第21話
城に着いた時、他の貴族の方たちはいつものように、立ち話をしていた。そしていつものように、二人は大広間の隅にいた。
「国王が参られます」
一斉にみんなが黙る。扉から国王が現れ、玉座へと座った。
「これより、会議を始める。議題は、貴族の保護。および国民の不満解消である」
二人は眉をひそめた。貴族の一人が、玉座の近くに来ると、話し始めた。
「最近、貴族の館を狙う盗賊団が横行している。その対策として、夜間の警備を強化。重点的に貴族が住居している地域に対して、兵士の人数を増やします。新たに兵舎を作り、住まわせるようにします。郊外にある館の方も同様、近隣に兵舎を住まわせるようにします」
そこで拍手が起こった。反対に、オルスもテッドも、拍手はしなかった。
「もう一つ、国民はとても不満が高まっているようです。そこで、闘技会場を作り、決闘大会を開きたいと思います。そこに少量ですが、食べ物を提供したいと思います。結果が良ければ、月に一回ほどでも、やっていきたいと思います。おおまかに、兵士部門と魔法使い部門の二つで行われようかと思います。もし貴族の方に、腕自慢の方がいれば、どうぞ気兼ねなく出場してくだいさい」
そこで笑いが起こった。
「では、しばらくはこの方針で行うことにする。それでは、税収の方はどうするのか」
国王が聞いた。
「それですが、減税は行いません。現状維持のままで行いたいと思います。ですが、このままでは暴動になりかねません。兵士の給料をさらに下げようと思います」
「嘘だろ」
オルスはつぶやいた。
「もう一つ、魔法研究所を一時閉鎖します」
「なぜだ!」
テッドは叫んだ。貴族達は一斉にテッドの方を見た。
「静かにしてください。初めてかもしれませんが、ここでは静かに聞くことになっているのです。その研究費を、決闘大会の費用に充てたいと思います」
「異議あり!」
テッドが怒りに任せ、前に進んでいく。どうしていいかわからないオルス。そこに、ウラシュが止めに入った。
「やめろ。ここでは前に出るな」
「そんなもののために、私たちの研究は止めないでいただきたい!」
オルスも止めに入る。
「研究はやり続けるべきです。魔王城で、他国との合同研究を行いました。そこで、新しい魔法を目の当たりにしたのです。このままでは、他の国との差が出てしまいます。続けるべきです!」
テッドは国王に向かっていった。国王は目をそらしていた。
「すぐに追い出します。行こう。まだ決まったわけではない。逆に、お前のせいで研究所が閉鎖にされるんだぞ」
テッドは、魔物のような形相で、大広間から出ようとした。貴族は話を続けた。
「最後に、オルス君とテッド君、ウラシュ君にはもう一度、都市を回ってもらいます」
三人は立ち止まった。
「今、なんと言いました?」
ウラシュが聞いた。
「各都市でも、窃盗や略奪が多数報告されています。そこで、オルス君には、何らかの儀式を行ってもらい、国民たちの不安と不満を和らげてもらいます」
オルスの眉間が、段々と険しくなっていく。ウラシュが前に出た。
「すみません。おっしゃっている事が、よくわかりません」
「このままだと、この周辺の治安が悪くなる一方です。食料もない。この前のように、君たちで市民を集めて、何かをやっていただく。二つの儀式を考えています。大地に作物が出てくる儀式。太陽が出る儀式。作法は、こちらで考えます。それで、当分は安心できるはずです」
淡々と、答えていく。オルス、テッド、ウラシュの三人の顔は、青ざめていく。
「その間に何かあったら、私たちはどうすればいいのですか。すぐにこちらに帰ってくればいいですよね?」
ウラシュが質問をした。
「クレチア王国は、当分は動かないと考えている。大丈夫だ。私達を信用してくれ。明後日、出発だ」
国王が答えた。そして、大広間から出て行く。議会はお開きになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます