は間違いなく油断する。その隙を狙うことが出来る。
だからまずはこの城にいる者達に指示を出すことにする。
勇者に対しての嫌がらせとして。
そして今やるべきことは魔族達の強化である。
その方法についてなんだけど。
この前。魔族の王となったリリアナは言ったのである。
この国の魔素濃度を上げるために魔素の濃度を上げたいと言うので、そんな方法があるのか?と疑問を持ち。尋ねてみると、どうやら魔王の種族特性である「魔王領域」という固有技能を使って、魔族の住処に特殊な結界を張っているらしく。その結界が発動されている限り。魔族の住んでいる場所にはその土地の環境に応じて魔物を出現させるように仕向けることができるので、それにより。土地に大量の魔物を発生させようとしているというのだ。しかもその魔物を召喚する際に必要な素材なども用意されていて、それらを上手く使えば魔王の領域内に強力な魔物を大量に発生させることが可能になるみたいだ。それを聞いた僕は魔人族の人達に魔素を含んだ鉱石を集めるよう指示を出した。その鉱石とは。魔獣の体内に含まれている結晶のような物の事であるらしいのだが。その鉱石は地中深くに眠ることが多いため、地上から採取するのは非常に難しいので苦労しているのだけど。なんとか魔王の力で生成できないものかと考えていたのである。
すると魔王はその魔素を溜めこむ鉱石は魔王領域内の地中に埋め込められるような物を生成することが出来ると言ったので。僕としては願ってもない申し出だった。なので僕は早速魔族の王と魔族の長にその方法を教わりながら。その作業を開始した。するとその作業を始めて数時間が経過した頃に魔素を含む土を発見したのだ。
それを見た僕はその石を鑑定してみると【魔核】という名前の鉱物だということが分かった。それから僕はその魔鉱を使って武器を作ることにしたのである。すると魔人の王の鍛冶場にある機材を使い作り始めた。そして出来上がったのは、ミスリルで作られた細身の剣で刃の部分にもオリハルコンが使われている。そして刀身が薄い紫色をしている。僕はその出来具合を確認するために、それを魔王に向けて斬りかかった。しかしそれは簡単に魔王に避けられてしまい「こんな物が魔王を傷付けられるわけがないだろ?」と言われてしまった。それも当然と言えばそうなるだろう。何せ魔王を殺せるような攻撃ができるなら、もうすでにやっていただろうからね。つまりこのミスリス製の細身の剣はあくまでも見た目だけであって攻撃力はほとんど皆無ということなんだろう。僕は魔王の言葉を聞き少し落胆したが、まだ手はあると思い。
魔王に僕は魔王が僕の仲間になるときに使用した【神の祝福】の効果が知りたいということを伝えてみる。
すると僕の願いを聞いてくれることにしたようで魔王が【神の祝福】の効果について説明を始めた。その効果というのが【神への叛逆者】の効果だったのだが。【神からの天敵】の称号を持っている僕にとっては【神】と付くスキルは全て使用不能になり。また魔王以外の神の加護を受けられなくなると魔王が言っていた。そして魔王の話が本当ならば。
魔族の王が持っていた【魔族支配の神の加護】という能力も同じである可能性があり、魔族の王に魔王の支配を打ち消すことができるか試してみると伝えてみると魔王がそれに同意したので、その日から毎日魔王を洗脳し続けるという日々を送ることになったのだった。
◆ side タクト=ユウキ 魔王はあれから更に三日経った今日。ようやく僕のことを信用してくれたのか、自分の部屋に僕を招いてくれて。二人で紅茶を飲みながら色々と話をすることになったのである。ただ話と言っても。僕は魔王がどんな趣味を持っているのか分からなかったので魔王の質問に答えているだけの時間になってしまっていた。
そして僕はその会話の中で。僕に妹がいたことを知った。
そしてその妹も僕と同じく転移させられた被害者であり、その妹の名前は『サヤ』と言い。彼女もまた勇者として魔王を倒すために異世界にやって来たらしい。僕と彼女はこの世界で出会った時。お互いに兄妹だということを知らず。名前しか知らなかった。だから初めて出会った時は驚いたのだけど。僕達は意気投合することができたのだ。そして僕の妹の『彩華(さいな)』は元気にしているだろうかと考える。最後に彼女と会ってから既に2年以上経っている。彼女のことを信じていなかったわけではなかったのだけど。どうしても心配はしてしまう。
そしてその気持ちを察してくれたのか。
魔王がこう切り出してきた。
この世界で何かをやり残したことはないかと。
僕はそれにすぐに答えることが出来ずに言葉が詰まった。確かにこの世界でやりたい事はいっぱいある。だけどそれはどれも一人でできることばかりではないのが正直なところである。
例えば僕の妹、彩華の安否を確かめることや、その前に僕が死んでしまえば。
彼女は一人になってしまうわけだし。だからまずはそれを何とかしなければと思ったのだ。その旨を話すと。魔王が協力してくれないかと打診してくる。僕はそれがいいと思って魔王の提案に了承すると、魔王は僕が何をすれば良いかを告げた。その内容は、勇者が魔族の国に訪れると、魔族の国で大きな事件が起きる。だからその事件の犯人を特定してほしいとのことで、そうすれば僕に頼んでくるのだとか。それで事件は勇者によって起こされるので。その事件を食い止めるためには勇者を説得するか。または始末する必要がある。そして僕が協力をしてくれれば。勇者をどうにかするだけで良いということだ。
確かにそれは勇者を救えるチャンスかもしれない。それに勇者さえなんとかできれば。魔王が魔族を支配することもなくなり。そして僕の妹の彩華も自由に生きていけるようになるはずだ。それに僕には魔王にお願いをしなければならないこともあった。そのお願いをするためには魔王の協力が必要なのだ。その事を伝えると魔王は僕の願いを聞き届けてくれると約束してれたので、僕は安心した。そして魔王と話し合いが終わる頃には夕方になっていて。僕は魔王にお暇すると言うと、魔王は部屋から出ていく僕を見送りに来てくれたのだ。そしてその別れ際に魔王が渡したいものがあると言うので僕は魔王からプレゼントを受け取ることにする。
それから魔王は別れの挨拶をすると魔王はその場から離れていき、僕はそんな魔王の背中を見送ったのである。
◆◆◆
私は彼が見えなくなってから、私は彼の後ろ姿を見ながら彼には内緒にしておかなければならないことが一つだけあるのを思い返す。それは私が彼を殺すつもりだったということだ。私は勇者を殺せば。私は勇者の力を自分の力にすることができるからである。だから本当は彼と話す時にその事も考えていたのだ。
彼はとても不思議な人だと思う。私と最初に会った時の事を考えてみれば一目瞭然で。普通の人であれば魔王である私に恐れを為すはずなのだ。でも彼は私のことを見ていても特に怯えるようなことはしなかった。むしろ、私の事が好きだからこそ。この世界に来てしまったのではないかと思っている。
だからこそ私を救いたいと。そう言って来た時は本当に嬉しかった。だからこそ、その恩に報いなければいけない。
私は彼を信頼している。だから、彼に本当の目的を教えても良いかなとも思えた。
だって彼は他の勇者とは違うと思うのだから。だって勇者は自分のためにしか動かないもの。なのに彼の行動原理は全く別なように思えるのだ。
彼はこの世界の人達を助けたいという目的で動いている。
この世界を救おうとか、そういったことを考えていなように見えるのだ。
だからこそそんな人が勇者になるわけが無いと思った。そして、そんな考えを持った勇者が私にとってはとても好感が持てるものだったのだ。
ただ、そんな彼が魔王に殺されたくなかったら私に従えと言ってきた時には心底びっくりしてしまったけど。そしてそんなことを言われたとしても絶対に殺されない自信もあったしね。それでも魔王の力が欲しかったので仕方なく受け入れることにした。ただ、魔王の加護を受けるには魔王の呪いを解く必要があり、その為には呪いをかけた張本人である時の女神が邪魔だったので。彼女に呪いをかけられてから魔王に殺されるまでの間。彼女を閉じ込めることにしてある。これで、万が一にも私が魔王に殺されることは無くなっただろう。後は、彼が無事に魔王に勝つことが出来ればいいんだけど。
ただ、今の段階ではどうにも不安があるのよね。
それは、もし勇者の器の固有技能である【聖女の祝福】の効果を無効にする【魔族殺しの聖女】が発動されてしまい。その技能を無効化された場合だ。その時は残念だけど。私も覚悟を決めないといけないだろう。なぜなら、この固有技能が効かないのは魔王の力を得ている状態の勇者だけなので、もしも魔王に【聖魔の祝福】の効果が適用されてしまった場合は、その効果の影響を受けるため、その瞬間から、魔王の加護は失われてしまう。
それならその技能を使えるうちに倒して欲しいものだ。だからそのために彼には頑張ってもらはなければ困ってしまうのだ。
それとは別に、もう一つ心配なことはある。それが勇者の魂が魔王に囚われてしまわないかどうかということだ。その懸念がある以上。早く彼を説得しないとダメだと思う。だから私は彼が持っている武器と、この世界にいる間に取得出来るはずのスキルと称号を全て封印することにした。これで彼が死ぬ確率を大幅に下げられたはずだ。それに、もしその状態で【聖魔の祝福】が使われてしまったら。それはもう仕方がないと思うしかない。だからそのスキルの発動だけは許さないようにするのだ。そのためにも、この国の人間たちを操り。勇者とタクトくんを襲わせるのは必要だったから。ただそれをやるとこの国が大変なことになってしまいそうな気がするから早めに辞めさせてもらうことにした。
「とりあえずタクト君と勇者の戦いを見守らせてもらおうかしら」
そして魔王の試練を乗り越えて、この城までやってきた勇者との戦いに、これから先どんな未来が待っているのか。
「魔王を倒してハッピーエンドになれるのかしらね?」
「さぁね?分からないわね」
私は魔王にそう答える。しかし、魔王はそんな僕に対して少し笑みを浮かべながら。「ふふっ」と笑うのだった。
佐藤拓海:勇者の器Lv.560 僕の目の前に現れた魔王は見た目が13歳の幼き少女だった。しかもその外見が12歳にしてはとても整っており。また肌が雪のように白く美しい美少女でもある。だけど彼女は僕と視線があったその刹那、魔王としての存在感を放っており。その威圧感から彼女が魔族の中で一番強い存在であることを否応なしに理解させられていた。その証拠として、彼女は僕に向けてこう言ってきたのだ。
『私の名前はルシファーと申します。どうか宜しくお願いします』
彼女は礼儀正しく、僕に向かってお辞儀をしながら、自分の名を名乗る。
すると今度は僕が自己紹介をするべきなのではないかと気づき。僕は彼女に倣って。彼女よりも丁寧な仕草を意識しながら、名乗りを上げたのである。
「初めまして、僕の名前はタクトと言います。よろしく御願い致します、魔王さん。ちなみに僕はまだ17歳です。あなたから見て、僕が大人に見えているようなら。その認識を改めてください」
と、僕がそう言うと。彼女は『あはは』と笑い出すのであった。僕としては何が可笑しいのか分からずにいると、「ごめんなさい」と彼女は言いながら僕のことを指差して来る。その行為の意味がわ分からなかったので僕は首を傾げて見せると、魔王はこう話を切り出したのである。
『あなたがこの世界に呼ばれた理由って覚えていますか?』と。僕はその質問を聞いて。すぐに思い至ったのである。僕がここに召喚される前の話なのだが。その説明のためにまずは僕自身の生い立ちを話しておくと。僕こと、この世界における佐藤拓海は地球で暮らしていた時。その容姿が周りからはイケメンだとか言われていたが、自分自身は平凡で普通だと思っていたので。僕は周りの皆が自分を持ち上げるために言っているだけだと思っていたのである。そして僕の周りには、そんな事を言わずとも僕がモテるということを理解できないような連中ばかりで、僕はそれが気に食わなかったというか、嫌な奴で通っていたのだが。高校に入学してから1カ月経ったある日、僕は学校の帰り道。いきなり現れた車に跳ねられてしまい、意識を失ったのである。それから目が覚めた時には何故か、異世界にいた。
つまりその異世界に飛ばされるまでの僕という人間は。
どこにでもいる高校生だったと言う事なのだが。そんな僕に突然神様が現れて、『君には特別な力を与えてあげたよ。勇者の力を!』とか言い出してくる。そして僕の身体には勇者の能力である固有技能とやらが付与されているようで。
魔王と呼ばれる敵と戦う為に僕はこの世界に呼ばれたらしいのだ。そして、僕に力を授けてくれた神様とやらは、僕がこの世界で勇者として生きるために必要な最低限の知識を与えてくれると、その役割を終えて去って行ったのである。だから、僕の目の前に突然現れた少女は、恐らくは僕が魔王と戦えるようにするために連れて来られた存在であり。僕にとって必要な情報を知っているはずなのだが。僕としては、この世界がゲームみたいになってしまっているなんて信じられなくて困惑しているのだ。だって、現実味がなさ過ぎるのだから!それにそもそも魔王と言う言葉すら、最近ニュースとかで聞いたばかりなので、まだ信じたくないというのが本音でもあった。
そして彼女の方はそんな僕の心境など知ったことではないだろうし、そもそも知るつもりもないのかもしれない。だから魔王の試練というのを受ける事になったのだから。
そんな感じで、魔王と名乗る彼女は僕の事を勇者と呼ぶ。そのせいで益々混乱したのを覚えているが。僕は取り敢えず冷静になるために一旦落ち着くことにしたのである。そして落ち着いてくると。段々と、この状況がおかしいことに気付かされていった。というのも。僕は今朝、確かに寝坊をして遅刻寸前の時間に起きたはずなのだ。だから僕は急いで学校に行かないとと思って準備していたのだ。
なのに何故、目を開けた途端。この場所にいたのだろうか。もしかしてこれも夢の中の出来事なのかなとも思うけど。この痛みを伴う夢があるわけ無いだろうから。
「魔王。悪いけど。ちょっとこの部屋から外に出させて貰えないかな?僕にはまだここが現実のものとは思えないんだ。この部屋から出てしまえば。これが夢じゃなく現実だっていうことが分かりそうなんだけど」
と、僕がそういう風にお願いをしてみると。彼女は少し考える素振りを見せる。どうやら少し迷っているようだ。もしかしてこの部屋にいて欲しかったのかなと思ったのだけど。結局。彼女も僕と同じ気持ちになっていたらしく。二人で部屋の外へ出る事に決めた。そしてその扉を開くため、手を伸ばす。その先には白い霧が立ち込めていて、まるで外の風景を見る事が出来ない。でも。そんな光景に魔王は一切驚くことなく前へと進んでいくのだから。やっぱりこの魔王には、何か秘密がありそうだなと改めて感じることになる。
すると魔王はその先にあったドアを開け。僕を中に招くと、その先にあったのはなんの変哲も無い。いつもの日常風景だった。ただ違うところがあるとすれば。この学校には誰もいないということくらいだろか。
いや。よく見ると教室の中は滅茶苦茶に荒らされていたので。この空間は間違いなく現実ではないのは間違いない。
僕はそれを確認すると。魔王の方を振り返りながら確認を取ったのである。
「あの、ここはどこでしょうか?」と、すると魔王は僕のことを馬鹿にするような笑みを浮かべ。こんなことを言うのだった。
『何言ってるの?私達の通っている高校の屋上だよ』と、そして続けて、こう告げてくる。
『それよりタクト。君は勇者の力に馴染むことが出来ているよね?それならそろそろ私と一緒に魔王の試練を乗り越えようと思うんだけどどう?それに、魔王の力を手に入れたからと言っても油断は禁物だから、私が色々サポートしてあげるから』
魔王はそう言うと僕に手を伸ばして握手をしようとするのである。僕はその行動の意図を理解して魔王の手を握ろうとした。だけど僕は、ふとその手の動きを止めてしまうのだった。その瞬間、彼女は不満そうな顔をして。僕のことをジト目で見つめ始めるのである。だから僕は彼女に謝ることにして。自分の考えを伝えたのである。
「ごめん。だけど僕は、君とこの世界について話をしようと思っているんだ。それが僕なりの協力だと思うからね。だからもう少しだけ、この世界が本当に現実だと確信したいんだよ。もし、僕と君との会話の中で違和感を感じる点があれば、遠慮せずに指摘してくれないか?」
と、そんな事を僕が話すと。
彼女は仕方がないと言った表情で。僕の要求を飲むことにしたようである。それから僕と魔王との話合いが始まったのだが。その最中は彼女がとても聞き分けの良い少女だったので助かったのは言うまでもなかった――。
『えっとね。タクト。この世界の話になるのだけど。あなた達の世界はね。今まさに滅亡しようとしていて、その運命はもうすぐそこまで来ていたの。だけどね、そんな絶望的状況であなたは異世界より召喚された存在になったのよ』彼女はそう言うと僕に向かって、この世界の事を説明してくれる。その内容は、魔王がこの世界にやって来てから今までに起こった歴史が語られるのだった。それは彼女が自分の記憶を頼りに、その時代の状況を細かく教えてくれていたからだと思われる。
つまり僕は彼女によって助けられたのかもしれないのだ。
そのおかげで僕は、僕が知らないはずの情報を得ることができて、こうして無事に生き延びる事ができたのだ。ただ。そんな情報を聞いたところで今の僕にはピンと来ることはなかった。だから、僕の疑問を解消するために、今度は逆に質問する事にしたのだ。すると彼女も僕の気持ちを察してくれたのか。今度は自分の事ではなく。この世界の歴史を説明してくれることになった。
『私の種族は悪魔族と呼ばれる種族でして。この魔界で最強の存在と呼ばれているんです。そして私は魔族の王。その中でも最強を誇るルシファーと呼ばれています』
ルシファーと名乗る少女魔王は自分の事を紹介しながら僕に向かって自己紹介をしてくる。彼女は銀髪で綺麗な赤い瞳を持つ美少女で、その顔つきはとても整っており。大人びているように見える。年齢は僕よりも一つ年上だと聞いている。そんな少女がどうして魔王などと名乗っているのか、その経緯については分からないけれど。そんなことは僕には関係ない話だし、今はとにかく現状把握に務めることにしたのである。そうすれば、きっとこれから僕がすべきことが見つかるに違いないと考えたからである。
そう思ってからしばらく時間が経過した時。僕は気になっていたことを聞くことにした。まず最初に気になったのは。僕たちがこの世界に召喚されたのは、僕が寝坊して遅刻間際の時間だという事だ。だからこの世界に飛ばされたのは。寝ぼけ眼の状態で召喚されたという事になる。僕はこの世界で目が覚めた時のことを思い出したのだ。僕は寝起きでぼんやりとした頭の中にあったことを思い出して。僕が召喚されるまでの事を整理することにした。僕はこの世界に来る前までは高校生をしていたはずだったのに。目が覚めたら魔王と名乗る女の子がいた。つまり、この少女が魔王であり。この世界を支配していると言うことだ。そして僕もその一人になってしまった。それが一番の問題だろう。
なぜ魔王が女子高生の姿をしているのか、そして何故勇者の加護が魔王に効果を発揮しなかったのか、僕自身未だに分かっていないことが多い。それに僕は普通の男子高校生でしかないはずだから。僕がここに呼び出された理由は何なのか分からなくて当然だったのである。だからこそ、僕は、その疑問をぶつけてみることにした。
「僕は寝ぼけてここに来たはずなんだけど、そもそも。何故僕が勇者としてこの世界に呼ばれたか、君に心当たりはあるのかな?」と、僕が尋ねると、魔王はその質問に答えてくれたのである。
魔王曰く。異世界に転移できる能力者は極稀に現れるらしいのだ。それは神様からの贈り物と言われているらしく。そして異世界からこの世界に戻ってくる者もまた神様から贈りものを貰えるのだと言う。
そしてこの魔王は、神様と呼ばれる者からの恩恵により、勇者の力を継承したのだそうだ。しかしここで問題が浮上してくるのは、その力を魔王自身が使うためにはスキルが必要不可欠という部分であり。本来ならば、勇者が持つべき能力を魔王が継承したことによって。本来の力を行使できないという事らしいのであった。
そしてそんな魔王は困っていたところに、神様と名乗る人物が現れ、僕たちを助けてくれたとの事。
僕はそんな事を言われると、魔王は嘘を言っているとは思えなかったのである。
そもそもこの魔王を名乗る人物は僕のことを本気で勇者と呼んでくれるのだ。そんな少女のことを信じられなくてどうするんだという話である。だから僕は、そんな魔王に信じてもらう為、僕はこの世界を救う為に全力で頑張ることを誓ったのである。
「僕は魔王である君の力を受け継いだ勇者なんだよな?だったら僕は絶対にこの世界を救ってみせるよ。例えそれがどれだけ困難な道であろうとね」
僕はそう宣言すると魔王は僕の言葉が嬉しいようで微笑んでくれたのである。そしてその表情は凄く可憐で美しいものだったので、僕はその表情を見てドキッとしてしまう。でも。その感情を誤魔化すために僕は必死に平静を保つ努力をした。すると彼女は僕のことをジッと見つめながら、僕に提案をして来たのである。
『ねぇ。私の力を受け継ぐ覚悟はできた?タクトが良ければすぐにでも魔王の力を解放してあげようと思ってるのだけど』と、彼女は僕に対してそんなことを言い出してきたのだった。だけど僕にはまだ迷いがあったので。魔王にその旨を正直に伝えた。だけど彼女はそれでもいいから、さっさと継承の儀式を行ってしまいたいと強引に迫ってきたのである。だから僕は彼女の意見を受け入れ、その申し出を受ける事にしたのだった。
僕はその前に一度。自分が本当に勇者なのかを試したいと思い。目の前にいた魔王である彼女に「魔王としての力を試させてもらってもいいですか?」と聞いたところ。彼女は少しだけ考える素振りを見せると。快くその許可をくれて僕は嬉しくなったのである。それで僕はこの教室を見渡すと丁度よい感じの大きさの木片を見つけるとそれを剣に見立てて木刀を腰に差したのだった。それから僕は深呼吸を繰り返し、緊張を解きほぐして、木の枝を構えると。意識を高めていった。そうすることで僕は、勇者の力が使える状態になる。そして僕は、目の前にいる少女が魔王であることを確認して、それから一気に駆け出して、間合いに入ると剣技を使った攻撃を放ったのだった。
(魔王は確か剣の達人だったはず。そして魔王の持つ固有スキルの中には剣術もあるはずだ。なら僕にもこのくらいはやれるはずだ)
僕の頭の中では様々な情報が駆け巡り、そしてその通りに体が動いた瞬間。
まるで僕の体は僕の意思に反比例するかの様に、あり得ない速度で動いていくのが分かる。そう言えば魔王に勇者の加護をもらった時に、そんな説明を受けていたことを思い出す。つまり今の僕は勇者の能力を使っている状態で、その力は想像していた以上に強いみたいだった。僕は自分の予想以上の速度が出るのを確認するとさらにギアを上げていき、次々に攻撃を仕掛けて行くと。その度に魔王は防戦一方になってしまう状況に陥っていったのである。
ただそんな状況も、僕はどこか懐かしい気がしたのだ。それは以前僕がまだこの世界に来る前、僕が高校に通い始める頃に剣道部で全国大会優勝を成し遂げた時の記憶に似ていたからであろう。
そんな時。僕が優勢になり始めていた状況を魔王が一喝したのである。
『ちょっと待った!!そこまでよ!これ以上は許さないよ』と。
そんな風に魔王が言うと。僕はピタッと止まることが出来たのである。それから、僕の方を見ながら彼女は僕に向かって忠告をする。
『勇者は確かに強すぎる。だからあまり本気を出しすぎないようにね。でないと私が負けちゃうから。ただタクトの体で戦うには、それ相応のリスクがある事をちゃんと覚えておいてよね?』
そんな事を言う魔王の顔はとても寂しげなものになっていた。
魔王は自分の実力に絶対の自信があり、だからこそ、勇者である僕と戦っているのだろう。その気持ちはよくわかるけど。だけど魔王である彼女でさえ今の自分の力で勇者には勝てないとはっきり言ったのである。そんな彼女ですら勝てると言いきれないほど勇者の力が強いということになる。だから魔王が警戒して、自分の身を守れと言ったのが僕には分かる。なぜなら今の魔王の力は全盛期に比べてかなり落ちていると聞いていたからだ。つまり今の魔王の本当の力は勇者よりも強い可能性が出てきたということである。それはすなわち僕たちが生き残る為の希望が見えてきたと言っても過言ではないと思ったのである。だから、そんな事を思いながらも僕はこの世界での目標を魔王の言うように魔王を助けることに絞って行くことを心に決めたのであった。すると魔王は僕にこう言って来る。
『あなたは勇者よ。勇者であることを忘れないで。あなたの役目をきちんと果たしてね』
魔王が悲痛な思いを込めた顔でそう呟いた後。僕は気が付いたら元の世界に戻ってきていた。どうやら無事にスキルの効果は発動してくれたようである。
そんなわけで僕は自分のステータスを確認して、新しい力が身に付いているかどうか調べてみる。
その結果。勇者の加護に新たな能力が追加されていたのだった。その内容は、 《魔王》と名のつく人物の居場所を特定する能力と。その人物に近づきやすくなり、そしてその人物の気持ちが理解できるようになるというものだった。そして、もう一つ能力が解放されたことにより僕の力が大幅に向上して。
今まで使えなかった魔法なども扱えるようになったらしい。ただしそれはまだ試した事がないらしいので実際に使ってみないことには分からないとのこと。
それと。僕は魔王から受け継いだ勇者の力をうまく使いこなす為に。僕は勇者の剣という剣のレプリカを作り出せるスキルを身につけることにした。そして勇者の力を発動させると、魔王の力を上手く引き出せそうだったので、とりあえずはそれで問題なさそうであった。
そして、僕たちが召喚されてから一週間が経過した頃。
ようやく、国王が僕たちの所に訪ねて来た。そしてこの城の主である女王と一緒に謁見の間で王様の話を聞く事になったのだ。ちなみに僕はこの世界での生活で分かったことが色々とあったので報告することにする。
まずこの国の正式名称はアルムスフィア王国という国で。王の名前は、 ゼノス=レイフォードといい。王妃の名前がリリアナ=ゼリスという名前であるということ。
他にも、大臣などの官僚たちは全員男性で女性は、メイド長と呼ばれる女性が数人居るだけだという。
この国は、魔族と戦争をしていて今は、戦力の強化に努めており、僕たちを呼び出したのはその目的だと言うことを告げたのだった。そこで王様がこんな提案をして来たのである。
それは今すぐ勇者の加護を受けた者同士による模擬戦をして欲しいという内容だった。そうすることで、お互いに相手の強さを理解することが出来るからである。僕としては魔王の力を少しでも引き出しておきたかったし。ちょうどいいかと思い僕は承諾したのだった。
僕は王様からの指示に従って中庭に行くとそこには既に他の勇者と思われる男女3人が僕を待ち構えていた。彼らはそれぞれ勇者の力を受け継ぎし者として、 天海勇太(てんかいゆうた)。水橋渚美(みずはしなぎさ)。神木優斗(かみきたくろう)の3人で全員が僕のクラスメイトで男子は僕を含めて6人である。
その勇者達は僕に対してとても友好的な様子であった。そんな彼らの自己紹介を軽く聞くと、どうやら彼らもまた同じクラスの生徒らしくて、この世界に転移してくる前の時間も殆ど一緒に過ごしていたのだと言う。だから僕の事をある程度知っていたらしくて僕に気軽に話しかけてくれた。だけどそんな時だった。
突然僕たちの周りに結界の様な物が出現した。僕はそれに気が付くとすぐに警戒心を高めていくと、そこに姿を現した人物が、
「お久しぶりですね。みなさん」と声をかけてくる。
その人物は黒髪のショートヘアをした女の子であり、年齢は多分高校生くらいで背丈はかなり小さく中学生くらいにも見えてしまうくらい幼い感じに見える。そして服装が着物のような格好をしていたので巫女服に近いのかなって思うけど違うのかもしれない。でも僕はその容姿を見ただけで何故か胸騒ぎが止まらなかったのである。
(この子どこかで見た事があるような気がするんだけど)
そんな事を思っているとその少女が僕たちに近づいてきて、
「そんな怖い顔をしないでください。別に私は何も危害を加えたりするつもりはないのですから。ただ少しだけ私に協力していただきたいだけなのですが?」と。彼女はそんな風に意味不明な言葉を残してその場から去って行ったのである。するとそんな彼女のことを見ていた僕の脳裏にある名前が浮かんできた。
(そうだ!!彼女は確か、 八島姫奈!!確かクラスの中でも大人しく目立たない存在だけど、成績はいつもトップだったあの子がなんでここに?)と、僕は驚きながらもそんな事を考えてしまいながら彼女のことを見送ったのである。それからしばらく経つと今度は僕以外の勇者たちが一斉に彼女に襲いかかっていったのだった。
◆魔王軍VS勇者編◆第4章「それぞれの想いが交差するとき」◆勇者達
「はぁあああ!!!!」僕はそう言いながら目の前にいる敵に向けて剣を振るう。しかし、僕の振るった剣の斬撃は軽々と避けられてしまう。しかも、
「甘いですわよ!」彼女は僕の攻撃を避けた後は即座に攻撃へと転じてきていたのである。
僕の剣の斬撃をかわしてからのカウンターの一撃で僕に大きなダメージを与えようとしてきたのだが。
その瞬間。僕の体の中で何か異変が起き始めた。そしてその違和感を感じた直後、僕は自分の体に起こった異変に戸惑ってしまうことになる。
僕の体がまるで別の意思を持っているかのような不思議な感覚に襲われると、 まるで別人が僕の体を動かしているかのような錯覚を覚え始め、 意識とはまた別の所で僕の体は動くのである。
僕は僕の体なのに僕の知らない僕の意思によって体が勝手に動いていることに恐怖を感じるが、それと同時に自分の意思とは違う自分の体を操ることに戸惑いを覚えるが。なぜか僕は、自分の意識とは別の意識をしっかりと制御することに成功しており、僕が僕の意思とは別に僕の体を思うように操ることが出来てしまっていた。だから自分の意思とは無関係に体が動き出し、僕は相手の攻撃をギリギリのところで避けることが出来たのである。だがそんな時、僕は自分の中にもう一人の人格が生まれた様な気がした。
それは一体誰なのかわからないが、確かにその存在を感じ取れたので僕はその事に驚愕したのだった。その人格は自分の中に生まれたのではなくて、僕の中に入り込んできたような奇妙な気分になり、 そして、 僕は僕の中で生まれたはずの人格と話をし始めたのである。
(君には名前があるのかな?それと性別は?)僕は自分の中で誕生したと思われる謎の人物に向かって質問をする。
すると彼女はこう答えたのである。
『私の名はエフィリム。性別は特にありません。それよりもどうして貴方はそんなに余裕なのですか?』と。
僕は彼女に向かって、僕が彼女よりも強いと自覚していたのでその余裕なんですよと答えると、 彼女からある指摘を受けてしまった。
(その口の利き方はダメですよ。あなたはまだ勇者としての力を扱い慣れていませんね。もっと精進なさい)と。
そんな風に僕の中に居座っている彼女――エフィリムに注意を受けると、 僕の中にある力について色々説明してくれたのである。そして、僕には勇者の加護が授けられているらしいと。それから、勇者の能力も僕と全く同じように使えると聞かされて僕は驚いたのであった。僕はてっきり勇者の力を誰かに託すというやり方しか知らなかったので彼女がどうやって僕のように能力を使っているのか疑問だったのだけれど、彼女はこう言ってくれた。
『それは簡単よ。勇者の力を自分に宿せば良いの。それが出来れば勇者の力はあなた自身となるはずよ』と。
それを聞いた僕は早速試してみることにしたのである。
まず僕は自分が一番使いこなせると思っている「剣技」「魔力付与」「気配感知」などを駆使して戦っていた。すると僕の中から出てきたエフィリスと名乗る人物が僕の中の能力を使いこなせているようで。彼女は自分の能力を存分に発揮しており、その戦いぶりにはとても驚いてしまう。だけどそれだけではなくて。僕とエフィーがお互いの能力を理解しあったおかげで今までよりも格段に動きがよくなり、そして連携を上手く取ることができるようになっていったのだ。そうして僕と彼女のコンビネーションで敵を圧倒していき。
あっという間に敵の全滅に成功してしまうのであった。そんな僕らの戦いっぷりにゼノスとリリアナは感嘆とした様子でこちらを見つめていたのである。
「凄いな。二人は」
「はい。勇者の加護を受けただけのことはありますね。さすがに私達が召喚された中で最強の二人と言われるだけあってかなりの強さですね。それにしてもエフィリムちゃんの動きが今まで見たことがないくらい素晴らしかったのですがあれってあなたのオリジナルスキルかしら?」そう言ったリリアナに対して僕たちは戦闘を終えて一息ついた後、お互いに挨拶を済ませる。ちなみに自己紹介がまだだったのでまずは自己紹介をすることにした。すると、ゼノスが最初に名乗ってくれたのだ。
「僕の名前は天海勇太だ。よろしく頼む。そしてリリアナさん。先程は僕たちの援護をして頂いてありがとうございました」と。リリアナに向かって深々と頭を下げたのだった。そんなゼノスを見てリリアナはとても嬉しそうな表情を見せると彼にこんな事を言ってきた。
「いいのよ。私たち仲間なんだから。そんな事よりゼクス君は本当に強くなったのね。それにあの魔法はすごい威力だったし」と、褒めちぎったのである。そんな二人のやり取りを聞いて僕は思わず「仲が良いんだな」と思ってしまっていた。だけどそんな時だった。突如として大きな地響きと共に地面が割れて地中から魔物が這い上がってきたのである。僕はすぐさま警戒態勢を取るが、ゼノは冷静に敵の正体を言い当てる。
「これは恐らく土龍でしょう。この大陸の地下にはたくさんのダンジョンが眠っていてそこに生息している生物で、大地のエネルギーを吸収しながら成長するのですよ。なのでこの世界では地上の生き物が絶滅した後に唯一生き残ったと言われているんです。そして奴らは地下でしか活動出来ないので基本的に地上に出て来ることはあまり無いと言われています。そんな貴重な種族である彼らが今こうして現れたということは――やはり今回の魔王軍侵攻の目的はこの土竜を捕獲するためみたいですね」
ゼノスの言葉を聞いた僕たちは改めてその事実を知り動揺したのであった。するとそこでリリアナがこんな事を尋ねてくる。
「その土龍を今すぐ倒すことは出来ないのかしら?だってこのままじゃあ街まで攻めて来てしまうのよね?」
その問いかけに対し、ゼノスはすぐに答えた。
「残念ながら無理でしょう。そもそも普通の人だと彼らに太刀打ちすることは不可能だと思うので」
彼は淡々と事実だけを告げたが、それでもまだ希望を捨てていなかったようである。そしてこう続けたのである。
「でもまあとりあえずやってみましょうかね。ちょっと待っててください。少しだけ時間をください」と彼はそう言うとその場から走り去って行ってしまったのである。残された僕らは何とも言えない雰囲気になってしまい少しの間黙ってしまう。しかしここでゼノスが戻ってくるまでの間。僕たち三人はこの世界の現状についての話をすることにしてみたのである。僕は自分のステータス画面を開いて今の僕の状態を確認をしていたのだけれど。その時に少しだけ不思議なことがあった。僕のレベルが上昇していたのである。
それも何故か30に上がっていたのだ。これには僕だけでなく他の勇者たちも驚いていたが僕はその理由が何となくわかった気がしたので一応彼女に聞いてみることにする。
「ねぇ、エフィリム。もしかしてだけど君のおかげなのか?」
僕は彼女の存在を感じ取り、それが自分の力となってくれていることを知っていたので彼女に直接尋ねてみると。どうやら彼女は、僕の中に生まれた人格で間違いなさそうである。
彼女は僕の中に生まれたと同時に既に僕の中に存在する勇者の能力を自由に扱えるようになっているらしく。その力を使って、僕が倒した相手からの経験値を奪うことが出来るのである。僕は自分の体の中にもう一人の自分が生まれたような奇妙な感覚を感じていたが。それと同時に彼女が僕にとってかけがえのない存在になることを確信したのであった。
それからしばらくすると、僕とゼノンは協力して土竜の討伐に成功するとそのまま魔王の城に戻ろうとするが、僕たちを待ち構えるかのように大勢の魔王軍の兵士たちが立ちはだかり、彼らは僕たちとの激しい攻防戦を繰り広げることになるのである。だが、その時すでに僕の体の中ではエフィリームが自分の意思を持ったように動いており、まるで二人で戦っているかのような気持ちになってしまっていたのだ。そして気づけばいつの間にか僕はエフィムと会話が出来るようになっていた。エフィムとは意識の中でしか会えないが彼女は非常に活発的な女の子であり、とても元気のある女の子であることがわかる。そして僕がエフィムの体を好き勝手に使っているわけでは無くエフィムも僕の体をしっかりと制御できているようで。僕の体の動かし方を熟知している感じがしたのである。そして僕が剣を振るう時も彼女の動きに連動しており、僕は自分で動いているはずなのに自分が自分では無い誰かに動かされているという変な感覚を覚え始めていたのであった。
そうやって、僕とエフィの二人が一緒に戦うことで徐々に僕たちは戦況を押し返していき。ついには魔王軍が撤退したところで僕たちは無事に戦いを終えることに成功するのである。その後。城に戻り魔王と対面することになったのだが。
僕はそこで信じられないものを目撃してしまった。それはなんと魔王の顔が変化していたのである。顔は相変わらず美形なんだけど、その表情に大きな変化が生じており。僕の目の前に現れた少女はとても可愛い顔をしていたのである。そして、そんな彼女は笑顔で僕に手を差し伸べてきたのだった。
「私と友達になりましょう」
魔王は満面の笑みを浮かべると僕に向けて手を伸ばした。
その行為を見て僕は驚いたもののすぐにこう答える。
「こちらこそよろしくお願いします」と。
そんなこんながあって、僕の異世界転移して初の友人ができたのである。僕は自分の中の彼女――エフィーが僕の意思に関係なく自由に動かせるようになってから僕は彼女とよく話すようになり。お互いの意思を共有したり、相談をしたり出来るようになったのだ。そして僕の中にいるエフィーはどうやら僕の中の人格ではなくて、完全に僕の魂の中に吸収されてしまったようで、もはや僕は一人じゃないということを自覚できたのだった。
それからしばらくしてから僕たちは再びゼノスに会いに行ったのだけれど。彼からは「これからの戦いにあなたたちが役立つかもしれない」と言われて一つのアイテムを渡されたのである。その魔石を受け取った瞬間。突然エフィーの声が再び頭に響いてきて僕にこう語り掛けて来たのである。
(勇太君、これを見てくれるかな?)
僕にしか見えないウィンドウが表示されてそこにはエフィーと表示されている人物の映像とその下に数字が表示されていたのだけれど。それを僕に伝えると彼女はまたも僕の中に入って行った。
それから彼女はこう伝えてくれた。
(私の力が使えるようになるよ。試してみて)
(本当か?だったら試してみようか)
そして彼女が言う通り、僕は心の底にある何かを必死に押し込めるようにしてみたのである。
(これが僕の中のエフィリムなんだな)と僕は心で呟くとその言葉を口に出して言ってみると。僕の中の彼女――エフィリスの存在が一気に大きくなり。僕は一瞬のうちにエフィーの存在を認識することが出来たのだった。それからさらに続けて僕は自分のスキルについて思いつく限り試してみると。
「おおっ、これは凄いな。こんな事が出来れば確かに便利かも」僕はそう言って自分のスキルの新たな可能性を知ることが出来た。エフィリスはこんなことも教えてくれたのだ。僕が持っている能力は全てのスキルを使うことができるだけではなく、それらを全て組み合わせてオリジナルの技を作り出すことが可能だということを。それを知った僕は非常に嬉しくなり、僕は興奮してしまった。そうすれば僕はもっと強くなれるような気がしたからだ。ただそれでもまだまだ強くならなければいけないのが勇者というものだと思ったのだ。
エフィーの話では勇者にはスキル以外にも特殊な能力があると言うことらしい。例えば聖剣を召喚したりできるとかなんとか。ちなみにその力は召喚士の力を遥かに凌駕するものらしく。実際に見せてもらった時は驚きを通り越して恐怖を感じてしまったほどである。
僕とリリアナが魔王を倒した後。ゼノは一度自分の家に戻って休むことにして。僕とゼノが再会するのは次の日の朝になったのだった。ゼノの家に向かうとゼノの家はボロ小屋になっており、しかも入り口が開いていた。ゼノのことだから鍵をかけるのを忘れているのかと思っていたら中には人の気配があり、ゼノスがいたのである。
ゼノスは自分の家に戻ってきたことが嬉しいのかさっきからニヤけ面をしており。何やら鼻歌まで歌ってご機嫌である。そんな彼の様子を見て僕は思わず微笑んでしまうと、僕に気付いた彼は慌ててこう言ったのである。
「こほん。失礼、実は僕はこの村に住むのをやめて故郷に戻ることにしたんですよ。なので今朝この家を出ますね」そう告げるゼノスは照れくさそうにしていた。ゼノの故郷の場所はゼノスしか知らない為。彼が出て行ってしまえば僕たちだけで旅を続けなければならないことになるのだ。ただゼノンとしてはもう二度とゼノスと会うことがないと考えていたようである。そんな時だった――突如として地響きが起こり地中深くから何かがせり上がってきたのである。僕は即座に剣を抜くが――そこで見たこともない巨大な龍が出現したのであった。
現れたのはこの世界最強の龍「黒炎龍イフリート=クロキリュウナ(以下クロキリナ)」であり、その姿を見たゼノスはすぐに僕の手を引いて「逃げましょう」と言ったのである。僕とゼノスはすぐに行動に移り、その場から離れると僕たちはそのまま全速力で走り続けた。すると後ろの方で爆発音のようなものが発生し、振り向いた時にはもうあの黒い炎龍が迫って来ていたのである。このままではやられると判断した僕はある決断を下したのである。それは「ゼノンを置いて行く」というものである。だが僕がその考えを口に出す前にゼノスは僕を止めるのである。
「いいんですか?」
僕が尋ねるとゼノスは何事もないように言い放ったのである。
「大丈夫ですよ、これくらい。それより僕は勇太さんたちの足手まといになるようなことはしたくないですから。僕にも戦わせてください!」
その瞳はとても澄んでおり僕は彼に嘘偽りのない覚悟を感じ取ったので、僕は仕方なく折れることにしたのだった。そして僕はゼノンと一緒に逃げると見せかけて彼を囮にして自分だけその場から離れたのである。そして、ある程度離れた地点で立ち止まるとゼノスの様子をうかがうとどうやら上手くいったらしく、僕と別方向に走って行く姿を確認することができたのである。
「よし、じゃあ追いかけるか」
僕はそうつぶやくとすぐに駆け出し始めた。そして、僕は全力疾走で走っているのにも関わらず全く追いつかないどころか引き離されて行き、最終的には見失いそうになってしまう。そしてようやく止まったかと思えばそこは森の中であり、僕は少しの間森を見回してゼノンを探した。
「一体どこにいるんだ?」
僕の声だけが響くが、当然それに答えてくれるものはいなかった。しかしここでふと僕は自分の体が軽くなっているような感覚に襲われ。そこで自分の状態を確認してみると驚くべき変化が起こっていたのである。僕の体は完全に消え去っていたのだ。正確には肉体ごと異世界に飛ばされたのである。
僕の姿が完全に消えると同時に頭の中で誰かと会話が出来るようになった。そして会話をしようと思ってみたのだが相手からの応答が全くなかったのである。そして僕自身もどうやら向こうの世界に行ってしまったようで。どうやら声を出すことが出来なくなってしまったみたいである。とりあえずは僕の中に存在するもう一つの人格――エフィーのことを考えてみようと心に念じるとすぐに反応があったのである。
(あっ、どうやら繋がったようですね。初めまして。私の名前はエフィムといいます)と、エフィの明るい声で彼女は挨拶をしたのだった。
それから僕たちは色々と話をするのだけど。その話はまた後ほどということで、まずは現状確認のためにステータスの確認をしてみることにする。
(おっ!さすがは勇者様だな。ステータスがかなり高い)と、僕が考えているとエフィムが僕に語り掛けてきた。
《勇者は異世界から転移された際。異世界の管理者によって自動的に勇者専用の特別な力が解放されます》と、彼女の言葉を訳すとこんな文章が頭に浮んできた。
(これは凄いな。僕の中にあるエフィと話ができるようになったばかりか、彼女が持つ固有能力を使えるようになるなんて。これでますます僕が強くなったわけだな。ありがとうエフィ、お前がいなければきっと僕は死んでしまっていただろうな)
(うん、勇太君のお役に立てて良かったよ。これからもよろしくね)
こうして僕とエフィーの新しい生活が始まったのである。そしてこの時僕は知らなかったのだが。僕の中のエフィーはとんでもないチート能力を持っており、僕はそれを思う存分使うことで最強へと成長していくこととなるのだった。
ただ僕にはその自覚がなくって。そのせいで周りには誤解を招いてしまい大変な目に遭うんだけど。まあこれも全てこれから起きる事なんだけれども。その時が来るまでもう少し待っていて欲しいかな?それはまだ僕たち二人とも知らない未来なのだから。
エフィーとの魂が繋がっていることにより彼女は僕に対して自由に話しかけることができるようになった。これによりエフィーの存在はさらに大きくなり、僕は彼女と話すことを心の底から楽しみにしている。
『格闘術MasterLV12』New! 格闘技系統の身体強化及び新技を身に着けることが出来る 二刀流 Lv13 投擲 Lv20 弓道 Lv22 銃射撃 Lv17 暗器術Lv18 忍足Lv10
『暗殺者の手練』
気配を消すことに長けている。隠密が上位互換となり、姿だけではなく匂いや音までも完璧に消せれるようになる。(任意でONOFFが可能)
(なるほど、これは凄いな)
ゼノスが僕の目の前で起こした出来事に僕はかなり驚かされるのであった。彼の両手がいきなり光り輝き、その光が収まると彼の両腕には銀色の腕輪が嵌められていたのである。しかもその腕輪から突然炎の渦が発生したと思ったらゼノスは炎の中に突っ込んでいき、そこから脱出するとその手に剣を持っていたのである。
(まさか魔法武器なのか?あんな物が作れる人間がいたのか。しかもそれを扱えるのがあの年齢の少年だというのが恐ろしいところだよな。僕もあれだけの魔力があればなぁ)と、ゼノのことを見ていると彼は僕たちに近づき笑顔を見せた。その顔からは想像できないほど彼はとても怖い存在だった。そういえば彼の年齢は14歳で。まだ若いにもかかわらず既に村の中ではトップクラスの実力を持つようになっていたのだ。彼はこの国では有名な戦士の家系の生まれらしく、小さい頃から厳しい訓練を重ねてきたのであろう。そんな彼が持っている魔道具は間違いなく強力な物であると思われた。
そんなゼノと僕は一緒に旅に出ることにしたのだけれど。僕が勇者だと知るとゼノは驚きながらも僕たちの仲間になりたいと言い出したのである。僕は最初は断ろうとしたのだけど、リリアナの強い勧めもあり結局仲間になることにしたのであった。
ゼノンに別れを告げてから一時間程経過するとようやくゼノンに追いつくことができた。僕は彼に近づいていくと声をかけようとするが、彼は僕をちらりと見ただけで何も話さず無言のまま先に進み始めたのである。そんなゼノの後ろ姿を見て僕はため息を漏らすしかなかった。なぜなら彼はもう完全にやる気を失ってしまっているように見えたからだ。ゼノンと別れたあと、ゼノとは一言しか喋らなかったので詳しい事は分からないけど。それでもなんとなく彼なりに理由があるように感じ取れたのであった。
ゼノには故郷に戻ると言って出てきたようだし。何か問題が起きたのではないかと考えた。そこで僕は彼の力になろうとゼノンの後に続いたのである。そして歩き続けて数十分で目的地にたどり着いたのかゼノは足を止めたので僕は彼に声をかけてみることにしたのだ。
「ここはどこですか?」
ゼノンは相変わらず無表情のままで。僕を無視してどんどん進んでいってしまったのだ。そんなゼノの後を追うように歩いていると森の奥深くにたどり着くとそこでゼノンは僕たちに向かって言ったのである。
「この先には黒き炎龍と呼ばれる最強のドラゴンが存在します。僕はここで皆さんのお役に立ちたいと思ってるんです」
そんな事を言われたので僕は彼にどういうつもりか尋ねたのである。ゼノの言葉を聞く限りどうやら何かの理由で戦えなくなったから助けて欲しいという意味らしいと判断することができたので、僕は少しの間考えると、彼を連れて行くことに決め。彼を無理やり引っ張るように森の中を突き進んだのであった。
ゼノンを連れて歩くと、しばらくして黒龍イフリート=クロキリュウナの姿を発見することができたのである。その姿を見た瞬間。僕の全身に悪寒が走り抜けたのを感じたので。すぐに戦闘態勢に入ろうとすると、イフリートは僕の前に出ると。「勇者様。私のことは気にせず全力を出して戦うのがよろしいと思いますよ」と言うのだ。
(なっ、なに?一体何が言いたいんだろうか?)
