第41話 初めての推し活

 数ヶ月前、癒しを求めて見ていた動画の中にふと出てきたラッコに出会い、ラッコの現実を知った。「いつかは来ない」と言われるようになったお年頃。生ラッコを見ておきたい。国内で見られるのは一番近くて鳥羽水族館だ。三重、遠いな。いや、思い立ったが吉日。

「ラッコに会いに行ってくる!」

 急な私の推し活に家族は驚いたが、快く送り出してくれた。

 鳥羽水族館に着き、早る気持ちを抑えつつ、セイウチと触れ合ったり一通り館内を回り、いざラッコ館へ。

 平日の午後だというのにすごい人だかりだ。お食事タイムまで1時間もあるのに、一眼レフのカメラを構えているガチファンでいっぱいだ。

 ついにご対面。毎日見ていた動画のまんまが目の前に。つぶらな瞳の生ラッコにキュン。

 テチテチと歩く姿、ほっぺに手を添えるあざとポーズ、おもちゃをバケツに片付けたりコーンを持って回ったり。2頭のラッコの一挙手一投足に幸せの声が洩れ、トップアイドルの記者会見かと思うほどのシャッター音が響く。「かわいい〜」しか出てこない。

 飼育員さんの娘をあやすような優しい表情にも癒される。なんて幸せな仕事なんだ。オキシトシンが出まくった。

 娘たちが推しのアイドルのグッズを集めているのを「無駄遣い」とたしなめていたのに、ラッコグッズを買い漁り、ガチャガチャまでやってしまった。

 初めての推し活は、五十路の心と体を元気にしてくれた。推し活は、人を前向きにしてくれる素敵な活動だと知った。

 


 

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