第12話
「これか」
泥が足底にへばりつく。歩く度に、ネチョネチョと音がする。
「城を出て、すぐにこれだもんな。大変だぞ」
それでも歩いていく。右側を向くと、そこには麦畑が見える。だが、実り始めた麦が、折れている。
「あれじゃあ、脱穀できない。見ろよ、あの農家の顔」
近くにいた農家は、呆然としていた。何もせず、ただ立っているだけだった。
「ここがダメって事は、全部ダメだろうな」
「食料、大丈夫かよ。備蓄庫があるけれどさ」
新しい道を開拓する森の中に入っていった。すでに仲間達が、斧やのこぎりを使って、木を斬り倒していく。
「馬車同士がすれ違える程度の道だから、そんなに木は切らないけどよ、この土どうにかなんねえか」
「でも、まださっき歩いてきたところよりはいいな」
無駄口をたたきながらも、作業は進められていく。
太陽が真上にまで昇った時、昼食となった。みな、切り倒した木の上に座り、パンをかじる。
「なあ、川の方まで行ったんだけどよ。川幅が倍になっていたぞ。勢いも凄い」
「それじゃあ、渡れないな」
「今、魔法使い達が来て、どうにかならないか思案してたよ。でもよ、いくら魔法でも無理だ」
「そういや、テッドはずっと魔王城にいるらしいな」
オルスは頷いた。
「なあ、まさかと思うけど、この雨って魔王の仕業か?」
「倒したんだぞ、そんなわけあるか」
「でもよ、倒した後にこれだぞ。こんなに雨が降るなんて、ありえないだろ」
そこに、隊長がやってきた。
「昼食は終わりだ。今日は川までの距離をやってもらう」
返事をしながら、兵士全員が立ち上がった。
「とりあえず、目の前の作業に取りかかろう」
木を切り倒し、地面を固める作業を始めて、数週間が経過した。晴れたのはわずか一日だけだった。それ以外は、全て雨だった。
「土木工事は、一旦中止しだ。周辺を巡回。それ以外は休日。以上」
隊長の言葉に、ホッとした。
「川が氾濫しているからな。人も魔法使いでも無理だ。オルスは休みか?」
仲間が聞いてきた。
「いや、巡回だ。なんの為の巡回かわからないけどな。しかも、俺一人らしい。相当、巡回する人数を減らしているよ」
「食料がずっと値上がりをしているからな。このままだと、俺たちの賃金より、商品が上になってしまう。それを見越して、兵士の仕事を減らしているようだ」
「でもよ、休んでも賃金は出るはずだろ?」
仲間は首を横に降った。
「当分、仕事の日以外は、賃金が発生しないらしい。だから、休みが増えて貰える金が減る」
「本当か、その話」
「ああ」
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