僕が不思議そうな顔をしているとゼノスはニヤッと笑ってから「勇者様、頑張ってください」と言ってきたのだ。
「はいっ?」僕は意味がわからずにゼノンのほうを見ると、ゼノンは楽しそうに微笑んでいたのである。その顔を見てるとどうやらゼノンの言っていたことが本当であることがわかったのだった。僕はゼノンに何を考えているか尋ねようとしたのだけど。ゼノンは既に攻撃に移っており、僕とイフリートは戦いを開始したのである。
イフリートの放つ炎を僕が避けたり打ち消しながら距離を詰めて行くと、彼女は僕の拳が届く間合いに入る前に「ふんぬぅ!」と気合を入れた途端にイフリートの体が巨大化して僕の視界を完全に塞いでしまったので、すぐに後退するとイフリートはすぐに元の小柄な体に戻ったのでホッとするが。
『超速加速!!』
と声が聞こえると同時に僕の横から巨大な拳が飛んできて、慌てて防御の姿勢を取ると僕の体に重い衝撃が発生し僕は後方へと吹き飛ばされてしまう。そしてその僕を吹き飛ばした犯人のほうへ視線を移すと。それは一瞬にして僕の後ろに回り込み回し蹴りを放つイフリートの姿があったのだ。
(なんて動きだ!まるで目に見えなかったぞ!しかもこの蹴り。なんて破壊力なんだ!これが本物の竜神族なのか!?︎)
僕の体を簡単に吹き飛ばすその威力。しかもそれが僕の真横に出現したということがどれだけ信じられないことだった。
(でも、僕も負けてられないよな!よし、反撃だ!)
僕はその場で立ち止まり腰を落とすと。僕は自分の持つすべての力を振り絞り。自分の奥底にある力を引き出したのだ。その僕の行動を見ていたのだろう。背後にいるはずのイフリートから動揺した気配を感じる。そして次の瞬間――僕を中心に強烈な衝撃波が発生したのである。
僕の周囲に存在するもの全てが激しく揺れ始め大地に亀裂が入り砕け始める。そして地面が盛り上がり山のように隆起し始めると、その山に飲み込まれるようにして周囲にあった木々が全てなぎ倒されていき地形が変わり始めていた。
僕はそのまま自分の中に眠っている膨大なエネルギーを一気に開放していくと、それに耐えられなくなったのか空間が歪んで行き最後にはガラスにヒビが入るような音が鳴り響くと、目の前に立っていたイフリートは膝をついて苦しんでいる姿が確認できたのである。
それを確認した僕はさらに魔力を放出し続けながら今度は右手で手刀の形を作り。左手の手のひらを合わせるとそこに光の魔力を集めていった。その動作に反応するかのように周囲に雷が発生する。しかし僕はそれすら無視しながらさらに魔方陣を作り出しそこから魔力を吸い上げ続けると、魔方陣は徐々に巨大になり、それに比例するように僕の体の周りの稲妻が強くなっていくのであった。
僕の体は魔力に侵されて全身が真っ赤に染まっていくと。さらに髪も白く染まり。目つきが鋭くなると歯が牙のように長く伸びてくる。それだけでなく口が耳まで裂けてきてしまい、僕の目は赤く発光していた。その異様な姿を僕が意識していないというと嘘になる。だけど僕はその姿を見ていても恐怖など全く感じることはなく、むしろ心から力が溢れ出てくる感覚に襲われ、僕はさらに魔方陣から大量の魔力を吸収していく。するとその時になってやっと気づいたのだが。ゼノンたちはどこに消えていたかというと僕たちの戦いに巻き込まれることを避けるためだろう。いつの間にかいなくなっていたのだ。おそらく今いる場所にはいないと思われる。
それからしばらくして僕は魔素を使い切ったのか?それとも使いすぎで体力を消費し過ぎたせいなのか?とにかく疲労感に襲われることになる。そしてそれと同時に体内の熱は引き、僕はゆっくりと呼吸を整えると。僕は再び立ち上がるのであった。そして目の前で倒れている黒龍を見つめる。
イフリートは倒れてはいるがまだ生きているようで時折痙攣を繰り返していた。それを見ていると僕は無意識のうちに足を前に動かしイフリートに向かって歩き出すと、そんな僕に対してイフリートは「う、動けない」と言い放ってきたのである。僕は無言のまま彼女に近づいていくとその胸ぐらを掴む。その掴まれた時の反動で彼女は苦痛の声を上げると、僕のことを見上げて「こ、降参します」と言い出してきた。それを聞いていた僕は彼女を離すと彼女の言葉を無視してイフリートに尋ねるのであった。
(本当にこれで終わりなのか?もしそうだとするとかなりあっけない幕切れだけど。どうも違う気がするのは気のせいなのか?だとしたら、彼女は僕が思っているよりも強敵だということなんだろうな。そうでなければこんなあっさりと終わるはずがないだろうし)
するとイフリートは僕に「わ、わたしが貴方の力になりたいと申し出たので。お願いですから、どうか殺さないでください。私は、いえ私たちは、貴方の仲間になりたいのです」と言うと地面に額をつけて土下座のような体勢になったのである。その光景に驚いていた僕だったが。このままだと話が進まないので仕方なく話を聞こうと、イフリートに質問をすることにする。
僕がイフリートに聞くと「あ、あり、ありがとうございます」と言うとお礼を言われた。僕には何でお礼を言われたのか理解できないので。どういう意味か聞き返すとイフリートは自分の命を助けてくれたことに感謝をしていると言い出したのである。僕はイフリートを助けた記憶がなかった。そもそもどうしてイフリートは戦意を失ったのだろうと疑問に思ったのでそのことを聞いてみたら。
僕と戦っている最中に突然頭の中で変な声が聞こえてきて。その瞬間に自分の中で戦おうとする意思が完全に無くなったと説明を受けた。そして僕はイフリートに何故僕と戦うことになったの?その理由を聞いてみると。それは、彼女が僕が持っている魔剣に興味を示したからであるらしいのだ。
イフリートは僕が持っていた神器を見て僕こそが魔王様を復活させることのできる唯一の存在だと思い込み戦いを挑んできたのだと言う。だから最初は僕と戦いながらもどこか冷静で僕を殺すつもりはないと言っていたらしい。しかし僕との死闘を続けているうちに僕の中に秘められた力に気づくことになり、その力を欲してしまったのだ。
僕はそんな事を急に言われても困ると思ったのだけど。イフリートは必死に頼み込んできたので、僕は仕方なくイフリートの望みを聞き入れることにして「これから仲間になるっていうことは僕の配下になるという事だけどいいのかな?」と言ってみる。するとイフリートはそのことに異論がないと伝えてきたので、僕はゼノと同じような関係になることにすると伝えると、ゼノと同じという言葉に反応したのかイフリートが「そ、その、えっとですね。ゼノというのは一体どういう意味ですか?それに同じということは、ゼノさんにも部下がいるんですか!?︎えっ、ええぇえー!」などと意味不明なことを言うと取り乱し始める。その姿に若干引いたものの僕は気にせずに事情を説明したのである。
そして僕はこの世界でゼノンのことを詳しく話すことにしたのだった。僕の世界からこの異世界に来てから起こったことや今までの経緯を全て話したのである。するとイフリートは「まさか私と同じようにこちらの世界に召喚されていたなんて。それも私の知っている人と同じ名前なんて運命的なものを感じます」と言うのであった。
(やっぱりそうなんだよなぁ。でもそうなるとますます謎が増えてしまったわけなんだけど)
とりあえずその話は後回しにして。僕としてはもっと気になっていたことを質問することにする。それは何故ゼノンの名前を出した時にあんなに取り乱していたのかを聞くと、彼女は恥ずかしそうにして理由を話し始める。それによると彼女は昔勇者と呼ばれていた頃に色々と迷惑をかけた相手がいたのだというのだが、その名前が僕の知っている人物に似ていると口にしたので動揺したのだという。僕はそこまで言われるとは思っていなくて、ちょっとショックだと思ってしまうけど。イフリートから「ごめんなさい。あの時はどうしても思い出せなくて。本当に、ご、ゴホン。なんでもないから忘れてくださいね」と誤魔化されてしまった。僕はこれ以上追求しない方がいいのかもしれないと思いそれ以上は言わなかった。すると今度は僕のほうからイフリートに話しかけたのである。
僕は先程からイフリートのことばかりを考えていたので。改めて目の前の少女の姿を見てみることにする。そのイフリートの姿なのだが身長こそ小柄な少女だが、体は鱗で覆われており背中にはドラゴンを思わせる羽のようなものが存在していた。また体中に無数の傷痕があったりしていてとても痛々しい姿になっているのだ。
それに加えて体の大きさは人間族の大人よりは大きい。でもそれでもせいぜい170cmくらいだろうか。そして肌の色は透き通るような白い白銀に近い銀色をしており。髪も美しい銀色をしていたのだ。しかもイフリートの顔はとても可愛らしく美少女と言ってもいい容姿をしていたのである。
イフリートは自分の容姿にコンプレックスを持っているようで、自分の姿を見られるのを嫌がっていたようなのだ。僕としてもイフリートが気まずそうに僕を見てくるのであまり見る気になれなかった。ただあまりにも僕のほうを見ていたので仕方なく僕は「そんなことありませんよ」と答えると。僕の言葉を信用してくれたのか嬉しそうな顔で笑みを浮かべていた。
それからイフリートは僕に対して感謝の気持ちを伝えると。僕を新たな主として忠誠を誓うと言ってきたのである。それを聞いた僕は慌てて断ったのだけど。彼女は自分が勝手にやったことだから僕の好きにすればいいと譲らなかったのだ。僕はしばらく考えた結果、仕方がなく受け入れることにすると、僕たちはゼノンと合流を果たすために移動を始めるのだった。
イフリートはゼノンの居場所がわかるということで僕は彼女のあとについていく。それから移動中。僕とゼノンとの関係とかお互いの事について話し合ったのである。そしてイフリートは僕のことをゼノンの友達だと勘違いして喜んでいた。僕は否定しようとしたのだけど。それよりも早くイフリートは話題を変えてきて結局最後まで訂正する機会は与えられなかったのである。
イフリートがいうには僕はどうやら自分の上司でもあるので失礼なことをしてはいけないと言われて僕はそれに従う事にする。それだけでなく僕はイフリートの主にして僕の主でもあり。イフリートは僕の配下であると言い出す始末。
イフリートの言葉の意味がよく分からなかったので確認を取ろうとしたら。「だってゼノさんの魔族での仲間なのですよね?なら私は彼の部下という事になるのではないでしょうか?」と返される。僕はそれを聞いて納得できてしまい反論ができなかったのである。
僕はイフリートと会話をしているうちにいつの間にかに彼女のことを受け入れ始めていた。というか、なぜか僕のペースに飲まれてしまっていたのだ。そんな時、突然空間が歪み始めるとゼノンの声が聞こえてくる。どうやらゼノンたちがこの場所にたどり着いたようだった。
僕たちはゼノンと合流しようとしたのだが、僕はふとあることが頭に引っかかってしまい。ゼノンに「イフリートのことで何か気になるところってあるのかな?それとも他にもあるのか聞いてもいいのかな?」と尋ねるのである。すると彼は「特にないですよ。イフリートはいい子ですから」と答えたので僕もそれ以上は聞かないことにすると、そのまま移動するのであった。
そして僕たちは合流すると早速今後のことについて話し合いを始めたのであった。そこで僕が一番聞きたかった質問をする。どうしてイフリートが仲間になったのかという質問をゼノンにした。それに対してイフリートは「私を仲間に入れて欲しい」とお願いをしたらしい。ゼノンがそれを断ろうとするとイフリートは僕のことを指差しながら、その人はゼノのお知り合いだから、もしかしたら魔王様を助け出す方法を知っているのではないかと言うとゼノンはイフリートの言ったことに賛同したようだ。
その後、イフリートは自分の目的のために仲間になりたいということと。ゼノンの仲間になりたい理由は魔素の濃い場所での生活を望んでいたからだと説明を受けると、僕は魔王のことも説明したのであった。
それから僕はイフリートのことについて聞くことにした。彼女はイフリートの一族は元々この世界とは別の世界の生き物であり、別の世界に住んでいたらしい。彼女は元々住んでいた世界でも有名な魔物使いの師匠から鍛えられて、かなりの実力者だったという。その実力で様々な場所を旅していた彼女はある時この世界の存在を知り興味を持ったのだと言う。そしてその旅の最中にイフリート一族の先祖に当たる人物と出会ったらしいのだ。そのイフリートの子孫こそが彼女の父親にあたる人物だった。
彼女の父親の名前はバサラというらしい。彼もこの世界に来てからは、冒険者になりながら仲間を増やしつつ、世界を救う為に旅を続けていた。そんな時に彼女と出会い。お互いに助け合う仲間となった。やがて二人の夢はこの世界に散らばった仲間を集めることであることが判明したのだという。
その話を聞いた僕たちなんだけど、その仲間の数があまりにも多くて僕は頭がクラクラしてしまったのである。その話を僕とイフリートは聞き流していた。何故ならイフリートにはゼノ以外仲間になってくれる人物が居なかったからである。そのため僕はイフリートに仲間になってくれたお礼として武器を与えることにする。そのお礼として僕たちはイフリートを配下に迎え入れることになったのである。こうして僕は新しいメンバーを手に入れたのであった。ちなみにゼノンに僕が渡した剣と盾はゼノン専用アイテムボックスの中に入っていると言うと驚かれてしまう。
(まぁ確かに、僕の世界から持ってきた品物で、なおかつ伝説級に価値があるものだからね。でもさ、そういうことは事前に言ってくれてもよかったと思うんだよね)
僕とゼノンはこれから魔王がいる城に向かって進軍を開始しようと計画していたんだけど。その途中で僕たちを何者かが襲ってきたのだ。その襲撃者の外見だが、全身が漆黒の衣装に包まれており。頭部も黒い覆面で覆われているため性別さえ不明だったのだけど。その者は僕たちに攻撃を仕掛けてくることはなかった。それどころか僕の方にだけ殺気を向けるだけで、まるでゼノのことを無視しているように見えたのである。
その攻撃に対してゼノは「貴様は何者で何故僕の事を無視する?」と怒りをぶつける。すると、その者は一言だけ言い放つ。お前とは戦わないと。すると、それだけでその場から離れていったのである。その言葉を聞いたゼノが追いかけようと走り出したのだけど。僕がそれを止めると、代わりにゼノンの持っていた魔装具に反応があったので。それを調べることにして。魔導通信機を取り出そうとしてみたのである。すると魔装具は僕の言うことを聞き入れてくれたのか起動してくれた。
(おっ!これってもしかして僕の意思を読み取ることが出来るようになっているのかも?)そう思い。僕はまず魔族の国の様子を知りたいと強く思うとその情報が伝わってきた。そしてそこには僕たちが探し求めている魔王の姿もあったのである。その姿を見てゼノンも安心したようで、僕が魔族の様子を探るのをやめると。僕は改めて今起こっていることを整理し始めた。
まずイフリートなんだけど。どうやら彼女はこの世界の出身ではないのでこの世界の情報にあまり詳しくないようだった。彼女はこの世界での勇者は誰なのかを僕とイフリートが話し始める。
するとここでアリアが勇者の名前を告げた瞬間。イフリートの動きが完全に止まると、それからイフリートは頭を抱えて「勇者なんて存在は私達の世界にも存在しないわよ」と震え声を出し始めたのだ。僕はイフリートの反応を見て、これは一体どういうことだろうと疑問を抱く。それから僕はゼノンとアリアが知っているという、その人物についてイフリートから教えてもらうと。僕は驚きを隠せなかったのである。何故なら僕たちが知っているその勇者とは僕の知っているゼノンの過去にいた親友であるからだ。つまりイフリートが知る「勇者」というのはゼノンの友達であるということになる。それを聞いた僕は何とも言えない気分になってしまったのである。そして、僕たちは先に進むのだけどもそこで魔族の兵士たちと出くわすことになってしまう。
そして魔族の兵士たちと遭遇することになった。僕とゼノンとゼノンの仲間たちはそれぞれの相手と戦いを繰り広げると、なんとか勝つことができたのだけど。そこにイフリートの姿がないことに気づくと、慌てて周囲を探し回ることにしたのである。
そして僕は見つけたのだ。それは魔族たちのリーダーらしき人物で魔族が着ていそうな鎧を身につけ、魔剣を携えた男が立っていたので。僕はまずは事情を説明しようと思ったのである。だが、男はそんな僕のことを邪魔者とばかりに切りかかってきたので、仕方なく戦闘を行う羽目になった。ただ戦いが始まると同時に男の魔装が発動して。男の能力がわかったことで僕の表情が変わったのである。というのも、その男の名前はガトといい。彼は「聖炎 火柱の猛将」というユニークスキルを持っていた。
僕は「聖炎」という魔法に少しだけ覚えがあって、その名前を聞いて確信を持つ。それから僕の「鑑定能力」が自動的に相手のステータスを見てくれるのだが、それがとんでもない代物だったので僕は驚く。その情報によると、「炎獄 炎神」というのが彼の二つ名であるらしく。「火」系統の属性魔法が最強というのに、さらにその上があるらしいのだ。その効果は「自身のHPを消費することで、全MPを消費して発動する。敵全体に超高火力の攻撃を放つ」という恐ろしいものだったのである。しかもその技は、どんな耐性も貫通して効果を及ぼすので僕たち人間は勿論のこと。イフリートにだって効果がある可能性があった。
僕はそれを知るとすぐに作戦を変更する。そしてまずは敵の戦力を確認すると僕はイフリートを呼ぶ。イフリートはすぐに駆け付けると、自分の役割をしっかりと果たすべく僕の護衛を引き受けてくれたのである。その後僕はイフリートと一緒に戦場を動き回る。だが、ここで僕は一つの異変に気付いた。僕の仲間の一人であるイフリータという少女の身体が、少しずつ黒く変色していき、最後にはイフリートのように変化してしまったのであった。その姿を見たイフリートの顔色が変わり動揺を見せた。その隙を突いて僕は、彼女の手を握ると「君は絶対に助けてあげるから安心してほしい」と伝えたのである。
その言葉を聞いたイフリートの目から涙が流れ落ちたかと思うと僕に抱きついてきて「信じます。あなたの言葉を、私の事を必ず守ってください」という言葉を囁いてきたのであった。その言葉で僕の決意はさらに強固なものとなると僕は彼女を抱きしめ返すのである。そして僕は彼女の額に唇をつける。
僕たちはお互いに覚悟を決めると行動を開始した。すると僕の仲間たちが「聖氷」の技を使用して「炎」の力を持つ者を凍らせることに成功したので、僕が全力で魔力を解放すると僕の周囲に光の渦が発生し、その中に取り込まれた者を全て消滅させたのである。その結果、その場所に残っていたのは僕だけだった。僕は「聖水」をイフリートにかけると、イフリートが苦しんでいる姿が見えると「ごめん、本当に悪いけど。もう少しだけ耐えてくれないか」と言うと、僕はイフリートを両手に抱えると空に飛び立つ。
僕の腕の中には、まだ完全にイフリートに変化が進んでいないイフリートが意識を失っていて、僕の腕に噛み付いてくるのだけど、今の僕はそんなことは関係ないとばかりに無視をしてそのまま魔王のいる城に向かって飛び続けるのであった。
それから僕たちは魔王がいる城に到着すると魔王の前に立ち塞がった。魔王が言うには彼女はもう既にこの世界に存在する他の魔王と契約を交わしているというのだ。そして僕たちにも魔王と戦う資格はあると言う。僕はその魔王の話を聞きながらも、その魔王が嘘をつけないことだけは確認出来た。そしてこの世界に来てからの苦労を思い出していたのである。
(あの時は、なんとしても僕とゼノンが元いた世界に帰りたいと思って必死だった。そして僕たちに協力してくれた人達がいた。そのおかげで僕たちは帰ることが出来たんだ)
それから僕たちは、その世界から連れてきた仲間を紹介することになった。僕たちにとって大切な仲間だからだ! それから僕たちはお互いに協力し合う仲間になる為の儀式を始めることにする。その内容は「血と肉の融合儀式」というものであり。これによってお互いに仲間だと認め合うことになるというものだそうだ。それを聞いた僕は「それはちょっと怖くないですか?」と問いかける。すると魔王のリリスは「大丈夫ですよ。そんな心配しないで下さい」と言い返されてしまった。そんなわけで僕は「まぁ別に構わないんだけどさ」と答えると、僕の右腕を斬り落としたのだ。それを行った魔王に対して僕の怒りの声が響き渡ると「そんなに怒らないでくださいね」と微笑みながら言い放ったのであった。
こうして僕たちは儀式を開始することにした。最初に僕はリリスの血と僕の一部を切り落とすことにより儀を行うのだが、この際にも痛みを伴うのがネックだったのだ。それでも僕は我慢することにして無事に儀が終わると、次にリリスが同じようにして僕の腕に自分の腕を絡めてきた。そしてその光景は見ていて気分が悪くなるような、あまりにもグロテスクなものだったが、僕の「限界突破」のおかげで苦痛に耐えることができたのである。
そして僕は僕の中にリリスの魂が溶け込むのを感じたのである。それが終わったところで次は僕の仲間たちの番となったので。ゼノンの番は省略し、イフリートの時には「お前の心臓が欲しい」と言われて驚いたので「そんなことをしたら死んでしまうだろうが!!」とツッコミを入れると、「それでは私が貴女様と融合した後はどうするおつもりでしょうか?」という答えに困る返答を受けてしまい、僕は仕方なく了承することにしたのである。だがその前に僕の仲間の誰か一人を生け贄に捧げる必要があるという話になり。僕は悩んだ末にイフリートとイフリートの姿になっている「聖魔人」を生贄に捧げることにした。これで魔王は僕たちの力を得たことになり、魔王は嬉々として自分の部下の魔王に戦いを挑むために魔王城から出て行ったのである。
僕は仲間たちのことを気にしながらリリスと行動を共にすることにした。そして僕たちは魔王城の中で一番豪華な部屋で寝泊まりすることになり。その日の夜は宴を開くこととなったのである。その際にも僕は酒を飲むことはなかったのである。そうして宴も終わりかけた頃、僕と魔王であるリリスは、とある話をした。その話というのは「勇者はどこに消えたのか」ということであった。だがその話を聞いたイフリートの表情が一変して、とても悲しげな表情を見せると「勇者は貴方達の世界からこちらの世界に来ました。その時に勇者の力の半分が失われてしまったんです。つまり貴方達が勇者であるゼノンさんが、あちらの世界で得た「勇者」の力はその勇者から失われてしまっているのです」と告げた。
僕たちは勇者の力を「聖魔人」によって与えられて、勇者と同じような力を持っていると思っていたが、その実、勇者が持つ勇者だけの固有能力は奪われてしまっていたという事実を知り、かなりショックを受けることになるのだが。ここでリリスが僕に近づいてきて、「これから一緒に行動する以上、名前を教えてください」という要求を受けたので僕は「名前はシンジ」と名乗ると。彼女は笑顔を浮かべると僕の顔に手を当てて「いい名前ですね」と言われたので。僕は顔を赤らめてしまったのである。
僕たちは魔王の城を後にするとゼノンと合流するべく行動をすることにした。ただイフリートは魔族たちを守るために、魔王城に残りたいと希望してきたので、彼女に任せることにしたのである。それから僕は魔王の城の近くにある村で宿を取り一泊することになる。その村は僕たちが宿泊した場所より貧相で、村人たちも貧しい暮らしをしていた。それ故に、ゼノンも村の人間たちから嫌な目で見られていたので、早くこの村を脱出したかったのだ。
次の日の朝になると僕は宿屋の主人と話すと僕たちの目的地をゼノンの生まれた故郷だという村にする。そして村に向かう途中で僕とゼノンは盗賊らしき集団に襲われたが。それは問題なく片づけたのだけども、その際に僕は不思議な声が聞こえてきたのである。
(やあやあ初めまして、僕は「鑑定スキル」の神様だよ。今回は君のユニークスキルの一つ「鑑定眼」の能力について説明するよ。「鑑定スキル」を発動する際に必要なものは、「対象の名前」「性別(男女)」「レベル1〜999までの数字表示機能」「詳細」という四つの項目を意識することだよ。そしてまず「鑑定スキル」についての説明をするよ。「鑑定スキル」は鑑定系スキルの最上位に位置するスキルだと思ってもらって間違いないかな。それでその「鑑定」で表示される項目なんだけど「アイテム名」「ステータス数値」「所持しているスキル」「装備品の名称」が表示されるのと「所有者」と「能力」がわかるようになっているので覚えておくようにね。あと、所有者の場合は「称号」も表示されている場合があるから気をつけてね。
それとこの世界に存在する魔物の討伐方法は基本的に二つ存在しているのは知ってるよね。一つは僕たち人間が装備できる武器を使って戦う場合。これは普通の剣とか盾などを使えば良いのだけども。問題は相手がモンスターの場合なんだ。そういった場合は、僕たちは魔力を込めて攻撃するか、魔力を込めた武具を使用するかの二つの手段があるんだよ。
それから僕が説明していない事を言うと「魔力とは?」っていう質問に答えるけど、簡単に言えばエネルギー源のことさ。この世界の生物なら必ず持っている物で生命を維持するために必要なものなのさ。だから人間は体内にある生命維持に必要な魔力が枯渇しないようにするために「回復魔法」を使用して定期的に体力を回復させているんだ。そしてその消費分を補充するのが食事というわけだね。ここまで理解出来たかい? それじゃあ本題に入ろう。実は「魔王」と呼ばれる者が存在するのだけど。彼らは魔王の中でも特殊な種族で「魔族の創造者にして、破壊者」と呼ばれている者たちの事を指しているんだよ。だから彼ら魔王を倒すということは「世界を滅ぼす存在の殲滅」ということになるってことだ。だから「魔族の創造者」と「破壊者」は世界のバランスを取るための天敵とも言える存在なのかもしれない。だから君には「魔王殺し」の称号をプレゼントしておくよ。頑張ってくれたまえ!)
そんな風に「鑑定スキル」の神様とやらが僕たちにメッセージを残して消えていった。僕は「そんなこと聞いてないし、勝手に押しつけてこられてもな」と思うと、ため息をつくのであった。
僕たちは無事に「イフリーラ王国」に到着をして、国王に挨拶をしてゼノンの父親である宰相に「勇者の件」を頼むことにすると。この国でも、やはり勇者の噂が飛び交っていたらしく、その噂を元に冒険者を雇ったところまでは成功したものの全員死んでしまい、今は新しい冒険者を募っている状況だった。なので、その冒険者のパーティーを紹介してもらうことにした。
紹介されたのは三人の女性であり、それぞれが剣士の技能と、魔術師、僧侶、治癒士と分かれていたのである。それから僕がゼノンの母親である王妃と話をしている間にゼノンは女性陣と一緒に訓練を開始する。
それから僕がゼノンの相手をしているとゼノンは僕に対して不満そうな表情を見せた。それを見た僕がゼノンに対して「なんだよ、何かあるのか?」と問い質すと、ゼノンは不機嫌な態度で「いや、何でもないさ」と言うだけで何も言わなくなったのである。
その様子はどう考えて見ても僕に対する不満を抱いているとしか思えなかった。僕は一体何が悪かったのだろうと疑問に思うが、それでもゼノンの機嫌を悪くした原因が何なのか分からなかったのでとりあえず放置しておいたのである。
僕はゼノンの母親のロザリーナさんと少しばかり話をしていた。その内容は、この国に魔王が現れたらしいという話を聞いたからである。しかも、それは魔王軍の幹部の一人だという話で。僕たちは魔王と勇者が戦う舞台である「魔界」に足を踏み入れる事になるだろう。
僕はそう思いながらも「ゼノンを鍛えるためにも、このまま一緒にいた方が良いだろう」と考えると、これからの方針を決める為に、ロザリーナに話し掛けたのである。そうすると彼女の答えではゼノンを一人前に育てるまで王都に留まるつもりだという話を聞いて安心した。そこで僕たちが「ゼノンを一人前にする為」に修行をしている間、ゼノンの母親のロザリーナが僕の面倒を見てくれるということで、話がまとまると、そのまま部屋に戻ることになったのであった。
それから数日後になると僕たちが「勇者」だと証明するための「魔族討伐」の依頼を冒険者が持ってきた。それを確認した僕とリリスは依頼をこなすことにした。ゼノンはロザリーナさんと二人で訓練をすることになり。僕はリリスと一緒に依頼を受けることにしたのだ。そしてリリスは「ゼノンさんのお母さん、いい人ですし、とても綺麗で可愛いからお友達になってみたいですね」と言ってくれたのだ。僕もそれについては同感で。彼女となら仲良くなれそうだと心の中で思うのであった。僕たちは依頼を受けると、僕が「転移」を発動して僕たちが訪れた場所は「魔の森」と呼ばれている場所で。そこはその名の通り魔族が住まう森のことであり、僕たちはそこに足を踏み入れることになった。
そして森の中に入った直後、目の前から狼型の魔物が現れると。それが「コボルト」という魔族で、人型をしていて知能も高いのが特徴で、そして群れを成していることが多いのが特徴である。その数は多い時は五十体くらい現れるので、注意が必要なのだが。今回は運が良いことに二十体の集団と遭遇したのである。
ただ僕はその光景を見て嫌なことを思い出してしまい、思わずため息をつくと「どうして私を見るとため息つくのですか!?」と怒られてしまったので僕は慌てて言い訳を考える羽目になったのであった。
僕たちは順調にコボルトたちを狩っていった。そしてリリスと別れて単独行動をすることにした僕は、「聖剣」を手にしていたのだが。この「聖剣」は「魔」の力を吸収して、自分の力に変換するという特殊能力を持っている武器なのである。その為「コボルト」から得られる「経験値」の量が尋常じゃない程増えていき、すぐにレベル10に到達する。ちなみに、この世界で確認されている最強の生物である魔王も「経験値」を得られるようなのだが。この「魔」を吸収する力によってレベル1にされてしまうのである。
つまり「魔」の存在にとって「魔」とは弱点となり得るわけだ。そして僕は「魔族討伐」で手に入れた「聖石」と「魔鉱石」を合成させると。その能力で「聖なる十字架」を作り出したのである。
「聖なる十字砲」のスキルを手に入れた僕は早速使ってみる。すると「聖弾」が撃ち出されるのだけども、この弾丸も「聖なる十字架」と同様に「光属性」が付与されている。ただ「聖弾」の場合は一撃で五体を葬り去れる強力な攻撃が出来るので。使い勝手はかなり良いと思うのであった。
そんな感じで僕は順調に狩りを行っていった。そして最後の一体が倒されると。レベルアップのファンファーレが脳内に鳴り響いて、僕がこの世界に来て初めて見る「レベル11」まで上がったのだ。この世界の常識としてはあり得ないほどのスピードでのレベルアップで、普通はレベル3〜5辺りで頭打ちになるのが、僕の場合は最初から飛ばし過ぎだったようだ。それこそ勇者の能力のおかげというわけだ。
それ故に、この世界では僕は異常なまでに強くなり過ぎたと言える。僕はレベルを上げることを当面の目標にして頑張ることにしたのであった。それにレベルが高ければそれだけレベルの低い敵を倒しても得られる「経験値」が多くなるということも分かってきたのである。
僕はレベル上げをするついでに、アイテム収集も行うことにして、リリスと合流すると彼女もアイテムを収集していたらしく、アイテムボックスを見せてもらってみるとそこには、かなりの量のアイテムが入っているように見えた。
そのことから、やはりリリスは優秀な魔術師なんだと僕は実感したのだけども。僕がそんな感想を抱いていると、僕も見て欲しいものがあると言われて彼女が持っているアイテムを見せてもらった。それは小さな袋の中に大量に「回復薬」が詰め込まれていて、それを彼女は見せてきたのである。
それから彼女は僕に対して、この回復魔法の威力について解説してくれたのである。まず、魔法には火、水、土、風、闇、光の六つの基本となる系統が存在し、その中でも上位魔法と呼ばれるものが存在しているらしい。その中で一番威力が高いのが「火炎柱」「雷雨」「暴風壁」「閃光」といったもので、それぞれ単体で使用するよりも複合技として使用したほうが圧倒的に強くなるらしい。
(やっぱりリリスはすごいよな)
僕はそんな風に思っていた。確かに僕には勇者の力を受け継いだ「剣聖の技能」と剣を操ることが得意になるという能力が受け継がれているのだから。当然、剣術を学べば学ぶほどその力は上昇していく。だからこそ勇者の力は恐ろしいものだと思えるのであった。僕たち二人は「魔石」と呼ばれる魔族の体内で精製される「魔」のエネルギーの塊を体内に吸収することで経験値を得ることで、僕とリリスのレベルはあっという間に「30」まで到達してしまったのである。これは「魔族討伐」で得た経験を元にして、二人で効率よく「経験値」を集めた結果であり。
二人だけの連携というのも上手く機能して。お互いに無駄のない効率的な戦闘方法を身に付けることができたからである。僕はこの調子なら魔王に会っても勝てるかもしれないと思うが、そんな簡単に事が運ぶとも思えず、油断だけはしない様にしようと心に誓うのであった。
僕たちは「魔王軍の幹部を討伐せよ」という依頼を受けていたので、そのままの足で魔王城がある場所に向かうことにしたのである。そして魔王城のある場所に辿り着くと僕たちの前に一人の男性が立ち塞がったのである。それはこの城の執事を務めているという「ゴブリンナイト」という種族の男性であった。
彼は魔王軍の中では雑用係を担当しているようで、城内で仕事をするのが役目らしい。だが、この魔王城は魔王軍の本部であると同時に、魔王がいる城に間違いないので。そこの執事をしているということは、それなりの実力を持っていることになるのであった。
僕が彼と対峙した時に思ったのは、「強いな」ということであり。「魔」を吸収する力がなければ瞬殺されてしまうのは間違いないだろう。僕とゼノンは同時に攻撃を仕掛ける。その一撃を受けた瞬間に相手の力がどれほど凄まじいものなのかを体感したのだ。「ゴブリンナイト」と名乗ったその男はそのまま僕とゼノンの攻撃を受け止めると、反撃に転じる。僕たちは二手に分かれるように回避するのだが――僕だけが狙われてしまい。その攻撃を避けることが出来ないで直撃を食らってしまう。
ただ僕の場合は防御面に関してもかなり優れていることもあり。即死級のダメージを受けることはなかったので、僕はまだ戦うことができる。それでも相手の方が有利だという事は理解できており。このままでは僕が敗北するのは時間の問題であった。
僕はどうにかして打開策はないのかと考えるが。それでも何も思いつかずに、再び「聖なる十字砲」の銃弾を放って攻撃をするのだけども、それでもやはり相手に致命傷を与えることが難しかった。するとその時である。ゼノンが僕に駆け寄るとその身体を支えてくれた。そして「私が奴を引き付けるからお前はこの場から一旦引くんだ」と言ってくれたのだ。
「すまない、助かるよ」
「いいから行け」
僕はその言葉を聞いて走り出した。それを見た執事の男がゼノンを始末しようとすると、ゼノンの背中から「魔翼竜の翼」が姿を現したのである。それはまるで天使の羽のような形をした翼であったが、ゼノンはその翼を大きく広げていくと。そのまま宙に浮いたのであった。そして空中で執事の男と一対一になると、戦いを始めるのであった。その様子を見ていたロザリーナは「さすがゼノンちゃんね」と言うとそのまま僕に話しかけてくる。どうやらロザリーナさんはゼノンの母親らしく、ゼノンのことについて教えてくれるのである。
ロザリーナさんによると、あの子の能力は生まれつき「吸血鬼」の特徴を持っていたという。それでロザリーナさんとゼノンさんの父親である「ブラッド様」が「吸血病」を患ってしまい。血を飲まなければ死んでしまう体質になってしまう。それからというもの「魔族狩り」がこの国でも盛んに行われ、そこで両親を殺されたことで、「魔族嫌い」になって、一人で生きていくことを決心したのである。
それからはロザリーナさんに保護されて。彼女の弟子になって魔法の修行をすることになったのである。彼女は元Aランクの冒険者だったらしく。魔法の腕前は非常に高かった。ただ、彼女にとって「魔族狩り」は「悪」だと教えられたので。魔族である自分を受け入れることが出来なかったようだ。
ただ「吸血族」という「魔族」の血を受け継いでいるので、普通の人間に比べると魔力量は桁違いに多くなるし。「吸血病」によって怪我をしてしまえば。他者の血液を飲むだけで回復できるという特徴もある。なのでゼノンの身体能力は高く。「魔」の力を吸収してから更に強化されていたので。「吸血鬼化」を発動すれば「鬼神化」の効果を得ることが出来る。そうすることでゼノンの強さはさらに跳ね上がることになるだろう。
僕はその話を聞いた時。「吸血族かぁ」とついつぶやく。
そしてロザリーナからこの世界で最強の生物について聞いてみた。この世界で最強と呼ばれている種族が存在するらしいが、それが魔族なのだそうだ。つまりこの世界で最も恐れられている存在こそが魔族というわけだ。
それを聞いた僕は納得していたけども。魔族はとにかく強くて厄介な連中ばかりで「勇者殺し」なんていう異名がついているほどである。僕はそのことをロザリーナから聞くと、「勇者」である自分がそんな相手に勝てるはずないと思い知らされたのだった。
(やっぱり勇者だからってそんな都合よく強くなれるものじゃないみたいだな。だけど僕にも出来ることがあるはずだ)
それから僕とリリスはレベルを上げるために魔物を倒しては「回復薬」を服用しながら、次の獲物を求めて進んで行くのであった。そしてある程度進んだ先に洞窟があり、その洞窟の奥に大量のコボルトがいることがわかったので。早速そのコボルト退治を開始することにしたのである。僕は「聖なる十字架砲」を使って攻撃を開始しようとした。しかしリリスが僕の前に出て来たので僕は「どうして出てきたの?」と尋ねると、彼女はこう答えたのである。
「拓海様の手を煩わせるほどのことではありませんわ」
(うーん、リリスは本当に僕に対して優しい子だな。そんな子にここまでさせておいて情けない姿をさらけ出すわけにはいかないよね!よし!リリスのためにも僕がもっと頑張らないと!!そのためには「聖なる十字架砲」はやっぱり使いづらいな。だったら「聖槍砲」を使えばいいんだよ)
僕はすぐにリリスの目の前に立つと、彼女を守れるように立ち回ることにした。それを見てリリスは「拓海様にそこまでさせてしまう私は最低ですわ」と落ち込み始めるので。僕はそんな彼女に向かってこう告げたのだ。
「リリスはいつも僕の事を想ってくれてありがとう。僕はこんな性格だから自分の事しか考えられない事が多いんだけど。君だけはいつでも傍にいてくれて支えてくれたよね。僕にとっては君は誰よりもかけがえのない人だよ。そんな人がピンチになっているんだから、僕は君の盾となっても構わない。それに君には僕が必要なんじゃないかなって思うよ」
僕は自分で言っておきながら何言っているのか意味がわかんなくなってくるが。そのおかげで、何とか冷静さを取り戻せたのである。僕はそのままリリスを庇いながら「コボルトロード」と戦闘を行い続けた。すると、途中で僕たち二人のもとにゼノンがやってきたのである。
「加勢に来たぞ」
ゼノンが言うには、もうすぐ魔王のところに到着するらしく、この先にいる魔王の幹部の一人を倒すと魔王と戦う事が出来るらしい。だから僕たち三人でその幹部を相手にすることが決まったのであった。それから僕たち三人組は幹部と戦うことになった。僕たちの目的は魔王城にいる魔王の配下である六人の幹部たちを殺すことである。その幹部たちの実力は魔王に次ぐ強さを誇っているため、ここで全滅させることが出来れば。僕たちの目的を達成することが出来るとゼノンに言われたのだ。その幹部たちが使う能力はそれぞれ「魔導師」「魔術師」「僧侶」「戦士」「魔獣」「魔鳥」「竜種」であり、「魔導師」はその名の通り「魔」を「操る」魔法が得意であり。「魔術」に関しては「魔」を具現化する能力を持っているのだ。「魔王」に匹敵する「魔族」の能力と言えばわかりやすいかもしれない。
僕は「魔剣」を取り出すと「魔剣開放」を発動して、武器の性能を最大まで上昇させると「魔剣解放」をゼノンに発動するように指示を出した。これは二人で協力して使える「合体技」のようなものだ。これは元々魔王が編み出した必殺技の一つらしく、魔王はこれを「魔剣技」と呼んでいる。ゼノンがそれを発動することで、魔王と同等の攻撃力を得られるのだ。
だがこれは魔王から教わったわけではない。ゼノンが独自に考えた「新魔王軍」独自の戦術で、これが成功したのは今回が初めてであった。ゼノンは「魔剣」を振りかざすと「魔剣」はまるで生き物のように動き始め、「コボルトキング」の肉体に刃を入れる。それだけではなく、ゼノンの攻撃で生じた衝撃波のような攻撃に飛ばされてしまうのだ。それでもどうにか持ちこたえた「コボルトキング」であるが。今度はロザリーナさんが攻撃を開始した。それは炎を纏った矢を放つことで相手の防御力を低下させる効果がある攻撃で、その攻撃により相手の体力を奪うことが出来るのである。
僕はその間隙をついて「聖弓術」のスキルを使用して「光の矢」を連射するのだけど。「ゴブリンナイト」はその攻撃を防ぐので精一杯のようである。しかもその攻撃を防いでいるうちにどんどん体力を奪われていくようで。相手の動きが遅くなり始めたところでゼノンにとどめを任せるのであった。ゼノンも同じように攻撃を開始し「コボルトナイト」にダメージを与えていくのだけど。その時に僕が使ったのが、「聖なる十字砲」を「十字砲」にして放ったのだ。この「十字砲」は威力を落とさずに範囲だけを拡大することができるのである。これにより敵全体を攻撃することが可能になり、これによって多くの敵を殲滅することが可能となるのだ。
その攻撃を受けてしまった「ゴブリンナイト」はそのまま倒れ込む。そして僕が「聖なる十字砲」を使った瞬間から、僕自身もかなりのダメージを受けてしまっていた。それこそ一撃で倒せないくらいのダメージを受けてしまい。僕はその場で膝をつく。それを見たリリスが慌てて駆け寄ってきてくれるのだが、その時にはすでに回復薬を口に含む余裕はなかったのである。
「拓海様、これを」
リリスは持っていたポーションを取り出して僕に渡してくれた。ただ、リリスは僕と違ってかなりダメージを受けていないように見えるのはなぜだろうか?そう思った僕は彼女に質問をしてみることにする。
「リリスはそんなに傷を負っていないみたいだね」
「はい、私は拓海様の回復役なので」「そっか、ありがとね」
僕たちはそれから残りの二匹の「コボルト」と「ゴブリン」の討伐を始めたのである。ただ、このダンジョンでは敵の数が多かったせいなのか、それともレベルが上がったからなせる業なのかどうかはわからないが、今までで一番簡単に倒すことができた気がした。それから奥に進むと、そこに待ち構えていたのは「リッチ」と呼ばれる魔物と「ジェネラル」と呼ばれた魔物の二体である。どちらも強力な力を持つ魔族らしく。普通に戦っても勝つことは不可能だとゼノンに言われる。そして「リッチ」は物理による攻撃にめっぽう強いのだとか。
一方「ジェネラル」の方は魔導師の力を使うことができるらしいので。その攻撃方法は魔弾を飛ばしてきたり、火球を飛ばしてきたりと非常に面倒らしい。ただその反面。近接戦闘はそれほど得意ではないので「剣士」なら勝てる可能性があるそうだ。
僕としてはその説明を聞いただけで嫌になってしまうが、ゼノンとロザリーナさんに任せることにしようと思った。僕は「聖なる十字架砲」を使って二人のサポートに徹しようと心に決めたのだ。
「よし!じゃあ俺たちは行くからな。死ぬんじゃないぞ」
「はい!」
僕はゼノンの言葉に対して元気よく返事をする。
(よし!気合を入れなおすためにもまずは一声上げておこう)
「よっしゃー!!!いくぜ!!」
僕は大きな声で叫びだす。するとリリスが驚いた顔をしてこちらを見て来る。
「どうされたんですか拓海様!?」
「いや、別に特に理由があるわけじゃないんだけど、とりあえず叫んでみたんだよ」
僕は少し照れ臭く感じつつも答えると、「拓海様には本当に驚かされてばかりですね」と言って笑顔を浮かべてくれたのである。
僕はその後、リリスと二人で先へ進むことにしたのであった。そして目の前には「ジェネラル」の姿があり、ロザリーナさんが一人で相手することになったので。リリスと僕はロザリーナさんの邪魔にならないように立ち回ることにした。
ロザリーナさんは「聖なる十字架砲」で「ジェネラル」を牽制しながら攻撃を加えているけど。やはり相手が魔族なだけに、決定打を与えることができないようだった。僕とリリスも攻撃に参加はしていたけども、あまり効果的な攻撃を与えることができていない状態が続いていた。僕はふとあることに思い至ってリリスに向かって「聖なる矢」を使って攻撃してみて欲しいと頼んでみた。リリスは僕のお願いを聞き入れてくれてすぐに攻撃を開始してくれる。
「聖なる十字架砲」が発動している最中の「聖なる矢」は聖なる属性を帯びているため、普通の「聖属付与」の付いた矢よりも威力が高くなるという特徴があるので、この「聖弓技」「聖矢術」を上手く活用できれば「魔族」に対して有効的な攻撃ができるかもしれないと踏んだのだ。それにしてもリリスの放つ矢は本当に速いな。目にも止まらぬ速さで「ジェネラル」の急所に命中しており。それだけでも相当なダメージを与えることができていることだろう。
ただ問題なのは僕の放った矢が相手に命中していないことにあるのだ。僕の「聖なる矢」は他の人に比べると格段にスピードも精度も落ちるようなのだ。そのことについて僕は気にしていなかったんだけど。リリス曰く、「拓海様にこの矢を放ってもらって私が補助する方が絶対に効率が良いですわ」と言っていたのである。確かに彼女の言うとおりかもしれなかったのだ。だから僕は素直に従うことにしたのである。
それから数分後には、ついにロザリーナさんの攻撃で「ジェネラル」を倒すことが出来たのだった。彼女は「やったわ!」と言いながら喜んでいたが。僕はリリスが嬉しそうな顔を見せてくれていたことの方がずっと喜んでいたのだ。その後は僕が倒した「コボルト」を倒して先に進んでいった。すると再び広い場所に出たのである。そこはさっきまでいた部屋よりさらに広く、壁には巨大な穴が空いていた。そこの穴からは太陽の光が差し込んでいるため、その広間の中央まで歩いてきた時に天井を見上げてみると、太陽と同じような恒星の輝きが見えることに気づいたのだ。そして、その穴の近くには大きな魔法陣が存在していて、その上に一人の女の子が横たわり眠っている姿を見つけたのである。
その姿を見て僕とリリスはすぐに「あの子を助けないと」と思って行動に移ったのであった。
「あれ?なんでここに人間が来ちゃっているの?」
魔法陣の上に立つ金髪で金色の翼を持つ天使の少女が話しかけて来た。だが僕には彼女が何を言っているのか分からなかったので、リリスに通訳を頼むと「え?この子はなんて言ったんですか?全くわかりませんでした」と困惑するだけだった。
そんなことを僕たちが話している間も「少女」はその魔法陣の上で何かをしていたのだが。魔法陣の中心で目を閉じて祈りを捧げるかのような格好になっていたのだ。僕はそれがどうしても不思議に思って「あなたは何をしているのですか?」と聞いてみるが、やはり分からないと首を傾げられるだけなのである。そこで、僕はもう一度リリスに翻訳をしてもらうと、彼女は「私に祈ってくれているのです」とだけ答えてくれたので、何のことだかさっぱり分からなかったが。とにかくその「彼女」のことをどうにかしないと。
僕たちはそう判断したので、その少女を抱き上げる。見た目の年齢は十二歳くらいだろうか。とても可愛らしく、どこかの王女さまと言われても納得してしまいそうになるほどの可憐さを持ち合わせていた。ただ、どうしてこんな場所にいるんだろうか。そして「彼女」の身体はとても軽くて、まるで羽毛布団を抱きしめるような感覚を覚えるほどだ。
「ちょっ、ちょっと君、その子をどこに連れて行くの?その子を返しなさい」とその少女は慌てた様子で言う。僕とリリスはその言葉を理解できなかったのだが、ロザリーナさんが通訳をしてくれたおかげで事情を知ることが出来ていたのだ。ロザリーナさんの話によれば。この女の子は「天使界」と言う場所で暮らしていて、「堕天使」と戦っていたそうだ。
しかし突然謎の力によって仲間を失い。さらにはその天使たちが次々と倒されていくことで、自分が守らなければと思っていた存在を奪われてしまったということ。それだけでなく他の仲間たちも死んでしまったようで、その悲しみに耐えきれなくなったこの子は意識を失ったまま天界の門から飛び出してきてしまい、この場所に迷い込んだという話なのだ。
「じゃあ、もしかしたら、あなたの仲間の方もこの近くに居るんじゃないのかな?私たちに教えてくれませんか?あなたはどうしたら戻れるんですか?」
僕はその少女に向かって優しく語りかけると、彼女はしばらく黙った後、僕たちに背を向けると魔法陣の上に座るのだった。そして――。
「私はもう帰れないの」と呟くとそのまま動かなくなってしまう。その姿を見た僕は彼女をなんとか説得しようと試みるが。やはり言葉は伝わらず困り果てていた。するとロザリーナさんが「その子の名前はセラよ」と言ったのである。それを聞いて僕はその名前は覚えておかなければならないと思い。心の中で何度も復唱してから頭に記憶しておく。
僕はそれからリリスに頼み込んで通訳をしてもらい、何とか意思疎通を図ろうとするがうまくいかず、ついには泣き出してしまう。その様子を見ていたロザリーナさんは頭を撫でながら僕を慰めてくれる。リリスも「私もお手伝いしますから頑張りましょうね」と言ってくれていたのだけど、それでも一向に事態が改善しないのである。それから数十分ほど経過した頃。セラという名前の女の子が再び立ち上がると。なぜか先程よりも元気になった表情を見せてくれて、「ありがとう」とお礼を言うのであった。僕は一体どうしたらいいんだろうと悩んでいたんだけど、ロザリーナさんから「きっとこの子の仲間は近くまで来ているから、この子を返してあげればいいと思うわ」と助言される。僕はそのアドバイスに希望を見いだすことができ、その方法を模索し始めるのであった。
(まずはこの子と話をしよう)それから僕は「僕たちはこの辺りに倒れている人達を助けたいと思っているんだ」と正直に話すことにする。ただ僕たちには「セラ」の言葉の意味を理解することはできないので、リリスに翻訳をお願いすることにした。そしてリリスに聞いたところ、それは可能だという回答が得られたのである。
「うん。わかった」
そして僕はセラの背中に向かって手をかざす。すると彼女の身体から小さな光の玉が現れる。それは次第に大きくなり人の形へと変化するとそこには白いローブを纏う女性の姿が見えたのである。
「セラ様!!ご無事ですか!?」
「うん。大丈夫だよ。それより皆が危ないんだ。助けに行って欲しいの」
「承知しました!!我らが主よ!!」
その女性は僕に対して頭を下げると、一瞬にしてその場から離れてしまう。おそらくセラと一緒に居た仲間の一人だろうと思われるのである。僕は彼女に話しかけようと手を伸ばしてみるが、その手が触れる前に光となって消えていってしまった。僕はそれを見届けると、「さっきの子をどうするの?」という視線をセラの方に向けてくる。
「えっと、あの子のこと?」
僕は「あの子がどうしたいのかを確認できないか?」という意味を込めて尋ねると。
「うん。私はここから動けないから」
(そうか、彼女は「ここ」にいるから移動することはできないんだ)そこで僕は彼女の足下を指差して「この床の上にある魔法陣はどういう効果があるの?」と尋ねてみたのだ。すると――。
(これは「転移」の魔法陣で、私の力で「堕天使」が侵入してくる場所に移動することができるようになっているの。私の力を使えばここから別の場所に移動することは可能なはずなんだけど。でも、私がこの力を使っちゃったせいで。私自身はそこから移動することが出来なくなってしまったの。本当は私だって早く帰りたいのに、この「封印石」のせいで、力が上手く使えなくなちゃって。でもあの子達は、私がここにいればいずれ「堕天使」が攻め込んできて危険にさらされるから、一刻も早く安全な場所に逃がさないと大変なことになちゃって。それであの子はその事を伝えに来てくれたんだと思うの。本当に私は駄目なお姉ちゃんだよね。妹たちを無事に送り出すこともできなくて。本当に不甲斐なさ過ぎて、自分自身に嫌気が差しちゃうわ。それに「魔王」の力に抗うことなんて出来やしないし、どうしたらいいのかわからないわ。せめて誰か一人だけでもいいから、この結界の外に出られたらどうにかできるかもしれないのに。私が「堕天使」と「魔王」を一緒にしてしまったばっかりに、こんなことになってしまったわ。全部私の責任なの。許してくださいとは言いません。ただ私が間違っていたことだけは知ってください。だから私を責めてもかまいませんし。殺しても構いません。でもどうか他の人には罪はないということで見逃してもらえないかしら?)
