第2話 新しい人生
校門をくぐった俺は女性教師に先導され、まっすぐ校長室へ案内された。
ノックをした女性教師の後に続いて入る。
入ると窓際に黒髪ロングの背中が立っていた。
「久しぶり、と言ってもお前は覚えてないだろうな」
「えっと、どちら様で?」
「ここの校長の黒田 リツだ。よろしく、定月。」
振り返った彼女は若く見えた。けれど、どこか大人の貫禄がある彼女を見ていると手を差し出された。
「あ。定月 光一です。」
出された手を握ると、
「そう硬くならなくていい。わたしは今のお前と同じくらいの歳のときに、一度だけお前と会っている。」
「そうなんですか。すみません、思い出せず」
昔の話だ、と言い椅子に座る。自分も座るよう促されたので座ることにした。
「あの...苗字が黒田ということは黒田元総司令と何か関係が?」
黒田 元秋 ———つい最近まで地球防衛軍日本軍総司令官として活躍していた男だ。だが、以前アメリカ軍と共同で行われた「ハワイ沖人口要塞島奪還作戦」にて不適切な指揮をし、多くの兵士の命を奪ったとして辞任した。現在の行方は分からず、遺族によって暗殺されたのではとごく一部では噂されている。
「あぁ、あの人とは親戚でね。苗字は一緒だが血縁関係ではないよ。かと言ってまったく関わった事が無いわけでもなく、むしろよく遊んでもらったよ。」
「そうですか....自分もよくしてもらっていました。」
「だろうな。お前の父ちゃんとは仲良かったもんな。それより、なぜここにいるか分かるか?」
「いえ、普通を味わっとけとしか言われていません。」
「普通ねぇ....」
「ここも些か普通ではないと思うが、まぁゆっくり青春を味わいたまえ。」
そう言ってふんぞり返る。
「ここにいる間、わたしがお前を守ってやる。」
ただし!、と続ける。
「いくつか条件がある。これはわたしだけが安易に決めたことではない。元総司令と決めたことでお前自身を守るためのものだ。」
それは、
一、ギアの使用の禁止
二、自身のこと(軍に所属する以前のことも含む)を口外しないこと
三、学校の寮に住むこと
四、戦場には戻らないこと
五、普通に生活しなさい
「この5つを守ること。いくつか難しいものがあると思うが心配するな。最大限こちらで支援する。特に1つ目だが....」
そう言うとポケットから首輪型のデバイスを取り出した。
「こちらで使っている訓練用のギアだ。本来は、ギアを使用出来るほどの魔力を、持ち合わせていない者のためのやつだ。お前にとっては逆に使いづらいだろうが我慢してくれ。」
「使い方は普段どおりで?」
「あぁ、首に付ければつかえる。」
言われた通り、元々付けてあった自分のギアに重ならないようにつけてやる。すると、ピッと起動音が聞こえた。
「それじゃあ、この後はさっちゃん頼んだよ。」
さっちゃんと呼ばれた案内役の女性教師は返事をしたあと、
「あなたのクラスの戦闘科2年、担任の金村 紗智子です。よろしくね!光一くん!」
握手を求められたので立ち上がってそれに応じる。
「よろしくお願いします。えっと、先生?」
「うん!それじゃあ教室に行こうか。」
先生に連れられ校長室を出る。
「楽しむんだぞ定月、いや少尉殿。」
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