第3話 転入生

遅い....


もう1限目が始まっているのに、先生はどこに。


朝のHRホームルームが終わったと同時にものすごい勢いで出ていったかと思えば、


「先生が遅刻って....」


窓外を見ると、色とりどりの花が咲いた中庭が見えた。


私はこの窓際の席から中庭を見るのが好きだ。


後ろから2番目の席で黒板は見えにくいし、席までは階段を上がらなければいけないけど、中庭がよく見えるこの席が好きだ。


すると、教室の扉が開かれいつも見ている顔が入ってくる。


「ごめんね、遅れてしまって」


教壇に立ったその人は、金村 紗智子先生。クラス担任だ。


「あ、桜井さん。窓開けてくれる?」


「はい。」


名前を呼ばれた私は席を立ち、窓を開けていく。そして、私が席に着いたのを見計らって先生は話を切り出した。


「今日から新しい仲間が加わります。入って来て。」


先生に促され入ってきた見知らぬ顔は、壇上に立ち自己紹介を始める。


「定月 光一です。ギアは皆さんほど上手く扱える自信はありませんが、精一杯頑張るのでこれからよろしくおねがいします。」


深々とお辞儀をした彼は、最後にニコッと微笑んで見せる。


後ろから肩を叩かれ振り向く、


「ねぇ、意外とイケメンじゃない?楓はどう思う?」


「そうね。」


適当に流す。すると、彼がこちらに向かってきた。


「よろしく」


どうやら隣が彼の席になるようだ。


首には通常のギアと訓練用のギアが付いていた。なぜ訓練用のギアも付けているのか気になったが、あまりじろじろ見るのも変かと思い、


「よろしく」


我ながら素っ気ないかなと心配しつつ視線を戻す。




「それでは、授業を始めます!」

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