僕が「セラ」が言っていた意味を伝えると。彼女の話を聞いてロザリーナさんの瞳に光が戻り始めていたのだけれど。彼女はすぐに僕たちから離れていき魔法陣の上で目を閉じた。僕はその姿を見ながらリリスに声をかけることにしたのである。
すると「拓海さま?さっきのお方はなんと言われたんですか?」と言われてしまい。通訳してもらうと、「さっきの人はセラって言うんだよ」と言うと彼女は驚いていたのだ。なぜそんなことをしているかというと、彼女は僕たちの話が通じていないふりをしなければと思ったらしい。つまり僕が「天使界」とかいうことを信じてくれたと分かった時点で嘘をつくのを止めていたのであった。ただ僕たちが「彼女」のことを気遣っていると知った瞬間。さらに僕たちに心配させないように、さらに自分の本音を悟らせないようにしているのだと分かってしまう。そしてリリスも同じことを思っていたのか、僕の言葉をそのまま通訳してくれた。それを聞いたロザリーナさんが僕たちの前に立ちはだかる。
「拓海にリリスさん。ちょっと良いかしら」ロザリーナさんはそう言ってから二人を連れて壁の向こうに行く。どうやらそこで話をするつもりのようだった。僕たちは言われるままに従うと、彼女はまず最初に「セラのことについて教えて欲しいの」と頼んできたのである。僕はその言葉を聞くと。セラについて詳しく知っていることを伝えたのだった。それからロザリーナさんに話を続けるように伝える。彼女は「じゃあ質問をさせて貰いますね」とだけ言ってから話を始めるのであった。
セラは元々は普通の人間であり、ただの妹思いの女の子だった。ある日突然現れた魔族に襲われて、妹を人質に取られたために彼女を守ることが出来なくなってしまい。その責任を取って「天使界」に居られなくなり。この人間界に降りてきてしまったのだという。だが、その際にセラを拾ってくれたのが「勇者」と呼ばれる存在だったそうだ。
そして彼は、セラを「天使界」に戻すことを条件にして「悪魔」と手を組むことにしたのだそうだ。そして彼らは「魔王」を名乗る存在と契約を結び。天使族の命を奪い、「魔界」を手に入れようとした。そのために「堕天使」を送り込み。さらには自分たちの存在をアピールするために「堕天使」の大軍を使って街を破壊していたのだそうだ。そのせいで大勢の人々が傷ついて苦しんでいた。セラも例外ではなく、その時の記憶がフラッシュバックするかのように頭の中に蘇るので吐きそうになるのだけど。ロザリーナが背中をさすってくれたので少しだけ落ち着きを取り戻すことができた。しかしそれでも思い出してしまうのは止められなかったのだが。
「もう、大丈夫よ。落ち着いてね。今は私がついているから、だから我慢しなくても良いのよ」
「ありがとう」
「あなたも辛いでしょうけど。私達も辛かったんだから」
「えっ?」僕は「今なんて言ったの?」という顔を向けると。彼女は笑顔を見せてから僕を見つめて――「ありがとう。私達のために泣いてくれて」と感謝の言葉を述べてきたのである。その言葉を言われた途端に僕の瞳から涙が流れ出してきて、それを拭うことが出来なかった。
僕は自分が「この世界」に召喚されてから。いらない子なんだと決めつけて、自分は何もかもあきらめていたつもりだった。なのに、僕はこうして涙を流していた。どうしてなのか分からなかったのだ。今までは自分が泣いたら、きっと誰かが慰めてくれると信じていた。それこそ母さんとか、いつも僕の面倒を見てくれていた執事のロランとか、僕を可愛がってくれていた兄さんが必ず慰めてくれると信じて止まらなかった。だけどその人たちからは見放されてしまっていて。僕にとっての「救いの手」というのは二度と届かないと思っていたんだ。だけど違うみたいだね。ロザリーナは僕を助けようとしてくれている。リリスもロザリーナと同じ気持ちを持っていることが伝わってくる。僕はロザリーナに感謝したい気分で一杯になり。その気持ちを伝えようとロザリーナに近づく。だけど彼女の表情を見て、思わず固まってしまう。なぜなら彼女の目元にも涙が浮かんでいるのが見えてしまったからだ。僕は慌てて彼女を安心させようと声をかけると。ロザリーナの身体をそっと抱きしめた。
すると彼女は僕を抱き締め返してきて、それからお互いに落ち着くまで泣き続けたのである。僕はそれから「セラ」に話を聞かせてあげたいと思うんだけど。彼女はまだ結界の中から出てこれないので。まずは彼女の妹を探さないといけないと思い。リリスにお願いして居場所を探知してもらおうとした。
「リリスお願いできるかな?」と僕が尋ねると、リリスはすぐに動いてくれる。
「お任せ下さい!!すぐ見つけてまいりますから!!」と言ってから、彼女はその場を離れていった。そしてものの10分ほどでセラの元に辿り着き。事情を説明してから僕の元へと戻って来たのである。そのセラの妹の名前はリリアと言い。やはり僕たちが助けに来た場所にいたようで。しかも怪我をした人たちの治療を手伝っていると聞かされた。
そこで僕は彼女たちが治療をする様子を確認しながら、ロザリーナが「天使の羽」と「天使の力」が欲しいと言ったので、彼女に手渡してから僕は二人の傍から離れる。
僕はそこでふと考えたことがあったので、「もしかして、この世界に転移してくるときに一緒に転移してきた人たちはどこにいるの?」とロザリーナに尋ねると。彼女はこの村の近くに転移して来ていたそうなのだ。それで彼女も一緒に転移して来た人たちを探すために外に出ようと考えていたという訳だ。なので彼女はすぐにでも動けるようにと準備を始めていたのだ。そして僕もその意見には同意したので二人で行動することにした。
セラと妹をリリスに任せて、僕とロザリーナは村の外に向かう。僕とロザリーナは手を繋いで歩き出した。しばらくするとリリスの声が聞こえる。
『主様ー』
「どうしたの?」
僕は立ち止まると。目の前にいる少女に声を掛けた。ちなみにロザリーナはなぜか顔を真っ赤にさせているのである。そんな彼女が口を開いたのだ。「拓海は優しいのね。私のわがままにもちゃんと付き合ってくれるのだから」と彼女は微笑みを見せてくれたのである。
「別に無理をしているわけじゃないんだ。僕も誰かを助けることができれば嬉しいからね」と言うと。「じゃあさ、私のことを守ってくれないかしら」と真剣な眼差しで言われてしまったので。僕はその視線から逃れることができなかった。するとさらに彼女が迫って来て。僕が困ったなと思って、とりあえず離れようとすると腕を強く握られてしまう。どうしようかと考えているうちに僕とロザリーナの距離が徐々に近づいていき、互いの息遣いを感じ取れるくらいの距離にまで近寄った。
「拓海、私を抱いてくれない」と耳元で囁かれた言葉に反応する。まさか「勇者の加護」を得た時に得た「聖騎士」の称号の能力だろうか。
僕はそう考えながらもロザリーナの言葉がどういう意味なのかを必死に考える。だってこんな展開になったことはなかったし。僕はどうすればいいのか分からないでいると、いきなり彼女は僕を押し倒したのである。僕が驚いて、そのまま押し倒されてしまい、どうしたものかと考える。するとロザリーナの顔がだんだんと迫ってきていて。僕たちの唇がくっつきそうになったので。
僕は咄嵯に両手を前に出してガードしようとしてしまう。その行動に対して、一瞬にして僕の両手がロザリーナの手に掴まれてしまい。完全に身動きが取れなくなる。このままでは本当にキスをされてしまうと危機感を覚えて。僕はどうにか逃げ出せないものなのかと頭をフル回転させて考えている。そこで思い出したのは「天使の指輪」だった。
(そうだ!!「スキル」を使って)と、僕は頭の中で思い浮かぶ文字を思い描きつつ、発動させるキーワードを考える。そうすると脳裏に浮かぶ言葉は。「チェンジ:メイド服」という言葉であった。すると僕の服装は瞬く間に変わってしまい。メイド姿へと変身したのである。そして「これで大丈夫」と、安堵のため息を漏らすのだが。そこで僕が見たのは――僕の上に馬乗りになって。今まさに、僕の口を塞ごうとしていた美少女の光景である。その瞬間僕は頭が真っ白になってしまい何も考えられなくなった。そして彼女の口から発せられたのは、「何それ!?どうなっているの」であった。
その言葉を耳にした僕は自分の姿がどうなってるかを確認したのだけれど。いつの間にか元の少年の姿に戻っていたのだ。それを見て僕は慌てて起き上がり「セラ」を呼び出すことにする。そのあとで僕は自分の状態を説明すると「セラ」は僕が男に戻ったことに驚きを見せていた。僕はそのことで少しだけホッとした気持ちになりながら、「セラ」に説明を続けたのである。
「じゃあ私に触られたから女になっていたってこと?」
「多分ね」
「そうなのね。じゃあ私がその「天使の祝福」とやらを使えるようにしてあげないとダメね」
「出来るの?」
「うん。天使界に帰れるようには出来ないかもしれないけど。あなたたちをこの人間界に留まらせることは可能だから」
僕はセラの言葉を聞いてほっとすると同時に。「じゃあ、今のうちに聞いておきたいことがあるんだけど良いかい?」と言うと。セラは僕の質問を聞く前に答えるような素振りを見せる。どうやら答えられる質問であれば問題ないらしい。そこで「この世界に「天使界」からの転移者が現れたみたいなんだけど。もしかしてそれは僕がこの世界に来てしまった理由に繋がることだったりするのかな?」
セラは少しだけ間を置く。だけどすぐに口を開くと話し始めてくれるのであった。「その可能性は高いかも。それに、私達はあなたがこの世界に来てくれたから救われているんだから」
その発言に僕たちは首を傾げることになる。セラによると「勇者」という存在はとても希少価値の高いもので。その存在が現れるだけでもこの「魔王軍」と呼ばれる勢力にはかなりの圧力を与えることができるのだという。そしてセラ達にとっても、この魔王軍は厄介なもので、何度も襲撃を受けているようだ。そのせいで「勇者召喚の儀」はなかなか成功せず、今回もかなりの犠牲者が出たという。そんな中で僕は召喚された。その結果、僕を救おうとしてリリスとロザリーナ、それから「堕天使い」たちまで僕の元にやって来て。さらにはセラたちも助けてくれた。つまり、その「勇者」の存在が無ければ、今回の騒動を収めることは不可能に近いのだ。だからこそ僕の存在は彼女たちにとっては重要なものであった。
セラはそのことを丁寧に教えてくれると。最後にこう言ってくれた。「これからあなたは「聖騎士」の力を扱えるようにならなくてはいけないわ。それがきっと私たちの助けになると思うの。それとあなたの「力」は「魔剣」の力と「魔法剣」の力を兼ね備えているわ。だから気を付けて欲しいことがあるの。その力は使い方次第でとんでもないことになり得るということよ。それだけ注意してね」と言うと僕の手を握る。その温もりは不思議と僕の身体に馴染んでいく感じがしたのであった。
僕は「セラ」の説明を聞いた後で。まずはロザリーナの妹を助けに行かないとと思い、移動を開始する。ロザリーナもついてきてくれて一緒に行動することになっている。そしてリリスもセラに協力してもらって「結界術」を発動してもらい、この村に残っていた人々を安全圏に誘導する役目を任せることにした。
僕たちが「ロザリーナの妹」を捜索するために村の中を歩いていると突然セラの声が届く。
『見つけた!!「聖騎士団」の一人に抱えられている!!』
僕はすぐにその場所に急行すると。ロザリーナはセラが言う通りにロザリーナの「妹」を抱きしめて泣いている姿を目撃することになった。
僕はその姿を見た途端、セラがなぜこの子の居場所を見つけられたのか疑問を感じた。でも今はそんなことを考えている暇はなく、とにかく「ロザリーナの妹」を救出するのを優先しないといけないので、ロザリーナにお願いをして彼女から離れて貰うことにした。
そして僕は彼女に声を掛ける。すると彼女は泣きながらも僕のことを見つめて「どうしてここに来たんですか?」と言ってくる。それに対して僕は「助けにきたんだよ」と言って彼女の頭に手を置いた。するとロザリーナの妹は驚いた表情を見せてくれた。そして僕の顔をマジマジと見てくる。
そこでようやく彼女の名前がわかった。「リーシャさん。初めまして。僕は拓海と言います」と言うと。ロザリーナの「妹」が僕の手をギュッと握り締めてから。「私は、私の名前は「ロザリナ アリエル」です。ロザリーナとは姉妹なんですよ。妹なんです。よろしくおねがいします」と笑顔で挨拶してくれたのだ。
(よかった無事で)と安心していると、リーシャと名乗る少女が、なぜかロザリーナの傍を離れようとしなくて困ってしまうのである。でもすぐに「リリス」「セラ」が合流してくれて、どうにかその場は落ち着くことができたのである。その後ろにはセラに肩を借りたセラの母親と。「村長」のおじさんと「冒険者ギルド」の責任者の「ライアス」と「ミルキー」が立っていた。僕は彼らに事情を説明し、村の人たちの安全を確保するためにも協力してくれるかを確認すると。二人は快く承諾をしてくれて、早速「冒険者ギルド」の人たちと協力して村の人たちを家に戻す作業を行ってくれていた。その姿を見て僕は心の中で謝った。だって僕の目的はあくまでもこの「聖都」に向かうことだからね。
そして僕は二人に感謝を伝えつつ、改めて自己紹介を行う。「ロザリーナ アリエル」と名乗った女の子は「私と妹の二人で旅をしている途中で、私達の乗っていた馬車が故障して、それで困っているところにあの男がやってきて私と妹に乱暴しようとしていたので必死に抵抗をしていたら殺されそうになったのです」と言う。僕はそれを聞きながら怒りを覚える。僕が「聖騎士」の称号を得られればすぐにでもその男を殺したい気分だった。
そしてリーシャという名前を名乗った少女は話を続けたのだが。その時、突如として「堕天使い」達がやってきたという。そしてそいつらは襲い掛かってきた。それに対抗してロザリーナが戦おうとしたのだが。相手が多すぎたため、どうすることもできなかったのだ。そうして絶望を感じ始めた時に一人の男が現れ、そして僕たちに襲い掛かる連中を一掃したのだと教えてくれた。そのあとにロザリーナが僕に対して。感謝の言葉を口にしていたのであった。
ただ、僕は目の前にいるロザリーナの話を疑いの目で見ていると、ロザリーナは僕に対して自分の持っている武器を見せてきてくれたのである。それはなんとも不思議な形をした刀で、「聖」という文字が書かれているようであり、それはとても綺麗に輝いていたのである。その輝きを見て僕の心の中に衝撃のようなものが走る。まるでその「文字」が僕に語り掛けてきたような気がしたのである。僕はその言葉を信じ、その剣に鑑定を掛けるとそこには驚くべき結果が映し出された。それは――
名前:聖魔導の剣(魔装):攻撃力500
効果:全属性魔法を使用可能になり全ての魔法の効果が倍増する
能力:使用者の素質に応じて全能力向上
固有技能:魔剣化可能
(何だこれは?)僕はそう思うしかなかった。まさか僕のスキルがここまでチート仕様になるとは思っていなかったからである。僕は慌ててスキルを確認しなおすと、やはりそこに書かれていた文字が変化していて。
(あれ?スキルが変わっているぞ。なんだろこの能力は)
そう思いながら確認したのだけれど。僕はスキルの詳細を表示させてみた。その詳細をみて唖然としてしまう。なぜなら「聖魔導の加護」が「魔剣士」に変化していて、さらに「神技の使い手」に進化し、新たに「聖天使の指輪」が追加されていたのである。そのことに驚いてしまった僕は思わずセラに視線を向ける。セラも驚いた顔つきで僕を見ている。だけどセラはすぐに冷静になって僕に話し掛けた。
『拓海、もしかして私の力が使えるようになっているんじゃない?』
その問いかけに僕は「うん。なんか勝手に出来ちゃってたよ」と答えると。セラはとても喜んでいた。だけど、セラからすると僕と会話が出来るだけでもかなりありがたいようで、すごく嬉しかったみたいだった。ちなみに僕の持つ魔石の能力についても聞いてみると「セラの力」の一部らしい。ただセラはそのことについては僕よりも詳しいらしくて。どうやら僕の魔剣化した「聖剣」についていろいろ説明をしてくれることになるのだった。
セラの説明によると僕の魔剣化できる武器は。全部で3種類存在するらしいのだ。一つは僕の「天使の祝福を受けた魔剣」、もう一つは「悪魔が祝福を与えた魔剣」、そして最後の一本は「魔王軍が作り出した呪われた聖魔導の剣」なのだという。この三本目に関しては「天使界」、「魔王軍」、「堕天使族」、「天使教会」それぞれが作ったと言われているのだと言うのだ。
その話を聞いただけで嫌な予感がしてきてしまう。もしかするとその呪われている剣もどこかにあるのではないかと想像してしまったからだ。だから念のために僕は「聖騎士団」に所属する聖女たちに尋ねると、全員がその呪いの聖剣を所有していることが分かったのだ。つまり、今現在確認されている「呪いの効果のある魔具」は「魔王軍」「天使教団」が所有しているという事だった。そのことを知った僕は内心焦っていた。
なぜなら僕はセラに言われて初めて「聖女セラの力」の能力を扱えるようになっていることに気づいたからだった。でもセラからはこんなことも伝えられたのである。
「大丈夫よ。私と拓海ならこの力を上手く扱えると思うわ。それに、私達はもうお互いのことを受け入れ合っているからこそこの力を行使できると思うから安心してほしいわ」と。
それから僕はロザリーナの妹から「聖都」に行く理由を聞かれるので、それを簡単に説明すると「私が聖都に行けるように案内するよ」と言ってくれる。だから僕は彼女の好意に甘えて「ロザリーナの妹」と一緒に行くことにしたのであった。それからセラにはこの場を頼んで、リリスと二人でロザリーナの妹の馬車に乗って移動することにしたんだ。僕とリリスの乗った馬車でロザリーナの妹である「アリエラ」の案で移動を始めると、すぐに大きな建物を見つけることができたのである。その建物は僕達にとって非常に重要な場所だった。
僕とリリスは急いでその建物に向かい、中に足を踏み入れるとすぐに人の姿が見えたので声をかけた。するとそこには一人の美しい女性の姿が見えたのである。僕はこの女性がこの村の領主だと思い「突然お邪魔してしまい申し訳ございません。僕はタクミと申します。こちらは従者の「リーゼ」と言います」と名乗りを上げた。すると相手からの反応がある前に、なぜか僕の隣にいたリリスは僕の後ろに隠れてしまったので、僕は彼女の背中を押し出すような形で前に押し出したのである。
すると彼女は僕の隣でモジモジとしているだけだったので、僕は仕方なく自分で挨拶を行うことにした。「突然お訪ねいたしまして、すみませんでした。実はこの村に立ち寄ったところ。この方が助けを求めていたんです。そこで助けられる方法があるということで連れてまいりました」と言って彼女に話を聞くことにした。
そこで彼女から話を聞く限り。どうやら「堕天族」によって「奴隷の首輪」を着けられてしまっているのだというのだ。その首輪は一度つけると死ぬまで外れなくなるもので、その解除方法を僕たちに伝えるためにロザリーナの妹は僕たちをこの場所に連れてきたというのだ。それを聞いた僕はすぐに「奴隷商館」に向かうことを決め、彼女の名前を確認する。名前はロザリーナ アリエルだった。僕はその名前を頭に焼き付けておく。なぜなら僕にとっては特別な名前の女の子だったからである。
僕はロザリーナ アリエルと名乗る少女を連れて、そのまま領主の館を出て、「冒険者ギルド」の人に連絡を取り。セラのお母さんがいる宿に向かってもらった。セラの話では、その人は僕とリリスを助けてくれた人で、今はこの国の宰相をしている「セフィラス」という名前のおじさんだという。その話を聞いて僕は心の中でガッツポーズをしていた。というのもそのおじさんこそがセラの父親である可能性が高いと推測していたからだ。セラはおじさんのことをとても尊敬していて自慢話を良くしてくれるので。きっと良い人であるに違いないと思ったのである。そして連絡が取れた後にセラの母親が居るという場所にたどり着くのであった。
その場所は冒険者ギルドが経営している宿屋で、どうやらこの国では宿屋は冒険者ギルドが運営しているらしい。僕はセラからそんな話を聞いていたので、その情報を頭の中に入れておいたのだが。それがここで役に立つとは思わなかった。僕はロザリーナを連れてきたことを報告するために、宿屋の中に入ると。そこには僕たちの目的であるセラとその母親「ミーシャさん」がいて。僕の話を聞いてすぐに対応してくれた。僕はこの人を一目見たときに「ああ。この人になら娘を任せることができる」という謎の自信を抱くようになっていた。それは直感的なものだったのだが、僕がロザリーナを見る目が優しいものであると感じたからである。だからこそ僕はロザリーナを託したのであった。僕はロザリーナをよろしくお願いしますと何度も頭を下げてから部屋を出ると、隣にいるリリスと視線を合わせてから一緒に外に出ると「リーゼル」という名前が聞こえてきた。
僕はロザリーナに何か起きたのかと思って振り返ろうとした時に、僕の服の裾を引っ張ってきたので、後ろを振り返るとそこに居たのはロザリーナではなく。「聖騎士」の称号を得た僕の婚約者候補の「リーゼロッテ=ライラローズ」がいて、僕は「え?どうしてここにいるの?」と尋ねてしまう。
『あ、あの。あなたとお話がしたかったのです。それで探してたんですけど、その前に彼女が話しかけてきまして。私は聖騎士の称号を持っているので、困っている人を放っておけなかったのです』
その話を聞かして僕はなんとなく察してしまう。要するに彼女は自分と同じ境遇に立たされている人がいることが許せなかったということだろうと思い。僕と話をしたいというより、「勇者の嫁になりたいだけ」ではないのだろうかとも思って苦笑いするしかない。
だけど「聖女の力を受け継いだ人間」というのは珍しいみたいだから、もしかしたら僕に興味を持っている可能性もあるかもしれないと思えた。それにもしかしたら僕がこの世界で「勇者」をやる可能性だってあるわけだから仲良くなっていて損はない。だけど彼女の目的はわからないけれどね。だけどとりあえず話だけは聞いてみることにした。すると彼女もまた僕の力になれれば嬉しいというような感じの態度で会話が始まったのである。
「まずは名前をお互いに教え合わないかな?僕は「佐藤拓海」。この子は僕が契約して召喚した精霊で名前はリリス。それと君はリゼルだよね」
そう自己紹介をしてから彼女に名前を教える。そして彼女の名前を確認する。どうやら本当に「聖女の加護」を受けし人間のようだ。
『私のことは「聖騎士」としてではなく。「聖天使の加護を持つリーゼロッテ」と呼んで欲しいです。あと「様」とか敬称は必要ありませんので普通に接してください。これからもお友達感覚で接して欲しいんです。そ、それから私の事を抱きしめても良いんですよ?』
僕はその言葉を言われた瞬間に頭が混乱してしまった。何せいきなり抱き着けと言われたのだから無理もない。そして「リーゼ」が僕に対して抱擁を求めて来ていたのだ。
『さぁ早く。ほら早くギュってしてくだいよ。あなたのことが好きで好きで仕方ないって感じなんですよ』
(うん?今この子なんて言ったんだろう?)
