崩壊編

第1話

「長年の願いが叶った。あの魔王を打ち倒したのだ。我々には幸が待っている。プラッカー国に栄光を!」


 国王が演説を終えると、国民達は一斉に万歳を始めた。オルスとテッドは、国王の後ろ姿をじっと


見ていた。


「夢みたいだな。まさか俺たちが魔王を倒すなんて」


「ああ。しかも、ここに立つなんて」


 そこに、ウラシュが二人に近寄ってくる。反射的に、二人は姿勢を正した。


「休んでよろしい。二人ともさぞかし疲れているだろう?」


 愛想笑いをしながら、オルスは頷いた。


「魔王を倒してすぐに引き上げ、帰ってきたと同時に、ここに立っているんだからな。いくら若くても、辛いよな」


 ウラシュは二人に握手を求めてきた。二人は驚きながら、ズボンで手のひらを拭き、握手をする。


「いや、まあ……」 


 テッドは何と言っていいかわからず、あやふやな返答をした。


 そこに、演説が終わった国王が、部屋に戻ろうとしていた。三人とも、姿勢を正した。


「おお、君たちご苦労だったな。夜までゆっくり休みなさい。今夜、祝勝会をやるから、家族と一緒に来るといい」


「国王、クレチア王国から祝電が届きました。プラッター王国の、今後の繁栄を心から願うと」


「そうか……」 


 にこやかな表情から一変、険しい顔になった国王は、その場を去っていく。二人は国王の姿が見えなくなると、一気に疲れた表情をし、安堵のため息がでた。


「それでは、また夜に。私が案内しよう。それと、祝勝会の前に風呂に入るようにな。国民はいない。周りは貴族だけだから」


「ありがとうございます」


「他に質問はあるかな?」


「あの……」


 オルスが質問をした。


「その、服装とかテーブルマナーとか、わからないのですが」


 ウラシュは笑った。


「今日は立食パーティーだ。まあ、お祭りのようなものだから、マナーなんてないよ」


「ありがとうございます」


 二人は頭を下げた。周りの者たちと同じように、バルコニーから離れていく。


 二人は城から出た。同時にあくびが出た。


「とりあえず、寝よう」


 城門から城下街に繋がる橋を渡ると、そこに二人の家族が待っていた。


「すごいよ、あんな高いところに、うちの息子が立つなんて」


 二人の母親は、涙目になっていた。父親たちは、泣いていた。


「立派に育ててよかったな」


 オルスもテッドも、家族に囲まれながら、家へ帰っていく。


「じゃあな、また夜に」


「ああ」


 家の中に入ると、一気に眠気が襲ってきた。


「お父さん。城に着ていく服、どうしましょうか。服屋にいって、借りてきましょうか」


「そうだな。一番高いやつにしょう」


「悪いんだけど、俺は寝るわ」


「そうね、ずっと起きっぱなしだからね。夜になったら起こすわ」


 オルスは二階へと上がる。一歩一歩が重く、何度もあくびをしている。自分の部屋のドアを開け、ベッドを見つけると、倒れるように体を預けた。

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