僕は「好きすぎてどうにかなりそうなんだけど」と言った気がした。しかもこの子の目は本気で僕を求めているような瞳をして、口元には妖艶な雰囲気を纏っていたのでドキッとさせられるのだった。そして僕は彼女の勢いに負けてしまい。彼女を抱きしめることになってしまう。
そして僕もなんだかよく分からない気持ちになりながらも。彼女を強く抱きしめてあげようと考えていた時だった。リリスから僕に向けて念話で話しかけてくると。その会話内容に驚きを隠せず。僕は動揺してしまったのだ。そして、その内容を彼女にも伝えるとリリスは「やっぱりですか。でもリリス的には拓海さんの事が好きになれるのであれば別に気にする必要もないので。大丈夫ですよ」と言ってくれて。逆に僕も嬉しくなってきてしまうのであった。それからしばらくお互いの事情について話し合っていたのである。僕は彼女に自分の現状を伝えた上でこの先どういう未来になるのかを話してあげると、その説明を聞いただけで理解できたようで「私にも協力させてくれないかしら」と言われてしまう。
その提案はこちらとしては有難いことで。彼女の力を上手く使えるなら僕は安心できるので喜んで引き受けることに決めたのだった。それから僕はこの聖女がどんな力を扱えるのかについては、まだ詳しくは聞けていないが「浄化の力」が扱えて、「癒しの力」が使えたり、他にもいくつか聖属性の魔法や能力を覚えているとのこと。また、彼女の場合は光属性以外の魔法の適性はないようで。その辺りについては僕は詳しくなかったから良かった。
ただ僕もセラと同じように「全属性適正者」であり。そのことについて彼女に伝えることにした。ただし「魔王を倒した後じゃないと使えない」ということだけを注意するように告げて、それ以外の事は秘密にしたのだった。僕自身もセラと同様にあまり目立ちたくないというのもある。
僕は「魔王を倒してからでないと力が解放されないんだよ」と言っておくことに。その話を聞いたリゼルは驚いた表情をしていたが「それでも構わないわ」と答えてくれて、その件に関してはもう心配はいらない。それよりもリゼルと今後どのように関係を深めて行くべきかを考えるべきだろうと考える。僕はリゼから「恋人」のような扱いを受けていたからだ。彼女は「婚約者」とまで言い出してきて、そんなリゼを見て「リーゼは本当に僕のことが好きなんだなぁ」と感じずには居られなかったのである。『リゼ、そこまで言ってくれたんだ。僕もその好意に応えるべく。頑張らせてもらおうと思うよ。だけど、もう少し待ってくれないか。必ず近い将来に君を迎えに行くつもりだから、それまでは僕のことを待ってほしい』
僕は正直な気持ちを伝えておくことにした。それは彼女のためというよりも自分自身の気持ちのためでもあった。彼女には少しだけ申し訳ないと思うけど、今の段階では彼女にはまだ早いのだと思っている。というのも「堕天族」との戦いが終わった後は間違いなく僕にとって大事な時間が来ると確信しているため、今は耐えて欲しいという思いがあった。それに、僕の力を知ったときにどうなるかも不安だったので慎重に行動する必要があったのだ。ただ、そのせいで僕は彼女を傷つけてしまったのではないかと思い。そのことを反省した。
するとリーゼは笑顔を浮かべたまま「えへへ。わかりました。拓海様が言うんですもの。私は大人しく待つことにするね」と言ってくれる。
「ありがとうリゼル」
僕はその一言を伝えるのに苦労してしまい。声が掠れてしまっていた。それはリゼルから告白されてから今まで、僕はリゼルのことを考えていて、彼女の存在が僕の心を大きく占めていたことに気付かされてしまったからである。そして、それは同時に僕の中に芽生え始めている「恋心」にほかならない。その事実に戸惑いながら、僕は彼女の言葉に甘えるのであった。『そうだ。もし僕たちがこの世界を救えばきっと「リーゼ」は聖女としての役目を終えてしまうことになる。だからこそ、その時は僕と結婚して欲しい』
僕はこの世界を救うことができたら。彼女との結婚式を挙げようと考えて、そのプロポーズをしてしまう。それに対してリーゼが頬を赤く染めると嬉しそうにしてからこう答えてくれたのである。
その言葉を聞いていたら僕は「リーゼ」のことを愛しく思ってしまう。そして僕たちは見つめ合い、そのまま口づけをするのである。最初は軽いものだったけど。徐々に濃厚なものへと変化させて、僕とリゼルはその甘い時間に酔いしれる。その時間はほんの数分間くらいのものではあったけど、僕にとっては人生の中で最も幸せな時間で、僕はこのまま時間が止まればいいのにと思ってしまう。そして名残惜しみながらもお互いに唇から離れると彼女は僕を熱っぽい眼差しを向けてきたのだ。僕とキスをしたことによって何かが吹っ切れたようにも見えて、彼女の瞳がまるで「女」のように感じられてしまう。
それはつまり僕のことを男として見ているということで。その証拠として、僕を見上げる視線は潤んでいてとても可愛らしく。僕の理性は崩壊寸前にまで追い込まれてしまう。そんな彼女の顔を見た僕は抑えきれない気持ちに支配されていく。そんな時、突然僕たちの間に割って入る存在が現れる。その正体は「リーゼル」であった。リーゼルは何が気に入らないのか僕に向かって不満げな顔をしているのである。そして僕とリゼルの邪魔をした理由を聞くと『そんなのお二人が恋人同士のように接している姿を見て我慢できなかったんですよ』と言い放ってくるので僕は困った表情を浮かばせるのであった。
その日の夜。僕たちは宿の部屋の中で話し合いをするために集まった。そのメンバーは「聖騎士」の称号を持つリーゼロッテさん。それと「剣の精霊」であるリーゼロッテが契約したサーラ=ライアーだ。
彼女たちはこの宿屋で部屋を取ってもらい、そこに僕たちの荷物を置くと。早速、情報の交換をするため集まってもらうことになっていたので。僕は「リーゼロッテ」と「ロザリーナ」を連れてから部屋に入ることにしたのである。そこで僕たちは互いの情報を共有しあい。今後の方針について話し合うことになった。僕はこの国にあるダンジョンの場所を知っているが。その情報を彼女たちには伝えるかどうか迷っていた。というのもこの国には元々「冒険者の町」というものがあり。そこの冒険者たちは僕の話を聞きたがっていたのだ。
その理由についてだが。この国の国王が「魔王」を倒せそうな人物が居るならば協力して欲しいと頼んできたことから、僕は魔王と戦う覚悟を決めると決めたわけなのだ。なので僕は、この町に存在しているダンジョンを踏破してから「冒険者の町」に向かい、それから「勇者の加護」を使えるようになる必要があると伝える。
『勇者』の称号を授かった人間というのは実はこの世界で一人しか確認されておらず、しかも「加護の力」については、代々『勇者』だけが継承する仕組みになっていたようだ。しかし、今代の『勇者』は既に死んでしまい。この世界のどこを探しても存在しないと言われている存在であるらしい。
その勇者とは誰のことかと言うと、その人物こそが、この世界で最も力を持っていた人物であるらしく。当時のこの大陸に存在した全ての種族が束になっても敵わなかったほどの力を持つ化け物のような存在だという。しかも、この世界の歴史上最強の生物とすら言われる『竜王 ドラコリッチドラゴン』や『幻獣 グリフォン』、『精霊 ウンディーネ』の3匹とも戦ったことのある実力者であり、その全てを打ち破った伝説の戦士として知られているらしい。
ただその伝説は何百年前の出来事のため、現在はどのような人になっているのかまでは分からない。それでも「聖女の加護を受けた少女」のことは語り継がれていたようで「聖女」の存在は広く知られていた。その聖女は今では魔王とまで言われて、多くの人から恐れられているらしい。
だから「聖騎士」と「聖女」の組み合わせは、この世界に現存する中で最強の存在だと僕は考えていて、その力を使えば間違いなく魔王を倒すことが可能だと考えている。そしてこの組み合わせの力を最大限まで引き出すためにも僕はこの国から一番近い場所にある『試練の洞窟 地下一階』から挑戦しようと思っていた。その目的を話すとリゼとセラが「私もついて行きます」と強く言い出してきたので、その勢いに押される形で連れて行くことに決める。ただそのことについてはまだ他のみんなには黙っているようにお願いしておく。
その理由としては、僕としては仲間はできるだけ増やしたくないと思っているからだ。それはこの先に何が起きるか分からない状態で、万が一にも「裏切者」が出ないとも限らないため。僕が信頼できる相手以外にはなるべく教えたくないと考えていた。ただ、僕のことをよく知るリーゼロッテだけは「私が居れば、絶対に拓海様をお守りできると思いますよ」と自信たっぷりな口調で言ってきてくれるので「じゃあ頼りにさせてもらうよ」と答えておく。
その返答に対して嬉しそうに笑顔を見せるリーゼだったが。僕の言葉を聞いた途端に彼女は急に暗い雰囲気になり「それではダメです」と言ってきて。その態度から「僕は何か変なことを口にしてしまったかな?」と戸惑う。すると彼女が口にした言葉は僕の想像を絶するような内容だった。「拓海様。どうして私たちがこの国に訪れたのか覚えていますよね?それにリゼルとセラだって、本当は一緒に行く気はないはずですよ」と言われたことで僕は驚いてしまう。なぜなら、僕は「聖女」に会えば「聖女の力」が使えるかもしれないと思ったからだ。だからこそ彼女に会いに行くことに抵抗がなかったのである。ただそれを彼女に説明しても無駄な気がしたので。僕は彼女の問いに素直に答えることにしてみた。
「もちろんだよ。だから聖女が住まわれている王都に向かっているんじゃないの?」
僕がそのように言うとリーゼの表情に影が差し込み「その程度の理由では納得しませんよ」と言われる。その言葉で僕の心臓が跳ね上がり、嫌な汗が滲み出るのを感じるが。それでも僕は平静を保つことにしたのである。そんな僕の行動が彼女には気に入らないのか、彼女は僕の手を両手できつく握ると、僕と目を合わせてくる。
その瞳はとても力強く、真っ直ぐで、そして僕のことを強く信頼しているような印象を感じずにはいられなかった。そのため僕はその目を見返すことができずに俯いてしまう。だけど、その瞬間「リーゼ、何をしようとしているのですか!」と言って、リゼルとセラがリーゼの体を抑え込んでくれて。なんとかその場は乗り越えられた。その行動に感謝しながら僕は「助かったよ」と彼女たちに言う。それに対してリゼルは僕を守ることができなかったことを後悔しているのか、申し訳なさそうな顔をしていた。でもセラは「いえ、間に合って良かったです」と言ったあとに「リーゼ。あなたはどうして、そこまでしてこの男に固執するの?」と問いかけてくる。
「決まっているじゃないですか。それは、私はこの人のことが好きなんです。愛しています。この気持ちは変わりはしません。だからこそ私は拓海様に尽くすのです」
リーゼが僕に対する想いを告白してくれたので、それに対して「嬉しいんだけど、今は止めて欲しいんだ」と言って、何とか落ち着かせることに成功した。そんなこんなで話は逸れてしまったが。結局は明日は僕一人で「試練の洞窟」に挑戦してみることになった。
僕は「聖騎士」の称号を授かっていてもレベル1の状態のままなので、「試練の洞窟」を攻略することは不可能に近いだろうと考えたからである。そこで僕は少しでも経験を積むため、彼女たちと「試練の洞窟」に挑戦することを決めたのであった。その決断によって、これから僕が巻き込まれることになる運命が大きく変わっていくことになる。
翌日。朝起きると僕が宿屋の主人から貰った弁当をみんなに食べてもらってから「試練の洞窟」へと出発した。
僕たちは宿の主人から教えてもらった場所へと向かって歩いているのだが。その場所へと向かうまでにモンスターが出現した。それはスライムであり、僕は「聖水」をかけてから斬り裂いたら簡単に倒すことができた。ただ倒した後に現れた光の粒のようなものを見て僕は少し驚く。それはゲームで言う経験値とドロップ品を手に入れたときに手に入るものだったのだ。
僕がこの世界に召喚されてから初めて目にすることになるアイテムを目の前にして僕は興奮してしまい。この世界に自分が生きているのだということを感じたのである。僕は今までになかった高揚感を覚えながら歩みを進めていると、ようやく僕たちが目指している「試練の洞窟」が見えてきたのであった。そしてそこには入り口を塞いでいる2匹のオークが存在したのである。
『グゲェーッ!!』
「やっぱり、あれって、僕たちを狙っているのでしょうか?」とサーラが不安げな表情で言ってくるので「大丈夫だ」と彼女を安心させてあげた後で僕は剣を鞘の中から取り出した。それから僕は剣を構えて、サーラとリゼに援護してもらう形を取る。その作戦を実行に移すと僕は真っ先に走り出してオークたちの前に立ちはだかった。だが、そんな僕に構わず、オークは手に持っていた武器を振りかざしてくるので。それを僕は横に飛んで回避してから、そのまま駆け寄っていき。まずは手前にいた方の頭を上から下に叩きつけたのである。その一撃でその魔人は動かなくなり絶命する。だが、僕はそこで油断をすることなく次の敵に意識を集中させたのだ。
すると今度は奥の方にいるもう一匹が迫ってきていて。手斧を投げつけてきたが、それを「刀身同化」を発動することによって弾き飛ばしてから「聖剣術」を使って切りつけていった。その攻撃を受けて敵は絶命していくが。僕はまだ安心できずに周囲を警戒する。するとその敵が最後の力を使いきるように「グォーっ」と叫ぶと自爆した。だが僕には傷一つつかない。どうやら敵は自爆しても仲間を呼び寄せることができるみたいで、周りからは複数の敵が接近してきているのを感じていた。
そして僕は「聖なる加護」と「光魔法」を使用して周囲の敵を攻撃するが、その数が多すぎてなかなか減らない。このままではジリ貧になるだけだと思い僕は「リリス」に合図を送る。すると彼女はその言葉の意味をすぐに理解したようで「聖盾」で防御態勢を取ってくれる。そして敵の爆発に巻き込まれそうになった瞬間。僕は「瞬神速」の能力を使用して一気に距離を取った。
そのお陰もあり僕は無傷で戦いを終えられた。しかし、僕の体力は限界寸前になっていたのである。そのため僕は急いで休憩所まで移動することにする。その途中で遭遇する敵に関しては全て無視することにして「試練の洞窟」の中を歩き続けたのだった。しかし不思議な事にこの洞窟には魔人がまったく出てこないので、かなり拍子抜けである。そのことについて疑問に感じていたのだけど。僕が魔人と戦っていることなんてこのダンジョンの中に居る人間に知る方法は無いと思うし。だから特に問題はないだろうと割り切って進むことにしてみた。
ただ僕たちが今、戦っている場所は「魔人が出没する危険な地帯」であり。普通の冒険者ならば近寄りもしないような場所である。それに「試練の洞窟」の中には他にも数多くの試練が存在していて。その難易度が高いために挑戦者はほとんどいない。そのこともあってなのか。僕は「試練の洞窟」には強い魔物しか出ないものだと思っていたので、ここまで苦戦するとは思ってもいなかったのである。
そうして僕たちは「聖水の瓶」が置いてある場所に辿り着くと、僕たちは一旦ここで休憩をとることにした。その時には既に夜が明け始めていたのだが。まだ休むつもりはなかった僕はリゼたちにお願いをして「試練の洞窟」にある試練を受けに行って欲しいとお願いをする。
彼女たちは最初こそ驚いていたものの。僕の真剣な雰囲気を感じてくれたのか「わかりました」と素直に聞き入れてくれて。試練の内容を聞いてから「拓海様は私たちのことを心配しているのですね」と言ってくれたので「うん、ごめんね」と言う。
「いいえ。むしろ、私たちは感謝しなければならないくらいです。私たちのことは拓海様が一番良く知っているでしょう?それなのに私のために命を賭けようとして下さるのですから。拓海様。どうか私たちにお任せください」
僕はリゼの言葉を聞き、嬉しく思いながらも「本当に危険だと判断するまでは無茶はしないように」と言って彼女達を見送ったのだった。すると、その時、サーラが「あぁ!あの時、助けて頂いたエルフの女性だ!!」と言いながら嬉しそうに手を振っていた。僕はその言葉につられて振り返るとリゼの隣に居た少女と目があった。
その瞬間、彼女の頭の上に表示されているステータス画面に「名前:セシア=エルランド
職業:魔法使い」という文字と「レベル:15 状態;疲労(大)」という言葉が同時に表示される。そして僕の心の中にも同じようにして彼女の能力が表示させれた。ただ「称号」までは見ることができないようだ。
僕はどうして彼女のことを知っているかというと、昨日の夜に僕は彼女と「会話をした」からだ。ただその内容は決して穏やかと言えるようなものではなかったが。
それは、僕がこの「試練の洞窟」に入る直前に起こったことなんだけど。僕はサーラたち3人と別れた後に、他の場所へと向かおうとしていた。そのとき僕は運悪くゴブリンに遭遇してしまう。それも複数体も現れてしまい。逃げることが困難だと思ったので僕は覚悟を決めて戦うことに決めたのである。そして僕はゴブリンの群れと向かい合ったのだ。
だが僕はこの時完全に油断をしていたのだ。何故なら、今の僕が相手出来るモンスターのレベル帯から大きく離れていたからだ。僕がゴブリンの群れと戦い始めようとした時に突然、空から何かが落ちてきたのである。それが「雷」であり、「サンダーボール」と呼ばれている魔法であることが確認できたのだが。僕は何故かその現象を引き起こしたであろう人物が、上空を見上げてもその人物を見つけることができなかった。
「一体誰なんだ?」と僕は戸惑いながらも目の前の敵を対処するために剣を構える。だが、次の瞬間、今度は前方から巨大な岩石が出現してきた。その攻撃が「ストーンウォール」と呼ばれる魔法の発動によるものだということを僕はすぐに察する。なぜなら僕は、今までにも同じような攻撃を体験しているからだ。それは、僕が初めて魔王と出会ったときに彼女が使用していたのである。
僕がそのことを思い出していたのも束の間。次に僕の後方から矢のような速さで「火の槍」が出現する。僕はすぐにその場から離れようとするが。先ほどの「ストーンボルト」の衝撃によって体が言うことを聞かないで地面に転倒してしまう。そんな状況に追い打ちをかけるように今度は炎の球体が出現させると同時に爆発が起きるので、僕は思わず顔を両腕で守ってしまう。だが爆発が収まるのを確認すると、そこには既に何もいなくなっていたのである。
「何が起こったんだ?」と困惑する僕は立ち上がって辺りをキョロキョロと見渡す。すると、少し離れた場所でリゼたちの声が聞こえたのでそちらの方向に向かって歩いていったのである。するとそこには僕と初めて出会ったときと同じような格好をしている女性が居たのである。そのことから僕は目の前にいる彼女が、恐らくリリアの仲間であり、今回の騒動を引き起こしている原因でもあるのではないだろうかと考えたのだ。だからこそ僕は剣を抜き構えながら彼女の様子を窺うことにする。すると向こうから僕の存在に気がついたのか話しかけてきたのであった。
僕は警戒心を解かずに「試練の洞窟」に居る女性に対して剣を向けると「君はリリアの言っていた拓海殿なのか?それとも違うのか?」と尋ねてきた。その言葉で僕の考えは確信に変わる。やはり、目の前の女性は僕が会いに来た魔王リリスに間違いないと確信したからである。僕は相手が攻撃してこなかったこともあり、とりあえず敵意がないことを示すために声をかけてみることにした。
「僕の名前は拓海だよ」と答える。
その言葉に彼女は「私はリリス」と名乗られたので。僕は「魔王リリスって、まさか、リリアのことか?」と聞いてみると彼女は「その通りだ」と答えたので、やっぱり本人に違いなかったみたいだ。僕はそれから事情を聞く為に彼女を落ち着かせることに決める。
まず最初に剣を収めて、お互いに戦闘態勢を崩すと、彼女は自分の仲間であるリゼたちを助けて欲しいと僕に訴えてくる。なので僕は「君たちと一緒に戦ったリゼたちの身に何か問題が起きたのかい?」と質問すると、その答えに彼女は暗い表情でこう呟いたのだ。「私の大切な仲間達が危険な目に合っているかもしれないのだ」と そして続けて「だから、私は仲間達を救う為には手段を選ばずにどんなこともするつもりでいる」と語るのだった。そこで僕は彼女の表情を見ているうちに嘘は言ってはいないと思い、信用してもいいかなと思うようになる。だから「僕にできる事があれば協力するよ」と言ってしまったのだ。でもその発言は結果的に正解だったみたいで、彼女はとても嬉しそうな笑顔を浮かべて「拓海は私にとって恩人だ」と言ってきたのである。
どうやらリゼたちが僕との再会を約束していたというのは本当のことみたいで。僕の話も真剣に聞く姿勢を見せてくれたので僕は、リリスに彼女たちの状況を説明したのである。すると彼女は真剣に僕の言葉を聞き終えると「私も共に行動させてくれないだろうか?」と言ってきた。僕としてもリリスには協力してもらえるのは助かると思ったので了承することにした。
僕は彼女に案内され「試練の洞窟」を進むと「聖なる祠」の前にまで辿り着いたのである。そこで彼女は僕の手を離して中に入っていく。その後をついて行くと祭壇のところで彼女は祈り始めた。僕は邪魔しないように離れて様子を伺っていると、しばらくしてから彼女の頭上に表示されていた文字に変化が現れた。そして彼女は満足したのか外に出て来たのである。
僕はその様子を見つめていたが。特に変わったことはないように見えたので首を傾げていた。だが僕よりも早く彼女の異変に気づいたのは、そのすぐ傍に立っていたセシアだった。
「セシア、大丈夫ですか!?顔色が優れないようですが」
その言葉で僕はようやく彼女に起こった変化に気づく。確かに言われてみると体調が悪そうに見えるのだ。しかしリリアも「魔人の器」という特殊な存在であり。普通の人間が耐えきれるような環境ではないので無理はないと考えていた。それに僕は「魔人が出没する危険な地帯」という場所にいることに改めて恐怖を感じてしまうが、今はそんなこと気にしている場合ではないと自分に言い聞かせる。それにセシアは今、魔王であるリリスから力を授かっているところなのだから余計な事を考えてはいられないと気合を入れ直すことにしたのである。
ただ、その時僕はある疑問を感じてリリスの方を見ると。彼女は少しだけ苦しそうな表情をしながら僕の方を見て来たのである。
(これはどういうことなんだろう?)と僕は不思議に思いつつも、今の僕の実力じゃこの「試練の洞窟」に存在する強力な魔物たちには太刀打ち出来ないと考えを改めることにした。なので僕はリザレクションの魔法を発動させるとリゼたちに使ったのと同じように僕の魔力を注ぎ込んで強化を図る。
その結果、リリスは辛そうにしなくなる。どうやら成功のようだ。
だがリリアの時のように、この魔法を使ったからと言って彼女たちの力が上がるわけじゃないのである。それなのに何故、僕はリゼたちに「リリレクション」を使ってあげたかったのかと言うと。僕自身も魔王から受けた傷を回復することが出来るとわかったからに他ならないのだ。だから僕が魔王と戦ったことで傷を負っても直ぐに治すことが出来るのである。そうすれば僕も戦いやすくなって、みんなの負担も軽減する事が出来ると考えたのだ。
そのおかげでリゼたちは楽になったようだったので僕は安心していた。それから僕が「試練の洞窟」の中を見渡して行くと、そこにいたのが「スライム」であり。僕のことを待っていたかのようにこちらを見ている。その姿を見て僕はすぐに「試練の洞窟」に挑戦することを決めたのである。
そして僕の前には試練の洞窟に生息するボスとして存在しているスライムの姿がある。その外見はとても可愛らしく見えるのだが。僕が「聖剣の祠」の中で遭遇して、僕を殺しに来た個体と同じ種族のようである。ただ、僕のことを見下して笑っているように見える。もしかすると僕は試されているのかもしれないと思って僕は剣を構えると相手は襲ってくるので僕は慌てて攻撃を避けたのであった。
スライムの動き自体は決して速くは無いが、攻撃を当てるのも困難だと僕は感じる。だけどこの程度なら「試練の洞窟」に入る前に遭遇した「グリーンゴブリンナイト」や「オークキング」「ゴブリンシャーマン」「コボルトジェネラル」の方が手強かったなぁと、しみじみ思ったのである。だから「魔王城周辺」に生息していたモンスターに比べると、大した相手ではないというのが本音である。
それから僕は「魔弾」の魔法を唱えると、目の前のモンスター目掛けて魔法を放つと見事に命中したのだが、それでもモンスターを倒すことはできなかった。しかもダメージを与えた形跡もなく、僕に魔法を放ってきたのである。僕はその攻撃を「シールドガード」を唱えて防ぐとすぐにその場から離れる。そして次の攻撃を仕掛けてきたモンスターの攻撃を回避しながら「ウォーターボール」の魔法を唱えて相手にぶつけた。すると今度はその魔法が効いて相手の動きが鈍くなる。
そこで「チャンス!」と感じた僕はそのまま「ファイアストーム」を唱ると、炎の竜巻が巻き起こり、モンスターを飲み込んだのである。
すると目の前のモンスターの体は焼けて、煙が上がっているのが見えた。これで倒せると思ったが。次の瞬間には煙の中から飛び出して来て、その攻撃を僕は咄嵯に回避することができた。その勢いを利用して再び距離を取ろうとするが、相手も追いかけて来ているのが確認できた。そこで「エアカッター」を連発するとようやく攻撃が届いたがやはり致命打を与えることは出来なかったらしい。僕は諦めずに剣を振るうことにするがやはり通用しない。そこで「アイスバレット」で氷の礫を生み出し攻撃を試みたら何とか当たってダメージを与えることに成功したのだ。それで相手が怒ったのか今まで以上に素早い動作で攻撃を加えて来る。その攻撃を受け止めることはできたが。僕の体は徐々に押されていって最後には壁に押しつけられてしまった。どうしようかと考える暇もないくらい連続で攻撃してくるので僕は仕方なく避けるしかなかったのだ。
それからしばらく、僕の戦い方は受け身だったと思う。それに加えて体力も削られていきかなり限界を迎えていたときだったのだ。
『スキル強奪を獲得しました』と聞こえてきたのだ。
それから僕の目の前にいる敵のステータス画面が見えたので、僕に対しての敵意が無くなっていることに気がつく。そして「鑑定」を使い名前を確認したのだが。
【レベル】10 やはり僕に敵対するつもりは無くなっているのがわかる。そして気になるのは、どうして突然に僕への敵意が消えたのかということである。そんなことを考えている間に僕の体を縛っていた見えない鎖のようなものが解けていく感覚を覚えたのだ。そのおかげもあり。目の前のスライムが大人しくなっていく。どうやら僕に対して敵対心を抱かなくなったことで僕が倒したということにしてくれるらしい。僕はとりあえず「スライムカード」を取り出すと封印する。その後、僕はそのダンジョンを出ることにしたのである。その途中で僕は気になることを確かめてみることにした。それが僕に対する敵意が無い状態とあれば、魔王の眷属になっているリリスに攻撃を加えることが出来るかどうかを確かめたかったのである。なのでリリスに向かって剣を向けると、彼女は「その必要はない。私を殺すつもりなんだろ?いいぞ、殺してみせろ」と言ってくる。
どうもこのリリスの反応を見る限り。僕の持っている「リリレクション」の力で、彼女から負の感情を奪い取ることができたみたいだ。僕はその言葉に素直に従い。彼女を斬りつけるが傷をつけることができないどころか、僕の持っていた剣のほうが壊れてしまう始末だった。それから何度か彼女に切りかかって見たが。結果は変わらず、結局その日は何もせずに「試練の洞窟」の外に出ることが出来たのだった。
僕たちが外に出ると、何故か大勢の人々が待ち構えていて。その中には「魔人の器」の一人であるリリアの姿も見えた。どうやらリゼたちと無事に合流したようで一安心したのである。
そしてリゼたちは僕の顔を確認すると笑顔で駆け寄ってきた。リリアも一緒についてきて僕の前に姿を見せてくれると。
「真様、無事に帰ってきてくれましたね。嬉しいです」と、僕のことをぎゅっと抱きしめてくれた。リリアの行動に僕は驚きつつも「ありがとう」とお礼の言葉を口にする。そして「他の仲間たちはどこにいるの?」と僕に尋ねてくる。
そこで僕が答えようとする前にリリスが自分の方から語り始めたのである。
「私がリゼたちのことをずっと心配していたからな。一緒に行動していたのだ」
彼女はそういうと「ところでお前たちはこれから何をしようとしているんだ?」と言ってきたのである。それに対してリザレクションのことをリリスに話すと彼女は少し難しい顔をした。どうやらその能力に少し思うところがあるみたいだが、僕としても魔王を救う手段が今のところこれしかないのだ。
それを聞いてリリアたちも協力してくれると言った。だから僕もリリアたちの力を借りて「魔人」を討伐することにしたのだ。しかし問題は、その魔王を操っている魔人が何処にいるのかわからないという点である。そこで僕は探知系の魔法を使うことにした。するとここから離れた場所に強力な魔人の反応を発見することに成功する。
僕がそのことを皆に説明すると、セシアだけは首を傾げていた。恐らく、その場所にどんな存在がいるのかを知らなかったからである。そこで僕が簡単に説明してあげると。リザレクションを使えば「魔王リリス」という存在は助かるのだと知って少し複雑な表情を浮かべていたが、それでも今は他に方法がないのだと納得してくれたようである。ただ、リザレクションは魔力を消費するため、何度も使えるわけではないことを伝えると、リリアたちもそれなら仕方ないと言う感じで僕の意見に賛同したのだ。それからリリアたちは一旦僕のことから離れていくが。直ぐに戻ってくることになる。その理由は「勇者が僕に勝負を仕掛けて来たからだ」僕はいきなりの出来事だったので慌てていたら僕の代わりに彼女が立ち上がってくれていた。そういえばこの世界に来てからは僕はいつも逃げ回っていて、自分から戦いを挑むことは無かった。
そのためなのか、彼女は自分が戦うと言うのである。でも彼女は女の子だし無理をしなくても良かったが。僕がそれを言うと、「大丈夫よ!それに私の本当の力はあんなものではないから」と言って僕よりも先に飛び出していった。そして勇者と対峙することになった彼女は。「貴方の実力は見せてもらったけど。リリアや、リリアの仲間がやられたなんて思えないわ。それなら私たちだって同じ条件よね。だからここで決着をつけさせてもらう」と宣言をする。
僕は「そんなことをしても無駄だと思う」と告げると「それでも私はやらせてもらうわ!」と言って僕を置いてその場を離れて行く。それを見た僕が彼女の後をついていこうとした時。リリアが僕を引き留めて、僕の手を引っ張る。そして「ここはリゼちゃんに任せてください」といってリリアも戦いに加わったのだ。
僕たちは三人で勇者と戦うことになった。勇者の実力は決して低いものではなかったが、リゼたちは互角の戦いを繰り広げた。そして最後にはリゼが剣で勇者を圧倒し、最後は僕が作った剣で首を落としていたのである。それから僕は急いでその場に行くが既に勇者の魂が天に帰ろうとしていいた。そして僕は勇者を生き返らせてあげようと試みるが上手くいかない。どうしたら良いのかわからなかった僕に、僕の傍にやってきたリリアが僕の手を握りしめてくれる。
すると不思議なことに勇者の死体が淡く光り出すとそこには一人の男性が倒れているのが見えたのだ。それは間違いなく僕の知っている顔の男性であったのだ。
【ステータス】
名前:山田勇太
年齢:25
性別:男
種族:人間族 LV 99 職業 剣士 スキル 【身体強化LV5】【腕力増強】【剣術スキル】【魔法耐性スキル】
魔法系統 【炎魔法 LV4】【水魔法 LV2】【風魔法LV1】
【土魔法 LV1】【氷魔法 LV3】【雷魔法 LV1】
特殊技能系 【アイテムボックス】【気配感知】【危険予知】
僕はその男性を自分の部屋に運び込んで寝かせてあげたのである。するとその男性の目がゆっくりと開くと僕の姿を確認できたみたいだ。すると男性は「君か、久しぶりだな。まさか本当に助けてもらえるとはな」と言いながら上半身を起こすと僕の方に近づいてきた。その姿を見て僕は嬉しくて泣き出してしまったのだ。何故ならば、目の前にいる男性は紛れもなく、元魔王の配下にして僕が倒さなければいけかった存在なのだから。しかし僕はどうしても涙を止めることが出来ない。
すると彼は優しい笑みを見せて「もう大丈夫だよ」と言ってくれる。どうやら彼の体はまだ完全に回復しきっていないようだったが、何とか僕の気持ちを察してくれているようだ。そんな僕の肩に優しく手を置くと落ち着かせるために撫でてくれたのである。僕はようやく落ち着いたので、彼をベットに戻す。すると彼は僕のことを見つめながら口を開いた。僕はその姿を懐かしいと感じてしまいながらも彼からの質問に答えることにする。
「まずは俺の名前を言っておくが「佐藤裕二」と言う。君は知っているか知らないが一応俺は「神」と呼ばれる立場にあった。まあ今となっては何の力もない一般人でしかないがな」
僕はその名前を聞いて驚く。やはり彼は「佐藤」という名前で神様だったらしい。確かに彼が神様だと聞いても納得してしまうような雰囲気を持っているが。僕は彼に尋ねることにする。
「やっぱり、貴男がこの世界を見守っていた「神」だったんですね」
僕は「リリスさんの話を聞くまでは半信半疑だったんだけど」という言葉を続ける。しかし「信じていなかったのかい?」と逆に驚かれてしまった。そして僕が「だって、こんなに若い人が僕たちを助けてくれるなんて想像出来なかったんだもん」と言うと「それもそうかもな」と少し照れた感じで返事をしてくれる。
僕はその様子を確認すると。僕は彼と会話を続けていく。最初はどうして「リリスさんの眷属になってしまったのか?」と僕が問いかけると「リリスが突然現れてから、リリスを庇って死にかけたら、そのままリリスに取り込まれたんだ」と答えた。僕は「リリスに?」と驚いた声を出すと。「ああ」と素直に認めてくれたのである。
「リリスはこの世界の創造主にして管理者でもある存在だ。つまりこの世界に生きているすべての生物の生みの親であり。育ての親みたいなものだ。そんな彼女が苦しんでいたら助けたいと思うだろう」と当たり前のことを話すように語り出したのだ。僕も「わかります」と相槌を打つと。彼は「リゼや、他の子たちには申し訳ないことをした」と言っていた。僕はそれについて何も言わず黙っていたのだが。どうもリリスさんは僕の考えていることが分かるらしく、僕に対してリゼたちのことは気にしない方がいいと忠告してくれる。僕はそれに甘えることにしたのだ。それよりも僕が聞きたかったことは「なぜ僕たちが異世界に来たのを知っているのですか?」と尋ねたのである。しかしそれに関しては「なんとなく分かるのだ」という返答しかもらえなかったので僕は諦めて次の話題に切り替えることにした。そこで「魔王はどうなったの?」と僕が一番気になっていることを質問したのである。しかしそれに対する答えは「魔王は消えた」というものだった。
僕は「どういう意味なの?」と疑問に思ったことを口にする。
「そのままの意味だ。この世界からいなくなったんだよ」「そんなことが有り得るの?あの子はリリスなんですよ」と言って反論する僕に「そうじゃない」と言って説明を始めてくれた。それによると、そもそも魔王というのは「神の一部」に過ぎないのだという。僕はそれを聞いて納得したが、だからリリスは僕たちのことを家族と呼んだのだろうか。そして魔王には「意思を持つ人形」としての役割も与えられていた。しかし、その魔王にも寿命は存在し、そしてリゼたちも同じように「人柱」として扱われていたが、それでも彼女達は死を迎えるたびに復活をしていたのだ。そこで僕も、彼女たちが不死であるということを聞かされるのだけど、それでも彼女たちの死は辛いものがあると思っていたのだ。しかし魔王であるリゼも「リリアたちは死んだけど、また生き返ってくれました。それに魔王は死ぬことができないからずっとこのままの状態です。ごめんなさい」と言って僕を慰めるように抱きしめてくれた。
僕はそれを見て、リリアが「私が死んでも、私は真様のこと忘れないですよ!絶対に!」と力強く断言していたことを思い出して、なんだか寂しい気がしていたが。彼女は、きっと僕のことを心配して「自分を忘れて」と強く言い放ったのではないかと推測して。僕の中で少しだけ気持ちが軽くなっていた。
「それじゃリザレクションで復活した皆はもういないっていう事かな」
「そうなりますね」
僕は「これからどうしたらいいのかしら?」と尋ねようとした時、部屋の外からリリアの声が聞こえてきたのである。そしてリリアは部屋に入ると「大丈夫でしたか!?」といって抱きついて来た。どうも僕の無事を確認していたようで「良かったです」と涙を流していた。そしてリリアの後ろでは「リザレクションが成功したみたいですね」とセシアが安堵のため息を漏らしていた。それから彼女は僕に向かって話しかけて来た。「私のことも、お姉ちゃんって呼んでいいのよ」と笑顔で告げてくる。僕はそれに思わず笑ってしまって、その様子を見ていてリリアとリゼとアゼリが不満顔になるのがわかったが、すぐに表情を変える。リリアとリゼが何かを言う前にリシアが二人の口を塞いだ。僕はそれを見ながら「ありがとう。リリア」とリリアに声をかけると、彼女は微笑んでくれたのである。
それから僕は、先程起きた出来事をリリアとリーゼに伝えようとすると。すでにリゼルから報告があったようで、「魔族の王をリリアが倒した」ということを改めて伝えられたのである。僕は「さすが僕の姉だね」と言うと、「それほどでも」と言いながら僕の頬を突ついていた。
リリアスの言葉で、勇者をリリスが吸収したことを知った。そして僕は彼女にそのことを聞くと「リゼと、私を融合させてくれて助かったわ」と言われたのだ。その言葉を聞いた僕は、魔王の人格を消滅させたのだと思っていたが、魔王の中にリリスが宿っているとは思っていなかったので驚きのあまり固まってしまった。そして僕は「リリスを消したりとかしなかったよね」と尋ねると、魔王の中に入っているのはあくまで彼女の精神の一部なので問題はないとのことらしい。
ただ問題は魔王が意識を失った状態で、魂が天に召されている状況らしい。その為肉体的な回復はできない状態なのだそうだ。しかし魂だけは、こちらに戻って来ることができるらしいので、その時に魂を癒せば復活するのではないかという話であった。僕はリリスからその話を聞き終えると「ところでリゼは?」と言って彼女を探そうとする。
「ここにいるよ」と言って姿を現した彼女は「あれっ?」と思ってしまった。いつもは幼女姿なのが普通のはずなのに、何故か今は高校生くらいの女性の姿になっていたのである。僕はその姿を見ると何となく違和感を感じてしまう。だがその変化があまりにも唐突だった為に僕はそのことについて尋ねることが出来なかった。
「ねえ、あなたが今、この身体の持ち主の精神体を呼び出している間だけでいいから貸してもらってもいい?」と言われて戸惑うが、そのことに僕は「いいの?」と返すが、彼女は「うん」と答えてくれた。そしてしばらくの沈黙が訪れると魔王が「どうぞ使ってください」と言うと魔王から光が発生して、リリスの体に入り込んでいくと、そこには高校生くらいに見える女性の姿になったリリスがいた。そんな姿を僕に見せつけてきたのである。
僕は、いきなり目の前にいた少女が変わったのを目の当たりにすると、かなりびっくりしてしまったのである。しかし僕の反応を見て楽しんでいた様子だったので僕はあえて「凄いですね」と褒めてみると。案外嬉しかったみたいで、照れ笑いを見せてくれる。そんな彼女に対して僕は「可愛い」と言ったところ、リリスに思いっきり殴られる。
僕としては本音しか言った覚えがないのだけど、そんなに痛くなかったので不思議に思っていたらリリアに「真様はデリカシーが無いんです」と言われてしまい僕は納得する。そんな僕たちの様子を、リリアやリーゼたちが楽しげに見守ると「それでは」と言って魔王は消え去った。それと同時にリゼたちが元に戻る。僕とリリスはそれを見送ると、僕は魔王の使っていたベッドの方を見る。そこで僕は、そこに「佐藤裕二」と名乗った男性がいるのを思い出す。僕は彼に近寄って話し掛けようとすると。彼の体が光に包まれていくのが見えたので僕は急いで彼の元へ行こうとする。
しかし、僕よりも先に駆け出す者が現れる。それはなんと魔王の体に入ったはずの「リリス」である。そしてリリスは佐藤と名乗る男に近づくと「どうしてなの?」と彼に話しかけていた。
「どうしてなの?貴方は私を救おうとしてこんなことになったんじゃない。それに貴方はまだ死んじゃダメでしょ?どうして死を受け入れようとしているの?」と悲痛な叫び声を上げると彼はリリスを抱きしめた。
「君を助けようと思ったのは事実だ。でも俺は、自分の役目が終わったと気づいたからこそ死ぬことにしたんだ。この世界に生きる者として、リリアたちを護ることに誇りを持って生きていた。そしてこの世界の管理人として魔王を倒すという使命を全うすることが出来た。俺の人生は充実していると満足していた。そんなときに魔王が現れたんだ。その時から、魔王を倒すという仕事を終えた後は、リリスとリリアを護るために残りの人生を使うつもりだった」とリリスの問いに対して答えてくれた。僕は、その答えを聞きながら、やっぱり僕と似ていると感じながら、彼が死を受け入れる理由をリリスに話すと。
彼女は納得がいかないようで、涙目になって「私が、貴方の代わりにリゼたちに力を与えてあげる」と言ってきたのだ。僕はそれに対して、彼はそれで構わないのかと確認すると、少し考えた後で「ああ。いいだろう。それに君のことは、リリアから聞いてよく知っているからな」と言っていた。僕はそれを聞いて、なんだか複雑な気分になる。僕のことをよく知っているというのはどういった意味なんだろうかと考えてしまうが、きっと僕の勘違いだと自分を戒める。
僕はそうやって自分に言い聞かせて「それじゃあ、そろそろいいかしら?」とリゼルに声をかけられた。リリスは名残惜しそうに僕たちの方を見ると。「最後にこれだけは言っておきたいの。真君」と言って僕の名前を呼ぶと「リリスはいつでも、どんなときでも真くんのことを見守っていますから」と優しい笑顔を浮かべて僕に伝えてきたのである。そして彼女は、魔王の持っていた刀に触れるとそのまま消えていった。その様子を見ていた勇者の男は「リリアスさんが消えた!?まさか本当に神の力を取り込んでいたなんて信じられません」と驚きを隠せないといった感じで驚いていたが、「まあいいわ。リリアスが居なくても、あなたを倒せばいいだけの話だから」と、リリスは勇者の男を見据えると戦闘を始めたのである。
僕が魔王と戦うために立ち上がろうとすると「待ってください」と言ってリーゼは僕を止める。
「ここは私たちに任せてもらえないでしょうか」と言うので僕が「大丈夫?」と心配そうな表情をして尋ねてみると「もちろん大丈夫ですよ」と言って、微笑みかけてくれていた。それを見た僕は安心して彼女にすべてを任せて僕は、魔王の元へと向かった。リゼルからリリスの能力については説明を受けている。僕は彼女が僕のために作った剣を握りしめると「お願いします」と言う。するとリゼルは「任せなさい」とだけ言い残すとリゼルはリゼへと変わっていた。
《エクストラ固有スキル『真勇者』が発動されました。「真勇者」の称号が自動的に追加されました》とアナウンスが頭の中で響き渡る。その瞬間に「魔王の魂」を手に入れた時に獲得したスキル『勇者召喚』の効果を実感できる。どうも、魔王を倒したことで「真勇者」の称号を得たようだ。僕は、そのことに内心喜びつつも、魔王との戦いに集中することにした。僕は魔王に向けて剣を構えると彼女はニヤリと笑って僕を迎え撃ってきたのである。
魔王とリリアの身体が入れ替わる現象が起きた後に、リゼは突然「大丈夫?」と尋ねてきたので僕は困惑しながらも大丈夫と答えた。それから彼女は、何か考え込むような素振りを見せた後に「それならいいのだけど、もしも辛かったらすぐに言って欲しいわ」と言われたので、とりあえず大丈夫なことを伝えようとした時、彼女は何かに気付いたように急に顔色を変えたのである。
それから、僕の手を掴んで走り出したのであった。一体何を考えているのかと疑問に思っていると「ちょっと、こっちに来てくれるかしら」と言われてリリアの部屋に連れて行かれた。そこで、僕は魔王から貰った装備と魔石を渡すと、彼女から感謝された。僕は何で魔石を欲しがったのか尋ねると。魔石の使い方を知らなかったらしいのだ。なので僕は魔石をリリアの手に置くと「これをこうやって握れば、魔王と交信できるようになるんだよ」と言うと彼女は、魔王に魔導電話をする。すると「はい、こちら魔王です」という返事が来た。「今から、私の身体の中にいる魔族の王に頼みたいことがあるの」とリリアは言う。その後で「これから起こることに対して、魔族の王は責任を取らなくていいから」と言い放ったのだ。その発言に対して僕は驚くしかなかったのだが、それをよそに魔王との会話が進む。
そのあとで「わかったわ」と言って通信を終える。それからリリアが僕に向かって「これでいいかな?」と言って来たので「魔王の魂を吸収したのに、もういいの?」と尋ねる。
リリアに尋ねるとその件についても彼女は問題ないと返答してくれた。その言葉を信じるならば。僕の体内にある魔石に魔王の一部が入っているらしく。魔王がリリアの体内にいることで、僕の肉体に影響が出ることもなさそうだと判断したみたいだった。
「それよりも気になることがあってね」とリリアが僕に告げると。僕たちは部屋を出てリゼたちと合流すると魔王城の中を見て回る。そこで魔王城にいる者たちのステータスを確認してみた。
するとリゼルや僕以外の者にも称号が追加されていたのがわかる。そしてリリアの言っていたことが本当だったと確認することができたのであった。そんなことを考えながら歩いていると「あれっ?」と思うものを見つけた。そこには『リゼル専用アイテムボックス(無限大):収納可能量10トンまで入ることが可能になります』と書かれているのだ。
その言葉を読んだ僕はその能力に驚いてしまう。なぜなら、僕たちが使っている武器などの道具のすべてが入ってしまうからである。つまり今までのように荷物の運搬に悩まされることは無くなった。さらにいえばこの中に、リリアたちが着ている衣服なども入っていることになる。そんな便利な機能が追加されたことで、リリスから渡された魔王の装備品も簡単に取り出すことが出来るようになったのである。そのことをリリアに伝えると彼女も驚いたようで、目を丸くしながら、何度もリゼル専用のアイテムボックスに、手を入れようとしていた。しかし、なかなか手が届かないので諦めかけていた。
「ねえ、僕の方でやってみようか」と言ってリゼの方に手を伸ばすと。あっさりと僕の手が届く。しかし彼女は僕に対して申し訳ない気持ちになっているようで「ごめんなさい」と謝ってきた。そのことについて僕は「全然平気だよ」と言って気にしないでいいという意思表示をすることにする。僕は「それよりもさっきはどうして僕をここまで連れて来たの?」と聞いてみるが彼女は答えようとしなかった。
するとリゼは「私と二人っきりになりたいのかなって思ったんだけど違う?」と言ってきたのだ。それに対して僕は「えっとそれはどういう意味で言っているの?」と聞いてみると。リゼは少し頬を赤らめながらも「だって、リリスの身体で真くんと二人で行動した方がいいでしょ?私なんかより、リリスの方が頼りがいがあるだろうし」と答えるのである。僕はそれに対して「ありがとう」とお礼を言った後にリリスの方を向き「それでリリス。どうしようか?」と聞くと「私にお任せ下さい」と答えてくる。
僕は彼女にお願いすることにしたのである。そうして僕は、魔王の持っていた刀を取り出して、魔王から教えてもらったやり方を実行すると、鞘に収まっていた刀を取り出すことができた。僕が「おお、凄いな。これが【神具】かぁ」と言って刀を見るために柄の部分を握っていたら突然、刀が輝き出して刀が僕の手に馴染んでいく感じがしたのである。そして光が消えると同時に僕のステータスに変化が起きる。
名前 橘 真 性別 男性 種族 人間族 年齢 16歳 状態 健康 職業 なし Lv 1/100 HP 10500/11300 MP 7400 能力 物理攻撃力 5000 魔法攻撃 6600 体力 6590 知力 6420 魔力 6040 速さ 4480 器用 5630 運 9999 《固有技能》
『成長補正』『解析鑑定』
エクストラ固有スキル
『真勇者』Locked エクストラスキル
『絶対切断』New! 特殊スキル
『言語理解 経験値5倍 獲得資金2倍増 レベル上限無効 限界突破 必要経験値1/1000 全才能解放』
《称号》
『リゼの主』
『魔王を討伐せし者』
『真の勇者』
New!
『魔王の寵愛』
New! リゼルにお願いして、僕のスキルについて詳しく説明してもらう。
「まずはエクストラスキルですね。これはリゼの固有スキルと同じ効果が得られるのは知っていますか?」と聞かれたので、それはもちろんだと僕は即答する。
「そして次に『真勇者』ですがこれも、先ほど説明させていただいたとおり、全ての能力を3倍以上にしてもらえる効果があります。その効果は所有者の力量によって、変わりますが、勇者の力を持っているリリアさんが使用すればとんでもない能力を手に入れれることになります」
と説明をしてくれる。それから彼女は説明を続けていく。「そして最後に、『魔王の寵愛 レベル制限無視(常時発動中)
能力上昇率1万倍の効果がある。また魔王を倒したことにより、すべてのステータスが上昇しています。それと新しい称号に、『魔王の寵愛』と追加されてますね」と僕に告げてきたのである。
僕は『魔王の寵姫』の時のことを思い出して、納得した。あの時と今回のことを照らし合わせて、僕は『魔王の寵姫』は魔王が勇者に与える恩恵のようなものだと考えたのだった。
そう考えているとリゼから「魔王を倒した時に手に入れた魔石に魂を吸収したことによって『勇者召喚』の効果を発動して、あなたを呼び出したのです」と言われて、僕は納得してしまったのである。それから彼女は、魔導電話を使用して魔王と話をしていたのだが、魔王にリリアが僕たちの仲間になった事を伝えたのであった。そして、その事を伝えられた魔王が「それなら問題はない」と言ってくれて魔王城を乗っ取ることに了承してくれたのだ。その後、魔王は僕の方を見ながら何か言いかけた時に、リリアに魔導電話で止められるのであった。そんな出来事があったが、僕は魔王に頼まれた通りに、魔王軍を指揮してもらうことにした。そして、リゼの案内のもと僕はリリアの部屋で休んでいたのである。
僕は、リゼの勧めもあって彼女の部屋のベッドで休憩を取ることになった。
リリアの身体の中にいるリゼに魔王城のことを頼むことにした僕は、リゼルと相談することにすると、リゼルの方に問題が無いと返答されたので、僕とリゼとリゼルで魔王に報告することになった。ちなみに僕の身体の中にいるリゼは「私はリリアの中にいますね」と一言だけ言って僕の視界の中から消えていったのだった。そのあとすぐにリゼルから魔導電話がかかってきて「すぐに来てもらっても構わないかしら?」と言われたのである。そのことについてリゼルから「今すぐ、そちらに向かうわ」と言われて僕はリゼルのいる部屋へと向かっていったのであった。そして、僕が部屋に入るとそこにはリゼがいたのだ。そこで僕たちは今現在の魔王の状況や、これからのことを考えることになったのだ。
そして僕たち三人だけになると、リリスの肉体に宿っている魔王のステータスを確認してからこれからのことを話す。その際に魔王には自分のステータスを確認できるようにしてもらい。今後の戦いに備えて欲しいことを伝えると。彼女からは了承を得ることが出来た。その後で僕は「とりあえず、今後の作戦会議だけど、まずは現状の確認から始める」と言う。その言葉に対してリゼルとリゼの二人はうなずいてから返事をしてくれた。なので僕は、今の自分たちがどれほどの能力を持っているかを説明した後に、これから行う行動を説明することにする。
その前に魔王から渡された装備の説明から行っていく。まずリゼルに魔石を渡した後に『聖鎧エクス』をリゼルに手渡す。そうすると彼女も僕のことを見てから魔石を渡してくるので僕はそれを受け取る。
「えっとね、僕の方はリゼルの持っている魔石の力を使うことができるようになったんだ」と言って魔石を見せようとするがリゼルは魔石を持っていないようだった。そこで僕は、「そう言えばさっきまで持っていたけど今は持ってないみたいだね」というと。リゼルは自分の腰の辺りを指差すので確認してみる。そこには僕の服に隠れるようにして小さな袋がありその中には、リゼルの言っていた魔石が入っていたのであった。
そんなことをしながらも僕は「ちょっとごめんね。少し確認させてくれるかな?」と言ってリゼルが着ている鎧に触れて確認していくと、その魔道具の名前や詳細などを確認することができた。その情報を読み取った後でリゼルに「ありがとう」と言ってから僕は『真勇の書』を手渡してから、魔石をその本の中に収めてもらうように頼んでおいた。
そして僕はリゼルに「リゼルの持っている武器とかってある?」と聞いてみると、リゼルが少し恥ずかしそうな表情をしながら。
「一応は持っているの。ただ使うと真くんに迷惑をかけてしまうから」と言い出したのである。それに対して僕は、リゼルに「リゼルの実力を信じていない訳じゃないよ。でももしリゼの方が強くなっているならその剣でリゼと一緒に戦ってほしいんだ。そしてリゼルがその力でリゼルを守り抜いてくれると僕はとても嬉しいと思っているんだよ」と言った。するとリゼの方は「わかったわ」と短く答えてくれて。僕は「リゼのことはリゼの方に任せてもいいかい?」と言ってみた。
それに対してリゼルは嬉しそうに「うん。私のこの身に変えても真を守るわ」と言ってくれたのである。そんなこともあり、僕が受け取った魔石をリゼが使いこなす練習を行うのだった。それからしばらく経つ頃に僕は、勇者としての称号を手に入れたことで手に入れた「状態異常無効化(常時発動中)」を試しに使ってみることにしたのである。
『状態異常無効』
状態異状から身を守るためのスキル。ただし耐性のない相手に対しては無効にできるわけではなく通常攻撃と同じような扱いを受ける。なお効果の持続時間はスキルのレベルに依存する。とのことだった。それを知った上で僕は、自分に掛けてみると体が軽いことに気がついて。これはかなり使えると思いながら僕はリゼルに「これ凄いスキルだから。僕もリゼもこれを使えばもっと強い力が手に入ると思う」と言ってリゼルに『勇者の盾』を渡すのだった。
そして僕は、『真の聖衣』と『聖杖アルム』を受け取った。そして僕はそれを身に纏うことになってリゼルが僕の背中を押してくれたのだ。その結果で僕とリゼルはその二つを身に付けると体の奥底が燃え上がる感覚を覚えたのである。そしてステータスを視て確認する。
名前 橘 真 性別 男性 種族 人間族 年齢 16歳 状態 健康(魔力枯渇状態)
Lv 100 HP 2100/5400 MP 6400/11000 能力 10400/5600(22000)
物理攻撃力 10400(6500)
魔法攻撃力 11200(5400)
体力 5600(4500)
知力 10400(5600)
魔法
光属性中級魔法 闇属性初級魔法 New!【神具】《神聖武装:
《絶対切断》New!《真勇の固有スキル》New! エクストラスキル《完全鑑定》New!《限界突破》New!《絶対防御壁》New!《限界突破》《真勇》New!《勇者成長補正》New! 《勇者固有技能:成長限界解除及び成長補正付与機能付き 限界突破効果強化》 固有スキルは《成長限界突破》と、新しく出てきた『限界突破』という二種類が僕とリゼルには与えられているのである。僕はリゼルの方を見ると、リゼの方も同じようになっていた。そして僕はリゼルにも「リゼに新しいスキルが追加されているよ」と伝えると彼女は驚いていたが。すぐに「そう言えばさっきの魔王が言っていたわね」と言ってくれた。それからリゼは、その説明を聞いているようで、それからしばらく沈黙が続いた。だがその間リゼは、リリスとの話し合いを続けてくれていた。
その間に僕は『真勇の書』を読んでいく。その『真勇の書』の内容はこんな感じである。
名前 リゼルナティオ=ヘルトハイム 種族 人造生命型魔道具 性別 女性 称号 勇者 職業 勇者王リゼの騎士長兼近衛隊長 LV 70 HP 25700 MP 9000 能力 6880 魔法 炎属性上級魔法 New!【魔宝剣レーヴァテイン改】
New! エクストラスキル なし ユニークスキル 魔道剣士New!【超剣術 LV99】New!【大魔術士 LV90 LV85 魔法騎士 LV50 勇者王リゼの近衛隊長の時と同じスキル構成でさらにレベルが高いステータスを持つリゼルの事が書いてあった。そんな事を考えているとリゼルから声をかけられたので僕はそちらの方に意識を向けると、どうやらリゼルが話したいことがあるらしい。なので僕は彼女の方を見る。
「あのね、真。お願いがあるの。私に、この世界のことを教えて欲しい。そしてこれからのことも含めて二人で一緒に考えていきたいと思ってるの」
僕は、リゼルがそう言ってくれて嬉しかった。だけど、僕の方から言いたかったことでもあったのだ。なので僕からも彼女に伝えることにする。
「リゼル、実はさ、僕の方から言いたいことがあったんだ。これからは二人だけで、一緒に頑張らない?僕は、これからも君とずっと一緒に居たいと想ってるから。どうかな?」
そう僕が言うと、リゼルは笑顔で僕に向かって手を伸ばしてくる。それに応えるように僕はその手を握りしめていく。すると僕の心の中から、リリスの声が響いたのである。そして僕の中で彼女が目覚めたことを知らせてきたのだった。
そして僕の目の前に現れたのは。長い髪の女性であり、その容姿はとても美形なのだがその肌はまるで陶器のような真っ白で。目は赤い宝石を埋め込んだかのように美しい輝きを放ち。その瞳の中には、リゼルとよく似た翼を持った女性が写りこんでいた。そして、リゼが、その女性の肩に止まり、頬ずりをする仕草を見せる。僕はそれを見てから、改めて目の前に立っている彼女に話しかけることにした。
彼女は、その一言でリゼルを自分の妹だと説明した後に、僕に微笑みかけてくれた。
それから僕に、自分の事とリゼルの事を説明し始める。彼女は、リゼルが、魔王と同化する前に作られた。つまりは、僕たちで言うところの姉妹機みたいなものらしい。そして僕はリゼルの事を姉妹として接してくれと言われたので、僕もそれを受け入れたのである。そうすると僕の中にいるもう一人の人格が目覚め始めたのだ。
僕の中のもう一人の僕は、リゼルを見て何かを感じ取ったのか僕に問いかけた。僕はそれに対して「僕の大事な仲間の一人だよ」と言うと納得してくれたようだ。
僕とリゼルの二人のことを紹介が終わった後に、僕のことを抱きしめてリゼルに「この子、私が貰っていい?」と言ってきたので。リゼルと顔を見合わせるとお互いに苦笑いをしたのだった。そしてそれから、リゼルから、姉さんと呼ぶように指示された女性はリゼルの姉さんのレイラだと名乗った。そしてそれからリゼルからの提案により。リゼルのお母さんでもある魔人の姫が眠っている場所に行くことになり、その道中ではリゼルの思い出話を聞かせてもらったのであった。そしてその場所に辿り着くと、リゼルは、そこで眠っていた一人の少女のことを懐かしそうに撫でていると、僕に抱きついてきて甘え始めて。僕たちはリゼルのお父さんが待つ城に帰るのであった。そして城の前には、父様の姿があり。僕とリゼルに駆け寄ってきた。僕は、母様にお土産として、父様の好きなワインを持ってきていたことを思い出し、リゼと父に渡してから僕たちのことを待っていた父に挨拶をすることにした。そして父に、「久しぶり」と言ったあとに父からは、怒られた。でも僕としては嬉しかったのだ。それは久しぶりに会えただけではなくてちゃんと僕のことを認めてくれていることが嬉しく思えて、泣きながら僕とリゼルを交互に見つめていたのだ。僕も泣いてしまったが仕方がないことだった。だって僕とリゼルの両親は既に他界しているからだ。だからこうして生きているうちに再会できたのが僕は嬉しかったのである。そうしてから、僕とリゼルは父と母と一緒に、城に帰りつくのだった。
そうして僕が家に帰ると、そこにはまだ帰っていなかったが。僕の妹が、待っていてくれたのだった リゼたちが帰ってくるまでの間に僕も『勇者』の称号の効果を調べる。
勇者の称号を詳しく調べた結果わかったのは『勇者の成長限界』だった。この効果は名前の通りであり。勇者はレベルが上がることで得られる恩恵が増えていき『限界突破』することでその限界を突破することができるというものだった。また『限界突破』の『真勇の書』にも記載されていて効果の説明も記されていた。それによるとレベルの上限が存在しない。そのため成長し続ける限りどこまで成長するというものだそうだ。ただし勇者の『限界突破』の『真勇の書』の場合は、勇者専用の装備を扱えるようになる効果と、『限界突破』による成長補正効果が強まる。というもので僕は『聖具アルム』『聖具レーヴァテイン改』の二つを手に取り。それぞれを自分に使い込んでみる。するとアルムには、僕のステータスが表示されている画面と同じような画面が表示されるとそこにはこう書かれていたのである。
《神剣:アルム》 能力 《全技能上昇(特)》《限界到達》《絶対切断》《限界突破》《完全鑑定》《能力吸収》《経験値共有化》《能力複製》 と書かれていて。レーヴァテイン改には、このような画面が表示されていた。
《魔導剣:リゼルナティオ=ヘルトハイム》 能力 《全技能上昇(極)》《限界到達》《限界解除》《能力吸収》《能力模倣》《能力強化》 この二つを読み終わったところで僕は《能力吸収》が使えるのならと思い『真勇の書』に記載されていた能力の使い方を思い出して《真勇の書》を開く。そして《限界突破》を発動させるのをやめるとすぐにリゼルの持っている《魔宝剣レーヴァテイン改》の『限界突破』を解除してから《能力吸収》を使うことにしたのである。
《魔宝剣レーヴァテイン改》《神具》 効果 《限界突破》《真勇者》 備考 神具の中でも伝説級の魔宝具である《レーヴァテイン》をベースに作られた。
《聖具》である《アルムルクス》を元に作り出された《リゼル》シリーズの《魔宝剣》である。
剣の能力に特化させられており、あらゆる能力を切り裂くことが可能。
真なる神具である《アルム》の力の一部を使うことができるようになり、それにより所有者の能力を大幅に引き上げられる どうやら、この『真勇の書』によると、リゼルの持っている《リゼルナティオ=ヘルトハイム》には。所有者を強化する効果があるらしいのだ。だがリゼルは、そんな説明をしていなかったので僕はそのことを疑問に思い聞いてみたのだ。そうすると彼女は説明してくれる。
「私はこの力について詳しくは説明しなかったけど、実はリゼルは『リゼルナティオ=ヘルトハイム』に秘められているもう一つの力の事を言ってないだけなのよ。この子は、二つの剣を同時に使うと、それぞれの力を最大限まで引き出すことが出来るわ。ただそれを行うには、それ相応の精神力と魔力が必要になる。それができるほど、リゼルナは天才だから、だからあなたにその剣を貸したのだと思う。それとこの子から話は聞いたと思うけれど。この世界が今、大変なことになっているの。それについては知っているでしょう?」
そう言われるのだが、僕自身は、そこまで大したことだとは思っていない。しかしリゼルの話によれば、どうやら魔王の力はとんでもないものであり。このままではこの世界を乗っ取られてしまうかもしれないと言っていた。僕は、それを聞かなくてもいいと伝えようとしたが、そんな僕に対して、リゼルの方から。リゼと、この世界の状況を話し始めてくれるのである。そして、そんなことを話してくれている時に、リゼが僕に向かって、この世界のことを聞いてきたのである。僕はそんな彼女達の質問に応えようとリゼルから聞いた情報を頭の中でまとめていくのであった。まず最初に僕とリゼルが住んでいた国の名前は。ヘルトハイム帝国と言う名前で、そこは僕が生まれた場所でもあって僕も生まれたその日からこの国の王女になることを決められていたそうだ。
だけどその国が滅ぼされたのはリゼルと初めて出会った時のことだった。あの時は本当に驚いたと彼女は言っていた。なぜなら彼女の話ではその当時は、今の帝国の王族はリゼルの父親で、母親は既に他界していたそうで、その時から帝国で反乱が起こりその反乱軍のリーダーこそが。僕を拾った当時の皇帝陛下の弟であったそうだ。つまりその当時で僕を拾い育てていたのはリゼルの義理の弟にあたる人ということになる。
それから彼は自分の妻であった人とリゼルの母の事を愛していて。自分が死んだ後は二人の好きにしていいと言ってくれたそうで、その結果。リゼルと、僕の両親がその提案を受け入れたことによって、僕達は親子として暮らすことになったのだという。僕はリゼルと二人でいる時間が好きで。彼女と一緒にいたかったからリゼルが義理の姉弟でも気にはならなかったが。リゼルは違ったみたいだ。リゼルが義理の弟のことが嫌いだったのではないのか?という僕の問いに対しては違うという返答があった。その理由というのが彼女が言うには僕の両親は自分にとっても本当の家族みたいな存在だと思っていたし。僕の事も妹のように思っていたので、義理とはいえ、僕を養子に迎えてくれたことは凄く感謝していると、そして何よりも僕の事が大事だったらしいのだ。そして彼女が僕のことを、実の姉のように慕ってくれていたらしい。でも僕の方はあまり実感がわかなかったが、それでも彼女が喜んでくれるならいいと思ってそのままにしていた。
僕は、この世界に転生した時に、リゼルに一目惚れをしてしまったので彼女との時間は僕の宝物でもあるのでリゼルとの幸せな時間を過ごせていることがとても幸せに思えるからだった。そしてそんな僕たちの様子をみかねたのが義理の弟に嫉妬した。その当時の帝国軍の指揮官である、将軍の地位を持っていた男性と。そしてその女性である。二人に、僕は気に入られてしまい僕を巡って争いを始めてしまったのだ。そしてその出来事がきっかけで、この国に反逆が起きたそうなのだが。詳しいことは僕にもわからないためこれ以上の情報は得られなかったが、結局はその二人のせいだと思っているのだが。それからしばらくして、二人は殺されたそうだ。なんでも、二人の遺体は見つかっていないらしくて何処に行ったかは不明だ。それに僕はリゼルから二人の事を聞いたことがあるので、少し悲しい気持ちになってしまう。だけどそのおかげで僕はリゼルと出会うことが出来たし、そのことで彼女にはとても感謝をしていた。
僕は、このリゼの話を聞き終わってからも、しばらくリゼルと話をしていたが。その間ずっと抱きしめたままだった。僕はリゼルが好きだ。大好きなのだが、だからと言って。リゼルと結ばれるためにはこの世界で、魔族の王の力を打ち砕き。世界の脅威を取り除かなければいけない。だからこそ僕はリゼルと結ばれても構わないと考えているわけだし。もし僕がリゼルを選べばリゼルを不幸にする可能性が高い。だが逆に言えばリゼルを選ぶということは、魔族の王と敵対するということであり。僕は、どちらにせよこの世界に脅威を振り撒いてしまう。そう考えた僕はこの場で結論を出すのをやめることにした。リゼルの側に居続ける覚悟はもうすでに出来ているが。まだこの世界を平和にする方法はあるはずなのだと。そう信じて僕はこの場は、何も考えずにリゼルと一緒にいることにしたのである。
そしてリゼルと一緒に、僕は家に帰っていく。
家に戻ると、僕とリゼルを待っている間にリゼルは母様に僕が持ってきたお土産のワインを渡していたのだ。
母様は、僕達を迎え入れてくれてすぐに父様が帰ってきたことを僕に伝えるのである。そうして父と一緒に食事をするためにテーブルに移動すると。そこで父様が口を開いた。「久しいなお前たち」という一言と共に、父様がこちらを見ながら言ったのだ。その言葉を受けた母さんは父様の顔を見るとすぐに泣き出して抱きついた。そんな母さんの様子を見ていたら、なんだが嬉しくなってしまって、つい泣いてしまったのだが、僕はそれを誤魔化すように、慌てて席に着くと食事を始めることにした。
そんな僕の行動をリゼルも理解してくれたのか、何も言わずに座って一緒に食べ始める。すると今度は僕の隣の椅子に座りながら僕に笑顔を見せてきたので僕も笑い返すのであった。そんなリゼルを見ているとやっぱり、こんなにかわいい子が自分の彼女になるのは反則だと改めて思うのであった。そんなリゼルに惚れているのだと再確認すると僕はまたリゼルのことがますます好きなってしまうのだった。
その後みんなで話をしていたが、どうやら、父様とリゼルは仲良しでお互いに気を許し合える間柄なのだろうと感じる。そんな話をしてから数日後の昼下がりのこと。突然、家の玄関の扉が大きな音を立て開かれると。外から人が入ってきて何か叫んでいたが、よく聞き取れなかったので、その人は僕の方をじっと見てくると「ここにリゼルナティオ=ヘルトハイムがいると聞いたがどこに居る!」と言ったのでリゼルはビクッと反応をして僕の後ろへと隠れるようにしながら。怯えるような声で「リゼルの知り合いですか?」と言うのだが。それに対して男は、「私は、お前のお兄さんだぞ!早く私の元へ来なさい。さもなくば私がリゼルを取り戻す為に殺しに行くかもしれないからな」と言ってくるので僕はそれを聞いて焦りを感じた。僕は、もしかしたら、その男が、先日聞いたリゼルの実の兄である可能性を考えたからだ。リゼルの義理の弟は僕とリゼルの邪魔をした人物で。リゼルをさらっていった張本人だと言うのだ。だからリゼルのことを姉と呼ばない男の正体に、この時、初めて気づいた。この男は、リゼルを攫って自分の物にしようと僕がこの世に生まれ落ちる前にリゼルを無理やり連れ去っていたのだという事をこの時に知る。
そしてリゼルが震える手を僕に握ってくるのを感じると。僕はリゼルに大丈夫だからと言って落ち着かせることにするのであった。そうしていると、どうやら男の狙いがリゼルだということはわかったが。リゼルには指一本触れさせるつもりはないと。その決意を固めた僕であった。そんな僕の心の内を知らないでリゼルの目の前まで来た男が僕に対して睨んで来てから「私はリゼルの姉の義理の弟の、ライゼリード=ヘルトハイムだ。リゼルがこの世界にいると知って迎えに来たのだが。そこにいる女は貴様の妻なのか?」と聞かれた僕は咄嵯に「違う、僕が、愛したのは、あなただけだ。僕のリゼルにこれ以上近寄るようなら僕は貴方と戦うことになるかもしれないです。それだけはやめて下さいね?」と言うのだが、その答えを聞いた後。ライゼリードと名乗ったリゼルの義兄はニヤっと笑うと。リゼルの方を向いて手を掴むと強引に引っ張り出すのだった。その行動を見て僕は慌てる。
リゼルが僕から離れていくと思った僕は思わず、彼女の腕を掴もうとしたのであるが、それよりも早くリゼルを庇うかのように僕の隣から現れた人物がリゼルの腕を離させたのである。僕はそれが誰なのかを確かめてみるとそこには魔王がいたのだ。魔王はそのライゼルの手を取ると僕を挑発するような目で見てくるのであった。
その態度を見た僕は。魔王が僕を試そうとしている事に気づくと、僕がどれだけリゼルを愛しているのかを示すべく魔王の事を全力で潰すことを決意した。その瞬間にリゼルと目が合うと。彼女は、不安そうな顔をしながらも、応援してくれていたようで僕が安心出来るような笑顔で僕に向かって笑っていた。その姿を見て僕の中で力が膨れ上がっていくのを感じ取る。そんな僕とリゼルの様子をみてからか、僕の方を見てきて。リゼルに向かって何かを話していたが、その途中で、リゼルが泣き出しそうになってしまっていたが。それでも、なんとか、耐えていた。その様子を見てから、僕は再びリゼルの事が好きになったのだが、やはり僕がこの世界に来る前からリゼルと仲良くしていて僕の居場所を奪い去っていったという嫉妬心もあったのだ。その気持ちがどんどん強くなっていき、リゼルに対する愛情とは別の感情が生まれ始めてきた。そしてその気持ちが大きくなっていくと。僕は自分の力を制御することが出来なくなってしまい、その力を無意識のまま解放してしまうのだった。◆ side リゼル(私もあの勇者に助けられてなければ死んでしまっていただろうけど。あの勇者は本当にすごいわ。私のピンチの時に駆けつけて助けてくれるなんて。まるで王子様みたいな人だった)
リゼルにとってみればリゼの存在はまさしくヒーローそのものに思えた。そしてそんなリゼルの様子から自分が好きな相手は、きっとリゼルが好きなのだとリゼルは思い。自分の想いを告げようとしたのである。リゼルは自分の好きな相手に好きを伝えるのには勇気が必要だったが。それでも好きになってしまったものはしょうがないと割り切ることにした。そして意を決して、リゼルは自分に抱きついている少年から離れるとリゼルはリゼの前に行き、そしてリゼルの口が開き「好きです」という短い言葉が出たのだった。リゼルはリゼから告白されるのではないだろうかと思っており。その言葉を受けてリゼルは緊張していた。そんな時に。いきなりドアが開かれてそこから入ってきた人物こそ。リゼルの憧れであり。恋い焦がれていたリゼルの初恋の男性。
その男性が自分の前に現れるとリゼルは泣きそうになるが、我慢をする。そしてそんな様子をリゼルの両親は見ていたのである。
するとそんな様子を見ていた男がリゼルとリゼルの両親に近づいてきて、その男はリゼルの両親の方に視線を向けたかと思うと「そこの女がお前の娘なら俺が引き取ってもいいんだよな?」と聞いてきたのである。リゼルの母は、リゼルを守る為に身を呈そうとしたがリゼルがそれを止めるとリゼルの代わりに母がリゼルの母親に代わって。その男に対してリゼルを渡すようにと要求する。だがリゼルがリゼルの父親の元へ行きたいと言うので、リゼルと、その母親をその場に置いていき、自分は、リゼルの父の元へ行くのであった。それから少しするとリゼルの父親はリゼルに近寄ってきて「リゼル、無事でよかった」と、言うのであった。だがそんな父親の声を遮るような形で、突然現れた男によって、自分の娘を無理やり連れて行かれた母親が。リゼルを取り返そうと、自分の娘を無理矢理連れ戻そうとするも、男の力で吹き飛ばされてしまう。
そしてその後、男に無理やり連れ去られてしまったリゼルだったが。それを見ていた母親は、すぐに立ち上がり男の元へと向かうと男の足を蹴ろうとするのだが。あっさりとその蹴りは受け止められてしまい。
「邪魔だ!」
とだけ言われると。そのまま床に押し倒されてしまうのであった。
そしてそれを見ていた父親も慌てて娘のところへ向かうと。男は、「邪魔はもういらないよな?」と言って。父親の顔に手をかざすと。一瞬で父親を殺してみせるのである。
その出来事が衝撃的過ぎて、誰も動けず。その場にいる人達は固まっていたのだ。そんな時、リゼルの父は、殺された直後、光の粒になりながら消滅してしまった。その光景を目の当たりにしたリゼルは涙が出てしまう。リゼルにとってみれば。大好きな父親が殺されてしまい、悲しみのあまり。涙を流していたのであった。そしてそんな悲しむリゼルのところに、リゼルの姉の義理の弟のライゼリードが近づくと、リゼルを自分のモノにするべく襲ってきたのであった。
だがその時、突如現れたリゼルの実の兄だというリゼルの義父がリゼルを助けてくれて。リゼルの好きな男性を侮辱すると怒りの一撃でリゼルの実の兄は殴り殺されてしまうのだった。そしてその後に実の兄が死んでしまった事と自分の大切な家族を失って、絶望してしまっているリゼルの元へリゼルの愛する男性がやって来てくれたのだ。リゼルにとってはこの世で一番愛している人でもあるタクトが来てくれたので。
今までの不安や恐怖が無くなり、安心して泣き出してしまい、そのリゼルの姿をみたタクトはリゼルを抱き寄せるのであった。
そして、そんな、二人の姿を。魔王や、他の者達は黙って見ており。リゼルの家族達だけが二人の様子をただ見守っているのであった。その光景を見た後で、ライゼリードとリゼルの義姉の二人は、リゼルの事が欲しかったらしく、隙があれば、奪ってでも手に入れようとしてくるが。そんなことはさせまいと、タクトが間に入り、リゼルの身体を抱きしめるのでリゼルに手を出すことは出来なくなってしまう。
そのせいで余計に悔しく思った二人はリゼルを攫おうとするのだが。そこで、ようやく勇者が動き出してライゼルードに向かって剣を抜くのであった。そして勇者が動いた事で魔王は何かを察したのかライゼルードに攻撃を仕掛けようとするが。その行動を見た勇者は魔王の行動を止めようとして立ちふさがるが。そんなことを気にせず魔王はその攻撃を繰り出すと、勇者はそれを受け止めるのではなく受け流すことで対処する。魔王の攻撃を受けたことによって勇者はその勢いで後方に吹っ飛ぶも。地面に手をつき態勢を整える。その様子を確認したライゼリードは余裕そうな態度でニヤニヤと笑いながら「貴様は一体なんなのだ?貴様のような者がどうしてここにいるのか不思議だな」と言うが。
それに対して「俺は佐藤拓海と言うもので、今は、この少女の恋人をやらせてもらっている者だよ?」と言うとライゼリードは驚き。その言葉を聞いたライゼリードがリゼルの事を見ると。そこにはタクトの事を見つめていて頬を赤く染めて嬉しさのあまりか泣いてしまっている、リゼルの姿があったのだった。そんな様子を見て。どうやらライゼルードが思っていた通りの展開になったようでライゼルはニヤニヤしながらタクトの目の前に立ち。「私達はお前が邪魔だ。よって、ここで死ね」と言ったあとにリゼルに向かって魔法を放つと、それは火属性の中級魔法の【火の玉】を飛ばしてくる。それを受けてリゼルはタケルの方を見てから心配そうな表情をしていたが、それに構わず、魔王はライゼルに向けて攻撃を放つが。ライゼルが放とうとした【闇の槍(ブラックランス)】の方が発動速度が速かったこともあり。魔王が放つよりも先にリゼルに向かってその攻撃が着弾してしまう。その攻撃を受けたリゼルはそのまま倒れてしまい。意識を失っていたのである。
そしてその様子を見ていたリゼルの父親は、娘が傷つけられ、更には殺されそうになったのを見て怒り狂ってしまい。
その場でリゼルの父親が立ち上がって魔王に襲いかかろうとした瞬間、その父親を、いつの間にか近くに来ていたライゼが殴ったのであった。殴られたことで倒れた父親の上にライゼルがまたがり、マウントポジションを取った後に父親の顔面をひたすら殴り続けるのである。その行為に対して何も出来ないリゼルはただ自分の好きな男性の事を必死に守る為にその拳を防ぐだけだった。そんなリゼルを、タケルは、自分がリゼルを守りたいという気持ちを抑えきれなくなってしまい。
「リゼル!僕に任せろ!!」
と叫ぶと同時に。そのリゼルの想いに応えられるように、そしてリゼルに怪我などさせた奴を許すわけにはいかないと強く思い、魔王と戦おうとするのだが、勇者であるタクトは。自分の大事な恋人を守る為ならたとえ自分の親兄弟であっても殺して見せると。本気で思ってるのだった。
そして、勇者と、魔人が戦いを始めようとしていると、その光景を、見ていた魔王は、タトルに対して「おい、お前。今からこいつを俺の配下にしてやろうと思っている。俺の力の一部を分け与える。俺の為に戦うのならばそれでいいぞ」と言い、タツヤは、自分が、リゼルの父親と魔王との因縁を知ることになる。それから少しして、リゼルの父親は、ライゼルから受ける痛みに耐えかねて気を失い。ライゼルも飽きてきたところで「まぁ、これくらいで許してやる。お前はなかなか使える人間みたいだしな。だからその命。今日限り俺のために使うことを許可する」と言うのだった。
だがその言葉を受けたタツヤはリゼルが大事にしている人を、これ以上失う訳にはいかないと思って、その言葉を断ってしまうのだった。するとその返事を聞くと、いきなりライゼルがタツヤに襲いかかってくる。
そんな様子にタケルは助けに入ろうとするのだが、魔王に止められてしまう。そして魔王は、自分に刃向かうのであれば。こちらも相応の覚悟で来るといいと挑発するように告げてから、その場を離れてしまう。
そしてそのやり取りを見ているしかなかった、リゼルが、魔王がその場から離れた隙を突いて「リゼちゃん。起きてください」と言って、先ほど魔王の攻撃を受けて倒れていたリゼルを起こしに行くと、タリスはリゼルの手を取って、リゼルが起き上がると、リゼルとタリスも協力してタトルをライゼルと引き剥がす作戦に打って出るのであった。
それからすぐに、魔王は戻って来て。リゼルの父親を連れて行き。それを、ライゼルが追いかけようとしたので魔王がそれを阻止しようとすると。リゼルがタタラの剣を取り出して、そのタタンソードの光でタランチュラを攻撃すると。タトラがその光を吸収してしまうのだった。
それを見ていた魔王は驚いていたのだが。それでもまだ勝機があると思った魔王は、リゼルを無理矢理に自分の方に引き寄せようとすると、その行動に怒ったタツマが飛び出していく。そして、タタが飛びかかった事で魔王の気が一瞬そちらに移ったのを見逃さなかった、タリス、リゼルは魔王の隙を突き、魔王の腕から抜け出すと、そのまま魔王の元まで走り寄ろうとするが。タタキがそれを阻止するため、二人を捕まえようとしたが、リゼルはタタラのタタラを使って。タリスは聖属武器を使うも。二人の攻撃を物ともしないで。そのまま二人を掴み、持ち上げると地面にたたきつけてしまうのであった。その攻撃によってリゼルとタリスは気絶してしまった。だがその時、タテルのタツルの光が輝いている事に魔王が気づく。
「な、なに!?なぜ貴様らがタタルの光の剣を使えるんだ!!まさか、勇者の小僧が、その剣を持っていたとは思わなかったわ。その剣の能力はなんだ?」と魔王は問いかけるが。その質問には答えずに、「魔王。これで終わりだ!」と、タケルが言い放ち、魔王の元に走っていき、リゼルがタタのタタで魔王を攻撃しようと振りかざすが、タゼルが、魔王の盾になってしまい。攻撃を防がれてしまったのである。
そんな時タタのタタラが光を放ち始める。その輝きは魔王の目を眩ませる程の強烈なものとなっており、そのタイミングを狙ったかのように魔王はリゼルの攻撃を防いでタタのタタがタツムの手に渡る。だがその事についてタツキは何かを感じており、もしかしたらタツトの能力なのではないかと思っていたので、魔王に向かって攻撃を仕掛けるも、あっさり避けられてしまい、その後を追う様にタツムが動き出してタカツの技を使い魔王を追い込もうとする。だがその技を使った事により。タツムも体力の限界なのか息切れを起こして動きが悪くなっていたので。タタキは隙を付いて攻撃する。その結果、攻撃されたことでタツムラとタリスのタタルの効果がなくなり。リゼルはタトルを手に持ち。
「私の大好きな男性を苦しめないで!!」
と言うと同時に。リゼルはタタルでタトルを振り下ろすと。その衝撃により。ライゼルは吹き飛んでしまうのであった。そして、リゼはタルトを握りしめてタケルの元へ走ると、タリスがタケルに近づき。
「お兄ちゃん。後は任せたよ」と言ってタリスを抱きしめた後。タリスはその場に倒れて動かなくなってしまう。そしてリゼはタケルの側に行き、抱き着くと。リゼルは今まで溜め込んできた想いを全て伝えるのである。
その行動を見た魔王は自分の負けだと認め、その場から離れるのであった。
「俺はここで退場だな。まぁ仕方ないだろう。今回は完全に負けたようだから。貴様達人間の勝ちだ。だから、俺のことは気にせずにこの大陸を貴様らに任せようと思う」と言うと魔王はその姿を消す。その出来事に、他の者達は驚き。一体どうなっているのか?理解出来ないでいるが、その疑問については魔王は答えず。そのまま姿を晦ませてしまうのであった。
魔王は去り。この大陸を好きにして良いと言われた勇者一行は、まずはこの島から出て行く為に船に乗り込むことにしたのだ。この島にずっといても、魔王が戻ってくるかもしれないと言う理由で勇者達は移動することにしたのである。
そして勇者達が乗った船は出航し始め。ようやく島を脱出することが出来たのである。そんな様子を魔王は水晶越しに確認すると。魔王が姿を消した後に現れた謎の人物がタケルの前に現れて、こう言ったのである。「勇者があの女を選んだ理由がよくわかった」
と、それだけ言うと。謎の人物は魔王と同じ空間へと消えてしまうのだった。そして魔王は勇者が自分達の世界に帰ると知りながら、魔王領域にある鉱石から作り出した魔力結晶石を取り出し、それを自分の胸の中に埋め込んだ。そして魔王はタケルに向かって笑いかけるのである。
そして魔王は、リゼルを庇って、魔王から受けた一撃は致命傷だった。だがその痛みが魔王から与えられる最後の攻撃だと思い。僕は、自分の意識を保つため。自分の恋人であるリゼルの名前を心の中で叫ぶように呼んだ瞬間。リゼルがこちらを振り返ってくれて。僕の目を見てくれた。それが僕にとって嬉しく。そのせいもあって。何とか耐えることができたのだった。でもそれも限界に近いところまできている。そしてそんな時、僕の体が白く発光し始めたので。リゼルには何が起きたか分からなかっただろう。だがそれでもいいと僕は思ったのだった。そしてその光を見て、僕の体に変化が訪れ始めたことに気づく。そしてその変化が終わってしまった頃、僕は自分の身体に起きたことを自覚して。魔王に向かって剣を振ったが、もう既に、魔王は僕たちの後ろに居たので、魔王に攻撃を与えることなど出来なかったのであった。
それからすぐに僕は魔王に殴られ。そこで意識を失い、倒れそうになると、リゼルは僕を支えてくれていたのだったが。僕はそこで気を失ってしまい。
気がつくとそこには見知らぬ部屋が広がっていて。
そこに一人の女性がいる事に気づく。その女性は、黒と赤の混ざり合った長い髪をしていて、背も160センチ程あるスラリとした長身だったのだが。服が何故かスクール水着の様な露出度の高い格好をしていた。その事に戸惑っていると、その女性が話しかけてきたので、思わず、変な声で叫んでしまった。だがそんな事を気にも留めていないようにその女性も驚いていた。それからすぐに彼女は僕の頬に手を添えると、僕の顔を覗き込むようにして微笑み。そして僕の額に自分の額を合わせる。その行動がまるでキスをする前みたいだったのでドキドキしてしまい。そんな風に思っていたら彼女が急に倒れたので。
「ちょっ!?え!?なに!?どういうこと!?ねぇ!!なんで倒れてるの!?」と僕は彼女の顔を見ながらそう叫んだが、全く反応がなくただ眠っているような様子を見せていたのだった。そんな様子を見ているとあることに気がつき僕は彼女に呼びかける
「君!!起きないと!死んじゃうよ!!」と言い。
「いやーん♡そんなこと言っちゃダメだよ。もっと甘々なこと言ってよ~♪あーもう我慢できなくなってきた」と言い出してきたので。僕は少し焦っていたのだが。
「えっと、君は誰なの?」と聞いてみたが返事はなく、また眠り始めてしまわれた。その姿を見て少し困ってしまい。どうしていいのか分からなかったので取り敢えず放置することに決めたのであった。そして彼女が起き上がるまでの間暇つぶしの為に何か面白いことが起こらないかなと思いつつ。部屋中を調べ回ることにすると、 その時にふと思ったがここはどこなのか、それと、さっきまでいたはずの場所とは雰囲気も違っており。この場所にたどり着くまでの記憶が無い。だけど目の前で寝込んでいる彼女を見るととても安心できる存在だと感じた。
だがその感覚を言葉にすることが出来ないので上手く説明することは出来ないけど、本当にそうなんだと自分に言い聞かせることにしていた。
それから暫くの間。部屋の隅にあった本棚から本を適当に取り出し。その本を眺めることにした。その内容は恋愛もので、その物語を読んでいくと自分がこんな恋をしてみたいなと思う気持ちが芽生え始めていた。だが今は、この物語の続きを読み進めていきたかったのだけれど、残念ながら、文字を読めなくなってしまった。理由は簡単だ。読める単語が全く分からないから。これは、日本語を学んでいる人がいきなり英語を読むようなものであると気づいたので。読むのは諦めて読みかけのまま元の場所に返すと再び探索を始めたのであった。そして今度は壁一面にある引き出しを調べると。鍵のようなものが見つかり。その引き出しの鍵だと推測できたので、開けてみると、中には小さな袋が入っていたのでそれを開けようとするが。手が思うように動かないのでなかなか開けることができないが頑張っていると手は動くようになり。袋を開けることに成功し中身を取り出すことに成功したので。早速中に入っていた物を確認してみると、 それは銀色に輝く綺麗な指輪があったのだ。それを手に持ってみるとなぜかその指輪は自分の手に吸い込まれる様に消えてしまった。それを見てびっくりしたがすぐに別の物に変化しているのではないかと確認するために指にはめてみることにすると すると指輪が輝き始め次の瞬間。
僕は真っ白い空間にいた
「ようこそ我が世界へ。私があなたに新たな力を授けましょう」
そんな言葉を聞いたあと。目の前にいる女神が話し始めてくれた。
「これから貴方に二つの能力を与えることが出来ますので好きな方を選んで下さい」と言うと、選択肢が表示され、それぞれをじっくりと見比べていくと、僕の直感的にこっちだと思ってしまうものがあり、そいつを選ぶことにした。
選んだ能力は【時間】と、【収納スペース作成】の能力を選んだのである。
僕はこの能力を有効活用するためにあることを考え始めるのであった。そしてその前に僕は目の前の女性が女神だと理解した。なぜなら、この人の見た目は普通の人とはかけ離れた姿をしており。頭には角が生えているがそれが逆に美しいと感じてしまうほどだったからである そんなことを考えているとその人に話しかけられたのであった。ちなみに話の内容はと言うと。僕の名前を聞いてきたので、それに答えた後に、自分の名前も聞かれたが正直答えても問題はないと判断してから答えることにした。すると彼女は、僕の名前がタツトということがわかったが、それ以上聞くことはなかった。その理由としては彼女は神界での仕事があるためこれ以上は付き合ってられないと告げて。僕を元の世界に帰そうとしたのであった。しかし僕は、その事を拒否し。どうにか頼み込んで、帰らず。その代わりに僕を転生させることにしたのだ。
僕は、女神が用意してくれたスキルを貰い受けて。それを自分の体に吸収させていった。その結果として僕の体は発光して、次第に光は弱まりやがて完全に消えてしまい、僕はその場に倒れてしまうのであった。そして意識が薄れて行くのを感じたが何とか堪えると。そのおかげもあってか僕は気絶せずに済むことができた。だがそれと同時に自分の体の異変に気がつき、今までは聞こえなかった声が聞こえるようになってきていて、僕の身体の変化は終わりを迎えたが。僕の中ではまだ変化が続いている感じがしたので少し怖くなっていたのだ その後、僕の中にいたもう一人の自分と言うべきだろうか?とにかく僕の中に居たのはリゼルでは無くて、エフィーと呼ばれる少女であった。その彼女は、自分の体を自由に動かすことができる上に、リゼルの身体を動かすこともできるようになっていた。つまり僕の身体は今二人存在している状態なのだが、その事は誰にも話すわけには行かないので。黙っていることにし、とりあえず僕は今の状態を整理する事にしてみたのだが、やはり混乱しているのは確かであり、何が何だかわからないのも確かなのである。それから暫くの間は、リゼルの中に入ることが出来るのかを確認するために色々と試した結果。どうやらリリスが、リゼルの中にいない時は、エフィの中に入れるようになるらしい。
その為、リリスと別れることは無理なので。リゼルを連れて行くしかなかった。
そんな事を考えながらも、魔王から受けたダメージが抜けていないので、このままの状態でリゼルを庇って戦えるとは思えないので一度引き下がることを魔王に提案することにした。だけど魔王は、そんな僕の意見を鼻で笑うと「何を言っているのよタクト。君をそんな状態でここから逃げ出せると思っているのかい?」と言って来たので、「もちろんですよ。私には切り札があるんですからね!」と言い返し、リゼルには、自分の力を完全に使えるまでは戦いに参加しないように言うと僕はすぐに行動に移った。
そしてリゼルの中から出るように念じると自分の体に戻っていくが、その際に、リゼルが自分の体から離れてくれるのか心配になり、僕は不安に駆られていたが。何とか離れることなく自分の体に戻ることが出来たが、自分の体が勝手に動いたことにリゼルは困惑してしまっていたが。リゼルを責めるようなことはしなかった
「大丈夫かリゼル!?」僕はそう言いながら抱き寄せるようにするとリゼルも嬉しそうに微笑み返してくれて それからしばらくした後。魔王は、リゼルが、魔王領域に戻ったことを確認すると「君達二人はここで死ぬんだよ。そして君を倒せば僕は勇者の力を手に入れることができるからな」と言い。
リゼルに向かって手を向けようとしたのだが 僕はその腕を掴むことで魔王の動きを止め。リゼルに魔王を殺すように促す。リゼルはすぐに動き出し
「魔王!!あんたなんかに私の大切な人を奪われてたまるものですか!!!!」と言い放ち。剣を構えて攻撃態勢に移る だが魔王もすぐに攻撃を開始し。剣を振るうがそれを簡単に受け止める リゼルは剣を受け止められてもそのまま力で押し通そうとすると 剣同士がぶつかった衝撃で衝撃波が生まれ、そのせいで地面が砕け散ってしまう それから何度か鍔迫り合いのような状態が繰り返されると 僕はあることに気がついた。それはリゼルが徐々に力が上がっていることである
「おい!!お前!!俺の身体を使って何をするつもいなんだ!!」と僕は叫ぶと 魔王は笑みを浮かべて「なに。君が持っているその指輪の力で。君の中の魂が変質してしまっただけだから安心しろ。それにその指輪があれば私は死なないし。お前が死ねば私は元の世界に帰れるようになるから。少しの間眠っていてもらうぞ。そして目が覚めたらまた会おう」
そんな言葉を言ったあと 僕の中にいたリゼの意識は完全に途絶えてしまったのである。僕はその事にショックを受けるが 今はそれよりも魔王との戦いを優先しないといけない 僕は、その事に怒りを込めながら、魔王を斬撃を叩きこむ
「貴様!!その技をどこで手に入れた!!」と叫んだが、その質問には僕は答えるつもりはなかった なぜならこいつがこの世界の神様だから 僕はリゼルが使っていた剣術で応対することに決めた。そのおかげで リゼルの力を扱えるようになったので僕はその力を使い、何度も魔王を切り刻むことに成功する だが それでも魔王を倒すことはできなかったので僕は、最後の手段を決行することにしたのであった その事を実行するためには少しだけ時間が必要になってくるが、それまで耐え切ればいいだけの話だと思い。
僕は時間を稼ぐためにあえて隙を見せて。そのチャンスを逃すような相手ではなかったのであろう。
一瞬のうちに間合を詰められ、攻撃を仕掛けられる その攻撃を受け止めるため。
僕は刀身に雷属性を宿した。その剣を左手に持ちながら 右手には魔法で作った氷柱を作り出した。
この武器を使えば一撃でも当たれば勝負を決める事が出来ると思い この二種類の武器を使うことにしたのだ その武器を巧みに使いながら攻撃を繰り出していくが 流石は勇者の師匠である魔王であると実感させられた いくら僕の力が強くなっているとは言えど。まだまだ魔王の足元にも及んでいないことを理解してしまうと 僕の中にあるもう一つの力を発動させた 【能力融合】発動させると。僕の能力と他の能力を合わせて一つにすることができる能力で、今回は、雷属性の魔法と、氷属性魔法の合わせ技を行う事によって魔王の攻撃を凌ぐことにした
「まさかその組み合わせで対抗してくるとはな!さすがは勇者の師匠というところか!」そんな言葉を発しながらも魔王の攻撃は激しさを増していく それを僕は防ぎ続けるがだんだん押され気味になっていた。そしてとうとう僕は防御に使っている氷柱を折られてしまうと 次の瞬間。僕は吹き飛ばされてしまい 壁に激突するがどうにか持ちこたえ。次の一手を打つべく行動する。僕の目的はあくまでも時間を稼いで仲間と合流することが大前提にあるので 無駄に戦うことはしない。
それに 今の僕の状態が良くない状況なのは変わりないのだ
「ほう。まだやるというのだね。ならこちらもそれ相応の対処をしなければな」と言い放つと。今まで以上に激しい戦闘が始まった そして僕は時間をかけ過ぎてしまい、 僕の体力に限界が訪れ始めていたのだった。
そしてついに僕に疲れの色が見え始めた頃。
魔王がニヤついた表情を見せてきたのである
「ふははははははは。ようやく君との別れの時がやってきたようだね。君との旅はなかなか楽しかったよ。特に君は面白いことをしてくれるから本当に飽きなかったよ。だけどそろそろ終わらせようか」と言って、さらに激しい攻撃が僕に襲い掛かってきたので、その全てをなんとか捌くことに成功して反撃のチャンスを伺っていたのだが。その機会を中々作ることができず。
そして僕は、自分の体の限界が近づいているのを感じ取り、もうすぐ決着がつく事を覚悟すると、その時に魔王の後ろから何かが飛んできていることに気が付いたのである。それがリゼルである事を確認すると僕はすぐに彼女の下に行こうとするが その行動を予測されていたのか 僕に攻撃を仕掛けてきて邪魔をする その攻撃を防ぐために、僕は持っていた二つの刀で受けようとするが威力を相殺することはできても完全には抑えきる事はできず。そのまま僕は、地面を滑るようにして吹っ飛び。リゼルと魔王の間に入り込むことに何とか成功するとそこで僕は倒れ込んでしまう。だがどうにか意識だけは失わずに済んだので意識ははっきりしていたのだが。体には全く力を入れることができないほどに疲弊しきってしまい。立ち上がろうと思ってみても全く体が言うことを聞かない状態に陥ってしまったのであった。僕はこのままだと確実に殺されてしまうと思ったのでリゼルを逃がそうと行動を開始する。まず最初にリゼルを安全な場所に転移させる そして次に僕は自分自身をリゼルが魔王から見えない位置にまで移動させることに何とか成功した。そしてリゼルの方を確認するとリゼルが魔王と戦っていたが、かなり劣勢を強いられていて、リゼルの顔が悲痛に染まり、涙を浮かべていたのが分かったので、そんなリゼルを見ているのは心苦しかったが。このまま見ていることしかできない自分を恨んでいた。そんな時である。リゼルの様子がおかしくなりだしたのである。そして、いきなり苦しみだしたかと思うと。急に大人の姿に変わりだした
「おい。なんでお前が私の姿で戦っている?」
そうリゼルの姿をした者が喋ると、今度はリゼルに姿を変えて
「私も貴方と同じ気持ちですよリゼちゃん♪私が助けなければあの子が死ぬところだったのに。何もしなかったなんて許せないんですよ」と言いながら魔王と戦い続けた それからも戦いが続いていたが 次第に魔王は劣勢になっていくが。リゼルはリゼルの姿を見て戦っている為か攻撃はそこまで強力ではなかったが それでも魔王にかなりのダメージを与えてはいるようで魔王の動きが目に見えて鈍くなり始めている事がわかる だがその反面。リゼルの動きもあまり良くはなく。
攻撃を食らい続けている状態であり このままでは二人共殺されることは間違いないと判断すると 僕は二人の動きを止めるように念じ。その願いが通じたのか、リゼルの方はリゼルが動きを止めてくれ、リゼルに化けている奴の動きはリゼルの身体を操って止めてくれた その後。僕は魔王に対して、魔王の魂に刻まれていている魔法を打ち込む事に成功し。これでこの戦いに幕を降ろすことに成功した。
それから僕は魔王にとどめをさす前に、この魔王の体から魂を抜くことにした。
理由は、魔王の力を手に入れる為にはこの魂が必要になってくるからである そう思い。魔王の体から魂を抜き取ると。その魔王の魂を吸収し、自分の中に封印することを試みた。その結果。僕が手に入れたのは。勇者の力と魔王の力を手に入れてしまったことになる。その事に少し困惑したが。
今はリゼルを助けるのが先だと思い。リゼルが今どういう状態で意識を失ってしまっているのかを確認するために急いでリゼルの元に向かう だがそこにいたのは、さっきのリゼルではなく 元のリゼルが眠っていたのだ。しかも何故か僕もリゼルも裸の状態になっていて、その事に驚いたのだが、今はリゼルをどうにかするのが優先と思い 僕は服を着るのを諦めリゼルを抱え。この場所を脱出すると、仲間たちと合流するのだった それからしばらくして僕はリゼルと一緒に目を覚ましたが、魔王と戦った影響で、僕の体の方はボロボロになっていた なのでしばらくの間、リゼルに僕の回復をしてもらい。その作業が終わった後。リゼルに僕の体を休める場所に移動すると伝え。その場所に向かい移動を開始したのだった。
僕たちはこれからこの国を出て別の国に向かおうと思っているので、まずは拠点を作る必要があるのだ。それに魔王から奪った力をうまく扱えるようにならなければいけないという理由もあり、その二つを満たすことが出来る場所に僕たちだけで向かうことにしていたのだ それに僕は魔王に負けて魔王の力を奪えたが、まだまだ完璧ではないという事を知り。更なる力を得るために修行する必要があると思い。魔王から得たスキルを試してみたり。新しく得た力を使いこなす特訓を行う事を決意して。この国を後にしたのであった。
僕たちはこの国に戻ってくる事がない事を確信してから出発すると。魔王が暴れたことにより混乱が起きていたので 僕たちが出て行く事によって、この国がどうなろうと僕たちの知った事ではないが、ただ、そのことで罪悪感を覚えなかったわけではないが、それはこの国の者たちの問題であるので 僕らはそのことについて考えないようにする それから僕は【収納】の能力を使って馬車を取り出し その荷台にリゼルを横にすると同時に僕たちも乗り込んだ 僕はその事を気にする事なく。リゼルが回復するまでの間 僕は魔王に勝った余韻に浸ることにした そのおかげでこの世界に召喚されてから初めて。心の底から勝利を喜べた気がしたのだ
「それにしても。よく勝てたわよね。あの時は流石に死んだかもと思っていたけど、こうして無事に戻ってこれたのは、間違いなくあなたのおかげだからね。本当に感謝しているよありがとう。あともう少しだけあなたと旅を楽しみたかったけれど、それもここまでね。本当はもう少し一緒に居たかったのだけれども、ごめんなさい。私はそろそろ行かなきゃいけないみたい」と言い出すと。彼女はそのまま僕の胸の中に飛び込み。その柔らかい物を僕の体に押し付けてくる その行為に僕は動揺して言葉が出てこなかった
「ちょ、なにやってんのさ?そんなことをしてる場合じゃないだろうに。早く離れてくれって」そんなことを言うとリゼルは そんな言葉を無視をし。更に強く僕を抱きしめ。離そうとはしてくれなかった。そしてリゼルは 今まで僕に見せていなかった優しい笑顔で微笑んでくれた。
「あぁ。最後にこれだけは言っておきたいのだけど。私がいなくなったら多分。いや、絶対に、あの子は泣くかもしれないからね。それと。私が居なくなってからもずっとそばにいてあげてね。それがあの子の幸せでもあるの。お願いできる?」と言うので。
「もちろんです」と返事を返すと、リゼルは嬉しそうな表情を見せ僕の頬に手を当てるとキスをするかのように唇を近づけてきたが、僕の体は金縛りにあっているのか動かすことができなかったのである それを見てなのか
「やっぱりダメだった。こんなことをしたら私の力じゃあなたを完全に縛ることはできなくても動けない程度のことはできたと思ったのに。まだ力が足りないのかな?それにしても、こうなることも予想していたんだけど。やっぱり辛いな」と言い出した それを聞いて僕は、僕は「ちょっと待ってくれ。なんで君はまだ諦めているんだ。まだ僕には君を助けられる可能性があるんだぞ」と言った その言葉を聞いていたのか聞いていなかったのか分からないが、僕に背を向けていたはずの彼女が振り返ったかと思うと、そこには涙を浮かべて泣きそうになりながらも必死にこらえている少女が立っていたので僕はその少女に近づき抱き締めてあげるとそのまま僕はリゼルを押し倒す形で倒れ込むが、それを気にもせずリゼルは
「そんな事言ったって。無理なものは仕方がないじゃんか!私だってもっと生きたかったし!でもそれがもう叶わない事くらい理解できているんだよ。そんな事も分からないなんて酷いじゃないか」そんな事を言ってきたので僕は
「そんな事は知っている。でも。その願いがもう叶うことができないっていう事実を理解したくないだけだろ。君の本当の願いは別にあるんだろう?」その問いに対して答えようとしないリゼルに対し 僕は 強引に口付けをして無理やり自分の思いを彼女に流し込もうと試みる それからしばらくすると。リゼルが落ち着きを取り戻し。再び話をすることが出来るようになっていた 僕はリゼルに対して。リゼルの身体を乗っ取ろうとした人物のことを詳しく聞き出し リゼルの話を聞き終わる前にリゼルは倒れてしまう そのことに疑問を感じつつも僕はリゼルの言うことを最後まで聞かずにリゼルに口移しをしようとした時に 僕の体に衝撃を受けてしまい。そのまま僕は意識を失ってしまったのであった。
意識を失った僕だったが その出来事から数分後。目が覚めてみると、僕の腕の中にはリゼルの姿がなくて、慌てて周囲を見渡すと。僕は森の中で寝ていたことが分かった だが近くにはリゼルの姿がなく。不安で心が押しつぶされそうになるが とりあえず、ここから脱出するために移動を開始しようとするが そこで違和感を感じたので足に目を向けると、両足の感覚が消えており 僕はその場に立ち尽くすと。その事について考えることにした。そして、その事で、魔王の最後を思い出したのだ 魔王の魂を抜き取る時 僕と魔王が融合していて その時に魔王が「これでお前との繋がりが絶たれたわけだが、またどこかでお前と出会う時があるだろう。その時に決着をつけるまでせいぜい頑張るんだな!」と言っており。その言葉の意味は分からなかったが。おそらくその時が来たのであろうと思い。僕の中で警戒を強めるのであった ちなみにこの時。僕の頭の中では二つの事が同時に起きていたのだ。一つ目は僕の中にあるスキルの一つ【複製体】の力を使った事により僕の記憶と知識を持った僕が産まれていたことであり。二つ目の出来事として、その僕と融合したことにより僕はこの世界に存在していたので魔王から与えられた力を扱う事ができるようになったのだ それから少し経つと、この森の奥から複数の人影が現れる 現れた者達は武装をしており、その中に一人の老人が現れたその姿は、かつて勇者として魔王討伐に向かった僕たちの国の王様であり。その事に気づくと僕は即座に膝を地面につけ敬意を示したのだ その行動を見た老人の集団の中から一人の騎士が現れ
「お久しゅうございます。陛下」と言うと、僕が誰なのか気づいたのか「そのお姿と声色と気配。もしかしてあなたは――ゼクス様ではございませんでしょうか?あの魔王と勇者がこの世界を去っていったあの日以来行方がわからなくなっていたのですよ」と言い出す その事に僕が「確かにそのとおりです。申し訳ございませんでした。私はあの時、自分の未熟さと甘さにより敗北し魔王に体を乗っ取られてしまったのです。そして今。この世界の新たな魔王を倒すため、そして世界を救う為、この体の持ち主であった彼女の記憶を覗かせてもらった所。この場所に何か手がかりが見つかるかもしれないと思案した結果ここに訪れさせていただきました」
それから僕がどうしてこのような状況になっているのか。この場所に来た経緯を説明すると。彼らはその話を聞いて納得してくれたようで。
僕たちはこれからこの国の中に向かうと伝え。まずはその国の王都に向かうことにする そしてこの国の王城に到着するとその城内は荒れ果てていて。多くの者たちの死体や怪我をしている者たちがいた そんな人たちにポーションを渡すと。この国の人たちはお礼を言いながらこの場を離れていったのだが。そんな中で。僕に声を掛けてきた者たちがいたのだ その者たちの名前は アテナ アルテミシア アルタイル アルテミス ヘルメス アポロン アフロディーテ ポセイドン ハデス ゼウス デメテル ヘラ と。いう名前の七人の神たちが僕の前に姿を見せた 僕はその事を不審に思ったが 彼らが何者なのかを僕が知る由もなく。
取り敢えず僕たちは彼らをこの国で一番綺麗に保たれている場所に連れて行き、そこで話し合いを行うことにする その話し合いとは勿論。この国で起きた事件の事とこの国に起きた変化の原因である。
それを知るために僕たちが動き出す
まずはこの国を襲った敵が何者であるかを推測するために【鑑定】を行い。敵の種族を確認することにして その結果。魔王軍に属するモンスターだと分かり。さらに詳細情報を開くと 【名前】:サタン 【レベル】
:999 HP 9999,999/9999,999 MP 9999,999/10 SP 100,000,000/1,000攻撃力
:1,087,000(MAX)
防御力
:1,550,000
魔力 :506,000
魔防力 :699,500
素早さ :5,039,000
知力 :2,920,000
精神力 :252,000
運 :154,000
〈称号〉 :なし と。書かれていた その名前を確認した僕は「どうやら。あの時の続きをするしかないみたいだな」と独り言を呟き それから【収納】の能力を使って武器をいくつも用意し始め。僕が戦う準備を進めていると そこに神々の使いと思えるような見た目をした女性たちが姿を現して僕たちの前に現れた
「私たちの呼びかけに応じて下さり。誠にありがとうございます。私たちのお願いをどうか聞き届けていただけないでしょうか?」
と彼女たちの一人が言い出すと僕は
「あなた方のような高貴な存在が。わざわざ出向いてくださる理由とは何でしょう?」
「それはですね。実は。あの者があなたの世界の人間を利用して。こちらの世界に来ているようなのです。その者はあなたのいた世界でもかなり悪行を行ってきたらしく。それを聞いた私たちはあの者を懲らしめるため。あの者の元へ乗り込みたいと思っています」
と彼女からそう言われた僕は「なるほどそういうことですか。それでその方の居場所は分かるのでしょうか?」と質問すると。
「はい。あなたをその者に近づけないようにするのが私の役目なので、あなたにその者の元に行くことを邪魔することを許してくださいね。あなたは私の愛しい息子。ゼクスなんですから。私の手で傷つけることは絶対にさせません」
と僕の目の前にいる女性が言い出し 他の六人が僕の方に近づいてくると、その手に持つ槍や剣で僕を攻撃してこようとする 僕はそれを【絶対障壁】を使い。攻撃を弾こうとしたが。その攻撃を僕は跳ね返してしまい 僕の放った攻撃で神々がダメージを負い倒れていく姿を見て僕は「まさか僕の家族だったなんて思いもしなったよ。だからと言って許すつもりはないけど。僕は僕をここまで育ててくれた両親と兄に恩返しをするため。僕の家族の幸せを守る為に、君たちをここで止めさせて貰う」
その事を言うと僕は【転移】でその者達の後ろに回りこみ。背中を押して全員を壁にぶつけ気絶させるそれが終わると僕は神々が気がつくまでその場で待つことにしたのであった。その間に先程の者達について確認したいことがあり そこで【神との対話 を発動し
「なぜ私と会話ができるのだ」と僕に問いかける それに対して僕は「それは。今の私なら、私の中にあるスキルの効果を使うことができますので。貴方たちのことを詳しく聞くことができたのです」と言うと それを聞いて僕に話し掛けてきた人物は驚き。それからしばらく話をしていると、その人は僕の事を「私の後継者になってほしい」と言ってきた それからしばらくすると。僕の元にこの国の女王を名乗る人が現れ。僕はその人から事情を聞かされることになった それから話をしていくうちに分かったことがある。僕はその女王の話を聞いていくうちに僕の中にある仮説が生まれることになる 僕の中に流れてくる映像には。僕の知らないはずの知識があったのでそれを僕なりの推測を加えて説明をする事にする その僕の話を聞いた後に、女王が僕の事を褒め称え始めて、その様子に僕は苦笑いをしながら、これからのことを色々と話し合う事にした その後 僕とこの国の人たちは話し合いをしてから今後の事を決めて、まずは国王を蘇らせるための方法を僕なりに考える事にする そして僕の頭の中で浮かんだイメージが二つあったので。僕たちはこの城を出てからある場所に向かい その場所は地下にある牢獄であり そこには僕が以前。勇者であった頃にこの国の王族に対して行った事によって閉じ込められていた人達がおり その人たちに対して僕は話しかけることにしたのだ その事を話し出すと一人の青年が僕に敵意を向けてきていたが、僕がその事について説明すると 皆僕に向かって感謝の気持ちを伝えてきた その事に少し戸惑いつつも
「いえいえ、困っている人を助けたいという僕自身の意思で行ったことなんで。別に大したことじゃないですよ」と返事をしておいた それから少し時間が経って ようやく僕の中に流れ込んで来た記憶の中から。この城の見取り図を思い出し 僕は僕自身が知り得る限りのこの国の城の中を知り尽くしていたので。僕はこの城の内部を把握していた。その記憶を頼りに僕は城内を駆け巡り、城の中の人たちを外に誘導することにした その事で城内の人たちを助けることに成功し。城の外にいた人たちにも手伝ってもらい。城の中に囚われていた人を救出し。その人たちが城内の人たちを外まで案内してくれている間。僕はその人たちが逃げ切れるようにとこの城を僕の力で守っていく そして城内をある程度探索し終えた僕が外に出ると。そこには既に敵の姿がなく どうやら。この場からは離れていったようで
「ふぅ。これで一安心かな」
それから数時間経つと 僕のところにこの国の王女と名乗る人物が訪ねてきた そして僕からお礼を伝えるとそのお礼の言葉に対して僕が「気にしないで下さい。それよりも、今この国はどういう状況になっているのか教えてもらえないでしょうか?」と伝えると。その少女はその問いに答える
「はい。実は今。魔王がこの国に襲来しています」と言う
「それは本当ですか? どうしてこの国の人たちはこの事を早く言わなかったのですか? この事を言えば少なくとも国民たちにパニックが起きるはずです」
と僕はそう言い。続けて彼女に言う
「もしかして。何か言えない理由でもあるんですか」
その言葉を聞いてその女の子は黙ってしまう それからしばらくの間 彼女が口を開かない状態が続いたのだが それでもなお。この国がこの国の王様がいなくなった理由について僕が聞こうとすると 僕たちがこの城に戻ってくる間にこの国の兵士たちは敵と戦っていたようで。兵士の数が大幅に減少していて。その兵士達が必死で戦ってくれたことでこの城は何とか持ち堪えることができたようで 僕たちはこの国の現状を把握できたところで。僕はその事を報告し。そしてこの場から立ち去ろうとしたが その途中で僕が助けた人物たちが僕のところに来て。そして僕の事に感謝の意を表わしてきたのだ そして彼らは僕にお礼をしたいと言っているが そのお礼がこの国を治める王になることと、この国の守護神となってくれないかというお願いをされるのであった そんな僕がこの国の王になるかどうか迷っていた時だった。
僕は突然現れた男により その首を撥ね飛ばされ 地面に倒れる前に首のない僕が倒れていく光景を見て僕は恐怖を覚えた
『くそ!こんなときに一体誰だ!』と心のなかで怒りを覚えるが その瞬間に僕は死んだ筈なのにまたもや意識があるという現象が起きたことで僕はまだ死なないようだ すると僕を殺した張本人と思われる奴が「お前も中々しぶといな。だが俺も用事があるんでな、悪いが死んでくれ。お前が死んだら次はあの小僧を殺す」
その男は僕の事を知っていたみたいだったが、僕は全くと言っていい程にその人物を知らないので「待て!」と言いたい所ではあるが声を出せないため。何も抵抗ができないまま、殺される 次に目が覚めた時には何故か僕の体は元通りに修復されていた。そこで僕は自分の体を確認しようと思う まず最初に。自分が着ている服を確認。それは僕が通っている学校の制服だとすぐに理解ができた。僕はその事から自分が過去に遡ったのではないかと感じ始める。そして自分が学生だということを理解した僕は、自分が通っている学校が何処なのか思い出そうとすると。その答えはすぐに出てきた 僕が通う学校の名前は桜ノ原学園といい。私立の名門校として全国的に有名な学校で、偏差値がものすごく高く、その高校に入るために、全国でもかなりの数の中学生達が、この学校に受験をしている 僕はそのことを思いだし、この僕が住んでいる地域について、そしてこの僕が置かれている状況を考えてみる すると、僕はとある疑問を抱く。僕が住んでいた家はどこにいったのだろうか そもそも何故。僕は過去の時代に来てしまっているのであろうかと、僕はそのことについて考えていると。
そこで僕はあることに気付く。そう僕は一度死んで生き返るという経験をした。つまり僕は輪廻転生を経験したということではないかと思った。そうなってくると。今のこの状況も理解できる気がした。つまり僕は過去に戻っているのだ だけど、それがわかった所で今の自分に出来る事は何一つ無い。なので僕のできる事といえば 未来の世界を救う為にこの世界を救い、その先にいる勇者である兄に託すくらいしかないと僕は考えた。なので、その目的を果たす為にまずは、この世界に何が起こってしまったかを知ろうと僕は行動に移した まず初めに、僕がこの世界の歴史を調べると。魔王が現れてからこの国と周辺国で様々な戦争が繰り広げられていて、特に大国と呼ばれている三つの国の周辺諸国との間で戦いが起きていた 僕はそれらの出来事から、魔王と大国の三つが手を組んで、魔王が他国に侵略を開始したと考えるのであった 魔王と三国の連合軍がこの国に迫ってくると。この国の人たちは怯えてしまい。そして多くの人々が、魔王を恐れて、この国から逃げ出し始めてしまう それを見た僕がどうしたらよいかと戸惑っていると
「この国を出ましょう」と僕の事を誰かが言い出しその人の方を見ると、そこに立っていたのは。金髪の美少女だった。その人が言うに、今は少しでもこの国の人達を助けてあげる事が先決だという それを聞いて僕はその提案を受け入れることにした その後、この国の人々と共に僕は国外に出ることになり。その道中で僕と彼女は会話をする。彼女も僕と同じで、この国に勇者召喚された人間らしい
「僕はタクトっていうんだけど。君は一体なんて名前なんだい?」
と、僕に話しかけられて。その女性は、自分の名前を僕に伝えてくれた 彼女の名前はリリスという名前で。この国の第三王女様のようで その事を僕は知ることになる。そして話を続けて行くと、この国の現状を知ることが出来た この国は現在。敵国である隣国に攻め込まれている最中で。このままではいずれはこの国の民達は皆殺さられてしまうとリリスは言っており そんな話をしていた矢先に 突然目の前に巨大な火柱が上がり爆発音が聞こえてきたのである それは明らかにこの国を攻めに来た敵軍による攻撃によるもので。その攻撃を受けてしまったこの国の人達の避難誘導を急がないといけないと感じた僕が リリスさんと二人でこの国の人達を誘導している途中。突如空が暗くなり。黒い雷がこの国の上空に降り注ぐ。
「あれはなんなんですか?私にはわかりませんが、ただ言えることは。あれに触れれば間違いなく死ぬと思います。私は」と言うので。
僕はこの国を守る為にも。まずは敵の狙いを探る必要があると考えた僕は、僕と一緒に行動してくれているリリスさんの方をちらりと見て 僕は彼女に、あることをお願いする
「あのさ、僕のスキルは知っているんだよね」と僕が尋ねると。彼女が僕に言う
「ええ、【鑑定】という勇者の加護ですね。私もそれであなたを鑑定させていただきました」と言う 僕はそれを確かめてから「なら僕の事を信じて欲しいんだ。僕はこの国に生きる人全員を救ってみせるから」
「分かりました。勇者殿」と僕に返事をして彼女は、僕に笑顔を見せてくれて そんな彼女とのやりとりを終えたあと。敵からの砲撃に対して僕は防御壁を展開させ。その攻撃を全て防いで見せた するとその行為を目の当たりにしたリリスは僕に対して質問を投げかけてくる
「今あなたの身に起こっていることが信じられないのです。ですがそれは紛れもない現実であり。あなたは今この国にいる人を助けようと必死で頑張ろうとしているのがわかるからこそ、あなたにお願いがあります。この国の人たちを。どうか助けてください」
その頼みを聞いた僕は彼女に言われるまでもなく、この国の人たちを守り抜くつもりだったので 僕の持っている全ての力をここで使ってやろうと思っていた。そして、敵の攻撃が止むと。今度は僕の足元に大きな魔法陣が浮かび上がりそこから無数の炎や水が吹き出す それから僕の周囲に結界が展開され。僕の周りにいた人々が次々と飲み込まれていき。やがて僕が展開したはずの結界に亀裂が入っていくと 僕が作り出したその空間が壊れ始める その事によって僕は、再び過去に戻らされることになると予想できた そうして。この国の人達を助けることに失敗したことで僕は。この国が滅びるまで時間が無いことを知る そこで、僕はもう一度、過去に戻り。今度こそこの国の人達を救えるようにと、決意を新たにするのであった。そうして僕の二度目の人生が動き出した 僕は自分の体を確かめると そこには、今までとは違う肉体が存在している その事を確信してから僕は今置かれている状況を把握する それから僕が現在どのような状況なのか調べようとすると 突然背後から誰かが襲いかかってきたので 僕はすぐにその攻撃を回避すると。その攻撃をしてきた相手を確認する そこに立っていたのは
「貴様に殺された怨みを忘れてはいないからな」とその人は僕に言う それから僕は襲われている間に僕はこの世界で生きてきた中で覚えのある記憶を思い出し始める 僕を襲っていた人物が言うには。僕はこの人に殺され。生き返った直後にこの場所に飛ばされたようである。この人物はどうやら勇者召喚された際に現れた僕を殺そうとしていた奴の一人のようで。
この男は。その勇者の僕を殺して、他の奴に僕を殺してもらえば、自分がその功績を得て出世することができると考えていたみたいだそして僕は、この男に殺された事によって、過去の世界に戻ってきたみたいだが、しかし、この世界と前の世界では何かが違う気がした 僕が最初に目を覚まして感じたことが、まず一つ目に、ここは自分の暮らしていた場所ではなく。どこかの国の中のようだということと 二つ目に。僕のステータスが、前の世界の時とは変わっていて。僕自身、その事に気が付いた時。自分の能力が上がっていることにも気が付く。僕はそこで自分が過去の時代に遡ったのではないという仮説が立ったので 僕はこの世界は。異世界に転移してしまったのではないかと思う。なぜなら僕の能力は以前の世界でもそれなりに高かったのだが、この世界だとさらに強くなっているから、それに。
僕を襲ってきたこの男のことも思い出す。僕はこの男と会ったことがある。
名前は知らないし。どこで出会ったのかわからないが、僕は一度死んで、生き返った際にこの男が僕の前に現れていた。そしてその男がこの国に攻めてきた魔王軍の一人で。しかも魔王軍の幹部の一人であるということを僕だけが知る 僕だけしかその事実を知らなかった理由が、僕の【隠蔽】のスキルの能力で、自分の存在を完全に消すことができたので。魔王軍の幹部が攻めてきていることを国民達が知ることはなかった この世界と元の世界では色々と変わっているので。まずは僕の事を僕が知っている限りで確認しておくことにしよう まずは。僕の事をこの国の第三王女であるリリスから聞いて確認する。彼女は僕よりも一つ年上で16歳。身長は160cmくらいで、髪の色はピンク色をしている。この国の中でもかなり人気の姫君らしく、この国にはリリス目当てにこの国にくる者も少なくはない 次にこの国に着て一番最初に僕に話しかけてきて、僕をこの国に導いてくれた金髪の少女の名前は。リリスの姉の第三王女であるリリナで。リリスと同じ年齢であり、身長は155センチくらいで、髪の色は赤色である そしてリリスの妹にあたる第二王女は第一王女と違い、お淑やかな性格であり、とても大人しい子であるらしい リリスの話によるとリリナとはあまり折り合いがよくないらしい リリナの事をあまり悪くは言わなかったけど 最後に。この国の宰相を務めている。この国では最も偉く地位の高い人物であり、僕とこの国の事について話をしてくれた人物である、彼の名前を僕が忘れるわけがなく。この国で誰よりも良い暮らしをしており 貴族のような振る舞いをしていて。それで僕を召喚させた人物でもあることから 僕の中でこいつが勇者である兄をこの国から追い出し。
勇者の力を手に入れた僕を殺すためにこの国を攻め落としにきたと予想がつく
「この国は私が守る。だから早く逃げろ」と僕は言うが その僕の言葉をリリスは「ダメです!貴方も一緒に」と言って、僕を連れて行こうとするので
「この国にまだ避難できていない人が沢山いるだろう?だから僕はそいつらを避難させる」とリリスに伝えてからリリスに背を向けると リリスの方は僕の背中を見て。何かを決意したかのように「私も手伝います」と言うので リリスに僕と一緒にこの国の人達を救いに行かないか尋ねると
「えっ、どうして私にそんなことを言うのですか?」とリリスは驚いていた リリスはこの国の人を守る為に、この国に残っているようで 僕はその気持ちが分からなくもなかったが リリスと会話をしながら歩いていると突然リリスは「あっちに逃げ遅れている人達がいる」と叫ぶので その声に反応して、リリスが指を指した方に向かって僕が走り出すと 僕の視界に入った光景には 数人の人間が魔物に襲われそうになっていた
「リリス。あいつらを守ってやってくれ。僕はこいつらを助けるから」と言い 僕はこの国の人間を魔物の攻撃から助け出しながら進んでいくと リリスはその場にとどまり。避難している人達を守っているので、それを見た後 先程僕が助け出した人達を安全な場所に誘導してから。
僕は目の前に群がってくる魔物たちを薙ぎ払い 僕は次々と襲って来る敵を倒していった。その途中僕はある疑問を抱くことになる。何故こんな所に、こんな大量のモンスターが現れるようになったんだ?僕はそんなことを考えながらも 敵を倒す事に集中する それから、ある程度倒したところで、僕に襲って来た奴らが一斉に引き始めた。それから僕の背後からは大勢の悲鳴が聞こえるので。
僕は急いで振り返ると、そこに居たのは、巨大な狼の姿で、全身が真っ赤で。この辺りの木々より巨大な狼がいたのだ それから僕はその巨大な狼に攻撃を仕掛けようとしたが
「お前もここで殺すか」と突如としてその巨体が消えたと思った瞬間に、僕の腹には鋭い爪が食い込み 僕はその勢いのまま吹き飛ばされてしまった。それから、僕の腹部にめり込んでいた手が引き抜かれると「貴様を先に殺さなければこの国の人間は全員皆殺しにしてやる」
その言葉を聞いて僕は
「やれるものならやってみればいい」と僕が言うと
「それは出来ない」と相手は言うと「私はあの勇者が嫌いなのだ。だが私の主である女の命令に従わないと殺されてしまうからな」
それからその狼は自分の腕に魔法をかける その魔法をかけたことによってその巨体はさらに巨大化していき。僕の目には。僕の3倍ほどの体格の赤い大男がそこに現れた。そして、その大男は魔法を使う その魔法の効果は、肉体の強化であり。僕の体も徐々に強化されていくのを感じる それから、その巨人は僕に対して蹴りを入れて来て。僕がそれを防御壁で防ぐと。その足が一瞬光り輝く その足の一撃で僕は吹き飛ばされるが、すぐに立ち上がり。反撃を試みる しかし。その攻撃を軽くいなされて。僕は吹き飛ばされ。地面へと激突すると。僕の体はボロボロで、意識が薄れ始める そんな時、僕は自分の能力が上がっていたことを思い出し。僕はこの場でもう一度。
自分の持っている全ての力を使って。僕が使える全ての技を駆使して、その化け物に攻撃するが 全てその攻撃が当たってもまるで相手には効かず。僕自身も傷だらけになり。体力的にも限界が近づいていた
「もういいだろ。これで終わりだ。死ね!」とその巨人の男の声と共に。僕は地面に押さえつけられ。そのまま首に手がかけられる そして、僕は死ぬのかと思い。その覚悟を決めた時だった。僕と、その巨人の間に。リリスが現れた
「どうして。どうして戻ってきたんだ」と僕が叫ぶと。その言葉に答えるように。僕の耳元に優しい囁き声が届く
『あなたを助けに来ました』
それから僕達は、僕を助けに来てくれた。その少女によって窮地を救われるのであった その少女の名前はエフィリスというらしく 見た目は10歳程度の幼く見える容姿をしており 金髪の髪の毛を腰くらいまで伸ばしていて 髪の色と同じ瞳をした可愛らしい顔立ちをしていたのだが。彼女のその手は 僕が今、押さえつけれている男の腕を掴むと、彼女は男の手首の骨を掴み折った そうして僕の首を掴んでいた男の力が緩み
「リリスは早くここから逃げるんだ」
僕はリリスに逃げるように促す しかしリリスは「貴方を置いて行くことは出来ません。私はお姉さまから言われたのです。もしもこの場にいる誰か一人を見捨てたら、その人の分までこの国の民を守れ。そしていつか。その人を蘇らせてこの国から救うことができるのならば、絶対にこの国から逃げてなるものかと 私も戦うから。だから一緒に戦おう」
リリスは涙を流していた
「分かったよ」
リリスは、自分が今まで育ててくれたお母様が亡くなってしまい。さらにこの国のお姫様になってしまったため、リリスには友達がいなく。いつも一人で過ごす事が多かったらしい。僕が初めて会った時に感じた寂しさを、彼女はずっと抱え込んでいて。
僕はリリスに同情し。彼女に心の底から笑ってもらいたいと思ってしまうと。自然と僕も涙が流れてくるので 僕はリリスを抱き締めてから「君のおかげで僕は生き返る事ができた。本当にありがとう」と感謝の言葉を口にした
「リリス。この国で一番のお姫様に、僕はなるんだろう?」
僕とリリスでリリナさんを探しに行く事にすると そこには巨大な鳥の魔物に捕らえられていたリリナさんがいた
「早くリリナを離せ!私に従えば痛い思いをさせないようにこの国を滅ぼすだけだぞ」
僕はその言葉に少しだけ驚くと
「まさか。その身体が貴方の本体ではないということですか?貴方はもしかする偽物なのでしょうか?」
「なんだ。その質問は?意味が分からないが。俺は俺だよ。本物だ。それより。早くしないとこの国が滅ぼされてしまうぜ」
その鳥型の魔物に捕らえられたままのリリナさんが 僕の後ろから姿を現して。僕に助けを求めていた それから僕たちは、僕達だけで。
リリナを捕らえていた鳥型魔物と戦うことになった。
その戦いの中で、僕の目には相手の弱点が見え始め。リリナさんの援護もあり。その敵を追い詰めると 僕達が追い詰められていく姿を見て。リリナを捕らえているその巨大な魔物は「お前達の負けだ。これ以上、この国に手を出さなければ命だけは助けてやる」と言うと 僕とリリスは同時に「そんな事はあり得ないだろう」と言うと それから僕は、僕が持っていたスキルの中で最強クラスの威力を誇る雷神拳を放つが その巨大な怪物はその攻撃を片腕で受け止めてしまい。ダメージを負ったようには見えなかった それから僕が追撃を仕掛けようとすると、突然その魔物は僕の方に向かって飛んでくると 僕に向かって爪を立てようとしてくる それから、僕はその攻撃を回避すると、その隙を突いてリリスが その巨大の敵の背中に乗り移り、背中に乗っていたリリスが。僕よりも早く動き 僕の知らないスキルを使用する リリスが使用したのは僕と同じく。僕の記憶が戻ったことで使用できるようになった【固有術技】であり。
リリスが持つもう一つの加護が覚醒したことで 新たな能力を使用可能になる それこそが【固有術技】と呼ばれるもので。その効果は、自分の知っている、あるいは覚えている全ての魔法が発動できるというものだった リリスの詠唱によって生み出されたのは。リリスの持つ炎の上級魔法であり。それは火の最上位魔法と言われる 【ヘルブレイズバースト それは僕が最初に放った。
その魔法とは比べものにならない程の巨大な魔法が生み出され それが敵に向かって襲いかかっていくと 魔物はそれをまともに食らってしまう だがそれでも。魔物を倒すまでには至っておらず。魔物は未だにその力を失ってはいなかった 魔物は反撃として。魔法を使おうとするが、それを防ぐように、リリナさんが魔法を発動する その魔法も、僕や、僕が使う魔法と同じ系統のもので 僕の放つ魔法よりも強力な攻撃を放ったのだった その二人の攻撃が魔物の魔法を打ち消すと 僕も攻撃に参加できる余裕が生まれ。僕は敵に対して全力で剣を振る それからしばらくして 僕の前には、完全にその巨体が動かなくなり その場に倒れたのだ そして僕はこの化け物をどうするか悩んでいた。すると僕の耳に聞き慣れない女性の声が響く
「貴方のその剣の力で倒せるでしょう。ですが、それはまだ早いかもしれません」
僕には目の前に倒れる、この巨体を倒した事で得られるであろう力を手に入れるべきなのか。迷っていたのである。僕が戸惑っていると 再びあの優しい声が聞こえてきた。それは先程、僕が出会った人物の声ではなく。別の誰かの声で
『その力を。どうかこの世界のために。魔王を倒す為に使って欲しい』と言われてしまった。僕はその声に従い。その魔物に攻撃を加えることにする そして、その魔物に攻撃を与えると その化け物は。この世界の住人であると分かる姿に変わり。その人物は地面に崩れ落ち。倒れ込んだまま起き上がろうとせず。僕はそんな彼に近づくと。彼に近寄って声を掛けるが反応がなく 死んでしまったのではないかと思ってしまったのである しかし。僕は彼の胸が微かに上下しているのを確認すると。僕はホッと一安心し その人物を安全な場所へと運び出すために。その巨体を持ち上げようとしたのだが そこで僕の体は突如現れた。全身黒装束の女性によって抱きかかえられてしまう その女性が誰なのかを僕は確認するために振り返り。そしてその女性の正体を僕が理解するまでそう長い時間は掛からず。僕は驚いた顔で彼女を見ていたのであった
『久しいね。そしてお帰りなさい。勇者』
そう言うとその女性は。僕に向けて優しく微笑んでくれていた
「どうして君が」
僕は彼女の名前を知らなかったが、彼女が自分のことを知っていることを不思議には思わなかった。そして、彼女の瞳を見つめた後に、彼女の瞳の中に。この世界に来る前にも、僕はこの瞳を何処かで見かけたような感覚を覚えたのである 僕はそれからその女に連れられて城まで戻ると リリスと、そのリリスの友達である、エフィリスが僕を迎えに来てくれた エフィリスは金髪の長い髪の毛をした可愛らしい容姿をしている女の子であり 年齢は10歳前後だろうか。リリスの妹という事になっていたが。僕は彼女を初めて見たとき。リリスが言っていた妹という事を疑ったりもしていたのだが。僕は、彼女との接し方が分からずにいた。僕がエフィリスの事を観察していると。彼女は僕の方に駆け寄り 僕の手を取ると、僕の手を引っ張り。城内の案内をしてくれようとしていた
「こっちだよ。お兄ちゃん。私、お兄ちゃんに見せたいものがあるの」と そう言われて、僕は彼女に引かれながら歩いているのだが その最中、彼女は嬉しそうにしながら僕に色々と話しかけてきてくれた
「ねぇ。お兄ちゃん。私ね。最近まで、このお城の人達が、あまり私の相手をしてくれないと思ってたんだけどね」
そう彼女は語りだすと。彼女はこの国の王女であり。その身分が災いしたのか。リリス以外の人はあまり彼女の遊び相手にはならなかったようだった だけど、今日から。この国の王子と、そして新しくやって来たお姉さんがリリスのお友達になってくれたらしく。その二人からとても楽しい時間を過ごすことができていると、彼女は楽しげに話してくれた そしてしばらく歩くと、大きな広間に着くと、そこでは沢山の人々が集まっていて。その中には王様とリリスのお父様も居たが。
しかしそこには見知らぬ男女の姿があった
「あ、貴方は」
僕が驚いているとお姫様は
「紹介するわ。彼が、お爺様の本当の子供であり。私達の義理の息子よ」
僕が困惑するのも無理はないだろう。その二人は僕がこの世界に転移してきたとき。僕の隣にいたはずの、僕の家族である父親と母親の。その容姿と、瓜二つだったので それからお姫様は僕達に向かってこう告げる
「私には貴方の力が必要よ。だから、私と一緒に、この世界を救いに行きましょう」
僕はそのお姫様の申し出に戸惑いを隠せない
「待ってくれよ。俺も。リリアナさんを助けないと行けないんだよ」と 僕がそういうと。彼女は僕に向かってこんな言葉を言ってきたのだった
「心配しないで。リリスにはリリアナは私達が連れていくからと言ってあるから。リリスだって貴方のことが大好きなんでしょう?本当は貴方について行きたかったけど、今はリリスを悲しませないために。私は貴方に託す事にしたんだもの。さぁ貴方が元の世界に戻るために必要なアイテムを渡してあげる。その力で、どうかリリスを守ってあげてちょうだい。それとこれは貴方への報酬だわ」
そう言うと僕に渡したのは小さな小袋に入った。金貨と、魔導書と思われるものだった。この世界では、お金が価値を持つのかどうかが不明だったが。とりあえずその報酬を受け取る事にする
(あれ?そういえば。さっき僕のことを見て「勇者殿」とか言ってなかったっけ?)
僕はそのことを気になったので質問すると 彼女は僕に対して答えてくれていた それは僕の前に現れた。あの魔物は実はこの国の国王の弟だったらしく。彼は魔物に変化させられる前は。優秀な魔法研究者でもあり。リリアナさんと共に暮らしていたらしいのだ。だが、ある時、研究中に事故が起きてしまい。彼は実験中に起きた爆発に巻き込まれてしまう。
そしてその結果、彼の身体は人間族とは少し異なる肉体へと変化してしまう それがどういう原理によるものなのかは、まだ解明されていないが。その変化の過程で、彼の頭の中から、今までの記憶が失われて、その代わりに。僕達と同じ。いや、僕達が本来持つべきではない能力を手に入れてしまったのだという それから、僕とリリスはリリスに誘導され。彼女の部屋へと向かって行く その途中。僕の隣を歩いていた、僕のことを弟だと言っていた少年が、僕に向かって自己紹介をしてくる 彼の名前は。【ルクス・アーカディア】といい。どうやら僕のお兄さん的な存在だと思っていたが。実は全くの他人であり。
リリスと血の繋がりのある。僕の親戚なのだと言う。しかし僕と、リリスは兄弟のような間柄なので、これからも僕達は仲の良い関係を築いていこうと話していたのである リリスが言うには、リリスの父親はリリスの母親は、リリスがまだ幼いうちに亡くなってしまい。リリスには母親しかいなかった。そのためリリスにとって父親の存在は特別なものでもあったのだ それから僕はリリスに連れられて、彼女専用の武器を保管してあるという。その部屋に向かっている最中に リリスと、そしてもう一人の男性が一緒に居る所を目撃していた。
それはこの国にやってきた時に。僕と最初に遭遇していたあの男である 名前は『ライゼル』というらしい 彼は元々は。この国に召喚された勇者として。この城に保管されていた剣を、魔王の城に持ち帰ろうとしてやってきたそうだが。そこでリリスと遭遇し。その後、この国を守護する者と知りながら魔王の配下に加担しようとしてしまったために 現在は拘束されているらしい。その彼の監視役として、現在。リリスの父親が彼を見守っているのだとかなんとか。しかし彼の処遇についてはまだ決まっていないのだそうで。今の状況から判断すると 彼はこのまま牢屋の中で余生を過ごすか。
或いは国外へと追放になる可能性もあるのだろう そんな話を二人でしている間に 目的の部屋へと辿り着き。
そこにはリリスが大切にしまっている。色々な武器が置かれており 僕がこの世界に来た時に持っていた武器。あの時の聖剣【ムラマサ リリスの父親の話では。それは神具と呼ばれているものであり。勇者である証でもあるのだが 僕は何故かそれに触れることができないのである その理由に関しては、僕自身分からないことだらけではあるが 僕は、この武器が使えないと分かった後にも。この武器の使い方を習得したいという気持ちが強く残っていた為。
僕は、リリスの父である『リゼラスタ』さんの薦めにより。この部屋に残されている武器の使用方法を学んでほしいと言われていたので 僕はそれに従うことにしたのである それから僕は、この国の兵士達の稽古をつけている先生と呼ばれる男性の元を訪れ そこで指導を受けることとなり。
それから数日間。僕はここで生活していくことになった しかし。僕が滞在している間。その間もずっと僕がリアリスの側に居られるわけもなく 彼女は僕の知らないところで頑張って訓練していたみたいで そして、その日々の積み重ねが、ついに開花の時を迎えたのだ。彼女の新しい力が目覚める その日は、リリアナと、そしてその妹の『ミルキー』との三人で。お城を抜け出すと。街へと出かけて買い物をしていたのであるが。その帰り道で。突然現れた黒装束の人物からの襲撃を受けた。その黒装束の人物の襲撃によって、その命を落としそうになるのだが。その窮地から救ってくれたのは。この国のお姫様であった
「さすがですね。この程度の敵ならば簡単に蹴散らしてくれるかと期待していましたが。やはり勇者殿は違いますね」と、そう言うとお姫様は僕のことを抱き寄せ。その唇に自らの唇を重ねてくる。僕はそれに戸惑ってしまうが、それからしばらくしてお姫様は離れていくと
「これで貴方も、正式に私の騎士になったのです」と、お姫様はそう言ってくるのだが 僕は彼女の言葉の意味を全く理解できていなかった。しかしそれでも僕と彼女がお互いに好意を抱くのには時間がかからなかったと思う その日は、僕はお城に帰るまで。お姫様と一緒だったのだから。そのあとに何か起こるのかと思ったけど。その日からは特に何も起こらずに数日が経過していくのであった そんなある日の夜に、僕の元にリゼラスターがやってきて。僕は彼と会話を交わす。
それからしばらく会話を交わしたのちに。お姫様の父親。リリスのお祖父さんと。僕は二人で酒を酌み交わすことになる。
お姫様が僕に惹かれているのは知っていたけど。
リリスのお祖父さんまで僕のことを好いているなんて思いもしなかった 僕とリリスのお父さんはお酒を飲みつつ、昔話に花を咲かせていたが。その中でリリスの母親が昔はとても明るく、誰にでも優しい女性だったことを知ることが出来た。
そしてその話を聞く限り。リリスがあんなに明るくて活発な女の子に育った理由も何となくだが納得することができた。だけど、だからこそリリスに、もしもの事があってはいけないとも思ったのだった 僕と、そしてお姫様が出会った日からしばらく経った頃
「お姉ちゃんが、お姉ちゃんじゃなくなるのはイヤなの。だって、私はお姉ちゃんが好きなんだよ」と、お姫様の双子の妹であり。このお城で暮らしているリリスは泣きながらお姫様に抱きつく
「心配しないでリリス、私はどこにもいかないわ。ずっとリリスと一緒にいるよ」と、お姫様は優しくリリスのことを抱きしめ返してあげていた。そんな光景を僕達三人は見つめる するとそこへ、僕の両親がやってくると、僕の両親はお礼を言うためにお姫様のもとを訪れる そして僕はこの時に初めて、両親の名前を知った 父の名前は『リゼルタ』。母の名前が『リリス』というのだそうだ。ちなみにリゼルタが僕達と血が繋がっている実の親だということが判明したのは。お城の兵士が偶然僕の名前を呟いたからである。
そういえば、僕には兄弟がいたらしく。名前は、ルックスという名前らしい。僕は彼に一度会ったことがあるが。彼は僕を見るとなぜか嫌そうな表情をしてすぐにどこかへ行ってしまったのを覚えている リーゼは、お爺さんに対してこんな事を聞いていた
「お父様。お聞きしたいことがあるんですが。よろしいですか?」
「ん?どうしたんだいリリス」
「お姉さまはどうして、お兄さんと仲良くしているのでしょうか?お兄さんは私達の事を見捨てて、勝手にこの国から逃げ出したんですよ?なのに、どうして、お兄さんはお姉さまと仲良くできるのでしょう?私には分かりません。だって私なら絶対に許せないですよ。家族を裏切るような人は」
「ふむ。まぁ確かにその通りかもしれないが。私にもそれは分からぬよ。私はリリスが幸せになれる相手を見つけてくれたらそれで良いと思っている。ただそれだけだ」
そんな話をするとリリスが
「えっと、その。私は別に。あの人のことを嫌いではないの。むしろ、あの人のおかげで今の私がいて。あの人が私を助けてくれなかったら。きっと、あの時。あの魔物に殺されていたはずなんだから」
その話を聞いた僕は 僕はその話を聞かなかったことにする事にする その話はあまりにも重すぎるからだ すると僕の父が
「リリスは、リゼルダさんの娘さんだろ?君にそっくりじゃないか。髪の色とか顔立ちとか、リゼルダさんに似て美人になったね」
その父の言葉を聞いたリリスは顔を赤くしながら
「そ、そんな。あ、ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです。それにしても、お兄さんは、お姉ちゃんと、どんな関係なんですか?まさかとは思うけど、お兄さんはお姉ちゃんの恋人とかじゃないよね?違うと言ってください。お願いします」と、そんなことを言ってきた 僕は、リリスに対してこう答える
「いや、僕とお姫様は恋人同士なんかじゃない。そもそも、僕達は出会って間もないんだし。そんな関係になるのはまだ早いんじゃないかな。それに、僕にはリリスっていう婚約者がいるんだし。他の誰かを好きになるのは良くないと思うんだけど」と、僕が言うと リリスは、僕の言葉を聞いて安心していた しかし、そんなやり取りを見ていたお姫様は少し不機嫌になっていたのである その日の夜に、僕は、リリスの部屋を訪ねていた。
お姫様とは一緒に寝ないのかって聞かれたら。僕はお姫様とリリスの二人と別々に眠ることにした。
それは僕に、二人のどちらを選ぶかを決めてほしいと。二人が同時に言ったからなのだ それから僕はリリスと二人でお話をすることにした。
僕はリリスに質問をする
「ねぇリリス。君は僕がこの世界に来る前のことを知っているのかい?」
「ううん。私は何も知らない。私の知っているのは、このお城に昔から伝わっている。勇者伝説だけだよ。勇者様がこの国に現れたら、魔王を倒して、世界を平和にしてくださった。そういうお話がこの国にはあるの。そしてその勇者様が、リゼルタさんの息子さんで、リゼルタさんの若い頃と瓜二つだったから。勇者様はリゼルタさんの子供に違いない。そう思われているの。だから、リゼルタさんとリリスお姉様が結婚したら、勇者様がこの国に戻ってきて、リゼルタさんの後を継いでくれると信じている人もたくさんいるの。勇者様がこの国に戻ってくるまでは、リゼルダさんがこの国を守ってくれているから」
「そうなのか。リリスは、この国のことが好きか?」
「もちろん大好きだよ。だって、この国は私にとっての故郷なんだもん。私が小さい頃から住んでいる大切な場所だから。それに、お姉ちゃんがこの国の王女として頑張ってくれているから、私も頑張ろうって思えるの」
「そうか、リリスはこの国のことが好きなんだね」
「うん。それにね。お姉ちゃんはいつも笑顔で、誰に対しても優しくて、まるで天使みたいに可愛いの。だから、お姉ちゃんはね。お姫様になってからも、凄く人気者になったの。お姉ちゃんは本当に皆から愛されているの。そんなお姉ちゃんが、私は大好きなの」
リリスの話を聞き終えた僕は それからリリスと、そして色々な話をした。
僕が異世界から召喚された人間だということはリリスも知ってるみたいだし。僕のことは信用してくれてるみたいだけど。それでもやっぱり不安はあるみたいで。リリスは僕に色々と相談してくる
「あのね。お兄さん。私は、お兄さんのことを信じていいのかな?お兄さんは、お姉ちゃんと、どういう関係なの?お兄さんは、お姉ちゃんのことを、まだ好きでいてくれるの?それとも、もうお別れしちゃったの?教えてください。お願いします」と、そう言って僕のことを上目遣いに見つめてくるリリス 僕はリリスになんて答えればいいのか分からないし。正直なところ、僕の気持ちもよく分かっていない状態だ ただ一つ言える事は……僕はこの世界で生きていこうと思うようになったということだ。
「ごめんなリリス。僕は君のお姉ちゃんの事が好きだ。だから、僕はリリスのお姉ちゃんを幸せにしたいと思っているよ。でも、それは、僕の役目じゃないかもしれないけど。それでも、僕は、リリスのお姉ちゃんと幸せになりたいと思っているよ。だから、僕は、リリスのお姉ちゃんの側に居たいと思ってる。だから、リリスのお姉ちゃんの側にずっと居るよ」と、僕が言うと リリスは嬉しそうな表情を浮かべると 僕のことをギュッと抱きしめてきた それからしばらく時間が経過すると。リリスは眠りについたようだ。
リリスが眠っているのを確認した後に僕は部屋から出て行く そして僕は一人で、夜空を見ながら、月を見上げると。そこに一人の女性が立っていることに気付く。
その女性は僕の姿を確認すると
「あら。貴方もここにいたのですね。リゼルタさんの息子さん。名前は確か、ルックスさんだったかしら?私は、リリスの母のリゼラスタです。よろしくね」
そう言って彼女は僕に握手を求めてきたが。僕が彼女に近づこうとすると
「あら。私に近づいてはダメですよ。リリスが嫉妬してしまいますから。それに、私に触れてしまえば。貴方の命はありません。私はこの国で最強の魔術師なのですから」と、リゼラスターは僕に警告をしてきたのであった
「さて、私はそろそろ戻りましょうかね。リリスの事を頼みましたよ。リゼルダさん」と、そう言い残してリゼラスターは去っていった 僕は、リゼルタさんが何故僕にリリスの事を頼むと言ったのか理解できなかった。
しかし、そんな事よりも。僕は、僕自身の目的のために行動を起こすことにした。
そう。リゼルタさんが言っていた。『リゼルダさんは私によく似ている』という言葉の意味を知るために。僕は動き出すのであった 僕はリゼルタさんが言っていた言葉の真意を確かめようと。リゼルタさんが昔住んでいた家に行くために。城を出ていく そして、リゼルタさんが住んでいた家は。僕が初めてリゼルタさんと出会った時に。リゼルタさんが僕に剣技を教えてくれた場所に建っている その場所に到着した僕は、まず最初に。リゼルダさんが暮らしていた家の中を調べ始めたのだが。そこにはリゼルダさんの日記が残されていた 日記を読んだ僕は、リゼルダさんがどうしてリリスの父親だと嘘をついてまで。僕に剣術を教えたのかその理由が分かった気がした そして、その日から、僕とリゼルタさんの戦いが始まったのである ある日の昼下がり。僕は、リゼルタさんと一緒に。リリスとリゼルタさんの母親と、三人でお茶会をしていた。そんな中。リゼルタさんがこんな提案をしてきた
「そうだ。ルックス君。君は魔法の才能があるみたいだから。私と手合わせをしてみないか?」
「えっ!?」
「大丈夫だ。怪我をするような事にはならないように。私が全力で相手するから」「あの、僕は、リリスを守るって約束したので。だから、リゼルダさんと本気で戦うつもりはないんです」
「ふむ。確かにその通りかもしれないが。だが、もしも、君が、私の攻撃を避けきる事ができたら。その時は、君に私と戦う権利を与えよう」
「分かりました。でも、僕は、リゼルダさんと戦いたくはないので。僕は絶対に避け続けますよ」
「ふむ。その意気込みは良い事だ。では、始めるとしようか」
「はい」
それから、僕とリゼルダさんは、魔法の訓練を始めた
「どうだい?私が使う炎の威力は」
「はい。凄まじい火力だと思います」
「その通りだよ。私は、この国で一番の魔法使いなんだ」
「あの、リゼルダさん。少し聞きたい事があるのですが。よろしいでしょうか?」
「ん?何かな?私の答えられる範囲でなら質問を受け付けるが」
「ありがとうございます。実は、僕がこの世界に召喚された理由は、リゼルタさんと関係があるんですよね?」
「ああ、確かに、リゼルタさんは、この世界に存在する魔王を討伐するために。私の娘をこの国へと呼び戻したんだよ」
「それは、つまり。リゼルダさんがこの国に来た理由というのは。魔王を倒すためなんですか?」
「まぁ、簡単に言えばそういう事になるね」
「それじゃあ、もしかしたら。僕がこの世界に来てしまったことで。本来であればこの国にいるはずのリリスがこの国を離れてしまったのではないですか?」
「…………」
「あの、もしかして、図星なんじゃ無いですか?それに、リリスは、僕の婚約者なんですよ。僕がこの世界に来るまでは、リリスは、僕の婚約者として過ごしていたはずなのに。それが今では、僕の知らない間に、リリスは別の男性と結婚して、子供もいるみたいだし。それって、おかしくないですか?」
僕は、リリスのお母さんに対してそう言ったのである するとリゼルダさんの母親は
「そうですね。貴方の言っていることは間違ってはいません。ただ、貴方の想像しているようなことにはなってないわよ。だって、リリスは、今も、この国で暮らしているもの。それに、リリスは、今は、貴方の義理の妹になっているのよ。だから、安心しなさい。貴方の知っているリリスは、ちゃんと存在しているから。それに、リリスの旦那様は、この国の騎士様なの。だから、貴方が心配することは何もないの」
「そうだったんですか。良かった。リリスのことは信じていたけど。それでもやっぱり不安だったので」
「そうよね。貴方はまだ若いから。大切な人を失う悲しみを知らないのだから。だから、貴方はこれからたくさんの経験を積んで、大切な人を守れる男になりなさい」
「はい。わかりました」
「それで、貴方は、リリスのことを愛してくれているのかしら?」
「もちろんです。僕は、リリスを愛しています」
「そう。それはよかったわね」
そんな感じで、僕はリゼルダさんとの会話を終えたのであった それから、リゼルダさんは、リリスのお母さんと二人で話を始めると。僕は一人になったので、一人で、庭に出て、自分の力を確認することにしたそして僕は、自分の能力値を確認してみると。僕は、レベルが上がっていたのだ そして、僕がレベルを上げていると。リゼルダさんが話しかけてきた
「やぁ。調子はどうかな?」
「あっ、はい。なんとか順調です。ところで、リゼルダさんは、僕と手合わせしてくれるんですよね?そろそろ始めましょう」
「そうだな。それでは、始めようか」
それから、僕とリゼルタさんは、お互いの実力を確かめるために。何度か、打ち合いを繰り返した その結果。僕は、リゼルダさんに勝てないと悟った そして、僕はリゼルダさんに聞いたのである
「あの、僕の力はまだまだ弱いですし。リゼルダさんには到底敵わないとは思いますが。それでも、いつかは、リリスを守り抜くことのできる強さを手に入れて見せます。なので、僕に、もっと色々と教えてください」
「いいだろう。ただし、私も暇なわけではないから。毎日というわけにもいかないが。それでも構わないかな?」
「はい。構いません」
「よし。それならば。私は君の師匠になってあげよう」
「ありがとうございます」
「ふむ。君は素直で可愛い弟子だ。私も、君のことが気に入ったよ」
それから、僕は、リゼルダさんの弟子となったのであった それから、数日が経過して。僕とリゼルダさんは、一緒に旅に出ることにした
「リゼルダさん。僕達はどこに行けばいいのでしょうか?」
「そうだな。まずは、この国の周辺にある町を見て回ろうと思っているんだが。ルックス君はどこか行きたいところはあるかい?」
「いえ、特にはないです」
「そうか。それでは、まずは。一番近い町に行こうと思うのだが。それで構わないだろうか?」
「はい。問題ありません」
「そうか。では、早速出発するとしよう」
それから僕とリゼルダさんは。リリスのお父さんと、そして、リゼルダさんの母親に挨拶を済ませると。僕とリゼルダさんは、リリスが住んでいる町に向かうために旅立ったのである そして、僕とリゼルダさんは、リリスが住んでいる街にたどり着くと。そこで、リリスと再会したのであった
「お兄ちゃん!!」
「リリス!!会いたかったよ」
「うん」「えっと……君は確か。リリスの恋人だったはずだが。どうしてここにいるんだい?」
「はい。僕は今。リリスと一緒に暮らしていますから」
「そうなのか。まぁ、君とリリスが幸せなら別に良いんだけどね」
「あのさ。リゼルダさん。僕に剣術を教えてくれませんか?」
「えっ!?どうして急にそんな事を私に聞くの?」
「実は、僕は、リゼルダさんに負けてから。リゼルダさんに剣術を教わりたくて仕方がないんです」
「なるほどね。そういう事なら引き受けても良いよ」
「本当ですか!?ありがとうございます」
「でも、私の修行は厳しいぞ」
「覚悟しています」
「ふっ。良い返事だ」
こうして、僕は、リゼルダさんに剣術を習う事になったのである
「それじゃあ、まずは、基礎体力をつけるために走り込みをする」
「分かりました」
それから、僕は、リゼルダさんと一緒に。ランニングをすることになったのだが。リゼルダさんは、めちゃくちゃ足が速いので。僕は必死にリゼルダさんについていくように頑張った
「はぁはぁはぁ」
「ルックス君。大丈夫か?」
「はい。まだ走れます」
「そうか。それじゃあ、次は、木刀を持って、私と戦ってみようか」
「え?いきなりですか?」
「ああ。大丈夫だよ。怪我しないように手加減するから」
「分かりました」
それから僕は、リゼルダさんと模擬戦をしたが。正直言って、僕の攻撃は全て避けられてしまい。全く攻撃を当てることができなかったのである
「どうだい?少しは強くなったか?」
「全然ダメでした」「まぁ、最初はこんなものだ。焦らずに頑張れば大丈夫だよ」
「はい。分かりました」
「それじゃあ、今日はこれで終わりにするか」
「はい。ありがとうございました」
「ふむ。君もなかなか筋が良いじゃないか」「はい。僕も、リゼルダさんに褒められて嬉しいです」
それから僕は、リゼルダさんの家に泊めてもらうことになったのである
「それでは、リゼルダさん。僕はここで失礼します」
「そうか。またいつでも遊びに来てくれ」
「はい。ありがとうございます。それでは、おやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
そうして、僕はリゼルダさんの家を後にしたのであった 次の日。僕は、リリスのお父さんに呼び出されると。そこにはリリスとリリスのお母さんがいたので。リリスの家族と顔を合わせることができたのであった
「はじめまして。私の名前はリリスと言います」
「こちらこそよろしくお願いします」
「私はリリスの母のリリアナと申します」
「僕はリリスの婚約者のルックスと申します」
「ルックスさん。リリスのことをよろしく頼みますね」
「はい。任せてください」
「それでは、私は仕事があるから。そろそろ行くとするよ」
「あっ、はい。わざわざありがとうございます」
「いやいや、気にしなくていいよ。それと、リリスはもうすぐ出産だから。そのつもりでいてね」
「はい。わかりました」
それからリリスのお母さんは仕事に行くために部屋を出て行ったのであった
「ねぇ、お兄ちゃん。お腹空いたからご飯を食べに行きましょう」
「そうだね。それじゃあ、僕達も食事にしましょう」
それから、僕とリリスとリリスのお母さんは一緒に食事をするために食堂に向かったのである
「リリスちゃん。貴方がルックスさんの義理の妹になるなんて思ってもなかったわ」
「私もです。まさか私が結婚していた相手が義理のお兄ちゃんだとは思いませんでしたから」
「そうよね。私も、リリスちゃんの旦那様が義理の息子になるとは思わなかったわ」
「ところで、リリスちゃん。体調の方は大丈夫なの?」
「はい。今のところは順調みたいです」
「それは良かったわ」
「ところで、リリスちゃん。ルックスさんとは仲良くやってるの?」
「はい。とても良くしてもらっているので」
「そうなの。ルックスさんは優しい人だから。きっと幸せになれるわね」
「そうですね。私もそう思います」
「そういえば、リリスちゃんは、これからどうするつもりなの?」
「私は、この国でお店を開く予定なんです」
「へぇー、リリスちゃんは商人としてお店をやるのね」
「はい。それで、お兄ちゃんがこの国の騎士になったので。私はお兄ちゃんと二人で一緒に生活していくつもりなんです」
「そっか。二人ともこれから大変だと思うけど。お互いに支え合って頑張ってね」
「はい。わかりました」
そんな感じで、リリスのお母さんと会話をしていると。突然扉が開かれて一人の女性が入ってきた
「お母様。ただいま戻りました」
「あら、リリス。おかえりなさい」
「あっ、リリス。久しぶりだね」
「え?ルックス!?どうしてここにいるの?」
「実は、僕も騎士になったんだよ」
「嘘!?本当に?」
「うん。本当だよ」
「凄いじゃない。それで、リリスはルックスさんと結婚するの?」
「はい。私は、ルックスのお嫁さんになります」
「そっか。それじゃあ、二人は夫婦になるのね」
「はい。そうなります」
「そうか。それなら、私も安心だな」
「ところで、リリスは、どこで寝泊まりしているんだ?」
「私も、お兄ちゃんと同じ家に住んでいますよ」
「え!?」「だって、私はお兄ちゃんと結婚したから。お兄ちゃんと一緒の家に住むのは当然でしょ?」
「そうか。それならば、僕も、リリスと一緒の家で暮らそうかな」
「うん。それがいいよ」
それから、僕とリリスはリゼルダさんと一緒に暮らすことになり。リゼルダさんと、リリスのお母さんは、僕達が結婚したことを祝福してくれたのであった それから、僕達は、この国の周辺にある町を回って。色々な町を観光してから帰ることにした そして、僕とリリスとリリスのお母さんは、この町で一泊することにしたのだが。僕は、リリスとリリスのお母さんと別れて、一人で宿屋の部屋に入ると。そこで僕は、リリスのお母さんと二人っきりになってしまったのである
「あのさ。ルックスさんは、リリスのことを愛してるのかしら?」
「もちろんですよ。僕はリリスのことが大好きです」
「そうか。それならば、よかった。ルックスさんは、リリスの事を愛してくれているのね」
「はい。僕は、リリスの事が大好きなんですよ」
「ふふっ。リリスが羨ましいわ。こんなにも素敵な人に好かれているんだもの」
「そうですか?僕としては、リリスが僕の事を受け入れてくれて嬉しい限りですよ」
「そう言ってもらえると。私としても嬉しいわ」
「あのさ。リリスの事だけど。リリスは、今はまだ子供を産むことはできないと思うんだけど。それでも、リリスと結婚してくれるかしら?」
「ええ。僕は、リリス以外の女性と結婚しようとは思わないので。僕は、リリスと結婚して、一生をかけてリリスを守り抜くつもりです」
「そうか。それなら、私も、二人のことを応援することにするよ」
「ありがとうございます」
「それじゃあ、私は、そろそろ仕事に行かないとだから。私は、これで失礼するよ」
「はい。ありがとうございました」
それから、リゼルダさんは仕事に行ったのであった 次の日の朝。僕は、リゼルダさんと一緒に朝食を食べるために食堂に向かうと。そこには、既にリリスとリリスのお母さんの姿があったのである
「おはようございます」
「おはよう。ルックスさん」
「おはようございます。リゼルダさん」
「そういえば、リリスは、もう妊娠したのかい?」
「いえ、まだしてませんよ」
「そうか。でも、もうすぐ生まれる頃だろから。気をつけるんだよ」
「はい。ありがとうございます」
「それじゃあ、私は仕事があるから。また後でね」
「はい。また会いましょう」
そうして、リゼルダさんは仕事に行ってしまったのである
「それじゃあ、いただきましょうか」
「そうだね」
それから、僕とリリスはリリスのお母さんと楽しく食事をしながら談笑をしていたのであった 食事が終わった後。僕は、リゼルダさんに呼び出されると。そこにはリゼルダさんとリリスとリリスのお父さんがいたのである
「ルックス君。君は、リリスとの仲は良好かね?」
「はい。僕とリリスは、とても仲良く暮らしています」
「そうか。それならば良いのだ」
「リゼルダさん。今日は、どのような用件で僕を呼び出したのでしょうか?」
「ああ。君には、騎士団に入ってもらおうと思ってね」
「騎士団に……僕がですか?」
「そうだ。君が騎士になってくれたら、私は助かるからね」
「そうだったんですか。分かりました。僕も、リゼルダさんの期待に応えられるように頑張りたいと思います」
「そうか。それでは、よろしく頼むぞ」
「はい。精一杯頑張らせて頂きます」
こうして、僕は、リリスのお父さんに頼まれて。僕は、リリスとリリスのお母さんと別れてから。僕は、リリスとリリスのお母さんと一緒に、リリスのお母さんの実家で暮らすことになったのである 僕は、リリスとリリスのお母さんと三人で一緒に生活をすることになったので。僕は、リリスとリリスのお母さんと仲良くなれるように頑張った
「ルックスさん。貴方は、私達の家族になるわけなんだから。私のことは、お姉ちゃんって呼んでも良いからね」
「えっと。それじゃあ、リリスのお母さんの事は、リリスのお義母さんと呼んでもいいのかな?」
「ええ。それで構わないわよ」
「わかったよ。それじゃあ、これからよろしくお願いします。リリスのお義母さん」
「こちらこそ。これからよろしくね」
それから、僕は、リリスのお義母さんと仲良くなるために。リリスのお母さんのことをお義母さんと呼ぶことにしたのであった それから、僕とリリスとリリスのお義母さんは、この国で一ヶ月ほど生活していたのだが。ある日の早朝。僕とリリスとリリスのお母さんは、朝早くに起きたのである
「ルックスさん。ちょっと来てくれないかしら?」
「はい。わかりました」
そうして、僕がリリスのお母さんの所に行くと。リリスのお母さんは、お腹を押さえながら苦しんでいたのである
「リリスのお母さん。大丈夫ですか?」
「ええ。大丈夫よ。少しだけ痛むだけだから」
「そうですか。あまり無理をしないでくださいね」
「ええ。わかっているわ」
「ルックスさん。リリスの様子を見てあげてくれないかしら?」
「はい。わかりました」
僕は、リリスの様子を見るため。リリスの部屋に向かったのである
「リリス。大丈夫か?」
「うーん。大丈夫じゃないかも……」
「それじゃあ、リリスのお母さんを部屋に運ぶから。リリスは、ここで待っていてくれ」
「うん。分かった」
僕は、リリスのお母さんをお姫様抱っこすると。リリスのお母さんの部屋まで運んだのである
「リリスのお母さん。大丈夫ですか?」
「ええ。心配かけてごめんなさいね」
「いえ。謝らないでください。それより、何かして欲しいことがあったら遠慮なく言ってくれていいからね」
「そうか。それなら、リリスとお話をしてあげて」
「わかりました。それじゃあ、行ってきます」
僕は、リリスがいる部屋に戻ると。リリスは、お腹を擦りながらベッドの上で横になっていたのである
「リリス。調子はどうだ?」
「うん。あんまり良くはないみたい」
「そうなのか。それじゃあ、リリスは安静にしていような」
「うん。お兄ちゃん。お話しようよ」
「そうだな。それなら、どんな話がいい?」
「私は、お兄ちゃんの話を聞きたいな」
「僕の話か……。それなら、この国の事について教えて欲しいな」
「うん。わかった。それじゃあ、まずはこの国に王様はいないよ」
「そうなんだ。どうしていないんだ?」
「それはね。この国は、王族や貴族がいないの」
「そうなんだ。それで、どうやって政治を行っているんだ?」
「基本的には、商人達による話し合いによって政策を決めているのよ」
「へぇ〜そうなんだ」
「ちなみに、この町の領主は、リリスのお母さんなんだよ」
「え!?そうなの?」
「うん。お母さんは、町長なんだよ」
「そうか。それじゃあ、リリスのお母さんは偉い人なんだね」
「そうだよ。お母さんは凄く優しいけど。怒らせると怖いんだよ」
「そうなんだね。ところで、リリスは、この国の事が好きか?」
「もちろんだよ。私は、この町が大好きだし。この町に住んでいる人達も皆好きだよ」
「そうか。それなら良かったよ」
それからしばらく会話をしていると。リリスのお母さんの部屋の方から物音が聞こえてきたのである
「あれ?誰か来たのかな?」
「多分。リリスのお母さんだと思うよ」
「そっか。それなら、私達は出ていった方がいいよね」
「そうだね」
僕は、リリスを連れてリリスのお母さんの寝室を出ると。そこには、リリスのお母さんが立っていたのである
「あら?ルックスさんとリリスは、二人で何をしていたのかしら?」
「え?特に何もしてないですよ」
「そうかしら?私には、二人が抱き合っていたように見えたんだけど」
「そんな事ありませんよ。ねぇ?リリス」
「うん。私とルックスは、いつも通りに接していただけです」
「そう。それじゃあ、そういう事にしておくわね」
「はい。そうしてください」
「それじゃあ、私はまだ仕事があるから。二人は、ゆっくりしててね」
「はい。わかりました」
そうして、リリスのお母さんは仕事に戻ったのであった
「ねえ。お兄ちゃん。私もお仕事を手伝おうか?」
「いや。今は休んでいようか」
「でも、私が働いていないと。お兄ちゃんは、仕事がないでしょ?」
「いや。僕の仕事は、リリスと一緒にいることだから」
「そうか。それじゃあ、私と一緒にいてくれる?」
「ああ。勿論だとも」
それから、僕とリリスは、リリスのお母さんが帰ってくるまでの間。ずっと一緒に過ごしたのである それから、僕がリリスのお母さんの手伝いをして数日が経ったある日のこと。僕とリリスとリリスのお母さんは、リリスのお母さんの実家で過ごしていたのである
「それじゃあ、私は仕事に行ってくるから。二人とも、大人しくしていてね」
「はい。わかりました」
「うん。わかった」
「それじゃあ、行ってくるね」
「はい。行ってらっしゃい」
そうして、リリスのお母さんは仕事に行ったのである
「それじゃあ、僕とリリスは、家の中でのんびりしていようか」
「そうだね。お兄ちゃん」
そうして、僕とリリスは、リリスのお母さんの家でのんびりと過ごすことになったのであった 僕とリリスは、リリスのお母さんの家の中を探索していると。僕とリリスは、書斎にたどり着いたのである
「お兄ちゃん。ここって、何か書いてあるよ」
「どれどれ。本当だな。ちょっと読んでみるか」
そう言って、僕は、その本のページをめくったのである
「この本は、昔々にこの国で起きた出来事が書かれているみたいだな」
「そうみたいなの。ちょっと読んでみようよ」
「そうだな」
それから、僕とリリスは、リリスのお母さんが書いたと思われる日記を読み始めたのである
「えっと。この国では、貴族と平民の間に大きな溝ができてしまった。そのため、この国では身分差別が激しくなり。この国では、貴族と平民は、互いに交流することすらなくなってしまった。そして、今では、貴族の子供達は、平民の子供と遊ぶことさえも禁止されてしまい。平民の子供達は、貴族とは関わることを禁止されているため。今となっては、貴族と平民は、お互いに話すことも会うこともできなくなってしまいました」
「え?それじゃあ、お兄ちゃんは、私と会えなくなるの?」
「いや。そんなことはないと思うぞ。ほら。続きを読んでみろよ」
「う、うん」
「それでは、次の章を読むことにします。しかし、ある日の事です。この国の王だった人が病気になってしまいました。それで、この国の王は、自分の子供がいなかったので。王子として育てるために男の子を養子にしたのです。その男の人の子供の名前は、ルークスと言いました」
「え!?お兄ちゃんって、王子様だったの?」
「まぁ……一応ね……」
「え!?そうなの?」
「そうだよ。僕も驚いたけどさ……」
「そうだったんだ……」
「それで、続きを読もうか」
「う、うん」
「それから、この国の王であるルークスは、すくすくと成長していきました。そんなある日。ルークスが十歳になった時。ルークスは、この国にある学校に入学することになりました。この学校の名前は、聖騎士養成学園といいました」
「え!?お兄ちゃんは、聖騎士になるの?」
「え!?いや。僕は、ならないよ。ただ、この学校に通えば、何かわかるかもしれないと思ってね」
「そうなんだ。それならいいけど」
「それじゃあ、次のページをめくるね」
「うん」「それでは、読みますね。この学校で、ルークスと友達になったのは、同じクラスの女の子でした。その子の名前は、リリス・フォン・アルムスターでした」
「え!?私のお姉ちゃんの名前と同じ名前だよ!」
「そうなんだね」
「うん。それにしても、お兄ちゃんのお姉さんは凄い人なんだね」
「そうだな。僕も、最初はびっくりしたよ」
「それで、お姉さんは、この学校の生徒会長をしているんだよね?」
「うん。そうなんだ」
「そうなんだ。それで、次はどうなるの?」
「うん。それで、リリスと仲良くなった二人は、学校を卒業するとすぐに結婚したので。二人は、幸せな家庭を築くことができました」
「え!?結婚!?」
「うん。そうだよ。それで、子供が生まれたんだけど。その子供の名前は、リリスとリリスのお母さんの名前をくっつけた名前になったんだ」
「そうなんだね。お兄ちゃんは、お兄ちゃんなんだから。お兄ちゃんにも弟か妹ができるかもよ」
「そうなのか?それは楽しみだな」
「うん。きっと可愛い子が生まれるよ」
「そうだな」
それから、僕とリリスは、リリスのお母さんの日記を読み続けたのであった それから、僕とリリスは、リリスのお母さんが帰って来るまで。ずっとリリスのお母さんが残した日記を読み続けていたのである
「それじゃあ、僕は、そろそろ仕事に戻るよ」
「うん。わかったよ。お兄ちゃん」
「それじゃあ、行ってきます」
「うん。いってらっしゃい」
僕は、リリスのお母さんが帰ってくると。リリスのお母さんが仕事から帰ってきたので。僕は、仕事に戻ったのであった それから数日後。僕とリリスは、リリスのお母さんの実家で過ごしていたのである
「ルックスさん。少し話があるんだけど」
「はい。なんですか?」
「実はね。明日から、あなた達には、この家から引っ越してもらいたいのよ」
「そうなんですか?」
「ええ。急にごめんなさいね」
「いえ。気にしないでください」
「ありがとう。それなら、明日は早いから今日は早く寝た方がいいわよ」
「わかりました。それじゃあ、僕は部屋に戻ります」
「はい。わかりました」
それから、僕とリリスが自室に戻ると。リリスは、ベッドの上で横になっていたのである
「お兄ちゃん。どうしよう?」
「そうだね。とりあえず、リリスは、ここで休んでいてね」
「うん。わかったよ」「それじゃあ、僕は、リリスのお母さんに言われた通りに寝ることにするよ」
「うん。私は、まだ眠くないから。もう少し起きてるね」
「ああ。分かった」
僕は、部屋の電気をつけると。僕は、机に向かって椅子に座ったのである「リリス。僕は、仕事を始めるよ」
「うん。わかったよ」
僕は、いつものように仕事を始めたのだが。しばらく仕事をしていると、リリスが僕の背中をツンツンしてきたのである
「リリス?どうかしたのか?」
「うん。ちょっと、私とお話をしてくれないかな?」
「別に構わないが。何を話すんだ?」
「そうだね……。それじゃあ、私と初めて会った時の事を教えて欲しいな」
「わかった。それじゃあ、まずは、僕とリリスが初めて出会った日の事について教えてあげるよ」
「うん。お願い」
「あれは、僕がまだ五歳の時のことだった」
「うん」
「僕は、この国で一番大きな建物がある町に住んでいたんだけど。その日は、僕の誕生日で、父さんと母さんと妹の三人で誕生日パーティーを開いていたんだよ」
「そうなんだ。それで?」
「その日の夜に、僕と両親は、家族全員で食事をしていた時に。突然、家の外が騒がしくなったんだ」
「どうして?」
「多分だけど。その町に盗賊団が攻めてきたんだと思うよ」
「そうなんだ。それで、お兄ちゃんは大丈夫だったの?」
「ああ。その時は、両親と一緒に地下に隠れていたからね」
「そうだったんだ」
「うん。それから、僕は、両親が心配になって地下室から出たんだ」
「え!?お兄ちゃんは、怖くなかったの?」
「いや。確かに、当時は、怖いと思ったけど。でも、それよりも両親のことが気になったからね」
「そうなんだね」
「うん。それで、僕が地下室を出ると。そこには、血だらけで倒れている父と母の姿が見えたんだ」
「え!?お兄ちゃんのお父さんとお母さんは死んじゃったの!?」
「いや。二人とも死んではいないよ。ただ、意識不明の重体ではあるけどね」
「そうなの?良かった〜」
「まぁ、それでも、かなり危険な状態であることに変わりはないんだけどね」
「そうなの?それじゃあ、今はどこにいるの?」
「それはね。僕とリリスのお母さんの実家にいるよ」
「え!?お兄ちゃんのお母さんって凄い人だったんだね」
「まぁ……凄いとまではいかないけどね……」
「そうなんだ。それで、お兄ちゃんは、その二人のところに行かないの?」
「それが、できないんだよ」
「どうして?」
「僕とリリスのお母さんは、貴族だからだよ」
「え!?そうなの!?」
「うん。そうみたいだね」
「そうなんだ。お兄ちゃんのお母さんって凄い人なんだね」
「まぁ……そこまでは言わないけどね……」
「えへへ。なんか照れちゃうね」
「そうだな」
「それで、お兄ちゃんは、これからどうするの?」
「とりあえずは、この国から逃げるつもりだよ」
「そうなんだ。それなら、私もついて行くよ」
「いや。それはダメだ」
「え?なんで?」
「だって、もしリリスのお母さんやリリスのお父さんが目を覚ました時。リリスがいないと悲しんでしまうかもしれないだろ」
「そうなんだね。それなら仕方がないよね……」
「うん。それじゃあ、僕は仕事に戻るから」
「わかったよ」
それからしばらくして………….僕は仕事を終えると。僕は、自分の部屋に戻って眠りについたのである そして、次の日の朝になると。リリスが起きてきて一緒に朝食を食べることにしたのである
「おはようございます。ルックスさん」
「はい。おはようございます。リリスのお母さん」
「それで、リリスとは仲良くできましたか?」
「はい。仲良くなれましたよ」
「そうですか。よかったです」
「それで、僕は、今からリリスのお母さんの実家を出て行きますね」
「はい。わかりました。またいつでも遊びに来てくださいね」
「はい。わかりました。それと、リリスのお母さんとリリスのお父さんに伝言があるので聞いてもらってもいいですか?」
「いいですよ」
「ありがとうございます。それでは、伝えますね。『今までありがとうございました』と」
「はい。わかりました」
「それでは、僕は失礼しますね」
「はい。さようなら」
僕は、リリスのお母さんに別れを告げてから。僕は、リリスを連れて家を出たのである
「お兄ちゃん。これからどこに行くの?」
「とりあえずは、この国の王都に向かうよ」
「そうなんだね。それじゃあ、早く行こうよ」
「そうだな」
それから、僕とリリスは、この国で一番大きい町に向かって歩き始めたのであった 僕とリリスがこの国で暮らしていた町から一番近い大きな街に向かって歩いていると。途中でモンスターが現れたのである
「グオォー」
「リリス。僕の後ろに隠れていてくれ」
「うん。わかったよ」
「よし。いくぞ!」
僕は、剣を持ってモンスターに向かって走り出した
「グオオオー」
「せい!おりゃあ!」
僕は、勢いよく剣を振り回して次々とモンスターを倒していったのである それから、僕は、モンスターを全て倒すと。僕の後ろで見ていたリリスに声をかけたのであった
「リリス。もう大丈夫だぞ」
「うん。ありがとう。お兄ちゃん」
「ああ。気にしないでいいよ」
「うん。そうだね」
それから僕とリリスは、再び歩き始めると。僕達は、無事に街に到着したのである
「リリス。着いたよ」
「うん。ここが、お兄ちゃんが言っていた一番大きな街のリザームの街なんだね」
「ああ。そうだよ」
「それじゃあ、私はここで待ってるからね」
「いや。リリスも一緒に来るんだ」
「え?私は、ここに残るよ」
「いや。リリスにも来てもらうよ」
「どうして?」
「だって、僕が一人で行動したらリリスのお母さんやリリスのお父さんが心配するでしょ」
「確かにそうだね」
「それじゃあ、行くよ」
「うん。わかったよ」
僕とリリスは、リリスのお母さんの実家から持ってきたお金を使って宿屋に泊まると。このリザームの街で一休みすることにしたのであった
「リリス。これからどうしようか?」
「う〜ん。特に何も考えてなかったからね。お兄ちゃんが決めていいよ」
「そうか。それなら、僕はこの街で情報を集めてみるよ」
「うん。わかったよ」
それから、僕とリリスは、別々の部屋で寝ることにしたのである 次の日になると、僕は、リリスと合流してから。僕とリリスは、このリザームの街で情報収集を始めたのであった
「お兄ちゃん。何かわかった?」
「ああ。わかったよ」
「そうなんだね。それで、何が分かったの?」
「実は、このリザームの街には、勇者がいるらしいんだ」
「え!?勇者が!?」
「ああ。その勇者は、この国に召喚されたんだが。その勇者が、魔王を倒すために旅に出たそうだ」
「そうなんだね。それで、その勇者の名前はなんて言うの?」
「ああ。名前は、『カイ・ハイネマン』という人らしい」
「そうなんだね」
「それで、その人がどこにいるのか分からないんだけど。冒険者ギルドに行ってみたら分かるかもな」
「そうなんだね。わかったよ。行ってみようよ」
「そうだな」
僕とリリスは、リザームの冒険者ギルドに向かったのである 僕とリリスは、リザームの街にあるリザームの冒険者ギルドに入ると。僕は、受付嬢のところに向かって行った
「すみません。少し聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
「はい。構いませんよ」
「あのですね。最近、この国に来た人の情報が欲しいんですよ」
「はい。分かりました。少々お待ちください」
「お願いします」
それから、しばらくすると。僕の前に一人の男性が現れて僕に話しかけてきたのである
「お前が俺の情報を聞きたいという奴なのか?」
「はい。そうですけど」
「ふっ。そうか。それで、どんな情報を探せばいいんだ?」
「そうですね……。あっ。その前に自己紹介をしておきますね。僕は、ルックスといいます」
「俺は、カイトだ」
「よろしくお願いします。それで、あなたが噂になっている勇者様なんですか?」
「ああ。そうだぜ」
「そうなんですね。それで、その勇者様は、どうしてこのリザームに戻ってきたんですか?」
「そんなの決まってるだろう。魔王を倒すためだよ」「そうなんですね」
「ああ。そうだよ」
「ちなみにですが、今現在で仲間は何人いるんですか?」
「今は、五人だな。あと一人見つければ六人になるな」
「そうなんですね。それでは、質問を変えますね。今は、どこにいるんですか?」
「それは、秘密だな」
「わかりました。それでは、最後に一つだけ教えてください」
「なんだ?」
「この国で最強の人物は誰だと思いますか?」
「そうだな。まずは、この国の王様だな。次に、騎士団長だな。それから、宮廷魔術師の人達かな」
「なるほど。わかりました。ありがとうございました」
「おう。また困ったことがあればいつでも頼ってこいよ」
「はい。その時には、是非とも」
僕は、リリスと一緒にリザームの街を出ると。リリスのお母さんの実家がある町に向かって出発したのである 僕とリリスは、この国で一番大きい町の近くまでたどり着くと。そこで野宿をすることになったのである
「今日はここで休んで明日になったら町に行こうと思うけど。リリスは、それでいいか?」
「うん。それで大丈夫だよ」
「それじゃあ、明日の朝に出発しよう」
「そうだね」
それから、僕は、見張りをしながら眠りにつくことにしたのだった 翌朝になり、僕とリリスは、この国一番の大きな町の近くにある森の入り口に到着すると。僕は、リリスに話したのである
「リリス。ここからは、モンスターが出るかもしれないから気をつけて行くんだよ」
「うん。わかったよ。お兄ちゃんも気を付けてね」
「ああ。わかっているよ」
それから、僕は、森の中に入っていくと。すぐにモンスターと遭遇するのであった
「グルルル」
「邪魔だよ!」
僕は、モンスターを剣で切りつけると。そのままモンスターを倒したのである それから、僕は、どんどん奥に進んでいくと。そこには、たくさんのモンスターが集まっていたのである
「これは……やばいな……」僕は、急いでその場から離れると。なんとかモンスターの群れに襲われることはなかったのである
「危なかった〜」
僕は、それからもモンスターと戦いながら先に進むと。とうとう町が見えてきたのである
「あれは、町か?」
僕は、町に向かって走って行くと。そこにたどり着いたのであった「はぁはぁ。やっとついた……」
僕は、息を整えてから門番に話しかけたのであった
「すみません。ちょっといいですか?」
「はい。なんでしょうか?」
「実は、道に迷ってしまいまして。町に入りたいのですが大丈夫ですか?」
「はい。問題ありませんよ」
「ありがとうございます」
僕は、門番に身分証明書を見せると。無事に中に入ることができたのである
「よし。それじゃあ、リリスのお母さんの実家に向かおう」
僕は、リリスのお母さんの実家に向かうと。リリスのお母さんの実家に着いたのであった
「ここがリリスのお父さんの家なんだな」
「うん。そうだよ」
「それじゃあ、行こうか」
「うん。わかったよ」
僕とリリスは、リリスのお母さんの実家に入ると。リリスのお母さんを探し始めたのである
「お母さーん。どこー」
「リリスのお母さん。どこにいますかー」
僕とリリスは、リリスのお母さんを呼び続けたのだが。なかなか見つからないのである
「おかしいな。絶対にこの辺にいるはずなのに」
「お兄ちゃん。どうしたの?」
「それが、リリスのお母さんがいないみたいなんだ」
「え?そうなの?」
「ああ。だから、もう少し探してみるよ」
「うん。わかったよ」
それから、僕とリリスは、リリスのお母さんを探すために家を出て歩き始めたのであった「お兄ちゃん。本当にお姉ちゃんの居場所はわからないの?」
「ああ。わからないよ」
「そっか。残念だね」
「ああ。でも、必ず見つかるはずだから安心していいよ」
「うん。わかったよ」僕とリリスは、リリスのお母さんを探し続けると。ついにリリスのお母さんを見つけることに成功したのである
「あっ!お姉ちゃんがいたよ」
「本当だな」
僕達がリリスのお母さんに声をかけようとした時だった
「うぅ……」
「どうしました?大丈夫ですか?」
「うわあぁぁぁ!!」
「キャアァァァ!!」
僕とリリスがリリスのお母さんに近づいて声をかけると。突然、リリスのお母さんが悲鳴を上げたのだ
「なんだ!?」
「どうしたんだろうね」
僕とリリスは、リリスのお母さんの様子を見ていると。リリスのお母さんが立ち上がり僕の方を睨みつけたのである
「お前が……私の娘に何かをしたのか?」
「娘って……。もしかして、リリスのことですか?」
「そうだ。娘のリリスだ」
「やっぱりか……」
「それで、何をしたんだ?」
「何もしていませんよ」
「嘘をつくな!!私は、何もしていないのにいきなり殴られたんだぞ!!!」
「そんなことを言われても……」
「言い訳をするな!!このクソガキが!!」
「くっ。なんて力だ」
僕は、リリスのお母さんに胸ぐらを掴まれて壁に叩きつけられたのである
「お兄ちゃん!?」
「リリスは、少し待っていてくれ」
「うん。わかったよ」
「このクソガキが……」
「ぐっ……。この力は、人間じゃない」
「当たり前だろ。私は、魔王だ」
「魔王!?」
「ああ。そうだ」
「そんな馬鹿な……」
「信じるか信じないかは、お前次第だがな」
「ぐっ……。それで、魔王さんはどうしてこの国に?」
「ふん。そんなの決まっているだろう。魔王である私がこの世界を支配するためだよ」
「そんなことのためにこの国を滅ぼそうとしているのか?」
「ああ。そうだ」
「ふざけるなよ」
「ふっ。別にいいじゃないか。魔王がこの世界に君臨するのは、当然のことだ」
「なに言ってんだ?」
「だって、魔王が世界を支配すれば、この国は、魔王の物になるんだぜ」
「魔王の支配する国なんかに行きたくないな」
「なら、お前が死ぬだけだな」「はぁ〜。仕方ないな」
「ほう。諦めたか」
僕は、懐から聖水を取り出して自分の体にかけたのである
「お兄ちゃん?」
「ふふふふふふふ。これでお前も終わりだな」
「何がしたいんだ?」
「ふふふ。こうするんだよ」
僕は、剣を抜くと。リリスのお母さんに向かって振り下ろしたのである
「きゃあぁぁ」
「リリス!?」
僕は、リリスのお母さんから手を離すと。そのままリリスを抱きかかえたのである
「お兄ちゃん。ありがとう」
「リリスが無事でよかった」
「うん。そうだね」
僕は、リリスのお母さんを見ると。リリスのお母さんは、全身が焼け焦げていたのである
「ふふ。私の勝ちのようだな」
「ああ。そうだね」
「それじゃあ、死んでもらうとするかな」
「そんなことはさせないよ」
「それは、無理な相談だな」
「やってみなけりゃ分からないだろ?」
「まあいいだろう。やってやるよ」
リリスのお母さんは、そう言うと。僕に向かって襲い掛かってきたのである 僕は、リリスを守りながら戦っていたのだが。徐々に押されてきてしまい。ついには、壁際に追い込まれてしまったのであった
「さすがに強いな」「ふん。降参するか?」
「まさか。まだ負けたわけじゃないし」
「その意気込みは認めよう。それじゃあ、終わらせてもらうよ」
リリスのお母さんは、僕に向かって拳を振り下ろそうとした瞬間。リリスのお母さんは、その場に倒れたのである「え?どういうことなんだ?」
僕は、状況がよく分からずにいると。リリスのお母さんの体が光に包まれ始めたのであった
「なんだよこれ……」
「お兄ちゃん……」
僕とリリスは、その光景を呆然と眺めていると。リリスのお母さんの体は完全に消え去り。そこには、一人の女性が立っていたのである
「リリスなのか?」
「うん。そうだよ」
「その姿は……」
「うん。これが本当の姿だよ」
「そっか。リリスは、本当は、こういう感じの姿だったんだね」
「うん。そうだよ」
「綺麗だよ」
「ありがとう」
僕とリリスが話していると。そこに一人の男がやってきたのである
「おやおや。これは、一体なんの騒ぎですかね」
「あんたは、誰なんだ?」
「お初にお目にかかります。私は、国王の使いのものですよ」
「王様の?」
「はい。あなた様には、王城にきていただきたいのです」
「どうしてですか?」
「詳しくは、お伝えできませんが。あなた様に会いたがっている方がいるんですよ」
「わかりました。行きましょう」
「では、こちらにどうぞ」
僕は、リリスと一緒に男についていくと。そこには、馬車が止まっており。その中には、一人の老人が座っていたのである 僕は、老人の前に立つと。頭を下げた
「初めまして。僕は、カイトと言います」「ワシは、ゼスト・バルスと言うものだ」
「僕は、どうして呼ばれたんですか?」
「実は、お主に頼みがあるんじゃ」
「なんですか?」
「お主は、勇者なのであろう?」
「え?どうしてそれを……」
「そんなのは、どうでもいいのじゃよ。それより、お主はこの国の姫を助けてくれぬか?」
「え?この国の姫様ですか?どうしてですか?僕には関係のないことですよね?」
「確かに関係ないかもしれん。じゃが、この国を救うためじゃと思って頼まれてほしいのじゃ」
「うーん……。助けるのは構わないけど……。報酬は出るんでしょうね」
「もちろんじゃよ。お金は、いくらでも出す」
「それじゃあ引き受けましょう」
「おお!ありがとうございます」
「いえいえ」
こうして僕は、この国を救うことになったのだった 僕とリリスは、リリスのお父さんの実家を出ると。今度は、王城に向かうために歩き始めたのである
「リリス。これからどうしようか?」
「うーん……。とりあえず、お母さんの実家に行ってみようと思うんだけどいいかな?」
「わかったよ」
僕とリリスは、リリスの実家に行くと。リリスのお父さんの家に向かうことにしたのである それから、しばらく歩いていると。リリスは、あることに気づいたのであった
「お兄ちゃん。なんだか人通りが少なくなってきたような気がするよ」
「たしかにそうだな」
僕とリリスは、不安になりながらも先に進むと。ついに、リリスのお母さんの実家についたのである
「やっとついたね」
「ああ。そうだな」僕とリリスは、家の中に入ると。リリスのお母さんを探すことにしたのである
「お母さ〜ん。どこ〜」「お姉ちゃ〜ん。どこにいますか〜?」
「リリス。静かにしないとダメだろ」
「あっ!ごめんなさい」
「まったく……。あっ!そうだ。リリスは、お母さんの匂いとかわからないのか?」
「ううん。わからないよ」
「そっか。困ったな……」
「お兄ちゃん。どうしたの?」
「いや……。なんでもない」
「そう……」
僕が悩んでいると。突然、外から悲鳴が聞こえてきたのである
「きゃあぁぁ!!」
「なんだ!?」
僕とリリスが外に出ると。そこには、全身を鎧で覆われた兵士がいたのだ
「おい!お前ら動くなよ!!」
「お前らは、ここで殺すからな!!」
兵士の一人が剣を抜き取ると。僕の方に斬りかかってきたのである
「危ない!!」
僕は、なんとか避けることができたが。僕の後ろにいたリリスは、避けることができずに斬られてしまったのだ
「きゃあ!!」
リリスは、地面に倒れ込むと。そのまま動かなくなってしまったのである
「リリス!?大丈夫か?」
「痛いよ……」
「くっ……!!許さないぞ!!」
僕は、怒りに身を任せて兵士達に攻撃しようとした時。僕の目の前に、リリスのお母さんが現れたのである
「お母さん!?」
「お前は、何をしようとしているんだ?」
「何をって……。こいつがリリスを!!」
「違う!!こいつじゃない!!私の娘を殺したのは、この子じゃない!!よく見ろ!!この子は、まだ生きているだろ!!それに、この子がお前を傷つけることなどできるはずがないだろ!!この子の手をよく見てみろ!!」
僕は、リリスの手を見てみると。リリスの両手は血まみれになっていたのである
「そんな……。嘘だろ……」
僕は、その場で膝をつくと。そのまま泣き崩れたのである
「どうしてこんなことに……。どうしてだよ……」
「お前のせいだろ」
「なっ……。お前に何がわかるっていうんだ!!」
「分かるさ。お前のせいで娘が死んだんだろ」
「ふざけるなよ……。ふざけるなよ……。ふざけるなよ!!!!」
「うるさいな……。いい加減にしなよ」
僕が怒鳴り声を上げると。リリスのお母さんがそう言ったのである
「ふざけるなよ!!僕は、お前を許さないからな!!」
「ふっ。勝手にしなよ」
「絶対に許してやるもんか……」
「それでいいよ。まあ、お前は、死ぬことになるから意味のないことだな」
「死ぬのはお前だろ?」
「はぁ〜。お前は何も分かっていないんだな」
「なにが言いたいんだ?」
「お前は、死ぬんだよ」
「それは、どういう……」
僕が質問をしようとすると。リリスのお母さんが僕に向かって殴りかかろうとしたのである 僕は、慌てて避けようとしたのだが。すでに遅く殴られてしまったのであった
「ぐふぅ……」
「お兄ちゃん!?」
僕は、その場に倒れると。そのまま意識を失ってしまったのである 僕は、目を覚ますと。そこは、薄暗い部屋の中でベッドの上に寝ていたのである
「ここは、一体……」
僕が状況を把握しようと頭を働かせていると。部屋の扉が開き。そこから、リリスのお母さんが入ってきたのである
「起きたみたいだね」
「リリスのお母さん?」
「そうだよ」
「どうして僕はここにいるんだ?」
「それは、私が運んだからだ」
「そうなのか?」
「そうだよ」
「リリスは、無事なのか?」
「ああ。ちゃんと生きてるよ」
「そうか。よかった」
「あの子に会っていくかい?」
「いや。今は、会う気はないよ」
「そうか。それじゃあ私は、行くとするよ」
リリスのお母さんは、そう言うと。僕の部屋から出ていったのである
「さてと……。これからどうしようかな……」
僕は、今後のことを考えていると。急にお腹が空いてきてしまい。お腹が鳴り始めたのであった
「お腹空いたな……」
僕は、部屋を出て食堂に向かうと。そこには、リリスのお母さんがいたのである
「あら?もう起きても平気なの?」
「ええ。大丈夫ですよ」
「そう。なら良かったわ」
「ところで、今は何時頃なんですか?」
「今は、夜の9時よ」
「え?夜なんですか?」
「ええ。それがどうかしたの?」
「いえ。なんでもありません……」
(まさか、時間の流れが遅いのか?)
僕がそんなことを思っていると。リリスのお母さんが話しかけてきたのである
「そういえば、あんた名前はなんていうんだい?」
「カイトです」
「へぇ〜。変わった名前だね」
「ええ。よく言われます」
「そっか。あんたは、どうしてここに来たんだい?」
「えっと……。その……。なんといいますか……」僕は、リリスのお母さんに本当のことを伝えるべきかどうか悩んでいたが。正直に話すことにしたのである
「実は、僕は、勇者なんです」
「そうなの?」
「はい」
「そうか……。あんたも大変だったんだね」
「はい。それで、お願いがあるのですが……」
「なに?」
「僕をこの家に置いてください」
「どうしてだい?」
「僕は、この世界を救うために旅をしています。ですから、少しでも力をつけなければいけないんです」
「なにか目的があるの?」
「はい。僕の幼馴染を助けたいんです」
「そっか……」
リリスのお母さんは、少し考え込んでいる様子だったが。すぐに顔を上げたのである
「わかったよ。ただし、条件があるけどね」
「なんですか?」
「この家で働いてもらうこと」
「わかりました」
「それともう一つ。この国で起きていることは、他言無用だからね」
「え?どうしてですか?」
「色々と事情があってね。この国では、情報規制をしているんだよ」
「なにかあったんですか?」
「まあ、そのうちわかるよ」
僕は、これ以上聞いても無駄だと思い。リリスのお母さんの話を聞くのをやめたのだった それから僕は、リリスのお母さんと一緒に夕食を食べ終わると。自分の部屋に戻ろうとしていたのである
「それじゃあ。僕は、部屋に戻りますね」
「ああ。わかったよ」
「それじゃあ、また明日」
僕は、リリスのお母さんの部屋を出ると。そのまま自室に戻ったのである
「はぁ……。これからどうしようかな……」
僕が悩んでいると。リリスが僕の部屋にやってきたのである
「お兄ちゃん。入ってもいいかな?」
「リリスか。いいぞ」
僕が返事をすると。リリスは、僕の部屋に入ってきたのであった
「お兄ちゃん。大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ」
「でも……。お兄ちゃん泣いていたよね?」
「ああ……。ちょっとだけな」
僕は、涙を拭うと。笑顔を作ったのである
「お兄ちゃん。何か悩んでいることがあるんでしょ?」
「まあな……」
「私には、話せない?」
「そうだな……。今は、まだ無理かな……」
「わかった。お兄ちゃんが言えるようになったら教えてね」「ありがとうな」
「ううん。お兄ちゃんのためだもん」
「そう言ってくれると助かるよ」
僕は、リリスと話していると。眠気が襲ってきたのである
「ふぁ〜。なんか疲れてきたな……」
「そうだね。お兄ちゃん。今日は、ここで寝ようよ」
「そうだな。そうするか」
僕とリリスは、そのままベッドに入ると。眠りについたのである 僕が目を覚ますと。なぜかリリスが僕の隣にいたのである
「どうしてリリスがここにいるんだ?」
「あっ!おはようございます。お兄ちゃん」
「ああ。おはよう。それより、どうして僕の隣にいるんだ?」
「だって、一人だと寂しいから一緒に寝たかったんだもん」
「そうか……」
僕は、リリスが可愛かったので。頭を撫でてあげると。リリスは気持ち良さそうに笑っていたのである
「ふふっ。なんだか子供扱いされてるみたいですね」
「そうか?別にいいじゃないか」
「それもそうですね」
僕がそんな話をしていると。突然部屋の扉が開かれたのである 僕達が扉の方を見るとそこには、リリスのお父さんがいたのだ
「おい!!お前達!!そこで何をやっている!!」
僕とリリスは、急いで服を整えると。リリスのお父さんの前に立ったのである
「すみません!!すぐに出ていきます!!」
「早く出ていけ!!」僕達は、リリスのお父さんの言葉に従い部屋から出たのである
「はぁ……。びっくりしたな……」
「はい……。ごめんなさい」
「リリスが謝ることじゃないさ」
僕がリリスの頭を優しく撫でると。リリスは、嬉しそうな表情をしていたのであった 僕とリリスが部屋に戻ると。リリスのお母さんが椅子に座って待っていたのである
「やっと戻ってきたね」
「すいませんでした……」
「気にすることはないよ。それよりも、ご飯ができたから食べな」
「はい!!」
僕は、リリスのお母さんから料理を受け取ると。机の上に置いたのである
「いただきます!!」
僕が元気よく挨拶をして食べると。リリスは、不思議そうに僕を見つめていたのである
「どうしたんだ?」
「いえ……。いつもより美味しいなと思いまして……」
「ああ。確かにそうだな」
「そうだろう?私の腕がいいからだよ」
「なにを言うか。俺の腕がいいからだろ?」
「いやいや。私が……」
「いいや。お前は、何もしてないだろ?」
「そんなことは無いさ」
「そうなのか?」
「もちろんだ」
僕とリリスのお母さんは、お互いに褒め合うと。楽しげに笑い合っていたのである
「ふふっ。やっぱり二人は仲がいいんですね」
「まあな」
「そうだな」
「そういえば、お兄ちゃん。この国に来てからの感想を教えてくれないか?」
「え?この国にですか?」
「ああ。この国のことについて知りたいと思ってね」
「なるほど。そういうことでしたら、わかりました」
僕は、この国について知っていることを全て話すと。リリスのお母さんは、真剣な眼差しで僕を見てきていたのである
「この国は、本当に酷い国だね……」
「そうですか……」
「ああ。まずは、この国の貴族が腐っているのが一番の問題だね」
「貴族がですか?」
「そうだよ。この国では、貴族が平民のことを奴隷のように扱っているんだ」
「え!?そうなんですか?」
「ああ。それに、王都以外の街や村では、女や子供を攫って売っているらしい」
「そんな……。どうして……」
「それはわからないよ。ただ一つだけ確かなのは、今のままじゃあこの国が滅びるということだけだね」
「そうですよね……」
僕は、リリスのお母さんの話を聞いて。自分が思っていた以上にこの国が大変な状況だということを知ったのである
「あの……。この国は、いつまでこんな状態なんですか?」
「さあな……。正直に言うと、私は、この国がどうなろうが興味がないんだよ」
「え?どうしてですか?」
「私は、この国を救おうとは思っていないからだ」
「そんな……。どうしてですか?」
「この国には、たくさんの民がいるんだ。その人達が苦しんでいるのなら助けたいとは思うが。他の人がどうなろうと知ったことではないからね」
リリスのお母さんがそんなことを言うと。リリスのお父さんがため息を吐いたのである
「全く……。相変わらずだな」
「当たり前だ。私にとって大切なのは、家族だけだ」
「はぁ〜……。まあ、お前ならそう言うと思っていたけどな」
「それで?あんたは、この国を救いたいんだろう?」
「まあな……。だけど、俺達に何ができるんだ?」
「そうだな……。とりあえず、冒険者になるといいかもしれないな」
「え?どうして冒険者に?」
「あんたは、勇者なんだろ?」
「そうですけど……。それがどうかしましたか?」
「勇者という肩書きがあれば、多少は優遇されると思うよ」
「本当ですか?」
「ああ。少なくとも、勇者の知り合いということで色々と融通してくれるはずだ」「そうですか……」
僕は、リリスのお母さんの話を聞くと。少しだけ希望が出てきたのである
「よし!!それじゃあ、早速ギルドに行ってくるよ」
「ああ。気をつけて行ってこいよ」
「わかってるよ」
僕は、リリスのお母さんの部屋を出ると。そのまま自分の部屋に戻り。身支度を整えたのであった
(さてと……。この国を救うためにも頑張らないとな)
僕は、心の中で決意すると。すぐに部屋を出て。この国を救うために動き始めたのである 僕がこの国のためにできることを考えた結果。この国にあるダンジョンを攻略することにしたのである
「ダンジョンを攻略して、この国を救うか……」
僕は、この国で起こっている問題を解決するには。この国で一番強いと言われている人を倒すしかないと思ったのである
「でも、一番強い人は、どこにいるんだろう……」
僕は、この国で起きている問題について考えると。すぐに答えが出たのであった
「そうだ……。この国で王様と呼ばれている人に会えばわかるんじゃないか……」
僕は、そう結論を出すと。すぐに城に向かうために歩き出したのである 僕は、リリスと一緒に城の前まで来ると。門番をしている兵士に声をかけられたのである
「おい。お前達。ここは、立ち入り禁止区域だぞ」
「えっと……。僕は、この国の王に用事があるんですが……」
「王の関係者か?」
「違います……」
「だったら帰れ」
「でも……」
僕が困った顔をしていると。リリスが一歩前に出て、兵士に向かって話しかけたのである
「私は、リリスと言います」
「リリス様ですね。失礼いたしました」
「いえ。気にしないでください」
「ありがとうございます。ところで、あなたは、どうしてここに?」
「実は、お父様に呼ばれているんです」「そうですか……。わかりました。確認してまいりますので少々お待ち下さい」
「お願いします」
僕とリリスが待っていると。兵士が戻って来て、僕達を中に入れてくれたのである
「それでは、こちらへどうぞ」
「ありがとうございます」僕とリリスが中に入ると。そこには、一人の男性が立っていたのである
「リリス。よく来てくれたね」
「お久しぶりです。お父様」
「そうだね。最後に会ったのは、君が5歳の頃かな……」
「そうですね」
「今日は、どうしたんだい?」
「はい。お父様にお聞きしたいことがありまして」
「そうかい。私に答えられることであればいいんだけどね……」
「ありがとうございます」
僕が二人の会話を黙って聞いていると。リリスのお父さんが僕の方を見てきたのである
「君は?」
「あっ!申し遅れました。僕は、リクと申します」
「そうか……。リクくんか……」
「はい。よろしくお願いします」
「ああ。わかったよ。それで?リリスとどんな関係なんだい?」
「え?どういう意味ですか?」
「いや……別に深い意味はないんだが……」
「そうですか……。ただ、友達の妹さんなので仲良くさせてもらっています」
「そうか……。もしかしてだが、リクくんは勇者なのかい?」
「はい……。一応そうですけど……」
僕が返事をすると。リリスのお父さんは、驚いた表情をしていたのである
「そうか……。リリスが言っていた通りだな……」
「お母様が何か言ってたんですか?」
「まあな……。リリスがこの国に来た時に、リリスがこの国のことを悪く言ったんだよ」
「そうなんですか……」
「まあ、この国の現状を知っていれば当然の反応だと思うがな……」
リリスのお父さんは、そう言うと。悲しそうな表情をしていたのである
「あの……リリスのお姉さんのことは、残念でした……」
「ああ。そうだな……」
「すいません……」
「いや……。謝ることじゃないよ。むしろ謝るのは、私の方だからね……」
「どうしてですか?」
「私は、リリスの姉がこの国から出て行った時。引き止めなかったんだ……」
「そうですか……」
「ああ……。リリスの両親は、もう亡くなっていて。私が唯一の家族だったからね……。私に引き止める資格なんて無かったんだよ……」
「それでも……。家族を引き止めたかったんじゃないですか?」
「いや……。私は、怖くてできなかったんだ……」
「怖い?」
「ああ……。もし、私が引き止めていれば。リリスが傷つくことになるかもしれないからね……」
リリスのお父さんは、辛そうにそう話すと。僕から視線を逸らしたのである
「あの……。リリスのお姉さんは、どうしてこの国から出ていったんですか?」
「それは、私が知らないことだ……。多分、私のせいだろうな……」
「どうしてですか?」
「それはな……。私が仕事ばかりで、あまり家に帰ってこないからだ」
「そうですか……。あの……。お父様」
「なんだ?」
「お父様は、この国で何の仕事をされているのですか?」
「それは言えないな……」
「どうしてですか?」
「リリスは、この国で仕事をする気なのか?」
「わかりません……」
「そうか……。それなら、この国での仕事は辞めた方がいい……」
「どうしてですか?」
「この国は、腐っているからだ……」
リリスのお父さんがそう話すと。部屋の扉がノックされたのである
「誰だ?」
「失礼します。先程、国王様がお見えになりました」
「そうか……。すぐに行く」
「はっ!!」
兵士は、敬礼をすると。部屋を出ていったのである
「すまない……。急用が入ったようだ」
「そうですか……。それなら仕方ありませんね」
「本当にすまないが……。また今度にしてくれないか?」
「わかりました」
「ありがとう……。それじゃあ、リリス。元気でな……」
「はい……。お父様もお身体にお気をつけください」
「ああ……。それじゃあな……」
リリスのお父さんがそう言うと。リリスと僕は、城を出たのであった 僕は、リリスと一緒に城を出ると。そのまま城下町に向かったのである
「これからどうしよう……」
僕は、この国を救う方法を考えながら歩いていると。突然、リリスに腕を引っ張られたのである
「ん?」
僕は、引っ張られた方を向くと。そこには、三人組の男達がいたのである
「ちょっといいかな」
リーダー格の男にそう言われると。僕は、嫌な予感がしたので、その場から離れようとしたのだが。男達は、僕を逃がさないように取り囲んできたのである
「あの……。なんでしょうか?」
「お前は、この国の人間か?」
「そうですけど……」
「そうか……。お前は、勇者なのか?」「そうですけど……」
「やっぱりな……」
「え?どうしてわかるんですか?」
「お前は、俺達を知らないのか?」
「え?えっと……。すいません……」
「そうか……。まあいい……。俺の名前は、ガルトだ」
「俺は、ゾムだ……」
「僕は、ザラだよ」
「はぁ〜……。お前達のような奴がいるから。この国が駄目になるんだ……」
「どういうことですか?」
「俺達三人が誰かわかるか?」
「えっと……。冒険者ですか?」
「違う!!この国の元貴族だ」
「え?貴族の人達がどうしてこんなことをしているんですか?」
「俺達の親は、この国の貴族だったが。この国を変えようと必死になっていたが。この国を変えることはできなかったんだ……」
「そうですか……」
「だから、俺達の手でこの国を変えてやるんだ!!この国には、腐った連中しかいない!!そんな奴らを排除して。新しい国を作るんだ」
「そうですか……」
僕は、男の話を聞いていたが。この国を救う方法は思いつかなかったのである
「あの……。僕にできることはありますか?」
「あるさ……。まずは、お前の命を貰う……」
「僕を殺すんですか……」
「そうだ……。そして、リリスも一緒に殺す」
「どうしてですか!?」
「決まってるだろ……?リリスが生きていると。この国に混乱が起きる可能性があるからだ……」
「でも……。僕が死んだら、リリスはどうなるんですか?」
「リリスは、殺さずに奴隷として売ってやるよ」
「え?」
「リリスは、顔立ちが整っていてスタイルもいいからな……。高く売れると思うぞ」
僕は、男の話を聞いていると。怒りがこみ上げてきたのである
「ふざけるな!!!!」
僕は、大声を上げると。すぐに剣を抜いて構えたのである
「お前達に、リリスを渡すわけがないだろ!!」
「ははははは……。馬鹿が……。お前みたいなガキが、この人数を相手に勝てると思ってんのか?」
「やってみないとわからないだろ!!」
「おい……。やっちまえ……」
僕が叫ぶと。周りにいた人達が一斉に僕に向かって襲いかかってきたのである
「はあぁー!!」僕は、襲ってくる男達に向かって斬りかかったのである
「ぐはっ……」
「ぎゃあっ……」
僕が次々と男達を倒していると。リリスが後ろから攻撃しようとしていた男を蹴り飛ばしたのである
(しまった!)
僕はすぐに後ろに振り向いたが間に合わずに。男が持っていた短刀で僕の左腕を切りつけたのである
「痛てぇ……」
僕は切りつけられた場所を見ると。血がダラダラと流れていたのである
「リクさん!」リリスが心配そうな顔をして僕に向かって叫んでいたので。僕は、大丈夫だと伝えるために手を振ったのである
「てめえ……。よくもやりやがったな……」
男は、僕に近づこうとしたが。他の男達が僕に近づいてきていたのである
「邪魔をするなよ……」僕は、そう言うと。一気に走り出して、僕に攻撃を仕掛けようとしていた男を横薙ぎにして倒したのである
「リクさん……。私も戦います」
「いや……。リリスは、下がっていて……」
「リクさんの足手まといになりたくないんです……」
「わかったよ……。リリスの気持ちは嬉しいんだけど。ここは、任せてくれないかな?」
「え?リクさん……?」
リリスは、戸惑っていたが。すぐに理解してくれたみたいである「わかりました……。でも、無茶だけはしないで下さいね……」
「わかってるよ……」
僕がリリスと話している間も。男達は、僕に襲いかかってきており。リリスも戦い始めていたのである
「死ねぇー!!」
「はあぁ!!」
「ぐはっ……」
僕が一人倒していると。リリスの方では、四人の男と戦っていて。苦戦していたので。僕は、急いでリリスの方に駆け寄っていったのである
「リリスさん。加勢します」
「ありがとうございます。助かります」
リリスは、そう言うと。一人で相手をしている男に向かって攻撃をしたのだが。あっさりとかわされてしまったのである
「危ないよ……」
「なに!?」
リリスは、自分の目の前で起こっていることに驚いていたのであった。なぜなら、リリスの攻撃をかわしたはずの男が。いつの間にかリリスの後ろに回り込んでいたからである
「リリスさん。避けてください」
「はい……」
リリスは、慌ててしゃがむと。男の拳を避けたのであるが。その瞬間、リリスの髪の毛を掴んで持ち上げたのであった
「きゃっ……」
「リリス!!」リリスが捕まったのを見て。僕は、すぐにリリスを助けに向かおうとしたが。別の男が僕に殴りかかってきたのである
「くそ……」
僕は、リリスに意識を集中していたため。避けることができなかったので。咄嵯に剣を盾にして防いだのだった「ぐっ……」
僕は、殴られた衝撃で少しだけよろけたが。すぐに体勢を立て直すと。今度は逆に、相手を押し返したのである
「ぐわぁ……」
相手が怯んでいる隙に。僕は、リリスを助けるために向かっていたが。リリスを捕まえている男の他にも仲間がいたらしく。僕は、囲まれてしまったのである
「くっ……」
僕は、剣を構えようとしたが。相手の数は、十人以上もいたのだ。多勢に無勢なので、どうすることもできなかったのである
「リリスさん……」
僕は、リリスの名前を呼んでいたその時。突然、リリスの髪を掴みながら捕まえていた男の手が斬れたのである
「なんだ?」
僕がリリスの方を向くと。リリスは、右手にナイフを持っていたのである
「リリス……。それ……」
「これは、護身用に持っていたものです……」
リリスは、そう言うと。すぐにリリスを取り囲んでいた男達の方に向かったのである
「てめえ……。よくも俺の仲間を……」
「あなた達が先に仕掛けてきたんじゃないですか……」
「うるせえ!!」
「キャッ……」
「おい!!何をする気だ!!」僕が叫んだ時には、すでに遅く。男達は、一斉にリリスを殴ったり蹴ったりしはじめたのである
「やめろぉー!!」僕は、リリスの元へ行こうとした時。僕の足元に矢が飛んできて刺さったのである
「うぅ……」
「動くな!!動けば、次はお前の心臓に突き刺すぞ……」
「くっ……」
僕は、悔しい思いをしながらも。その場に立ち止まっていたのであった
「はぁ……はぁ……。もういいだろ……」
「そうだな……」
「リリス……。生きてるか?」「なんとか……」
「そうか……。なら、早く逃げよう……」
「はい……」
僕は、倒れている人達を無視してその場から去ろうとしたのだが。一人の兵士が僕の元に走って来たのである
「待て!!逃げるな……」
兵士に呼び止められたが。僕は無視をしてその場から離れようとしたのだが。もう一人の兵士が僕に話しかけてきたのである
「貴様ら……。この国から出ていけ……」
「なんのことですか?」
「とぼけるな……。お前達のせいでこの国は、めちゃくちゃだ……」
「それは、自分達の責任じゃないですか?」
「いいから、黙って出て行け……」
「嫌です……」
「そうか……。ならば、力づくでも追い出すまでだ……」
「やってみろよ……」僕は、そう言って剣を構えると。兵士達は、僕に向かって襲いかかってきたのである
「はぁ〜……。はぁ〜……。はぁ〜……。やっと終わった〜」
僕は、肩で息をしながら地面に座り込んだのである
「お疲れさまです」
リリスが笑顔で、僕に飲み物を渡してくれたので。僕は、それを受け取って飲んだのである
「ふぅ〜……。ありがとう」僕は、飲み終わると。立ち上がって周りを見渡したのである
「結構、倒しましたね……」
「ああ……。でも、まだ残っているだろうけど……」
僕とリリスは、二人で話しながら歩いていると。また、誰かが僕達に声をかけてきたのである
「お前達!!そこで何をしているんだ?」
僕達は、声をかけられたので。振り返るとそこには、リリスのお父さんが立っていたのである
「あの……。実はですね……。この国を救おうと思って……」
「何を言うかと思ったら……。そんなことをしてお前達に何か得でもあるのか?」
「得ですか?まぁ……。ありますね」
「どんなことだ?」
「この国を乗っ取ることですかね」
「ふざけるな!!」
リリスのお父さんは、怒りの形相で僕に怒鳴りつけてきたが。リリスが僕とリリスのお父さんの間に入ったのである
「リリスさん。どいてくれませんか?」
「どきません……」
「どうしてですか?」
「この人は、私の大切な人だからです……」
「そんなこと聞いてないですよ……」
「え?」
「どうして僕があなたの大切な人になっちゃうんですか?僕は、ただの旅人なんですよ?それに、この国の人間でもないのに。この国を救うなんて馬鹿げてると思いますよ」
「確かにリクさんの言っていることは間違っていません……。でも、この国に恩があるんです……」
「リリスさん……。この国を救ったとしても。この国が良くなるとは限りませんよ?」
「それでも構いません……」
「なぜそこまでするんですか?」
「私は、リクさんと一緒に旅がしたいからです……」
「それだけですか?」
「はい……」
僕は、リリスの話を聞いていると。だんだんと苛立ちを覚えていたのである
「リリスさん……」
「はい……」
「僕は、あなたのような人を馬鹿だと思いました……」
「え……?」
「僕には、理解できませんね……」
「リクさん……」
「すいませんでした。失礼します……」
僕は、リリスに頭を下げると。リリスの前から去って行ったのである
「リクさん……。行かないで……」
僕は、リリスの声が聞こえていたが。そのまま歩いていたのである
(僕は、リリスさんのことをよく知らない……。だけど、リリスさんが僕のことを好きだと言ってくれた気持ちは嬉しかった……。僕は、どうしたらいいんだよ……。リリスさんをこのまま放っておくわけにもいかないし……。僕は、これからどうすれば良いんだ?)
僕が悩んでいると。リリスが追いかけてきて僕の腕を掴んだのである
「リクさん……。私も連れていってくれないでしょうか?」
「リリスさん……」
「お願いします……」
リリスは、必死になって僕に頼んできたので。僕は、頭を掻きながら答えたのである
「はぁ……仕方がないですね……」
「本当ですか!?」
「はい……。でも、条件があります……」
「なんでしょう?」
「まず一つ目……。もう二度と、僕の前で死ぬような真似をしないこと……」「わかりました……」
「二つ目に……。僕と二人っきりの時以外は、絶対に死にかける行為をしないでください……」
「わかりました……」
「最後に……僕とリリスさんは、一緒に旅をするんです。なので、敬語はなしということになります」
「わかりました……」「はぁ……。リリスさん……。本当にわかっているのかな……」
「はい……」
僕は、不安になりながらも。リリスを連れていくことにしたのである
「それで、どこに行こうか……」
「そういえば、決めてなかったね……」
僕とリリスは、行き先を決めずに歩き出していたのであった
「とりあえず、リリスさんは。どこから来たの?」
「私は、ここから東にある村から来ました」
「そうなんだ……。じゃあ、そこに行ってみようか?」
「はい……」
僕とリリスは、しばらく歩くと。小さな村にたどり着いたのである
「ここが、リリスさんの故郷なのかな?」
「はい……」
僕とリリスが村の中に入ると。村人達が僕達の方に向かってきたのである
「あんたら……。この国の住民じゃないだろ?」
「そうですけど……」
「なら、すぐにこの国から出るんだな……」
「え?」
僕は、いきなり言われて戸惑ってしまったが。リリスは、僕の手を握ってきたのである
「ちょっと待って下さい……」
「なんだ?」
「この国を救おうとしている人がいます……」
「なにぃー!!お前達!!こいつらを捕らえろー!!」
「はい!!」
リリスの村の人達は、一斉に僕とリリスに襲いかかってきたが。僕は、剣を抜いて。襲ってくる村人を次々と斬り倒していったのである
「くそ……。強いぞ……」
「こうなったら……」一人の男がそう言うと。他の人達は、後ろに下がっていき。一人だけ前に出てきたのである
「俺は、この村の村長の息子だ!!お前達なんかに負けるかー!!」
「そうか……。なら、僕に勝てたら見逃してやるよ……」
「なんだと……。後悔しても遅いからな……」
僕と村長の息子の戦いが始まろうとした時。突然、僕と村長の息子の間に剣が降ってきたのである
「誰だ!?」
僕と村長の子供が振り返ると。そこには、一人の男性が立っていたのである
「やれやれ……。あなたは、何をしているのですか?」
「あなたは……」
「久しぶりですね……。リク殿……」
「あなたは、もしかして……」
「はい……。私がこの国の騎士長をしています」
「騎士長だったんですか……。すみませんが、そこを通してもらえませんか?」
「それは無理ですね……」
「どうしてですか?」
「あなたがリリス様を連れて行こうとしていたので。止めに来たのです」
「それは、誤解です……」
「いいや……。私は見ていましたよ……。あなたがリリス様に襲いかかろうとしているところをね……」
「あれは……」
僕は、その時のことを思い出しながら。言い訳をしようとしたが。すぐに諦めたのであった
「はぁ……。もういいです……。僕が悪かったですから……」
「そうですか……。では、大人しく捕まってもらいましょうか……」
「くっ……」
僕は、何も抵抗できないまま縄で縛られてしまったのである
「さてと……。これでいいでしょう……」
「ありがとうございます……」
リリスは、笑顔で騎士長にお礼を言うと。僕に近づいてきて縄を解いて抱きついてきたのである
「リリスさん……」
「よかった……。無事で……」
「ごめんなさい……」
「いいえ……。いいんですよ……」
「あの〜……。感動の再会のところ申し訳ないのですが……」
「ん?なに?」
「この国を救おうとしている人は、どちらにいるのですか?」
「あっ……。忘れてた……」
僕は、リリスと離れて。剣を持っている男性の元に歩いていったのである
「それで、僕がこの国を救おうとした人なんだけど……」
「ああ……。あなたがですか……。名前は?」
「リクです……」
「リクですか……。私は、この国の騎士団長をしている者です」
「え?騎士団長さんでしたか……。僕は、旅人ですけど。この国を救う気はないですよ」
「ほう……。どうしてですか?」
「だって……。この国には、困っている人はいないじゃないですか?それなのに、この国を救うなんておかしいと思いますけど……」
「確かにその通りです……。でも、私はこの国を守りたいんです……」
「どうしてですか?」
「それは……。私の大切な仲間がいるからです……」
「へぇ……。ちなみに、どんな人なんですか?」
「それはですね……。とても優しくて可愛い女の子です」
「え?リリスさんですか?」
「いえ……。違いますよ……。リリスさんは、この国を救おうとしてくれている優しい子ですよ……」
「なぁんだ……。リリスさんじゃないのか……」
「あの……。リリスさんというのは?」
「あぁ……。僕と一緒に旅をしていた女性なんですが。今はこの国にいないみたいです……」
「そうですか……。残念です……」
「ところで……。僕をどうするつもりですか?」
「とりあえずは、城に連れて行くつもりです……」
「やっぱり……。ですよね……」
「嫌なんですか?」
「まぁ……。面倒臭いですし……」
「大丈夫ですよ……。悪いようにはしませんから……」
「本当かな……」
(まぁ……。城に連れていかれたら。リリスさんを助けに行くことも出来ないし。おとなしく従った方が良さそうだな)
僕は、そう思いながら。騎士長に連れられて城の中に入っていくのであった(うわぁ……。中もすごいな……)
僕は、周りを見渡しながら歩いていると。突然、扉の前にたどり着いたのである
「着きましたよ……」
「ここが王様の部屋ですか?」
「そうです……」
僕は、部屋の中に入ると。豪華な部屋の中で椅子に座っている老人と。隣で立っている若い男性の姿が見えたのである
(この国の王様と王子様かな?)僕は、そんなことを考えながら。王様の前に立つと。深く頭を下げたのである
「僕は、旅人のリクと言います」
「リクと言うのだな……。ワシは、この国の王をしておる。エルドレッド・ラガートだ」
「私は、第一王子のレイル・ラガートです」
(やっぱり……。王様と王子様だったか……。それにしても……。王様と王子様は、似ているんだな……)
僕は、二人の顔を見ながらそう思っていると。突然、後ろから声をかけられたのであった
「どうだい?驚いたかい?」
僕は、振り返るとそこには。一人の女性が立っていたのである
「あなたは……」
「あたしは、この国の王妃だよ」
僕達は、自己紹介を終えると。僕は早速、疑問に思っていたことを質問したのである「あの……どうして僕を呼んだんですか?」
「実はな……。君に頼みがあるんだよ……」
「はぁ……。なんでしょう?」
「この国を守ってくれないか?」
「はい?」
僕は、いきなりのことに驚いてしまったが。詳しい話を聞こうとしたのであった
「えっと……。詳しく教えてもらえないでしょうか?」
「わかった……。まずは、この国がなぜ滅ぶ寸前まで追い込まれたのか。そこから話そう……」
僕とリリスと騎士長は、エルドレッド国王の話を聞くことにしたのである
「まずは、この国で何が起こったのか。それを説明しよう……」
「お願いします……」
僕は、真剣な表情で話すエルドレッド国王の顔を見て。真面目に聞くことを決めたのであった
「まずは、この国で起こっている問題を説明しよう……」
「はい……」
僕は、返事をすると。エルドレッド国王は、ゆっくりと説明を始めたのである
「この国は、昔から平和で穏やかな国だった……。だが、ある時を境に。魔族による侵略が始まったのじゃ……」
「え!?」
僕は、衝撃的な内容を聞いて。驚きを隠せないでいたのであった
「どういうことですか?」
「そのままの意味じゃ……。ある日突然現れた魔王と名乗る者が。魔物を引き連れて、人間達に攻撃してきたのじゃ……」
「そうだったんですか……」
「じゃが……。我が国は、屈しなかった……。勇者召喚を行い。多くの犠牲を出しながらも。なんとか撃退することに成功したのじゃ……」
「なるほど……」
(それで、この国の名前が『聖国』なのか……。でも、どうして急に魔族の侵攻が止まったんだろう……)
僕は、疑問に思ったが。そのことを聞かずに話の続きを聞いたのである
「それからしばらくは、平穏な日々が続いたのじゃが……。最近になって、また魔族が攻めてきたのじゃ……」
「どうしてですか?」
「それはわからん……。ただ言えることは。奴らは、この国の結界が弱まっていることに気づいたということだけじゃ……」
「結界ですか……」
僕は、初めて聞いた言葉に戸惑ったが。すぐに気持ちを切り替えて。続きを聞くことにしたのである
「それで、どうして僕が必要なんですか?」
「それは……。君が持っている剣が原因なのだよ……」
「僕の剣が?」
「ああ……。君は、その剣をどこから手に入れたんだね?」
「これは、神様から貰った物ですけど……」
「やはりか……。その剣は、神剣と呼ばれる伝説の剣だと言われているものだ」
「そうなんですか……」
(まぁ……。リリスさんを助けるためにくれた剣だし。普通の剣ではないと思っていたけどね……。それにしても、『聖剣』とかじゃないんだな……)
僕が剣について考えていると。突然、横にいたリリスが話しかけてきたのである
「ねぇ……。リク……」
「ん?なに?」
「その剣って……。本当にリクのなんだよね?」
「うん……。そうだけど……」
「だったら、私にも少し貸して……」
「え!?」
僕は、リリスの言葉に驚いていたが。リリスは、笑顔のまま僕に近づいてきたのである
「ちょっと待て!!リリス!!」
「ん?なんです?騎士長さん……」
「リリス様!!何をしようとしているんですか!?」
「別にいいでしょ?騎士長さん……」
「ダメです!!リリス様には、危険すぎます」
「大丈夫ですよ……。これでも、腕には自信がありますから……」
「そういう事ではありません!!リリス様には、この国を救おうとしている人達がいるんですよ」
「それは、知っていますけど……。それと、この剣を貸すことに関係があるんですか?」
「それは……」
(さすがの騎士長さんも言い返せなくなったみたいだな……。しかし、リリスさんを説得するのは無理だろうな……)
僕は、リリスの説得を諦めて。仕方なくリリスに剣を渡すと。リリスは、嬉しそうに僕から受け取ったのである
「ありがとう……。リク……」
「いいよ……。それよりも、気をつけて使ってよ……」
「もちろんよ……」
リリスは、僕に微笑みかけると。腰につけていた鞘から剣を抜き取り。自分の目の前で構えたのであった
「これが、本物の剣なのね……」
リリスは、剣を構えて感触を確かめると。剣を下ろして僕に向かって言ったのである
「リク……。剣を貸してくれてありがとう……」
「いいよ……。気にしないで……」
「それで、これからどうするんだ?」
僕が、リリスと話していると。エルドレッド国王が質問してきたので。僕は、正直に答えることにしたのであった
「そうですね……。この国を救う方法を考えていますけど。いい案が浮かんでないです……」
「そうか……。なら、しばらくこの城に滞在しないか?」
「それは、ありがたいですけど……。ご迷惑じゃないですか?」
「そんなことはないぞ……。むしろ、この国を救う方法を一緒に考えて欲しいくらいだからのう……」
「わかりました……」
「では、今日から城に住んでもらうことにするから。レイル王子が案内してくれるはずだ」「よろしく頼むよ……」
「はい……。こちらこそ……」
僕は、レイル王子と握手をすると。リリスと一緒に部屋から出て行ったのであった
(さぁ……。とりあえず、リリスさんを探さないとな……。どこにいるんだろう?)
僕は、リリスさんを探しながら城の中を歩いていくと。突然、後ろから声をかけられたのである
「あれ〜?リクじゃないか〜」
(えっ……?)僕は、後ろを振り向くと。そこには、一人の男性が立っていたのであった
(誰だ……?)
僕は、警戒しながら男を観察していると。男は僕を見ながら笑っていたのである
「ははは……。まさかこんなところで会うとは思わなかったよ」
「えっと……。あなたは、誰なんですか?」
「おっと……。そういえば自己紹介がまだだったな……。俺の名前は、ジーク・ライナスだ」
「え!?」
僕は、名前を聞いて驚いたのであった
(ジークさんだって……。ということは……)
僕は、男の顔をじっくり見てみると。そこには、昔の面影が残っている顔があったのである
「もしかして……。ジークさんですか?」
「あぁ……。久しぶりだな……。リク……」
「お久しぶりです……。まさか、この国に来ていたなんて思いませんでしたよ……」
「はは……。そうだよな……。まぁ、色々あったんだよ……」
「そうですか……」
(そうか……。ジークさんの今の職業は『盗賊』なのか……。という事は、やっぱりこの国に来た理由は……。いや、今は聞かない方がいいかもな……)
僕は、話を変えようと。話題を変えることにしたのであった
「それより、どうしてこの国に来られたんですか?」
「それはな……。ある人から依頼されたんだよ」
「もしかして……。アルスラン王子からですか?」
「いや……。違うな……」
(やっぱりか……。それじゃ、一体誰が……)
僕が悩んでいると。突然、後ろから声をかけられたのであった
「おい……。そいつから離れろ……」
僕は、声がした方を見ると。そこには、一人の男が立っていたのである
「あなたは……?」
「俺は、この国の第一騎士団団長のゴードン・グラックだ」
「団長さんですか……」
(うわぁ……。なんか面倒臭そうな人が出てきたな……)
僕は、そう思いながら。団長と名乗る男性を見つめたのだった
「それで、どうして離れる必要があるんですか?」
「お前が持っている剣が問題なんだ……」
「僕の剣が?」
「そうだ……。その剣を持っている者は、この国では特別な存在になるんだ……」
「特別ですか……」
(なんとなく予想はつくけど……。一応、聞いてみるかな……)
僕は、疑問に思ったことを質問することにしたのである
「それは、どういう意味ですか?」
「その剣を持つ者は、魔王と戦う使命が与えられるのだ……」
「なるほど……」
僕は、団長の話を聞いて。少し考えてみたが。やはり、自分が戦うことになるとは思えなかったのである
「あの……。すいませんが。僕は、戦いたくないんですが……」
「なぜだ?」
「なぜって……。そもそも僕は、旅人でこの国を救う理由がないですから……」
「だが、その剣は選ばれた者にしか使えないと言われている剣なんだぞ」
「え!?」
僕は、その言葉を聞いて。驚きを隠せないでいたのであった
(もしかして……。その剣が『聖剣』なのか!?だとしたら、僕が使うのはまずいんじゃないか!?)
僕は、内心焦りながらも。なんとか冷静を装いながら話を続けたのである
「その剣が聖剣かどうかはわかりませんが。それでも、僕には使えそうにないですよ」
「いや……。間違いなく聖剣だ……」
「どうして、そう言い切れるんですか?」
「その剣からは聖なる力が溢れ出ているからだ……」
「え!?」
(もしかして……。僕が使っている時だけ出てくるのか!?)僕は、さらに混乱していたが。なんとか平静を保つと。疑問に思っていたことを聞いたのである
「どうして、聖剣は僕を選んだんでしょうか?」
「それはわからないな……。神に選ばれた者としか言えない……」
「そうですか……」
「とにかくだ……。一度、城に戻れ……」「わかりました……」
(まぁ……。しょうがないよね……)
僕が諦めると。団長さんは、なぜか残念そうな表情を浮かべていたのである
「そうか……。わかった……」
団長さんは、そう言うと僕の横を通り過ぎようとしたが。突然立ち止まり僕の方を振り返ったのである
「そういえば……。お前の名前を聞いてなかったな……」
「あっ……。そうでしたね……。僕の名前は、リクと言います」
「リクか……。覚えておくよ……」
「はい……」
(よかった……。普通に話をしてくれたみたいだな……)
僕は、ほっと胸を撫で下ろすと。団長さんは、僕に背を向けて歩き出したのであった
(本当に不思議な人だったな……。それにしても、リリスさんはどこに行ったんだろう?)
僕は、周りを見ながら歩いていると。突然、横から声をかけられたのであった
「リク!!」
「え!?」
僕は驚いて振り向くと。そこには、リリスがいたのである
「リリス!!急にいなくなったから心配してたんだよ……」
「ごめんなさい……」
リリスは、申し訳なさそうな顔をしながら謝ってきたので。僕は、リリスの頭を優しく撫でてあげたのである
「いいよ……。無事だったらそれでいいから……」
「ありがとう……」
リリスは、嬉しそうに微笑むと。僕に抱きついてきたのであった
「ちょっと!?リリス!?」
「えへへ……」
リリスは、恥ずかしそうにしながらも。そのまま動こうとしなかったので。僕は、リリスが落ち着くまで待つことにしたのである
「リリス……。もう大丈夫?」
「うん……」
「それじゃ、行こうか?」
「はい……」
リリスは、名残惜しそうにしながら僕から離れると。二人で手を繋いで城の中を歩いて行ったのであった
(リリスと手を繋ぐのも久しぶりだな……)
僕は、そんなことを考えていると。リリスが話しかけてきたのである
「ねぇ……。リク……」
「なに?リリス……」
「私……。リクと一緒にいられて嬉しいよ……」
「僕もだよ……。リリスと一緒で楽しいよ……」
リリスの言葉に答えると。リリスは、笑顔で僕を見つめていたのであった
「これからもよろしくね……。リク……」
「もちろんだよ……。リリス……」
(とりあえず……。この国を救わないとね……。でも、どうすればいいんだ?)
僕は、悩みながら歩いていると。目の前に大きな扉が見えたので。僕は、リリスに声をかけたのであった
「リリス……。この先に何があるの?」
「この先にあるのは……。この城の玉座の間よ……」
「そうか……。ありがとう」
僕は、そう言って玉座の間に入ると。そこには、豪華な椅子に座っている男の姿があったのである
(あれが……。この国の王か……)
僕は、王の容姿を見て驚いたのであった
(えっ……!?)
僕は、目の前にいる人物を見て驚愕していたのである
(なんで……?なんで……。この人がここにいるんだ……)
僕は、動揺を隠しながら王に挨拶をしたのであった
「初めまして……。私は、リクと申します……」
「ふむ……。わしは、この国の王をしている。アルスラン・グラックスだ……」
(やっぱり……。この国を治めているのは、アルスラン王子の父親なのか……)
僕は、アルスラン王子の顔を思い出しながら。目の前の人物を見ていたのであった
「リク殿……。お主は、この国を救いに来たのだろう?」
「えぇ……。そのつもりですが……」「それなら……。頼みたいことがあるのだが……」
「なんですか?」
「お主には、この城に滞在してもらい。魔王討伐の準備を整えて欲しいのだ」
「魔王を倒す準備ですか?」
「そうだ……。実は、勇者召喚の儀式を行おうと思う」
(やっぱり……。そういう流れになるのか……)僕は、アルスラン王子が言っていた言葉を思い出すと。アルスラン王子がこの国に来た目的がわかった気がしたのであった
「なるほど……。わかりました……」
「うむ……。それでだな……。お主には、この国の騎士長になって欲しいと思っている」
「騎士長ですか?」
「そうだ……。この国には、騎士団は存在するが。騎士団をまとめる者がいないのだ……」
(まぁ……。それはそうか……。この国の兵士は、ほとんど農民だしな……。それに、この国は平和だから騎士団がいる必要もないか……)
僕は、そう思いながらも。断る理由もないので。アルスラン王子の申し出を受けることにしたのであった
「わかりました……。引き受けましょう」
「本当か!助かるぞ!」
アルスラン王子は、嬉しそうにしていると。アルスラン王子の横に立っていた男が話しかけてきたのである
「父上……。その男は信用できるのですか?」
「あぁ……。この者は、信頼できる人間だ」
「しかし……」
アルスラン王子の父親は、息子を説得しようとしたが。息子の方は納得できないようであった
(やっぱり……。この人は、アルスラン王子の父親なのか……。それじゃ、この人の息子ってことは……。やっぱり、この人も魔王と戦うことになるのかな……)
僕は、アルスラン王子の父親とアルスラン王子を交互に見比べると。アルスラン王子が父親に反抗するように僕に向かって言葉を発したのである
「おい……。そこの男……」
「なに?」
「お前は、なぜこの国を救うつもりなんだ?」
「う〜ん……。そうだな……。困っている人を助けるのに理由はいらないと思うけど……」
「ふん……。くだらんな……」
「そうかもしれないね……」
(僕だって、別に正義感だけでこの国を救うわけじゃないけど……。それでも、この国の人達が苦しんでいる姿を見たら放っておくことはできないな……)
僕は、アルスラン王子の質問に答えた後。王様の方に向き直ったのである
「それで……?魔王と戦うには、どうしたらいいんですか?」
「うむ……。魔王と戦うためには、『魔人』の力が必要なのだ……」
「『魔人』ですか?」
「そうだ……。魔王と戦うためには、魔王と同じ力を持つ存在が必要なのだ……」
(なるほど……。つまり、この国にいる『魔人族』に協力を求めるってことか……。まぁ、それは難しいかもな……)僕は、王様の話を聞いて。魔王と戦うために力を借りるのは難しいと思ったのであった
「あの……?一つ質問をしてもいいでしょうか?」
「なんだ?」
「『魔人』というのは、どんな種族なんですか?」
「『魔人』とは……。簡単に言えば『魔獣』のようなものだ……」
(『魔獣』のような存在か……。それなら、協力をしてくれる可能性はあるかもしれないな……)
僕は、そう思ったが。『魔人』が『魔獣』のように凶暴な性格だとしたら。協力してくれない可能性があると思い。僕は、慎重に言葉を選びながら話すことにしてみたのであった「『魔人』が『魔獣』みたいな性格だとしたら……。協力はしてもらえると思いますか?」
「さぁな……。だが、今は少しでも戦力がほしい状況なのだ……」
(確かに……。相手は、魔王なんだから。こちらも、ある程度の戦力は用意しないとダメだよな……。でも、僕が戦うとしても……。一体でも多く仲間が欲しいところだな……)
僕は、そんなことを考えていると。隣にいたリリスが口を開いたのである
「あなたは、何を考えているの……?」
「えっと……。僕は、この国の人たちを守りたいと考えてるんだけど……」
「守るですって!?」
リリスは、僕の話を聞いて。信じられないといった表情を浮かべていたのであった
(しまった……。言い方がまずかったか……)
僕は、リリスの表情を見て。自分の考えを訂正することにしたのである
「違うよ……。リリス……。僕は、この国のみんなを救いたいと思ってるんだ」
「どういう意味?」
「そのままの意味だよ……。僕は、この国に助けてもらったから。今度は、僕がこの国を助けてあげたいんだ……」
「リク……。どうして、そこまで……」
「僕はね……。家族を亡くして一人になったんだ……。その時、僕は絶望したんだよ……。だけど、この国に来て。僕を受け入れてくれたんだ……」
「…………」
「だから、僕はこの国の人たちを救いたいんだ……」
「そうだったのね……」
リリスは、悲しげに俯くと。僕に近づき手を握ってきたのである「リリス?」
「私も……。この国を救いたいわ……」
「ありがとう……。リリス……」
僕は、リリスの手を握り返すと。リリスは、真剣な眼差しで僕を見つめてきたのである
「リク……。お願いがあるの……」
「うん……」
「私のことも守ってほしいわ……」
「もちろん……。約束するよ……」
(リリスも、守りきれなかったら……。きっと、自分を責めてしまうだろうし……。絶対に死なせないようにしないないと……)
僕は、心の中でそう決意すると。リリスの手を強く握ったのであった「私も……。リクのことを守るわ……」
「ありがとう……。リリス……」
リリスの言葉を聞いた僕は。嬉しくなってリリスを抱きしめようとした時。突然、横槍が入ったのである
「おい!!いつまでイチャイチャしている!!」
「えっ!?」
僕が声が聞こえてきた方を向くと。そこには、アルスラン王子が不機嫌そうな顔をしながら立っていたのであった
(いきなり現れてなんなの!?)
僕は、驚きながらアルスラン王子を見つめていた
「えっ……と……。何か用ですか?」
「貴様は、この国を救いたいと言ったよな?」
「はい……。言いましたよ……」
「ならば……。俺の言うことを聞けばいいのだ」
「え?」
アルスラン王子は、自分がこの国を救えるとでも思っているのか。自信満々に胸を張っていたのであった
(この国を救おうとしているのは、僕達だけだと思うんだけど……。まさか、この王子は自分一人でこの国を救えると思っているのか?)
僕は、呆れながらアルスラン王子を見つめていると。アルスラン王子は、僕に詰め寄ってきたのである「お前は、この国の救世主になるんだろ?」
「まぁ……。そうですね……」
「だから……。お前は、この国を救う手助けをするのだ」
「手伝いですか?」
「そうだ……。俺は、魔王を倒すための作戦を考えたのだ……」
「なるほど……」
(やっぱり、この人は。この国の王様の息子だもんな……。やっぱり、この国の事を考えて行動しようとしているのか……)
僕は、アルスラン王子の行動を見て。この国の事を考えてくれているんだと感じたのであった
「どうだ?素晴らしいだろう?」
「そうかもしれませんね……」
(正直、すごいと思う
魔族領で俺ツエー!~元最弱職テイマーの俺、異世界に召喚されて最強のスキル手に入れたので楽々スローライフを送ります!~ あずま悠紀 @berute00
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。